インタビュー

eスポーツで初の快挙! サードウェーブ尾崎健介氏叙勲記念インタビュー

企業版ふるさと納税制度を活用。今後も日本全国のeスポーツを積極支援へ

【紺綬褒章(褒状)】

2022年11月3日受賞

 年々盛り上がりを見せつつある日本のeスポーツだが、2022年はとりわけ話題の多い1年となった。新型コロナウイルスの影響で、世界的に自粛が続いていたeスポーツ大会や各種イベントも徐々に再開。4月には、「CSGO」時代から日本のトップアスリートとして知られるLaz選手率いるZETA DIVISIONが「VALORANT」の世界大会で、FnaticやNIPといった強豪を次々と撃破し、ベスト3に入賞したことは大きな話題を集めた。

 本大会は、それまで世界とは大きな差があるとされてきたFPSの分野において、日本のeスポーツチームが世界に通用する実力を備えていることを大舞台で実証しただけでなく、時差の関係で試合が深夜だったにも関わらず、熱心に応援するeスポーツファンが大勢現れるなど、日本のeスポーツの熱を改めて感じることができた出来事だった。

 トッププロの活躍のみに留まらなかったのも2022年の大きな特徴と言える。2022年、ついに法人化を果たし、日本でもeスポーツの裾野を拡げる取り組みを本格化させた北米教育eスポーツ連盟の日本支部 NASEF JAPANは、学生向けのeスポーツ大会「NASEF MAJOR」を立ち上げ、同時にeスポーツ教育セミナーを発足させた。関西の雄 南海電鉄は、2022年に上場を果たしたウェルプレイド・ライゼストと組んで学生向けのeスポーツ合宿プログラム「eスポーツキャンプ」をスタートさせた。ここで挙げたのは極々一例に過ぎないが、日本全国で同時多発的にeスポーツの盛り上がりを感じた1年だった。

 そうした2022年の年の瀬、おもしろいニュースが飛び込んできた。サードウェーブがeスポーツで叙勲を受けたというのだ。しかも、京都府と茨城県の2府県から。いずれも企業版ふるさと納税の仕組みを活用して2府県にeスポーツ振興を用途とした寄附を行なったというものだ。

 受賞した勲章は「褒状」で、個人宛てに贈られる「紺綬褒章」に相当するものとなる。寄附を主導したのは、ご存じ、同社でeスポーツ事業を牽引している代表取締役社長 尾崎健介氏。尾崎氏は、Laz選手らが有名になるきっかけとなった大会「GALLERIA GAMEMASTER CUP」をはじめ、高校生向けのeスポーツ大会「全国高校eスポーツ選手権」、上述したNASEF JAPANなど、日本のeスポーツ界で“こっそり大活躍”している人物だ。本稿ではその尾崎氏からコメントをいただいたのでまとめておきたい。なお、尾崎氏にはeスポーツと絡めて度々インタビューしているので、ぜひそちらも合わせてお楽しみ頂きたい。

eスポーツに積極的な京都府と茨城県を中長期で支援

――eスポーツで初の褒章を受けたと伺いました。

尾崎氏: 企業版ふるさと納税というシステムを利用し、京都府と茨城県にそれぞれ寄付をしました。その両府県を選択した理由として、どちらもeスポーツに積極的に取り組んでおり、その姿勢に共感したからです。両府県から国に対し内申があり、この度の叙勲に至りました。

【2枚の褒状】
京都府、茨城県の2カ所から推薦され、それぞれ国から発令されているため、2枚の褒状が与えられている。褒状を手にしているのはサードウェーブ代表取締役社長の尾崎健介氏とサードウェーブ eスポーツ事業担当取締役の前田雅尚氏

――どのような勲章なのですか?

尾崎氏: 今回いただいた紺綬褒章(褒状)は大正7年に制定され、公益のため私財を寄付人や起業を、国が表彰するものです

――勲章を頂いた感想は?

尾崎氏: 率直に嬉しいです。eスポーツの発展のためには、草野球のように幼い頃よりそれに触れる機会や場所が必要であると思い、これまで専用施設を作ったり、大会の開催の他、あらゆる支援を行ってきました。しかし地方においては、当社だけでは思うように展開できないため、企業版ふるさと納税の制度を活用し、地方自治体の皆さんのご協力を得ようと考えました。それがこのようは叙勲につながり、とても驚くと同時に、嬉しく思っています。

【褒状】

――贈られた寄付金は具体的にどのような用途で活用されたのかのですか?

