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eスポーツを文化に! サードウェーブ代表取締役社長 尾崎健介氏インタビュー

eスポーツの盛り上がりは“時間の問題” 2021年も新たな施策を実施へ

――2017年にシドニーで尾崎さんから「eスポーツをやる」と伺って、3年半くらい経っていますよね。あっという間ですよね。

2017年シドニーで撮影した写真。大浦豊弘氏(右)はJHSEF(全国高等学校eスポーツ連盟)理事、早船淳一氏(左)はNASEF JAPAN(北米教育eスポーツ連盟日本本部)のeスポーツスペシャリストとして、いずれもeスポーツ界で活躍している

尾崎氏: そうですね。あっという間ですね。もっと早く様々な事を実現したいのですけど。

――3年間でご自身が思うビジョンの何%ぐらいまで拡がりましたか?

尾崎氏: 5、6%ぐらいですかね。

――そんなに低いですか。

尾崎氏: まだまだですね。これから確立させていかなければなりません。

――新型コロナがダメージ大きいですよね。水を差された結果になりましたからね。

尾崎氏: そうですね。それはありますね。

――現在、第3回全国高校生eスポーツ選手権の参加校を募集していますが、手応えはいかがでしょうか?

【第3回 全国高校eスポーツ選手権】

尾崎氏: 私は、高校の参加数も気になっていますが、一番気になる所は、“本当にeスポーツが根付くのかどうか”です。何かのゲームが流行って、ゲーミングPCが売れる……ということは、過去にも何度かありました。その都度、「今年がeスポーツ元年か?」と喜んだものです(笑)。でもそれは単なるブームでしかなかった。

 eスポーツについては、部活動が定着するかどうかが重要です。部活動として1校1校、顧問の先生のご指導のもと、ルールを守って部活動をすることで、学校全体が応援するようになる。そのような環境が整えば、他の部活動同様、eスポーツも文化になると思います。

 文化になる……、わかりやすくいえば、テレビの夜のニュースで、「今日のeスポーツの世界大会で、どのチームが日本代表に……」というような、その話題を伝えることが普通になるという世界です。野球のように、草eスポーツもあって、各都道府県や、市ごと町ごとに、もっともっと浸透して、リーグ戦がTVで放映されるぐらいのタイトルが出てきてもおかしくないというかと思っています。

 今は、まだeスポーツを好きな人が知っているチームを応援している……といった感じです。ですが徐々に、ゲームタイトルを知らなくても、「自分の出身地の鳥取ファイターズを応援しよう」とか、そういう動きがいま少しずつできつつある。各都道府県でいくつかの自治体は、eスポーツで地域活性化をしようというのを真剣に取り組んでますし、部活動においては、熱心な顧問の先生が多くいらっしゃるのも実感しています。そういう人たちのネットワークが拡がってきているという手応えはあるんです。数というよりは、そういう手応えが感じられるかどうかが大事だと思います。

――確かに。例えば、JHSEF(ジェセフ 一般社団法人全国高等学校eスポーツ連盟)だったり、NTTe-Sportsだったり、従来のeスポーツシーンには影も形もなかったような大きな援軍も今いるわけじゃないですか。大きなうねりができつつあるのを私も感じています。

尾崎氏: そういう面で、すごく良い流れだと思っています。ただその力が全部結集して結果が出る所まで行っているかと言えば、まだそこまでは達していないように感じます。その手前で元気玉が少しずつ集まってきている所です。それはうちだけにということではなく、業界全部にということです。ただ、これが爆発して成果に繋がるのはまだ先かなと思っています。

――それは今年とか来年ではなく、5年、10年先ということですか?

尾崎氏: いや、この2、3年だと思いますね。

――そんなに近い未来に花開くことを予測されているんですね。

尾崎氏: もうeスポーツが文化になることは、間違いありませんし、私自身なると信じています。2、3年後に、万が一そうならなかったら、無理かどうかではなくて、それは遅れているだけだと。ただ、どんなに長くても5年はかからないと思っています。

――では、かなり楽天的な見方をされているということですね。

尾崎氏: そうですね。楽天的というか、もうそうなりますよ、絶対に(笑)。

――第3回全国eスポーツ選手権は、オンラインになりましたが、どのような抱負を持たれていますか?

