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eスポーツを文化に! サードウェーブ代表取締役社長 尾崎健介氏インタビュー

「最低5年は使ってもらいたい」新GALLERIAへの想いについて

――ただ、その半歩、一歩先を行くところがサードウェーブの大きな特徴だと思います。昨年のインタビューで、特に印象に残っているのが、GALLERIA GAMEMASTERを立ち上げた理由です。「eスポーツマシンとして、このモデルは量ではなくて質なんです」と、「eスポーツをやる上で、やっぱりフェアネスを担保しなければダメで、そこまでやって初めて文化になりうる」という話を伺って、そこまで考えているのかと思ったんです。しかし、今夏にリリースされた新型GALLERIAでは、再びシリーズを統合して、GALLERIA GAMEMASTERを無くす決断をしました。尾崎さんにこの想いをぜひ伺いたいと思っていたんです。

【新GALLERIA】
こちらが現行のGALLERIAとなる

尾崎氏: ありがとうございます。想いか……多すぎて(笑)。いろいろな想いがありますよね。フェアネスの担保はもちろんです。そういう部分も当然あります。中村さんはバイクに乗られますか。

――はい、乗っていました。若い頃の擦り剥けキズが全身にあります。

尾崎氏: ゲーミングPCはバイクに近いものがあると思ってるんです。

――また新説が出てきましたね。

尾崎氏: ゲーミングPCって昔に比べると、すごく性能がアップしていて、一方、必死になってファンで冷やさないとダメじゃないですか。

――そうですね。

尾崎氏: ビデオカードも毎回、重くなって、大きくなってきます。中のエアフローも冷やさないといけない構造にしていかなければいけないですし、それだけケースの中も大きくしていかなければ、風も通らないので。また、拡張性も必要ですし、長く使うためにも、メンテナンスが必要になってきますよね。

 先ほど話したように、外部の接続品も多くなってきて、これはeスポーツだけではなく、ストリーミング配信やYouTubeとか、挙げればキリがないのですが、そういうことを考えた時に、今までのケースよりもっと良いものがないとダメだろうなという思いはあったんです。

――気持ちはわかりますね。まずは原付の50ccからはじめて、250ccに乗り換えて、250ccから400ccにするかと。次はリッターか、いよいよハーレーかというステップアップする感じは確かに近いですよね。

尾崎氏: 自分のマシンという感じですね。

――キャッチフレーズにも「相棒」という言葉を使われていて、その辺りも尾崎さんの思いが乗っかったワードなのかなと思いました。

尾崎氏: バイクでも車でも乗っていると愛着がわくじゃないですか。そういうものでありたいと思うんです。先ほど、拡張性とかメンテナンスのしやすさのお話しをしましたが、長く使っていただけるマシンでありたいと思っています。

――たとえば、斜め45度のフロントパネル。USBの抜き差しがし易いデザインになっていますが、オーナーだけがわかる話ですが、最初はやや堅くて抜き差ししづらいんです(笑)。ところが、抜き差しを10回、20回と繰り返しているうちになじんでくるんですよ。そうすると愛着が出てきて「やっと俺のマシンになってきたな」というところがある。バイクもそうじゃないですか。最初は買ったバイクの特性がわからなくてじゃじゃ馬なんだけど、どんどん身体にフィットしてくるというところがありますよね。そういう感じで、まさに相棒だなと思って日々使わせていただいています。

