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「全国高校eスポーツ選手権 ロケットリーグ部門」、初の全国1位は佐賀県立鹿島高校の「OLPiXと愉快な仲間たち」!
2019年3月23日 22:56
全国の高校生達が種目となる“ゲーム”で競い、全国一を決定する「全国高校eスポーツ選手権」その第1回目が3月23日、24日に東京幕張メッセで開催されている。1日目は「ロケットリーグ」の決勝戦が行なわれた。本稿ではその様子をレポートしたい。
毎日新聞主催、サードウェーブ共催で開催された本イベントは、幕張メッセ1ホールで行なわれた。巨大スクリーンに試合の模様が映し出され、最新PCでの選手席と、広い観客席、音響装置と非常に豪華で本格的なものだ。入り口にはスポンサー達のブースもあって、「全国高校eスポーツ選手権」を観戦する入場者を楽しませている。参加選手が口々に「こんなにスゴイ規模のイベントとは思わなかった」と言うように、プロ大会に負けない本格的な会場となっていた。
司会には予選からおなじみのゲーム大会キャスターのOooDa氏、アナリストにYuhi氏、試合の実況にkokken氏、解説にドレックス氏がそれぞれ担当した。さらにスペシャルサポーターとしてケイン コスギ氏が参加し、大会を盛り上げた。選手達がどのような戦いをしたかを伝えていきたい。
「全国高校eスポーツ選手権 ロケットリーグ部門」では、全国60チームの参加後攻が2018年12月23日、24日に開催されたオンライン予選でぶつかった。この大会の面白さは“高校”が出場枠となっているところ。
通常のオンラインゲームプレーヤーは個人であり、オンラインでの戦いの場合、地域、さらには国まで飛び越えてチームを作り、全世界のユーザーと戦っていく。ラグや言語の問題もあり、実際は国ごとで距離を超えた仲間達を見つけ戦っているという人達がほとんどであるが、今回の大会は高校単位での出場枠となっている。同じ高校でゲームの腕が優れた選手を集め、他校の選手と戦う事となる。高校によっては協力を得られたり、選手達が自発的にチームを組んだりと、その繋がりも様々だ。
「ロケットリーグ」という競技も面白い。ブースターを吹かし、派手にジャンプするオフロードバギーを使い、ボールを相手ゴールに押し込むというのが基本ルールだが、壁や天井があり、車はスピードを活かせばはるか上空まで壁を駆け上がることができるし、天井や壁に跳ね返るボールの軌道を読むことで非常に独特のボールコントロールが可能だ。
うまいプレーヤーならば、まるで風船を手で跳ね上げているような見事なボールさばきを見せることができるが、実力のある選手同士だとお互いが非常にうまくボールにぶつかるので、思った方向にボールを浮かすことも難しい。空中機動でのボールの跳ね上げ、フェイントやコンビネーション、さらにはわざと壁に蹴り込み跳ね返ったボールをそのままさらに車体で弾き角度を変えてシュートするなど様々なテクニックが活かせる。車の挙動管理や一定時間加速できるブースターの管理、そして位置取りなど奥深いゲーム性を持っている。今回の大会では1チーム3人の3対3での戦いが行なわれた。
オンライン予選を勝ち進んだのは、横浜清風高校(神奈川県):「Charlotte」、阿南高専(徳島県):「Kamase dogs」、県立鹿島高校(佐賀県):「OLPiXと愉快な仲間たち」、県立鶴崎工業高校(大分県):「雷切」の4チーム。まず準決勝で神奈川の「Charlotte」と佐賀の「OLPiXと愉快な仲間たち」。徳島の「Kamase dogs」と、大分の「雷切」がぶつかることとなった。
プロゲーマーを擁する神奈川の「Charlotte」対、佐賀の「OLPiXと愉快な仲間たち」
準決勝第1試合は神奈川の「Charlotte」対、佐賀の「OLPiXと愉快な仲間たち」。2ラウンド先取することで決勝進出となる。「Charlotte」はプロゲーマーであるmilla選手が参加しており、優勝候補とも言われているチームだ。先制点は「OLPiXと愉快な仲間たち」に許すが、milla選手が引っ張り2点を取り、第1ラウンドを取った。
しかしここから「OLPiXと愉快な仲間たち」が追い上げる。第2ラウンドは激しくボールが動くがゴールが決められないという展開が長く続いた。ここでボールがうまくはじければ、ここにもう1人選手が飛び込めれば、という場面が続き、じりじりと時間だけが過ぎていく。そんな中、「OLPiXと愉快な仲間たち」のRON-NEX選手がゴールを決めそのままタイムアップ。1対1で最終ラウンドとなった。
