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eスポーツを文化に! サードウェーブ代表取締役社長 尾崎健介氏インタビュー

2021年は区民館に“eスポーツ室”設置へ。公共施設へのGALLERIAの無償貸与を発表

11月収録

 今年も、高校生を対象にしたeスポーツ選手権大会「全国高校eスポーツ選手権」が幕を開けた。コロナ禍で一時は実施自体が危ぶまれたが、オンライン開催を決断し、11月21日より「ロケットリーグ」部門がスタート、12月12日からは2週にわたって「リーグ・オブ・レジェンド」部門の予選が実施される運びとなっている。決勝は3月13日、14日、こちらもオンラインでの開催となる。

 GAME Watchでは、今年も参加校への取材をはじめ、様々な形でレポートをお届けしていく予定だが、本稿では全国高校eスポーツ選手権の生みの親であるサードウェーブ代表取締役社長 尾崎健介氏のインタビューをお届けしたい。

 尾崎氏とは、昨年にもインタビューを実施しているが、今回もサードウェーブのメイン事業であるゲーミングPC「GALLERIA」の話題から、尾崎氏が専心しているeスポーツ事業まで幅広い内容について話を伺っている。

 本インタビューの目玉は、eスポーツ事業の新たな施策として、公共施設にGALLERIAを貸与する構想を明らかにしたことだ。これは「全国高校eスポーツ選手権」や「高校eスポーツ部支援プログラム」に続くもので、eスポーツを文化として根付かせるための施策となる。ぜひご注目いただきたい。

ゲーミングPCと「GALLERIA」の歴史

――尾崎さん、夏休みは取られましたか?

尾崎氏: 夏休み……。ありましたっけ?(笑)。

――今年は本当にそんな感じですよね。1年の巡り方というか、季節感がありませんね。

尾崎氏: 中村さんは夏休みを取られましたか。

――毎年東京ゲームショウが終わってから夏休みを取るのですが、今年はどこにも行けそうにないですから、引っ越しにあてました。くたくたで休んだ気がしませんね。

尾崎氏: お疲れ様です。それにしてもウェブメディアは絶好調じゃないですか。

――おかげさまで好調です。今は自粛も解除されて、生活自体はかなり平常に戻りつつある印象ですが、新型コロナによって生活習慣そのものが変わった印象はありますよね。

尾崎氏: 私も、かなりページビュー貢献していますね(笑)。

――ありがとうございます。今年もインタビューを受けていただいてありがとうございます。今回はこの夏にリリースされたGALLERIAと、eスポーツの話を伺いに参りました。

尾崎氏: ありがとうございます。私は純粋に中村さんに久しぶりに会いたいなと思って(笑)。GALLERIAというか、ゲーミングPCというか、最近のPCの話をしましょうか。

――ゲーミングPCという点では、先月、日本マイクロソフトの森さんとインタビューをさせていただいたときに、気づきがあったんです。ゲーミングPCの歴史を辿る中で、森さんは、2002年の「ファイナルファンタジーXI(FFXI)」が日本のゲーミングPCの原点ですよと。そう言われるとそうかもと思ったんですね。実際、サードウェーブがGALLERIAをリリースしたのも2004年で、各社がゲーミングPCに乗り出すのもこれぐらいのタイミングです。

 その一方で、私自身が、PCでゲームを本格的に遊ぶようになったのはもっともっと前です。1997年、1998年ぐらいですよね。「モトレーサー」を遊ぶのにVoodooや、RIVA128が必要だとか、「Age of Empires」をXGAで遊ぶためにビデオメモリを積んだビデオカードが必要だとか、その都度、ドスパラさんのようなPCショップに行って、パーツを買って自作PCをアップグレードしてました。

 自作PCをゲーミングPCの出発点にしているので、今やゲーマーにとって当たり前の存在となったゲーミングPCにあまり触れてきてないんですよね。当時はまだ20代ですから、そんなのは買わないぞ、パーツ買って組んだ方が安上がりだし速いぞという反発心もあったりして(笑)。それがいまや、すっかりゲーミングPCユーザーですね。先月も、「Microsoft Flight Simulator」を遊ぶために、新型GALLERIAを新調したところです。

尾崎氏: ありがとうございます。まさしくおっしゃるとおりで、昔は自作PCでゲームをされる方も多かったですね。半面、PCゲームをやりたいけど、組み立てるのが面倒くさいから組み立ててあるゲーミングPCを買おうか、というようなお客様も多くいらっしゃいました。

 最近はどちらかというと、ハイスペックなゲームをやりたいと思った場合、完成したPCをお選びになるお客様が増えておられます。また、ゲーミングPCはハイスペックで様々な用途に対応できるため、イラストを描いたり、音楽を創ったりというように、PCの使い方が多彩になっていますし、それに伴って回りに繋ぐ外部機器も多くなっています。