【斜め45度のフロントパネル】

尾崎氏: ありがとうございます。

――今回の新GALLERIAで、一番こだわった所はどこでしょうか。

尾崎氏: 全部です(笑)。その中でも一番こだわったのは、やはり中ですね。

――中ですか。

尾崎氏: そうです。皆さんが外をカッコイイと言っていただけてありがたいのですが、私が特にこだわったのは中の部分ですね。

――それは意外ですね。ぜひ詳しく聞かせて下さい。

尾崎氏: ケース内の大きさやエアフロー、ビデオカードが落ちないようにする「リジッドカードサポート」などですね。

【リジッドカードサポート】

――外ではなく、中にこだわった理由はなんですか? コンピューターですから中が大事なのは当然ですが、差別化を考えたら外をこだわるのが普通だと思うんです。

尾崎氏: やはり自分の中でも“マシン”という印象なんでしょうね。見た目がかっこいいというのも重要ですが、中にこだわるべきだというのが私の信念です。

――今回はGALLERIAとしては4代目になりますが、いかがですか。一番気に入られていますか。

尾崎氏: そうですね。お気に入りの上書きはされてきますよね。

――歴代カラーがずっと黒で、今回は黒を辞めたこともひとつ話題になりました。

尾崎氏: デザインは、松原とか武藤が一番こだわっていましたね。

――尾崎さんはあえて中だと。

尾崎氏: そうです。PC内部のパーツで、移送などの際、注意すべきはやはりビデオカードなんですね。ビデオカードが年々大きくなってきて、重さの増加に伴い落下することがありました。また、eスポーツ大会やゲームイベントでは、通常より頻繁に移動や搬送が行なわれます。当社はそういったイベントにゲーミングPCを貸し出します。

 我々としても落下試験などはしているのですが、環境や状況によってはどうしても落下が防げないことがあります。少しでもそういった事故を防ぐために、今回実装したのが路ジッドカードサポートです。ビデオカードの脱落による接触不良を防止し、パーツの高寿命化、および耐久性向上を図ります。また、エアフローの排出部分を壁につけていて、パフォーマンスが落ちるということもあります。

――今回は、両側面から吸って上からはくというデザインです。このエアフローにも尾崎さんのこだわりがあるんですか?

尾崎氏: 私自身が、具体的な設計を決めた訳ではないのですが、エアフローは大事にしてほしいと言う話はしました。

――新型GALLERIAでまだ十分に検証できてない部分が拡張性です。設計当時から、GeForceの3,000番台が出るとか、インテルやAMDの新しいCPUが出ることも分かっていたわけですが、その辺りも、しっかりサポートしていこうというような設計になっていますか?

尾崎氏: 3,000番台が出るからという、具体的な紐付けではないですが、やはりコンセプトとしては、「長く使ってもらえるマシン」というのが開発の基本にあります。VGAの成長とともに重たくなってくるところをもっときちんとサポートできなければいけないと当然考えますよね。

――今回リジッドカードサポートに関しては、一定の大きさ以上のビデオカードを積んでいるPCのみにしか付きませんでしたが、気持ち的には全モデルにつけたかった?

尾崎氏: そうですね。気持ちとしてはですね。どこまでやるかです。付ける必要もないのにつけてても仕方ないですからね。

――もうまもなくプレイステーション 5やXbox Series Xといった次のゲーム機が登場します。新型ゲーム機は、現行のゲーミングPCに近いパフォーマンスを備えていますが、両モデル共にこだわっているのが冷却なんですよね。12~13cmというこれまでのゲーム機では考えられないくらいデカいファンを採用するために、それぞれスリム型PC以上に筐体が大きくなっているんです。そうした中で新型GALLERIAは、14cmというさらに一回りデカいファンを取り入れて将来性を保証していますね。その辺りも対比しながら見ています。

尾崎氏: ありがとうございます。

――将来性については、どれ位持つことを想定して設計されていますか?

尾崎氏: PCは、新しいゲームが出れば、中身は変えていったりしますが、やはり10年ぐらいもってもらえたら嬉しいですよね。今までよりも、もっと長く使っていただきたいなと思っています。

――PCで10年というのはかなり長いですね。

尾崎氏: そうですね。ビデオカードの端子が変わって刺さらなくなったりするかもしれませんが(笑)。ただ、ゲーミングPCは、皆さん、ハードユーザーなので、一般のPCに比べてたくさん使う分だけ、経年劣化が早いじゃないですか。

――そうですね。本当にそう思います。

尾崎氏: そういう中で、最低5年は使ってもらいたいと思ってはいます。

――なるほど。わかりました。ちなみに、先ほどの話に戻るのですが、GALLERIA GAMEMASTERというハイエンドモデルがありました。ところが今回は、また1つのブランドに戻されました。この辺りは、尾崎さんが最終判断をされたと思うのですが、何故1つに戻そうと思われたのですか。私はGALLERIA GAMEMASTERの筐体をすごく気に入っていたんですよ。

