インタビュー

PCゲームの担い手日本マイクロソフトとゲーミングPC「GALLERIA」を語る

「FFXI」から「Microsoft Flight Simulator」まで推奨ゲーミングPCの歴史を総覧する!

8月収録

 GAME Watchでは、7月10日にリリースされた新GALLERIAについて、製品レビューや企画担当者へのインタビュー等を通じて新モデルの魅力をお伝えしてきたが、今回は少し趣向を変えて、パートナーメーカーの視点から新GALLERIAを語っていただくという珍しい形のインタビューをお届けしたい。

 インタビューに応じていただいたのは、日本マイクロソフトでWindowsのマーケティングを長年担当しているコンシューマー&デバイス事業本部 Windows & Office 戦略本部森洋孝氏。

 森氏はWindowsの重要なセグメントの1つとしてPCゲームも長年担当しており、日本のPCゲーム界では生き字引的な存在だ。近年では、インタビューでも語られているが、XboxがPCゲームを含む包括的なエンターテインメントプラットフォームに進化したこともあり、ゲーム関連の業務も増えてきているという。私自身、10年以上のお付き合いだが、凄まじいPCゲーマーであり、新作ゲームの辛口評価はいつも参考にさせていただいている。

 今回はその森氏に、サードウェーブの新型ゲーミングPC「GALLERIA」について語っていただいただけでなく、日本独自のカルチャーである推奨PCについての見解や、PCゲーム業界を騒がせているAAAタイトル「Microsoft Flight Simulator」に関することまで、PCゲームに関する様々なことを聞いてみた。ぜひお楽しみいただきたい。

日本独自のカルチャー「ゲーム推奨PC」とは!?

――今回の企画主旨からご説明させて頂くと、サードウェーブさんと新型GALLERIA特集を展開する中で、推奨PCを展開されているゲームメーカーさんの視点から語って貰うのも面白いんじゃないかという話になって、日本マイクロソフトの森さんは何においても外せないなと思ったんです。

 理由は、サードウェーブさんとのお付き合いが長く、実際に推奨PCを出していること、日本マイクロソフトのゲーム担当として、PCゲームのキーマンであること、そして森さん自身がPCゲーマーであることですね。今回はPCゲーマーが楽しめるインタビューにできればと考えておりますのでどうぞよろしくお願いいたします。

森氏: よろしくお願いいたします。

日本マイクロソフト コンシューマー&デバイス事業本部 Windows & Office 戦略本部森洋孝氏。インタビューは日本マイクロソフトのコラボレーションプラットフォームであるMicrosoft Teamsを使って行なった

――森さんがPCゲームに関するインタビューを受けるのはいつ以来ですか。下手すると初めてですか? Windowsの方というイメージが強いですよね。

森氏: PCゲームでのインタビューはもしかしたら初かもしれないですね。Windows全体の中のゲーム含むというのはもちろんありますが、それぐらいじゃないですか。Xboxの時には、スポークスパーソンとして別の人間がいたので、あまり私がしゃべることもありませんでした。ゲームだけだと、もしかしたら初かもしれないですね、。

――では自己紹介も兼ねて、森さんが担当しているお仕事からお聞かせいただけますか。

森氏: 私は、個人のお客様向けのWindowsのマーケティング担当です。Windows全般が担当分野で、その中には、ゲームも、Windowsの活用方法のひとつとして含まれています。

――PCゲームに関しては何年ぐらい担当されていますか?

森氏: PCゲーム自体は、私がサードウェーブさんの営業&マーケティング担当という所からおつきあいが始まっています。それが2001年くらいです。

――それは相当前ですね。

森氏: 相当前ですね。私が2001年入社なので、その頃からサードウェーブさんをずっと担当しています。私の記憶では、その翌年の2002年に「ファイナルファンタジーXI」のPCのβが始まったと思うのですが、あの2002年あたりからPCゲームは仕事として担当していて、そこが初めてだったと思いますね。

【PC版「ファイナルファンタジーXI】
わずか480pしか出せなかったPS2版と比較して、PC版では1080pの高解像度プレイが可能に。当時、より優れたプレイ環境を求めて多くの「FFXI」ファンがゲーミングPCに手を伸ばした