そして最終ラウンドは「OLPiXと愉快な仲間たち」に大きく傾いた。開始23秒でRON-NEX選手がゴール、すぐにmilla選手が点を取りかえすもRON-NEX選手、OLPiX選手が取りかえし3-1となり、さらにもう1点OLPiX選手がゴール。4-1で佐賀の「OLPiXと愉快な仲間たち」が決勝進出を決めた。
「Charlotte」のmilla選手は反省点として「声かけがうまくいってなかった」と語った。練習量の少なさや、連携のまずさがあり、おなじボールを2人で追いかけてしまうようなことがあったという。やはり大きな舞台で試合をすると言うことで緊張してしまったとのことだ。
強すぎる緊張が試合に影響、徳島の「Kamase dogs」と、大分の「雷切」
第2試合の徳島の「Kamase dogs」と、大分の「雷切」がぶつかった。「Kamase dogs」は、3人の選手名が「こんぼう」、「ひのきのぼう」、「どうのつるぎ」であり、その名前からケイン氏がお気に入りで予選の頃から応援しており、彼らが準決勝まで勝ち進んでいるということで、非常に注目していたチームである。
この試合では筆者には「雷切」のAroDra選手が強く印象に残った。とにかく空中での車体コントロールが見事なのだ。飛んでくるボールに見事に空中で捕らえ自分のシュートに繋げたり、味方にパスを出す。AroDra選手の空中制御に他の2人がうまく連携し、的確にゴールを決めラウンドを先取、さらに第2ラウンドも追いすがる「Kamase dogs」を押さえつけ決勝進出を果たした。
「Kamase dogs」は連携がうまくいっていない印象があった。こんぼう選手が前に切り込んでも、他の2人が守り気味でせっかくのチャンスが活かせなかったのだ。試合後話を聞いてみたが、会場の雰囲気に緊張しすぎてしまい全く動けなくなってしまったという。この緊張で力が全然出せなかったとのことだ。
優れた連携がはっきりと形になった決勝戦、優勝は「OLPiXと愉快な仲間たち」
決勝は佐賀の「OLPiXと愉快な仲間たち」と、大分の「雷切」、九州の2チームがぶつかることとなった。共に準決勝でかなりの実力を見せたチームであり、戦いがどうなるか、大きな期待感があった。
しかし、試合はかなり意外な展開となった。「雷切」の動きが鈍いのだ。パスが繋がらず、連携もうまくいかない。一方で、「OLPiXと愉快な仲間たち」はOLPiX選手とRON-NEX選手の連携は非常に見事で、「雷切」のメンバーをうまくかわしゴールを決めていく。
「雷切」のAroDra選手はその展開に焦ったか強引に前に行くが、そこからボールが繋がらず逆にカウンターをとられることが多かった。決勝は3ラウンド先取ルールだったが、ストレートに3ラウンド「OLPiXと愉快な仲間たち」が取り、見事優勝を果たした。
「OLPiXと愉快な仲間たち」は、OLPiX選手とRON-NEX選手は他のオンライン大会にも積極的に参加し練習していたという。特にOLPiX選手は「自分はロケットリーグだけ」というほどのこだわりようで、今回の大会では2人が校内で他にもゲームがうまい人を探してチームに加えたという。
一方の「雷切」は、色んなゲームを楽しくチームでやっていきたいというスタンスを強調していたのが印象的だった。他のバトルロイヤルやチーム戦FPSなど色んなタイトルをやっていきたいということ、今回の大会はとても楽しい大会という感想を話していたのが印象的だった。
筆者個人はとても楽しい大会だった。ゲームのうまいプレーヤーが学内で仲間を集め、全国大会に挑戦する。バックアップしてくれる学校もあるが、学内のネットワークセキュリティの問題もあり、やはり個人の環境によるところが大きいようだ。
学校の部活がそのまま全国に通用する強さを持つチームになるかというところも難しいと思う。楽しく部活動をしたい、というところが「全国1位になりたい」に繋がるのか、学校活動、学生の活動がそこまで突き詰めたものになるのかは、様々な意見があると思う。「みんなで楽しくゲームをやりたい」というのも高校生活において、とても楽しい答えの1つだ。
そんな中で、日本中の高校生プレーヤーが目標にできる「全国高校eスポーツ選手権」がスタートしたことをまずは祝いたい。出場したプレーヤーはオンラインに高校を越えた“仲間”達がいて、彼らも応援に来てくれたという。この大会が今後も開催され、各高校がさらに力を入れるにはこういった大会が定期的に開催されること、それが一番である。参加選手の奮闘だけでなく、今回の大会が開催されたことにまず拍手を送りたい。
RON-NEX選手とOLPiX選手は「プロプレーヤーになりたい」という想いも持っているとのことだ。今大会において、彼らの連携は素晴らしかった。そしてもちろん、他にも多くの優れたプレーヤーがいて、スタープレーヤーの資質を持っている人がいる。彼らがその実力を評価されるために、こういった大会はもっともっと開催されて欲しい。