尾崎氏: 熱い大会にしたいですね。一生懸命やっている高校生たちに、力を出し尽くして欲しいですね。

――オンラインで、どう盛り上げるのかは、各社さん、試行錯誤されているところですが、尾崎さんは、オンライン大会をどうあるべきだと思われますか。GGC 2020(GALLERIA GLOBAL CHALLENGE 2020)もオンラインで開催され、サードウェーブ内でも様々なノウハウが溜まってきているところだと思います。何か具体的な施策が決まっていれば教えて下さい。

尾崎氏: 私自身は少し違う視点で見ています。一般のeスポーツの大会であれば、選手達と観客を盛り上げるというのが必須条件だと思います。高校生の場合は、選手たちに悔いのない試合をやってもらえればいいんです。選手たち、各高校が真剣に盛り上がってくれれば良いかなと思いますね。そうすれば自然と観客も盛り上がります。

――なるほど。商業主義的な盛り上がりではなく、高校生eスポーツの盛り上がりに期待ということでしょうか。

尾崎氏: そうですね。

――少し話は変わりますが、3年前に、尾崎さんたちとeスポーツについてディスカッションした際、「アマチュア層を育てていかないとダメだ」という意見で一致しましたよね。ピラミッドでいうところのボトムの部分。今お話を伺っていて、尾崎さんの考えが変わっていないなと思うと同時に、いまだにそこが弱いなと思っています。

尾崎氏: 日本には、まだまだ足りないところもたくさんありますが、JHSEFや大学のリーグなども出来ています。社会人の団体も企業とかと一緒にやられたりしています。各地方にあるJeSUの下部組織、その他の団体、これら全部の歯車が噛み合ったら、すごいですよ。

――それらが噛み合う世界を期待していると。

尾崎氏: 期待じゃありません。もうそうなるのは時間の問題です。

――いやぁ、本当に尾崎さんのその信じる力は凄いです。私自身はまだそこまで信じ切れてないんです。今、eスポーツと呼んでいるのは極々一部のプロシーンだけを切り取ったものです。でも、これスポーツに当てはめればおかしいですよね。スポーツなんてほとんどがアマチュアで、うまくなるため、強くなるため、相手に勝つため、あるいは自分に勝つため、そういうお金とは全然関係ないところで努力を重ねているアスリートがほとんどです。

 野球で言えば、楽しく野球を楽しむ草野球もスポーツですし、素振り1,000回、投球練習100球もスポーツですよね。ところが、eスポーツって、切り取られ方がいびつなせいで、すぐにプロだのお金の話だのになる。ゲームファンの次がすぐプロゲーマーみたいな。中間が全然ない。そんなピラミッドが成立するわけがないと思うんです。

 でも、尾崎さんは「そんなことはありませんよ、必ず来ますよ」って言い続けてますよね。ここまで強く信じ続けている方は今までいませんでしたから、本当に凄いなと思います。日本のeスポーツはある意味、尾崎さんの心次第ですね(笑)。

尾崎氏: いやいやいや(笑)。ただ、我々も「必ず来る」と言い続けるだけじゃなくてeスポーツを文化として定着させていくために様々な施策を考えています。その1つに、公共施設にゲーミングPCを無償貸与していくことを考えています。地域の方々にはそこでPCを使っていただきます。

――おお! 新たな施策ですね。

尾崎氏: 先ほどの中村さんの話はそのとおりで、野球はどこかの公園に、半日1人100円くらいで借りられるグラウンドがあって、手軽に利用できるからアマチュア層が育つ、結果として野球が文化として根付いたと思っています。

――まさにおっしゃる通りです。そういう環境がeスポーツにはないですよね。

尾崎氏: ですので、eスポーツを根付かせるために、区民館のような公共施設で、ゲーミングPCを無償貸与して、eスポーツにおける野球グラウンドのようなものを作っていきたいとは思っているんです。公共施設も、色んな事をやりたいと思っていると思うんですが、予算がありません。場所を提供してくれたらPCを貸与しますよと。

――区民館の囲碁室のようなイメージでしょうか。ああいうのを“GALLERIAルーム”に置き換えて、若い子がこぞって集まるような、そういうスペースを作っていきたい。それを東京だけではなくて、全国津々浦々にというイメージでしょうか。台数はどのくらいでしょうか。1,000ではきかないですよね。

尾崎氏: そういうイメージです。ただ、数は1,000じゃきかないですね。数千になるでしょうね。

――いつからスタートするつもりですか?