――GALLERIAも2002年から始まってますから、GALLERIAの立ち上がりからずっと見てこられているわけですね。

森氏: そうなんですね。そこの意識はあまりなかったのですが。中村さんも詳しいと思いますが、ゲームの推奨PCというのは、おそらく「ファイナルファンタジー XI」が初だと思います。当時、サードウェーブさんを含めて、その頃、完成品のゲーミングPCは、まだほとんどなかったと思います。ゲームをするためのPCを買おうと思ったら、自作するしかなかったと思います。推奨PCという形でやりましょうという話をして、私の記憶ではサードウェーブさんとも早い段階から取り組みをご一緒させていただきました。

【GALLERIA「FINAL FANTASY XI」推奨モデル】

――森さんの推奨PCへの取り組みは、ここ数年の話ではなく、もう20年やられているんですね。

森氏: やっています。もちろん、ずーっと切れ目無くやっているわけではなく、途中で抜けていたりはしていますし、PCゲームばかりをやっているわけでもなかったです。ただ、ここ4、5年くらいは、主要な量販店さんでも、ゲームPCコーナーが相当増えていたり、ユーザーさんも昔と違って新しい層の方が増えたりだとか、eスポーツが話題になってきたり、とかいろいろあり、いろいろなメーカーさんからもPCゲームの話題が出てくるので、この所結構、集中してゲームをひとつの柱として担当しているという感じですね。

――マイクロソフトさんは、2016年にXboxだけではなくて、PCにも同じゲームを提供していくという「Xbox Play Anywhere」というサービスを始めました。これは単にクロスプラットフォーム展開をするだけではなくて、セーブデータもクラウドで管理して、どちらからでも続きを楽しめるという画期的なサービスだったわけですが、これによってマイクロソフトのPCゲーム戦略が大きく変わりました。これによって森さんのお仕事もPCゲームの割合がグッと増えたのですか? それとも、そこはあまり関係なかったのでしょうか。

森氏: あまり関係ないといえば関係ないですね。「Xbox Play Anywhere」のタイミングから、それまでXboxがゲームコンソールの製品名だったものが、Microsoftのゲーミングブランド名に変わったということがあって、それまで別々だったXboxゲームとPCゲームが一緒になったんですね。

【Xbox Play Anywhere】

――そうですね。

森氏: XboxゲームとPCゲームがXboxブランドの下にひとつになりましたので、「Xbox Play Anywhere」も同じタイミングに登場したサービスですが、それ以降はXbox部門の中でPCであろうが、Xboxのコンソールのプラットフォームであろうが関係なくやるようにはなったので、PCゲームについて、社内でも体勢が整ってきたんです。今まではどうしてもコンソールゲーム主体になりがちではありましたが、PC/Xbox関係なくやり始めたのが、ちょうどその頃からですね。

――「Xbox Play Anywhere」以降、Microsoftタイトルの推奨PCが続々生まれて、この担い手というのが、森さんだったわけですけれども、推奨PCの実現について苦労はありましたか? たとえば、海外では推奨PCというカルチャーがないですよね。当然マイクロソフトも海外のメーカーなので、このあたりは相当大変だったのではないかと思うのですが、いかがだったのでしょうか。

森氏: いや、別に特に大変なことはひとつもなくて、逆にここは変な感じに聞こえるかもしれないですが、サードウェーブさんみたいなメーカーさんは、推奨PCというのは、PCのスペックに詳しくないユーザーさんでも、これならスペックをちゃんと満たしているという目安になるわけじゃないですか。

――そうですね。

森氏: サードウェーブさんは、そこから一歩踏み込んで、自分で動かしてみて動くという所までやっていただけるので、こちらとしては、スペックをちゃんと満たしていただいているというのは前提で、それにプラス、サードウェーブさんはきっちり「動きますよ」というのを、自社でも確認されていらっしゃるので。

 どちらかというと、いわゆる認定推奨みたいなプログラムは、マイクロソフトはやっていませんので、基本はスペックをきちんと満たしていただいて、後はきちんとやってくださるメーカーさんに、うちは安心してお任せしているという感じですね。

 なぜなら、コンソールゲーム機しか触れたことのない方々が、ゲーミングPCを購入するのはハードルが高いです。そこを、PCメーカーさんが推奨してくれるわけですよ。このゲームを遊びたいのであれば、これを買っておけば、ちゃんと動くスペックを満たしていますよというのがわかるわけです。これは大きいですよね。

【ドスパラのゲーム推奨モデル】
50以上のゲーム推奨モデルがラインナップされている

――その推奨PCですが、現在、マイクロソフトさんが認定するゲーミングPCは、サードウェーブさんだけではなく、いろいろなメーカーさんで出されていますけれど、一番初めにパートナーを組んだのが、サードウェーブさんでした。最初にサードウェーブさんと組んだ理由は何かあるのですか?