 最近のサポートの内容を見させていただくと、PC単体ではなく、周辺機器のソフトウェアに起因する問題など使い方が多彩ゆえに、お客様では原因が特定しづらい質問も増えています。

――昔に比べると、今のゲーミングPCの使い道は、本当に複雑になっていますね。

尾崎氏: そうですよね。

――同じPCを売ってるようで、当時も今とでは、サポート内容や、検証しなければならない項目が違っていたりするので、PCメーカーは大変だと思います。こちらは遊ぶだけなので楽でいいですが、メーカーは苦労されているのだろうなと思います。

尾崎氏: そうですね。

――尾崎さんがサードウェーブに入社されたのが2006年ということですが、GALLERIA自体は2004年からあるわけですが、GALLERIAに対してはどのように感じていましたか。

【歴代のGALLERIA】
左から古い順番に並んでいる

尾崎氏: 当時から、PCゲームに対しての可能性をものすごく感じていました。

――1990年代というのは、まだどちらかというと、ゲーミングPCというよりはパーツで個々に売っていて、中は店員さんが組むこともできますよというような印象が強かったのですが、サードウェーブの場合は、それがいつ頃からGALLERIAの販売へ変わっていったのでしょうか?

尾崎氏: 私はどちらかといえば、いつ頃から変わっていったというよりは、初めからPCゲームと一緒にゲーミングPCを拡められたらなというのがありました。もっというと、ゲーミングPCを拡めるというよりも、PCゲームを拡めようと思ってやってきました。自分たちのGALLERIAの販売台数の伸びと一緒に、徐々に世の中も変わってきたのかなという印象がありますね。ちょっと偉そうな言い方ですが(笑)。

――尾崎さんは、GALLERIAの事業に対してどういったことを実行してきましたか?

尾崎氏: GALLERIAに対してやったことはいろいろありますね。一番は、“PC製品”にしようとしたことでしょうか。15年くらい前からGALLERIAと言う名前はつけられていましたが、“PC製品”を販売しているというよりも、PCを代わりに組み立てていたんです。

――そうですよね。ドスパラに行けば、ゲーミングPCを組んでくれるというだけで、その延長線上にGALLERIAがあったわけですね。

尾崎氏: 当時は社内でも、「PCは組み立てるもの」という意識を持つ者がいましたが、これからは“PC製品”としてやっていこうと社員に伝えました。先ほども言いましたが、当時は、ショップブランドは店で受注して、お客様のために、店のパーツを集めてその場で組んでいるのがほとんどでした。

【組み立てPCのカルチャー】
ドスパラの原点である組み立てPCのカルチャーは現在も活きていて、GALLERIAとは別軸でYouTuberとコラボする形で自作PCの魅力をアピールしている

【初心者向け!誰でもわかるコスパ最強の8万円台ゲーミングPCの組み立て方】

――はい、良く覚えています。

尾崎氏: 組立代行業のようなイメージ。お客様の望むスペックのマシンに仕上げるために、これはこれで大変でした(笑)。

――わかります。難易度の高いホビーでしたよね。PC自作は。消費者側の視点だと、この製品とこの製品を組み合わせてはダメだといった相性の問題とか無数にあって、一種の賭けでしたよね。

尾崎氏: そうですね(笑)。なので、相性の検証などを全て完了させた完成品を販売していこうと決めたんです。

――各お店には必ず仙人のような、すごく詳しい店員さんがいて「これを買っておけば間違いないんだ、俺も使っているから」と言われ「じゃあ、これ買います」、「良い買い物したよ」みたいな。そういう風景が秋葉原の至る所に合ったと思います。それから、2002年に、ゲームファンがPCで「FFXI」をやりたいと思った時、そういった状態だとなかなかPCビギナーが入って来れないので、ゲーミングPCというかたちできちんと整備していきましょうとなっていったのかなと思いますね。今やGALLERIAというと、サードウェーブを体現する存在になったわけですが、ゲーミングPCの先駆けの1つです。この判断は誰がされたんですか?

尾崎氏: GALLERIAを全推ししようと言ったのは私ですね。GALLERIAというブランドを始めたのは、確かにおっしゃる通り、私が入る1、2年くらい前ですが、その時には、あくまでポートフォリオのひとつでした。そのような中、2007年にゲームをもっとやろうと。

――そうですね。そして2010年に「PCゲームフェスタ」という、私もよく記憶しているイベントがありました。

尾崎氏: 寒い思いをさせましたね(笑)。

――ゴールデンウィークの時は快適で良かったんですが、年の瀬の回は、とにかく寒かった。ただ、あの強烈な記憶は何よりのエビデンスです。あの当時からサードウェーブはゴリゴリにPCゲームをやっていたんだという。

【PCゲームフェスタ】

尾崎氏: ありがとうございます。みんな(世間)には、「何をやっているの」と見られながらやっていました(笑)。

――今思えば、ちょっと早すぎたかもしれませんね(笑)。

尾崎氏: (笑)。