尾崎氏: まだはっきりとは決まっていませんが、これからやっていこうと思っています。ルフス(LFS 池袋 eSports Arena)を全国展開したいなと思っていて。

――それはルフスの立ち上げからおっしゃっていましたね。ところが今は新型コロナでなかなか難しい状況がありますね

尾崎氏: 難しいのはコロナだけではなくて、利用料です。ルフスは安い金額で提供しているとはいえ、一定額掛かるので、練習のためとはいえ、毎日は行けないと考える方もいらっしゃると思うんです。でも、野球をやる人たちは、それこそ公園のグラウンドに行けば、もっと安く野球を楽しめるじゃないですか。

――そうですね。公園に行けば、素振りはするのは無料だし、キャッチボールだって無料でできます。これこそが、スポーツの原点ですよね。ところが、eスポーツってどうやったってお金がかかりますよね。ここをできるだけ下げたいと。

尾崎氏: そうですね。

――素晴らしいアイデアだと思いますね。

尾崎氏: 気軽に来て、市民大会ができるくらいのものにしたいですね。

――私、最近引っ越しをしたんですが、住所変更するのに区役所に赴いたんです。自分の順番が来るまでの間に、館内を歩き回っていると、囲碁室があって、高齢の方が相対して、楽しそうにやっていらっしゃったんですね。これって場と碁盤と碁石があるだけでひとつのマインドスポーツが成立しているわけです。そういうことが、eスポーツでできたらいいなとは思っていました。

 でもeスポーツははじめるのにとにかくお金が掛かるので、たとえば、機材から揃えたらスターターで10万、20万掛かりますとなると、なかなか踏み出せないですし、eスポーツカフェに行ってもその1回は、楽しかった、良かった、興奮した、となりますが、どんどんお金が掛かりますから定着までは行かないですよね。

尾崎氏: ルフスのような施設は、野球でいえば試合をするグラウンドなんです。一方、公共の場にPCを置くというのは、いわば素振りをする公園のようなイメージで。引き続き、1人でゲームを楽しみたいというのであれば、PCをご購入いただくか、ネットカフェに行ってくださいと。

――eスポーツのレンタルプログラムは、現在も実施しているeスポーツ部支援プログラムが最初だと思いますが、これは大きな次のステップになりますね。

尾崎氏: そうですね。

――何か名称はあるのですか?

尾崎氏: このプログラムに関しての名称はまだありません。設置施設の名称は、先方に考えていただきます。うちの施設ではないので。

――なるほど、施設の管理者がeスポーツ室と付けるかもしれないし、GALLERIAルームになるかもしれないしと。

尾崎氏: そうですね。ただ公共の所となると、うちの名前は使わな区手も構いません。宣伝のためにやるわけではありませんから。

――最後に素晴らしい計画を伺えて良かったです。地方のコミュニティの人たち、学校の人たちがすごく喜ばれる施策だと思いますね。

尾崎氏: 喜んでいただければ嬉しいですね。

――我々首都圏で暮らしている人間は、ある意味で満ち足りた生活を送っているので、足りないことに気付かないんです。私は宮崎の出身で、実家に帰ると、ネットがない、電源もない、そもそも子どももいないみたいな話で、公民館などがあっても何も活用をされていないんです。しかし私の宮崎の友人などもそうなんですが、eスポーツを盛り上げようという熱い気持ちを持って活動しているコミュニティは見えていないだけで実はいるんですよね。そうした彼らにとって大きな力になる施策だと感じました。NTTe-Sportsさんも、地方にあるNTTの庁舎などを使うというアイデアを披露されていましたが、一緒にやるみたいなこともできますよね。

尾崎氏: そうですね。そういうのをいろいろやっていきたいと思いますので、中村さんにも見ていただきたいです。

――わかりました。ぜひ足を運んでみたいと思います。いつ頃から動き出すのですか?

尾崎氏: そう遠くない時期に正式発表したいと思っています。

――ただ、このインタビューが掲載されたら、そういった団体から問い合わせが殺到するのではないですか。

尾崎氏: そうだといいですね。ほかにもeスポーツ系のニュースの発表を予定していますから楽しみにしておいてください。

――え? 今回はまだ全く話してない別の話ですか。

尾崎氏: 今回全く話していない内容ですね。

――ぜひちょっとだけヒントをお願いできますか?

尾崎氏: これは他社さんも大きく絡む話なのでまだダメです(笑)。驚いて貰えると思いますよ。こちらも正式発表までもう少しお待ちください。

――わかりました。最後にゲームファン、eスポーツファンに向けてメッセージをお願いいたします。

尾崎氏: コロナ禍ではありますが、PCゲームやeスポーツは、自宅からオンラインでも楽しめますし、コロナが終息すればオフラインイベントをやっていきたいと思います。GALLERIAのユーザー、ファンの方々にもっと楽しんでもらえるようなイベント作りや、ストリーマー、eスポーツチームの支援などをしていきますので、楽しんでもらえたらと思います。

――期待しています。ありがとうございました。