森氏: ありません(笑)。マイクロソフトとしては、分け隔て無くすべてのPCメーカーさんに平たくお声がけをしていて、サードウェーブさんが手を挙げるのが一番早かっただけです。

 先ほどもお話ししたとおり、サードウェーブさんは昔からのお付き合いですが、やっぱり新しいこと、特にゲーミングに関していうと、これは本当に昔から見ていてすごく尊敬するのですが、儲かろうが儲かるまいが、ずっと一貫してゲーミングPCのリーディングカンパニーになろうと思っておられる所があって、ゲームに関して新しいことは必ずサードウェーブさんが一番始めにやっている印象があります。

 たとえば、推奨PCの中には、ゲームが同梱されているもの、具体的には「Minecraft」や「Xbox Game Pass」などがありますが、この同梱PCについては、日本どころか、世界で初めて取り組まれたのが、サードウェーブさんだったりします。

――私もサードウェーブさんを担当して長いですが、サードウェーブさんが主催された「秋葉原PCゲームフェスタ」は覚えていらっしゃいますか?

森氏: ああ、ベルサール秋葉原でやったやつですね。あれは、毎年ステージで話をさせていただいたりしました。

【秋葉原PCゲームフェスタ】
ベルサール秋葉原を会場に開催された「秋葉原PCゲームフェスタ」
ステージイベントも多数行なわれた
新GALLERIAの発表の場でもあった

――私もあのあたりぐらいですかね、「このメーカーは普通のPCメーカーとちょっと違うぞ」と。尾崎さん(サードウェーブ代表取締役社長 尾崎健介氏)も、「儲かるかどうかではなくて、PCゲームというものをもっと盛り上げたいんです」と仰っていて、そこへのこだわりは本当にずっと変わっていないですよね。

森氏: そうですね。

【PCゲームフェスタでスピーチを行なう森氏】

「推奨PC」と「同梱PC」の違い

――ちなみに、ゲームメーカーが認定するゲーミングPCには「推奨PC」と「同梱PC」の2種類がありますが、これはどういう区分けなのでしょうか?

森氏: 同梱PCはサードウェーブさんのようなパートナーの会社さん向けに用意した専用のプログラムで、その専用のプログラムがあるかどうかだけの違いです。推奨PCは先ほど言ったように、ゲームに対する推奨スペックを満たしているPCであるという、その目安になっているものです。

 ちなみに同梱といっても、デジタルバンドルというもので、買ったお客さんが自分でダウンロードしていただくものです。そういう形で提供できるように、うちがいくつかのゲームに関して、そういうプログラムをPCメーカーさん向けに用意しているんですね。その対象になっているのが「Minecraft」であったり「Xbox Game Pass」であったりという形で。

【推奨ゲーミングPC】
「Gears 5」(日本マイクロソフト)の推奨ゲーミングPC

【同梱パソコン】
Xbox Game Pass同梱パソコン

――その専用プログラムを用意するかどうかは、森さんが決めているのですか?

森氏: いえ、PCメーカーさん向けのプログラムは、完全にグローバルなプログラムなので本社が決めていますし、全PCメーカーさんに対して同じ条件で提供しています。

――なるほどでは、サードウェーブさんとお付き合いが長いから先に声を掛けたとか、何かを優遇したという話ではなくて、単純にサードウェーブさんが最速だったわけですか。

森氏: 単純にそうです。等しく他のメーカーさんにもご紹介はしているのですが、真っ先に手をあげてこられるのがサードウェーブさんなんです。

――今回は、サードウェーブのGALLERIA製品企画担当である瀧吉佑介さんにも参加いただいています。瀧吉さん、手をあげるスピードの速さは、どこからきているのでしょうか?

瀧吉氏: 最初からやるつもりだからでしょうか(笑)。

――なぜ、そんなに意欲的なんでしょうか。

瀧吉氏: 森さんが、さっきおっしゃってくださったとおりで、やりたいゲームが動作するかどうか、ゲーミングPC購入に不慣れなお客様は不安ですよね。お客様が安心して製品を選べるようにするのもメーカーとしての役目だと思っています。「大きなタイトルを一緒にやりませんか?」と言われたら、それを「NO」という選択肢はないです。お客様が欲する製品を出したい……その想いが根底にあります。

――サードウェーブさんと日本マイクロソフトさんは、ショップレベルでもコラボをよくされていますよね。店頭で森さんが「Forza」の紹介をしたり、ドスパラ札幌店にいたり(笑)。これはどのように決まっているのでしょうか?

