【特別企画】

「ロケットリーグ」部門ハイライト! 全国高校eスポーツ選手権、N高校が史上初の3連覇

大型ルーキーを擁する「ねこなま」が圧倒的な強さで全試合ストレート勝利

【第5回全国高校eスポーツ選手権:「ロケットリーグ」部門決勝大会】

2月12日 開催

 全国の高校生たちがeスポーツで競い合い、日本一の高校を決める大会「全国高校eスポーツ選手権」。その三部門あるうちのひとつ、「ロケットリーグ」部門の決勝大会が2月12日に都内のeスポーツアリーナでオフライン開催された。本部門には全国から84校がエントリーしており、決勝大会には予選を勝ち抜けた上位4チームが進出している。

 決勝大会で戦うのは飛龍高等学校の「HEST:01」、福井工業大学付属福井高校の「サルの音楽隊」、そしてN高等学校の「ねこどう」と「ねこなま」の計4チームだ。飛竜高等学校は今大会が決勝初進出校、福井高校は前回大会準優勝校、N高校は前回・前々回大会の優勝校で、中でも注目はやはりeスポーツ強豪校のN高校だろうか。三連覇を達成することができれば、本大会全部門通して初の快挙となる。

 ステージから選手たちを見守るのはeスポーツキャスターのOooDa氏とアナリストのValtaN氏、実況解説はそれぞれはKokken氏とWave氏が担当した。試合は3対3のチーム戦、各試合BO3のシングルエリミネーショントーナメント形式で行われる。決勝を制し「ロケットリーグ」全国一位の称号を手にすることになるのはどの高校となるか。全3試合の模様をハイライトとともにお届けする。

 なお、埋め込み動画が環境によりうまく再生できない場合がある。その場合は見たい動画からYouTubeへ移動して視聴してほしい。

MC:OooDa氏
アナリスト:ValtaN氏

準決勝第1試合「HEST:01」対「ねこなま」

 初戦の対戦カードは静岡県の私立高校である飛龍高等学校のチーム「HEST:01」と、沖縄県にキャンパスを据える通信制高校であるN高等学校のチーム「ねこなま」だ。

 今大会が決勝初進出となる「HEST:01」は学校のeスポーツ部内で結成されたチームで、決勝大会唯一の女性プレイヤーHaru選手を含め、今大会に向けてメンバーたちが毎日放課後に集まって練習してきたという。対する「ねこなま」は公式大会RLCSのWinter OpenでチームDeToNatorの一員として2022−23シーズンのアジア大会優勝に輝いた大型ルーキーLunatic選手はじめ、N高校eスポーツ部で「ロケットリーグ」強化選手に選抜された実力者ぞろいだ。

【HEST:01】
手前から、Haru選手、Itochan選手、Ruby選手
【ねこなま】
手前から、Furlash選手、Lunatic選手、Motikun選手

 まず紹介したいのはGAME1より「ねこなま」が圧倒的なスピードで2点を連取し試合の流れを奪い取っていったシーンだ。ファーストゴールは「ねこなま」のFurlash選手によるバックボードからのシュートで、ゴールまでほとんど角度がない中を絶妙な車体コントロールで落とすように決めた。

 そして注目なのはその次のキックオフだ。通常キックオフではスピードフリップなどを駆使して先にボールに触れたチームが有利となるのだが、「ねこなま」は相手チームに先にボールに触れさせておきながら、相手のセカンドの選手の動きをLunatic選手が体当たりで止め、その隙にFurlash選手がボールを奪って自陣からロングシュートを決めてしまった。この間わずか3秒である。個人技の巧さとチームプレーどちらもあってこその動きといえよう。

【「ねこなま」試合開始直後の怒涛の2点連取】

 その後も「ねこなま」が相手の追随を許さない卓越したドリブル能力で次々と点を決めていったが、もちろん「HEST:01」もただ負けているばかりではなく、ところどころで反撃の糸口を見つけて点を決めていた。

 例えば以下のシーンでは、自陣で空中高くに上がった遊び球にRuby選手がいち早くアプローチし、華麗な球捌きでサイドを駆け上がり敵ゴール前にセンタリングを置くと、そこにItochan選手とHaru選手の両名が突撃して相手のディフェンス陣を勢いで押し切ってゴールを決めた。三人が一体となった攻撃で、自陣が空になってしまうため少々リスクのある攻めであるといえるが、一丸となってボールに向かって走るさまからは勝利への貪欲さを感じられた。