【GALLERIA GAMEMASTER】
惜しまれつつも終了となったGALLERIA GAMEMASTER

尾崎氏: ありがとうございます。

――いずれ買おうとずっと思っていたのですが、ブランド毎フルモデルチェンジするとは想定外でした。あの筐体、側面が強化ガラスで、片面吸気ですけど、クールで洗練されていていいなぁと思っていたんです。それがなくなるというので、今回、新型GALLERIAと、在庫限りのGALLERIA GAMEMASTERをどちらを買うかを迷った位なんです(笑)。

尾崎氏: ありがとうございます。今度、GALLERIA GAMEMASTERの筐体だけお届けします(笑)。

――ゲーミングPCの筐体デザインコンテストみたいなものがあれば、私はGALLERIA GAMEMASTERを推したいですよね。もちろん、筐体はデザイン性だけではなくて、機能性や拡張性、持ち運びやすさなど、色んな側面があるので賛否あると思いますが、私自身のセンスでいうと、GALLERIA GAMEMASTERの筐体が「ザ・GALLERIA」という感じで私は好きでしたね。

尾崎氏: ありがとうございます。正直私も、未練はありますね。

――その未練を断ち切ってまで、ブランドを統一した経緯を聞かせていただけますか?

尾崎氏: これも言い方が難しいのですが、ゲーミングPC自体を私の中でも、もっと簡単に、もっと単純に多くの方に使っていただきたいというのがありました。PCはどこまでいってもまだまだ複雑だなと。お客様も、このゲームをやるには、このスペックじゃなくてはならないとか、どれを買えばいいのか、迷われると思うんです。

――そうですね。だからこそ、「Minecraft」推奨PCみたいな存在が、ゲームファンにとってありがたい存在なのはとてもよくわかるんです。

尾崎氏: そうですよね。昔は、GALLERIA GAMEMASTERモデルはある特定の要素、例えばeスポーツだとフェアネスを担保するためにこのモデルにするとか、「FF」などといったRPGを遊ぶため、あるいは長く使っても壊れないような耐久性であったり。GALLERIAの中でもいくつかカテゴリを分けていたのですが、本当はもっとシンプルに「ゲームをやるんだったらこれで良いじゃん」というような、もっとシンプルなものにしたいなという想いがありました。そのような想いから、GALLERIA、GALLERIA GAMEMASTERといろいろ分けるのではなくて、ひとつの名前にした方が良いかなと、ブランド名として。

――ブランドは難しいですよね。GALLERIA GAMEMASTERは“eスポーツマシン”と定義していました。GALLERIA GAMEMASTERを辞めるということはeスポーツを辞めるのかと取られかねません。現場の方からは、「そんなことはありません。むしろ逆です」というお話なんですが、シンボルがなくなるのはそういうイメージを与えてしまうところがあります。尾崎さんとしては、そういう細かいところは置いておいて、とにかくシンプルにしたかったということでしょうか。

尾崎氏: GAMEMASTERじゃないと、eスポーツタイトルが遊べないんですか?」という問い合わせがあって、そのときに「お客様を迷わせてはいけない」と思ったんです。そういう意味では、今よりももっとシンプルにしないとダメなんです。もっとわかりやすくしたいですね。

――現状でも、まだ不満がありますか?

尾崎氏: もっとシンプルにお客さんがパッとご覧になってすぐ決められるようにしたいですね。

【新GALLERIAのラインナップ】
新GALLERIAのラインナップはかなりシンプルになったが、尾崎氏はもっとシンプルにしたいようだ

――新型GALLERIAは数十のラインナップを、4つのシリーズに統合しましたよね。これでかなりわかりやすくなったわけですが、尾崎さんとしては、これでもまだ多くて、「松・竹・梅」くらいのシンプルさにしたいという感じでしょうか?

尾崎氏: そうですね。実際にどこまでできるのかはわかりませんが、考え方としてはそうです。その先にBTOを用意したい。入り口はできるだけシンプルにして、BTOで自由にカスタマイズしていただく。今はお客様がその入り口で、どのモデルを選ぶかから迷ってしまう部分があるじゃないですか。

 バイクで言えば、ツーリングに行くんだったらこれで、レースを走るんだったらこれ、街乗りだったらこれ、といった感じですよね。アメリカンなのか、ネイキッドなのか、モトクロスなのか、レーサーレプリカなのかといったような、名称を含めて、もっとわかりやすくしたいですね。