瀧吉氏: 基本的には、コラボ企画を我々からお願いすることもありますし、マイクロソフトさんからお持ちいただくこともあります。情報交換を定期的にさせていただいているので、お互いに提案できる環境です。コミュニケーションができているというのが、一番大きいのではないでしょうか。

【店頭デモを行なう森氏】

新GALLERIAへの期待について

――良い関係性が構築されているということですね。7月10日に新しいGALLERIAが発売されましたが、何かコラボレーションを考えていますか?

森氏: この間の発表会は、私もオンラインで拝見させていただきました。うちはゲームタイトルや、Windowsとしてのマーケティングのタイミングがあったりしますし、サードウェーブさんの新製品だったり、キャンペーンと合わせて、どのタイミングで何をしますかというのを、まさしくこれからお話しするところですね。

【新GALLERIA】

――瀧吉さん、今どんなことを企画されていますか?

瀧吉氏: 今は「Minecraft」とか「Xbox Game Pass」など、元々一緒にさせていただいている取り組みを、そのままちゃんと継承して、新しいGALLERIAでもしっかりと対応していこうかなという所と、お客様に、あらゆるゲームを紹介する、見せ方や見え方の部分、弊社製品のコンテンツのリニューアルをかけていこうと思っています。

――ちなみに、新GALLERIAの登場によって、現行の推奨PCや、同梱PCは、すべて新GALLERIAに置き換わっているのですか?

瀧吉氏: 今まさに更新中です。

――日本マイクロソフトさんのコラボレーションPCに関してはどのような状況ですか?

瀧吉氏: 「Minecraft」に関しては、ノートPCも含めて、最優先でリニューアルをかけて、既にやらせていただいています。

【「Minecraft」同梱パソコン】

――森さんの目から見て、新GALLERIAで期待しているところ、注目をしているところはどのあたりですか?

森氏: 現在のコロナの状況もあって、直接新GALLERIAについて、実はあまり詳しくサードウェーブさんと話をする機会をもてておらず、私が発表会を見た印象だけなので、間違っていたら、瀧吉さん、直していただきたいのですが、新GALLERIAは、ゲーミングPCの“とにかく光っている”とか、“こんな感じだろう”という固定観念を壊していて、普通にPCとしてもかっこよい、 “ゲーミングPCだからこう”というデザインを打ち崩したのかなと思っています。

 今後、PCでゲームをする行為は、ゲーマーだけではなくもう少し一般の方にも広がって行くんだろうとは思っているので、普通にかっこいいし、ゲーミングPCのスペックも備えているので、すごく安心できるPCなんだろうと。普通の用途だけではなくゲームも「もしかしたらするかも?」というような方にとっても、非常に良いデザインで、良い製品になっているんじゃないかなと思って拝見していました。

瀧吉氏: 減点する部分はありません。100点満点です(笑)。ありがとうございます!

森氏: それは良かった(笑)。

――瀧吉さん、補足をすることはありますか。

瀧吉氏: ないです。これからゲームを始めようと思っていらっしゃる方々にも、新GALLERIAの良さをお届けしたいと我々サードウェーブは思っていて、さきほど森さんがおっしゃってくださった言葉に全て詰まっていました(笑)。

――私が知る森さんはかなり辛口な方なので、是非、辛口な意見もいただきたいのですが、PCゲームメーカーとして、ゲーミングPCに対する「こういったのがあると良いのでは?」といった要望があれば、是非聞かせていただきたいのですが。

森氏: なるほど(笑)。それはあまり考えていませんでしたが、個人的な意見としてですが、もう少し小さい方が良いかなと。

――良い意見ですね(笑)。

森氏: 筐体を見ていても、デスクトップPCの天面に、ものを置く人が多いというような話をされていたと思いますが、確かに私もものを置くんですね。

 サードウェーブさんは、よく言えば、本当にゲーマーのことを一番に考えておられるんですよね。ゲーマーの方をすごくちゃんと向いて作っておられて、悪く言えば、ゲーマー目線が過ぎるんですけど(笑)。なので、実際使っている人が、こうだったら良いのにな、というのを形にするとああいう形になっているんだろうなと思います。今の時点だと、かなり良い製品にはなっているなという気がして拝見していました。

【デカい?】
今回のインタビューに参加して頂いた瀧吉氏と新GALLERIA。フルスペックのゲーミングPCの筐体だけに、サイズはかなり大きめだ

【モノが置ける天板】

――サイズについては確かにデカ過ぎるという意見はあるだろうなと思います。瀧吉さん、如何ですか?