【「HEST:01」チーム一丸となってゴールを決める】

 しかし試合の流れとしては依然として「ねこなま」が優勢だった。各々の個人技が光るスーパーショットが量産される中、特に目を見張るプレイだったのがGAME2の第3得点だ。

 相手陣でフリーになったボールに対してLunatic選手が接近していくと、彼は奥にRuby選手がディフェンダーとして待ち構えているのを察知し、シュートをフェイクして相手にフリップを消費させた。そしてボールに添ってゆっくりと逆サイドに周っていくと、その背後から相手の虚を突くようにFurlash選手が全速力で突っ込んで鋭角なシュートを決める。相手からするといつLunatic選手にシュートを打たれるかわからないと警戒しているところにFurlash選手が突撃してくるのだからたまらない。小手先の技術だけでなくマインドゲームでも圧倒してくるとは、「ねこなま」恐るべしだ。GAME2では「HEST:01」は勢いに押されて1得点も決めることができなかった。

【フェイクを使った華麗なシュート】

 GAME1とGAME2通して、「ねこなま」はFurlash選手がメインのストライカーとして得点を決めていた印象だが、続くGAME3ではLunatic選手の個人技も光った。

 特に印象的だったのは試合開始1分が経とうというところ、Lunatic選手が拾ったボールを自陣の天井まで持っていくと、そこから地上に叩きつけるようにボールをバウンドさせ、そこから地上に降りるまでに再度ボールに体当たりして得点を決めた。地上に降りることなくひとりで二度ボールに接触するのは至難の業であり、空中で自在に動く車体から繰り出される鋭角なシュートに相手チームはなすすべもない。

【Lunatic選手のプロ級スーパープレイ】

 「ロケットリーグ」では本来フリップ行動は空中で一度しか行えないが、Lunatic選手ともなると、空中でボールに着地してもう一度フリップを可能にする「フリップリセット」も軽々と決めてくる。GAME3終盤では空中高くに上がったボールに優しいタッチでアプローチすると、ゴール前に押し出しながらフリップリセットを挟み、空中からのフリップで抉るようなシュートを決めた。相手チームもふたりがかりでディフェンスに臨むが、この鋭角なシュートにはついていけない。

【Lunatic選手のフリップリセット】

 「HEST:01」もなんとかペースを取り戻そうとし、敵車体を轢くデモリッションを駆使した戦術で相手のペースを乱そうと試みるも、やはり「ねこなま」の実力には届かずGAME3もN高校に軍配が上がった。

 準決勝第一試合は「ねこなま」がストレート勝利を決め、一足先に決勝戦へ駒を進めた。惜しくも敗れてしまった「HEST:01」のキャプテンItochan選手はコメントを求められると「自分たちのプレイができなかった」と悔しさを滲ませつつ、「大会を通してチームとして絆を深めることができた」と振り返った。

コメントを述べるItochan選手

準決勝第2試合「サルの音楽隊」対「ねこどう」

 次に戦ったのは福井工業付属福井高校のチーム「サルの音楽隊」と、またしてもN高等学校のチーム「ねこどう」だ。

 「サルの音楽隊」は学校内の仲が良いメンバーで自主的に結成されたチームであり、放課後にそれぞれの自宅からオンラインで集まるかたちで日々自分たちで練習を積んできた。主なメンバーは3年生なので今大会にかける想いは強い。対する「ねこどう」は前回までの大会の優勝経験があるArinko選手とSK選手を擁するチームで、ディフェンディングチャンピオンとして本大会に臨んでいる。

【サルの音楽隊】
手前からRukiki選手、Monkichi選手、Hobitt選手
【ねこどう】
手前からArinko選手、SK選手、Rarara選手

 実はこの対戦カードは昨年の決勝戦と同じカードで、その時は「サルの音楽隊」が惜しくも敗れてしまっている。3年生の多い「サルの音楽隊」としては最後の大会としてなんとしてもリベンジを達成し雪辱を果たしたい一戦だ。対する「ねこどう」にとってもまた、連覇を達成するためには負けられない戦いである。