尾崎氏: 基本的には各地域の活性化に役立てて頂いています。地域活性化は、例えば一回のイベントでは達成できるものではありません。そのため行政の皆様方は中期的な計画を立てられています。そこにはeスポーツを通した教育であったり、地域の企業と学校の結びつきも視野に入れて企画を策定される事が多いですね。それらに役立てていただいています。

――寄付先として京都と茨城を選ばれた理由は?

尾崎氏: 先ほどと重複しますが、eスポーツに対し熱心な活動をされているからです。京都府は府知事がインタビューでもeスポーツを新しい文化へとお話しをなさっています。産業振興のみならず、人材の育成にも熱心です。茨城県は、全国初となる都道府県対抗によるeスポーツ大会「全国都道府県対抗eスポーツ選手権2019IBARAKI」を開催したり、産学官が連携して取り組む土壌づくりを進めています。そのような姿勢に共感したからです。

――日本でもeスポーツが文化として認められ、年々盛り上がりを増しつつありますが、尾崎さん自身はどのように感じていますか?

尾崎氏: これまで私たちが申し上げている「eスポーツを日本の新しい文化に」という言葉に近づきつつあり喜ばしく思います。幅広い世代の方々がeスポーツに触れられる機会が全国で増えており、今後も更に多くの方々がeスポーツへ参加できる状況が整い、より盛り上がることに期待しています。

――尾崎さんのeスポーツに対するビジョンを改めて教えて下さい

尾崎氏: eスポーツを文化にする。eスポーツが一部の特別な人たちが楽しむものでなく、誰もが気軽にeスポーツを楽しむ世の中を望んでます。

――尾崎さんが設立を主導したNASEF日本支部(NASEF JAPAN)ですが、こちらは現在どのような状況なのでしょうか?

尾崎氏: 元々は、eスポーツを通して、生徒達にITC知識と技術を身に着けて頂く任意団体として発足しましたが、現在はサードウェーブからは独立したNPO法人として活動しており、サードウェーブはNASEF日本の活動を応援しています。

――GAME Watchも参加させていただいたNASEFツアーですが、尾崎さんはどのような感想、手応えを持ちましたか?

尾崎氏: 私はNASEFではなく、日本の中でeスポーツを支援する一企業として参加させて頂きました。北米でのeスポーツに対する意識の高さを、身をもって感じました。実際に現地の学校に赴いてそこでの活動状況もみましたが、eスポーツを取り入れたカリキュラムの多さには驚きました。まだまだ日本にはそういったカリキュラムが公式に導入できてはいませんが、今後、もっとeスポーツが身近なものになれば、導入の障壁が下がるのではないでしょうか。

――サードウェーブもE5というeスポーツ専業の子会社を保有していますが、今後どのようにeスポーツに対してどのような活動、貢献をしていきたいですか?

尾崎氏: E5のような、eスポーツに特化した会社があれば、かねてより申し上げていたエコシステムの実現が可能になると考えています。このエコシステムというのは、いくらeスポーツが好きでも、誰もがプロになれる人ばかりではありません。ゲーム制作者、実況や解説者、運営サポート、様々な関連する仕事があり、eスポーツをきっかけとしてそれらの職業に就く人が多く出てくる。それがエコシステムです。eスポーツのプロだけでなく、eスポーツが好きで、得意な人たちが活躍できる場を作っていきたいですね。

――ウェルプレイド・ライゼストさんがeスポーツ企業として初の上場を果たしました。どのような感想をお持ちですか?

尾崎氏: eスポーツを通じた活動をしている企業が上場したということは、大変良いことだと考えています。今後はさらに、eスポーツ業界は盛り上がっていくことと思います。

――改めてeスポーツで褒章を受けた立場として、今後どのような活動をしていこうと考えていますか?

尾崎氏: eスポーツ業界の更なる発展のため、PCゲームやeスポーツはオフラインイベントをやっていきたいと思います。GALLERIAのユーザー、ファンの方々にもっと楽しんでもらえるようなイベント作りや、ストリーマー、eスポーツチームの支援などをしていきます

――eスポーツファン、eスポーツ関係者に向けてメッセージを

尾崎氏: 今回の紺綬褒章のきっかけとなった企業版ふるさと納税を始めとして、サードウェーブは日本全国でeスポーツを支える方々を応援しています。今後も様々な形でeスポーツ業界の更なる発展へ貢献できればと考えていますので、是非これからもサードウェーブの活動に注目してください。

――期待しています。ありがとうございました