瀧吉氏: 小さくするという所については、我々も課題というか、今回持ち越してしまった部分なので、そこはちょっと耳が痛いなと思いつつ、小さくするということ自体は、我々もまだチャレンジしないといけない課題として残っているというのは認識しています。逆に他のことは突っ込まれなくて良かったと、ちょっとほっとしています(笑)。

PCゲーム界に衝撃を与えた「Microsoft Flight Simulator」

――そして森さんに、今日どうしてもPC周りで伺いたいなと思っていたのは「Microsoft Flight Simulator」についてです。このタイトルの推奨PC、同梱PCは出るのでしょうか。

森氏: 同梱PCは、今のところ計画はありませんが、推奨PCはサードウェーブさんが今進められていると思っています。

瀧吉氏: もちろん準備を進めていますので、発売をお待ちください。

――「Microsoft Flight Simulator」については、PCの要求スペックの項目にIdeal、日本語でいうところの「理想」のスペックが設定されており、その高さにPCゲーマーが衝撃を受けました。私自身は「Flight Simulator」らしいな、ついに復活するんだと嬉しく思っていますが、メーカーとしてはどのような受け取り方をしていますか?

【「Microsoft Flight Simulator」のスペック】

森氏: そこについては、それこそ私よりも中村さんの方が詳しいと思いますが「Microsoft Flight Simulator」は毎回、その時世の中にあるスペックだと満たせないくらいの所を出してくるじゃないですか。

――そうですね。

森氏: なので、逆にいうと、私としては推奨スペックが優しいなと思ったぐらいだったんですね。一番上のスペックに関しても、今やろうと思えばできるスペックなので。過去の「Flight Simulator」を見ていた経験から、そんなスペックのPCは絶対に作れないというスペックを、また出してくるのかなと思っていたので、それにしてはむしろ優しいスペックだなと思いました。

――私はこのIdealスペックを見た時、最初に驚いたのは、実はCPUでもGPUでもなくて、メモリなんです。メモリが32GBを求めていると。コアゲーマーが構築するようなゴリゴリの自作のゲーミングPCならともかく、32ってまだまだ一般的ではないと思うんです。PC屋としては、どのように感じていらっしゃいますか。

瀧吉氏: PC屋としては、そうですね……ゲームの標準メモリは16GBと考えてまして、新しいGALLERIAは、ケース以外で実はスペック的に揃えたのが2点あります。

 1つはメモリが16GB以上、1つはSSDのNVMe化です。従来のGALLERIAでは、8GBとか、SATA接続のSSDも使っていたのですが、新GALLERIAにするタイミングでデスクトップモデルは16GBでNVMeという統一をしました。正直、16GBあれば、ほとんどのゲームは全然問題なく動きますし、当然上のモデルには標準を32GBに設定をしたモデルもあるのですが、いきなりそれを要求してきたなというのは驚きですよね。

【Idealが実現する圧倒的なグラフィックス】

――そうですね。もともと「Microsoft Flight Simulator」は、ゲームに求めるスペックを次のグレードを引き上げてくれる存在でしたが、今回も、良い意味でも、悪い意味でもそうだなという感じはしますね。

瀧吉氏: 「Microsoft Flight Simulator」というのは、そういう存在だという風に認識をしています。

――もし情報がなければ後でかまわないのですが、「Microsoft Flight Simulator」推奨PCはどの位のスペックのものになるのでしょうか。

瀧吉氏: スペック的には、きっちり動くところは押さえつつも、一番上に合わせるのはちょっと無理だから……そこそこ遊べると、きれいに遊べるをターゲットにして考えています。

【GeForce RTX 30シリーズ】
9月にはいよいよGeForceの次の世代となるGeForce RTX 30シリーズがリリースされる。「Microsoft Flight Simulator」推奨PCはこの世代からのスタートになるのだろうか?