――ゲーミングPCの楽しさはバリエーションの豊富さですよね。どう自分用にカスタマイズしていくか。ただ、そこがハードルの様に感じてしまうのかもしれないですね。

尾崎氏: 選ぶ楽しさは、最後まで残したいんです。今のPCの選び方が、何気筒からなのかから入るとすると、用途に応じてオンロード用、もしくはオフロード用と、選んでいただく感じにしたいと思います。

――尾崎さんとして、今後GALLERIAのシリーズに対する拡張計画があれば教えて下さい。

尾崎氏: 今後もさらにわかりやすくしていきたいと思います。製品そのものの開発というよりは、もっとわかりやすく伝えられるようにしたいですね。

――今年は新型コロナの影響で、ゲーミングPCのタッチポイントがグッと減りました。巣ごもり需要でゲーミングPCの売上は伸びていると伺っていますが、その一方でタッチポイントが維持できて、キチンと商品をアピールできていたらもっと売れていたかもしれませんよね。そうした中で、サードウェーブさんはその辺りのタッチポイントの維持というのは、どのいった工夫をされていますか。

尾崎氏: オンラインでのゲームイベントや大会というようなことは、もっともっとやっていきたいですね。それだけではなく、ストリーマーの支援であるとか、そういった所を強化したいですし、するべきですよね。なんでしょう、商売っけがあまりないのかな(笑)。

――直近の話だと、プロゲーマーのネフライト選手をアニメタッチで描いた特設ページは、今までのイメージとは違う感じを受けます。GALLERIAといえば、黒い筐体にフェニックスの様な、ハードコアな感じで攻めていた印象でしたが、柔らかいイメージに変わってきましたね。

尾崎氏: ネフライトさんは天才です「フォートナイト」の神様です。2019年、世界一なんですよね。31回連続ビクロイって、私計算したんですが、何十那由他分の1なんですよね。無量大数の2つ前の位の確率です。

――尾崎さんがそんなに深く関わっているとは(笑)。尾崎さんが彼に惚れ込んで今回のモデルを用意したという経緯なんですか?

尾崎氏: そうです(笑)。実際には、うちの社員に「ネフライトさん素晴らしいよ。是非一緒にコラボさせていただこうよ」という話はしました。

――こういったプロゲーマーをフィーチャーしたゲーミングPCは、売れ行きは良いんでしょうか。

尾崎氏: ご好評いただいています。

【GALLERIAネフライトコラボモデル】

――そういう意味では、ゲーミングPCの売り方もまた変わってきたのかもしれませんね。今までなら、特定のゲーム推奨でしたが、今は特定の人推奨という。

尾崎氏: 人につながるところは大事ですよね。でも、それって他のスポーツと同じだと思います。誰々モデルのバットだとか。

――イチローモデルのバットなら欲しいですよね。

尾崎氏: そうですよね。イチローバットだったら買いますよね。

――尾崎さんが今GALLERIAに関して一番注力していることは何ですか?

尾崎氏: GALLERIAそのものというよりは、eスポーツだと、大会など腕を試す場を提供したり、良い成績を残した人に支援したいです。また、YouTuberやストリーマーの方たちに対しても支援を考えています。

――支援をいうのは具体的にどのような形を取られるのでしょうか。

尾崎氏: 例えば、ゲーミングPCを無償でレンタルしたりだとか。他にも考えていることがあります。中村さんにお願いして、「おもしろいのでこの人をメディアで取り上げて下さいよ」とお願いすることだとか(笑)。

――なるほど。そういう意味では、そうした気鋭の若手アスリートを紹介する場になっていた公式チャンネル「ガレリアゲーム三昧」が終了しましたが、あれは何か意図があるのですか? 私は隠れファンでしたから終了したのは残念でした。

尾崎氏: ありがとうございます(笑)。これはストレートにお答えしますが、あれはあれで良かったのですが、もっと多くの人に見ていただきたかった。そういう番組作りを改めてしたいなと思い、終了しました。もともとお金を稼ぐためにやっていたのではないので、視聴率の良し悪しとか、経済的に合わないとか、そういう話ではありませんが、もっと多くの方に見ていただける内容にしなくてはいけません。

――では、新しい形でまた何か始められるということなんでしょうか?

尾崎氏: やっていきたいですね。