 試合が始まると、「ねこどう」が自分たちの実力を見せつけるかのように猛攻をしかけ、一気に試合のペースを握った。特に彼らのチーム力がよく見て取れたのは2得点目。キャプテンのArinko選手がディフェンスを華麗にかわしながら空中にボールを浮かし、ゴールががら空きになったところにRarara選手が突撃してシュートを決めたシーンだ。こうしたプレイイングはチームの連携力あってのものだ。

【Arinko選手からRarara選手に繋いでのシュート】

 「ねこどう」の攻撃力の前に防御に徹することを強いられた「サルの音楽隊」だが、彼らのディフェンスもまた一級品で、流石前回大会準優勝チームといったところだった。以下のシーンではRarara選手が放ったシュートがボール半分ゴールに入るもそれをRukiki選手が間一髪でクリアリングするファインセーブを見せ、「ねこどう」はその後も次々とシュートを撃つが、Rarara選手がまたもや枠を捉えたシュートを放つと今度はHobitt選手が飛び出してこれをクリア。チーム一丸となって「ねこどう」の猛攻を防いで見せた。

【「サルの音楽隊」のディフェンスが光る】

 続くGAME2では今度は「サルの音楽隊」キャプテンのMonkichi選手がファインセーブを見せた。Monkichi選手はサイドから上がってきたSK選手を警戒してゴール横で待ち構えていたのだが、ボールが壁に跳ね返って中央へ行くと、そこにすかさずArinko選手が突っ込んでくる。しかしMonkichi選手はこの速い展開ににうまく反応し、バックボードを駆けのぼってゴール前に舞い戻ると、見事このシュートをクリアリングしてみせた。

【Monkichi選手ファインセーブ】

 しかしこれだけ手厚いディフェンスがあっても「ねこどう」は止まらない。GAME2後半ではArinko選手が自陣から壁と車体でボールを挟むピンチショットを使って自陣からボールを前に送り出し、壁からのフリップで相手チームを置き去りにしてカウンターシュートを決めた。彼らにかかれば難しい技も簡単に見せてしまうが、日頃N高校で鍛えられているだけのことはあるといったところか。

【Arinko選手ロングシュート】

 「サルの音楽隊」もなんとか「ねこどう」に喰らいついていったものの、やはり両チームの間には明確な実力差があったようだ。GAME3になるとますます勢いづいた「ねこどう」が次々とゴールを決めていく展開となり、「サルの音楽隊」には1点も決めさせないまま8−0で決着となり、準決勝第2試合はN高校「ねこどう」のストレート勝ちとなった。

 敗北した「サルの音楽隊」キャプテンのMonkichi氏はコメントを求められると、「高校生活の集大成だった。本大会を通して「ロケットリーグ」を精一杯楽しめたと思う」と悔しいながらも清々しい面持ちで自分たちのeスポーツ活動を振り返り、また彼らの実績によって母校に正式なeスポーツ部ができると嬉しいと、後輩たちへの想いも語った。

コメントを述べるMonkichi選手

決勝戦「ねこなま」対「ねこどう」

 「ねこなま」と「ねこどう」、両チームともに準決勝を圧倒的な実力差を見せつけて勝利し、決勝戦はN高校どうしの対決となった。この時点でN高校の本大会「ロケットリーグ」部門三連覇が確定したが、両チームは日頃紅白戦などで切磋琢磨してきた関係にあり、お互いが最大のライバルといってもよい。同門対決とはいえ、両チームともに気合は十分だ。

 試合がはじまると、両チームともお互いの手の内は知っているといった様子で相手の動きをを封じていき、時には車体どうしが正面で睨み合う膠着状態が発生するなど、先ほどまでの試合とは一段階レベルが上がったプレイが多く見られた。特にGAME1はお互いが交互に得点を決め合う形で進んでいき、決勝大会初の延長戦までもつれこんだ。両者がしきりに相手の隙を狙う中、Lunatic選手が壁から中央に向けて華麗なパスを放ち、Furlash選手がすかさずこれに反応してシュートを決め、GAME1は「ねこなま」に軍配が上がった。

【延長戦で炸裂した「ねこなま」の連携シュート】

 続く第2ゲームも拮抗した展開が続き、両チーム1点を決めたあとは中々得点が決まらず、試合時間残り40秒の時点でも点差は1−1だった。しかしその状態を打ち破るように点を決めたのはやはり「ねこなま」で、Furlash選手が相手ディフェンスをかわしながら天井まで駆け上がるとそこから垂直にボールを落とし、Lunatic選手がそのボールをしっかりと捉え、ゴールで待ち構えていたArinko選手を避けるようにしてシュートを決めた。こうしてGAME2も「ねこなま」の勝利となった。