――森さん、知っていたら教えていただきたいのですが、「Microsoft Flight Simulator」はメディア向けの説明会でさらっとVR対応をすると言ってますよね。

森氏: 言っていましたね。

――今の2Dのグラフィックスを維持した上で、VR対応するとどのくらいのスペックが必要になるのでしょうか?

森氏: うーん、どうなんでしょうね。

――最高設定のままVRで表示させようとしたら、それこそ今のPCでは動かない気がするのですが。

森氏: どういう感じの実装にするのかはわかりませんが、描画している目の前に出ているスクリーンは、4Kか8Kなんだろうなとは予想はします。Idealスペックぐらいは最低でも必要なのかなとは、勝手に予想はしています。

【8K世代のGPUがついに登場!】
9月2日に発表されたGeForce RTX 30シリーズは、HDMI 2.1を採用し、8K出力に対応する

日本マイクロソフトのPCゲーム戦略

――日本マイクロソフトさんとしては、今年はXbox Series Xという大ネタが控えていますが、今回PCゲームのインタビューということで、PCゲームの展開戦略について、もし決まっていることがあれば、教えてください。

森氏: 冒頭お話をしたように、Xboxブランドの下でコンソールもPCもと、基本はその路線で変わりません。なので、PCゲームだけで、戦略を立ててというよりも、Xboxコンソールがあり、PCプラットフォームのゲームがあり、今後はクラウドゲームもあって、プラットフォームとしてはモバイルもありますし、その辺を全部トータルで、マイクロソフトとしてはゲームを楽しむ環境をこうしていきますというのが、戦略としてはあります。

 その中で、PCに関して今年から来年をという意味でいくと、引き続きPCメーカーさんや販売店さんとガッツリ組んで、PCでゲームをするとこんな良いことがあるよ、というのを取り組んでいくのが基本路線かなとは思っています。

――すべてのデバイスに分け隔て無くコンテンツを提供していくのがマイクロソフトの基本戦略になりつつあります。Xboxのトップであるフィル・スペンサー氏の言葉を借りれば、真の意味で遊び手が端末を選ぶ時代が来ようとしつつあります。そうした中で、ゲームファンに、PCを選んでもらうために必要なことは何だと思いますか?

【フィル・スペンサー氏】

森氏: これを言えば全員がPCでゲームをするようになるというようなマジックワードはないでしょうね。やっぱり今までのゲームを見ていても、自分でもそうなのですが、私も自宅で、スマホでもコンソールでもPCでもゲームをやるのですが、その中で、PCで遊ぶタイトルってあるじゃないですか。PCでやると何か違うとか、PCの方がグラフィックがきれいだとか、FPSだとコントローラーよりもマウス・キーボードの方がやりやすいとか、いろいろありますが、PCゲームをプレイするデバイスとして選ぶ理由があるんですよね。

 それこそ「Minecraft」もそのひとつかもしれませんが、スマホから始めて、コンソールでも遊びながら、最後はPCにいったりもするわけです。なので、まずはどれでもいいから遊んで頂いて、それぞれ遊んでこういう楽しみ方ができるよというのをわかってもらうのが一番かもしれないなと、いつも思っています。

――直近だと、「Minecraft」はレイトレーシングに対応しました。あれは子どもも「あれなに? やりたい!」ってなりますよね。実際、「Minecraft」のRTX対応はマーケットにインパクトはありましたか?

【Minecraft with RTX】

【PC 版『Minecraft』公式 GeForce RTX レイトレーシング お披露目映像 (字幕付き)】

森氏: 有名な配信者さんに遊んでいただいたりしたので多くの方にご覧いただけたと思っています。PCだとそんなことができるんだというのが、そもそも分かってない方のほうが多いと思うので。PCで「Minecraft」をするとこんなに違うんだね、というのが、視覚的にレイトレーシングはわかりやすいと思うので、非常にインパクトがあったのではないかと思っています。

――PCを選んでもらうために必要なことについて、瀧吉さんの方から、何かご意見はありますか。

瀧吉氏: 先ほど、話をしていただいた「Minecraft」について、実は社内でも同じことを言っていて、小さい子がコンソール機やスマホで「マイクラ」というコンテンツにさわり始めてから、いろいろなプラットフォームが増えましたが、「マイクラ」がPCの得意とするレイトレーシングという武器を手に入れてくれたことは、ありがたいですね。

 でも我々としてはコンソールゲーム機を敵対視することはなくて、役目の違う共存出来るものだと勝手に思ってます。例えばコンソール機なら大画面TVにつないでオフラインで複数人が遊ぶなど、PCではできない、やらないスタイルでゲームを楽しむことが出来ますし。

 その中でマイクロソフトさんは、Xboxというコンソールのプラットフォームも持っているし、それをPCと分け隔てなく使っていこうということで「Xbox Game Pass」という取り組みもされています。我々は高画質とか、高精細とか、コンソール機では処理しきれない世界が出せるのがPCの役目かなと考えています。

――今年、サードウェーブさんは「GALLERIA GLOBAL CHALLENGE」という年に1度の大会を「VALORANT」で開催されましたね。「VALORANT」は今“最も来ている”PCゲームタイトルで、8月18日には「Microsoft Flight Simulator」がリリースされますし、PCならではの有力タイトルがこのところ続いていて、PCゲーム出身の記者として嬉しい状況になっています。森さんはどのように受け止められていますか。

【GALLERIA GLOBAL CHALLENGE 2020】

森氏: 私もやっぱり、PCメーカーさんとお話をする時に、PCならでは何かが言えるタイトルがあると、それは楽しいですね。特に、「Microsoft Flight Simulator」はまさしくそのひとつであったりするので、忙しくてまだちゃんとプレイはできていないのですが、遊ぶのが楽しみですね。

――私も今回、PCを買い換えたのですが、一番の動機は「Microsoft Flight Simulator」をちゃんと遊びたいなということでした。メモリが全然たらなくて(笑)。

森氏: 32GBは意識したいところです。今週来週、セットアップをしながら自分で遊ぼうとは思ってます。

――それでは最後に、ゲームファンに向けてメッセージを一言ずつお願いいたします。

森氏: 是非、今までPCでゲームをされたことのない方は1回、遊んでみてほしいなと思っています。いきなり手を出すのはちょっとなという方であれば、サードウェーブさんの店頭で、実際に動いているのを見たり、PCのゲーム実況を見るのもいいかもしれません。そうしていただくと、コンソールやスマホだけではない、たとえば海外ゲームがものすごく遊べたりだとか、PCならではの遊び方もいろいろできたりはするので、是非体験したことのない方は、体験していただきたいと、本当に思いますね。

――私は本当に思うのですが、「Xbox Game Pass」同梱PCというのは、最初のゲーミングPCとしては最高に良い1台ですよね?

森氏: 「Xbox Game Pass」は是非お勧めしたいサービスですね。「Xbox Game Pass」は、加入者数が全世界で1,000万人以上を突破しています。、今まで例えば2、3本気になっているソフトがあったとしても、どれか1本を選んで買うじゃないですか。残りの2本は、セールを待ってから買おうとか。それがサブスクリプションの遊び放題の対象として一緒に並んでいると、普段だったらやらないものとか、気になって2番手、3番手になってしまうゲームだとしても手を出しやすいので、より多くのゲームを楽しむ機会が得られます。

 実際、入った方と入っていない方で、プレイしている時間が2倍違うとか、入った方の9割が、今までだったら手を出さなかったジャンルにまで手を出しているといったデータがあるので、買った瞬間から試しにやってみようというゲームが100本以上あるというのは、かなり入り口としては良いとは思います。価格的にもすごくお求めやすい価格に設定させて頂いていますし(笑)。

――値段変えないでくださいね(笑)。

森氏: はい。変えないと思いますよ。なので是非遊んでください。ただXbox Game Pass for PCは現在ベータとして提供しているので、ベータ期間限定価格になっていることはご了承ください。

――ぜひ瀧吉さんもコメントをお願いします。

瀧吉氏: 「Xbox Game Pass」は、PCゲームを人に近づけるためには、最善の手段のひとつだと思っていました。発表されて、GAME Watchの記事が出始めた頃に、森さんに「これっていつ日本に来るんですか?」と、聞いていたぐらいなんです。

 「Minecraft」と「Xbox Game Pass」の同梱PCという存在によって、「ゲームを身近に」、「もっと遊びやすくしよう」、GALLERIAがずっとやって来た取り組みが実現に近づいたかなと思っています。今後も、推奨PCはいの一番に手をあげてやると思いますし、ゲームをお客様に近づけるために、マイクロソフトさんと一緒にやれることがあれば、いろいろ一緒にやっていきたいと思っています。

――ありがとうございました。