【Furlash選手の垂直パスからのLunatic選手のシュート】

 もちろん「ねこどう」も負けてはいない。GAME3に入るとキャプテンのArinko選手が3年生の意地を見せるかのように卓越した個人技で得点を決めた。壁際からボールをドリブルしてゴール前にたどり着くと、車体でボールを追い越してディフェンスで待ち構えていた相手の車体に空中で体当たりをし、自ら相手のディフェンスを妨害しながら得点を決めるという芸当を見せた。並大抵のプレイヤーではできない、繊細な空中制御が求められる高等テクニックだ。

【Arinko選手の個人技が光るエアリアルシュート】

 Arinko選手のスーパープレイを受けて、今度は「ねこなま」が同じようなプレイを返して見せた。Lunatic選手が右サイドの壁からバックボードへとボールを持っていくと、そのままゴール付近で待ち構えていた相手のディフェンスを空中でバンプし、ゴールががら空きになった状態のところをFurlash選手がシュートして得点となった。このレベルの戦いになってくると空中も安全圏とはならず、両チームともにアグレッシブな攻めで相手のディフェンスをことごとく崩していく。

【Lunatic選手が相手SK選手を空中でバンプしてゴールとなる】

 「ねこなま」はこの得点が機となって調子が出てきたのか、ここから立て続けに得点を重ねて「ねこどう」との点差を広げていく。

 中でも印象的だったのはLunatic選手の不発に終わったシュートをIKA選手が自陣から飛んできてフォローし、バックボードにバウンドさせてダブルタッチを行いゴール前ちょうどにボールを落とすと、これをLunatic選手が落ち着いてゴール内に押し込み得点としたシーンだ。一度シュートが外れても攻めを途切れさせない意識や、メンバーどうしの連携力の高さは、やはり日頃の練習の賜物といっていいだろう。

【IKA選手ダブルタッチからLunatic選手のシュートが決まる】

 ここで開いた点差が決定的となり、決勝戦は「ねこなま」のストレート勝ちで幕を下ろした。

 試合内容としては実力伯仲の戦いだったものの、「ねこなま」の方が個々の技術や連携において一歩上回っていたといったところだろうか。これにより、第5回全国高校eスポーツ選手権「ロケットリーグ」部門の優勝はN高等学校のチーム「ねこなま」となった。優勝チームには特製トロフィーに加え、副賞としてGALLERIAのゲーミングノートPC「XL7C-R36H」がメンバーそれぞれに贈呈された。

トロフィーを掲げる「ねこなま」

 惜しくも負けてしまった「ねこどう」のキャプテンArinko選手はコメントを求められると「本気で勝てると思っていたので本当に悔しい」と語りつつ、「本大会に出場したことを通じて人間として成長できた」と、自らのeスポーツ活動を振り返った。

コメントを述べるArinko選手

 優勝した「ねこなま」のキャプテンLunatic選手は感想を求められると「本当に嬉しいです」と語った。聞けばLunatic選手は本大会に出場することも視野に入れてN高等学校への進学を決めていたそうで、本大会の優勝は中学時代からの念願だったそうだ。

 加えて、チームの勝因を尋ねられるとLunatic選手は「N高のメンバーは皆レベルが高いので、上手いプレイヤーたちと日々練習することで上達することができた」と語り、仲間を称えた。彼のような1年生がeスポーツシーンに現れることはとても喜ばしいことであり、今後も高校生eスポーツを引っ張っていってほしいところだ。

勝利のピースサインを掲げるLunatic選手

 以上をもって「全国高校eスポーツ選手権」は幕引きとなった。今大会は「ロケットリーグ」部門においてはN高校が3連覇の偉業を達成し、他校を寄せ付けないほどの強さを見せつけた大会だったといえる。今後N高校はさらなる連覇記録の更新のために、その他の高校は打倒N高校のために、来年の大会に向けてさらなる練習を積んでほしいところだ。そうなればきっと、来年は今年よりもさらにレベルの高い戦いが見られることだろう。

【【ロケットリーグ】全国高校eスポーツ選手権決勝大会】