【特別企画】

「ファイナルファンタジー」の原点、初代「FF」が本日で発売35周年! 光の戦士とガーランドが紡ぐ物語に惹かれてやまない

【ファイナルファンタジー】

1987年12月18日 発売

 スクウェア・エニックスの「FINAL FANTASY(ファイナルファンタジー)」(以下、「FF」)が、本日で発売35周年を迎えた。本作はファミコン用RPGとして1987年12月18日に発売された。後に様々なハードへと移植され、2021年7月にはピクセルリマスター版が発売されている。

 本稿では、そんな「FF」について、思い出と共に振り返りたい。

【【FFピクセルリマスター】『ファイナルファンタジー』プロモーショントレーラー】

ジョブシステムの原点

 「FF」というと、数々のタイトルで”ジョブシステム”を搭載しているものが多いが、その原点となったのが初代「FF」である。

 ジョブの数こそ、戦士、シーフ、モンク、赤魔術士、白魔術士、黒魔術士と6つしかないものの(ゲーム中盤でクラスチェンジができるようになるので、実際にはさらに6つとも言える)、バランスは非常に取れていた。ただしジョブチェンジはまだなく、最初に選んだジョブから上位職にクラスチェンジする以外はなかった。そのため、ネタで白魔術士4名とかの編成にしてしまうとクリアが非常に難しくなってしまうという欠点もあったが、こういった極端なことをしない限りはある程度編成の自由はあり、その自由の中でクリアが充分可能なバランスとなっていたのだ。

 バランスというと「戦士にモンク、白と黒……」というような選び方になりそうだが、これは無難なパーティー例。実際は、戦士ふたりに白魔術師、あとひとりは他のジョブという、初回プレイ時はちょっと思いつかないようなバランスが最強だった。

 ただ、126通りにもおよぶジョブの組み合わせが可能な中、「これが最強だから」と、たったひとつのパーティーで縛ってしまうのはもったいなく、比較的難易度の高い部類に分類される「FF」だからこそ、様々なチャレンジを積み重ねて遊ぶプレーヤーも多く見られた。

ガーランドという悪役

 本作の発売当時、まだストーリーに力を入れているというRPGは少なかった。そんな中で、「FF」はまずドラマ性に驚いたのを、35年経った今でもはっきりと覚えている。まるで映画のようなオープニングとBGM。ストーリーこそ、ガーランドという悪役がセーラ姫をさらっていくという点までは普通なのだが、そこから終盤に向けてガーランドが黒水晶の力で2000年前に移動し、カオスとして蘇って光の戦士を殺し、またガーランドとして生まれ変わるという無限ループを繰り返していた、ということがわかった時は、当時まだ小学生だった筆者でも「このゲーム、なんだかすごい!」となったものだ。なお感想が稚拙なのは、小学生の頃だったので仕方がない。

 今でこそ無限転生ものも珍しくないにせよ、当時の小学生にはとても複雑な物語に思え、大人のゲームだと思った記憶がある。実際、ガーランドとカオスの関係性は大人になった今であればガーランドが先でカオスが後だったこともわかるのだが、当時はどちらが先かも理解できないまま「すごい」という感想だけを持っていた。

 光の戦士とガーランドを取り巻く世界観の中でも印象的だったのは、ガーランドが携えていたリュートだ。恥ずかしながらリュートという楽器を「FF」プレイ時に初めて知ったのだが、だからこそ「リュートといえば『FF』」という構図が出来上がったのかもしれない。35年経っても、未だに「リュート」と聞けば、ガーランドがまず浮かんでしまうのだ。

 なお、この項については後述のプレイステーション 5/プレイステーション 4/Xbox Series X|S/Xbox One/PC用アクションRPG「STRANGER OF PARADISE FINAL FANTASY ORIGIN」(以下、「SOPFFO」でもう少し語りたい。

光の戦士は自分たち自身

 「FF」の中で活躍する4名の光の戦士。最後の最後で”光の戦士はプレーヤー自身”と語られ、「元の世界(現実と思われる)に帰った」という記述にも胸が熱くなった。

 この当時まだ大した知能もなかった身だったが故、プレーヤーの名前に使っていたのは家族の名前。幸い(?)、我が家は4人家族だったので、筆者、妹、父、母の名前でちょうど4名だった。ということもあり、家族4人でカオスを退け、平和を取り戻したんだという想いが広がったものだ。逆に言うと今なら恥ずかしくてとてもじゃないが家族の名前などいれないため、これは小学生だった自分だからこその思い出だろう。

 ゲーム中では一切何も語らず、突如コーネリアの世界に現われた4人、という謎が、エンディングで全て解ける。つまり彼らが語らないのは、自分自身が「FF」という物語を進めながらその都度感じていた気持ちこそが彼らの言葉そのものであり、自分自身が「つらいなぁ」と思った時はつらく、「楽しいなぁ」と思った時は楽しく、「悲しいなぁ」と思った時は悲しい……こういった感情を当時のファミコンでは表現しきれなかったからと言えばそれまでなのだが、そんな当たり前の感情表現が、全部「自分自身」とわかった時の”体験”は、まさにゲームでしか味わえないものだった。再び稚拙な表現だが、「ゲームってすごい」と小学生ながらに思ったものだ。

 これは実際に今も感じていることだが、映画やドラマ、アニメでは体験しきれない「自分が、他の自分になる」という物語に入り込む体験を、筆者は「FF」で初めて感じたのだ。あの時の体験があって、ますますゲームというものが好きになって、そして今の自分がいるのだと思うと、幼少の頃の体験とは馬鹿にできないものだ。

「STRANGER OF PARADISE FINAL FANTASY ORIGIN」で語られるガーランドの物語

 さて、前述のガーランドについてだが、2022年3月に発売された「SOPFFO」ではガーランドがカオスに至るまでという、「FF」の前日譚が語られている。シナリオは、泣きのシナリオを描かせたら随一の野島一成氏である。初代「FF」に少なからず思い入れのある人ほど、本作はぜひ遊んでみてほしい。”原点の「FF」”に相応しいジョブシステム、かつて光の戦士と呼ばれた彼らがどのような運命をたどったのか、リュートにまつわる話はもちろんのこと、セーラ姫とガーランドの間に育まれた愛など、様々な「FF」でのエピソードが描かれており、涙なしにはプレイできない名作となっている。

「FF」35周年という節目の年に

 本日は、「FF」35周年という節目の日になる。今更なのだが、筆者は全ての「FF」をリアルタイムに遊んできた世代だ。初代「FF」こそ小学生であったものの、やがては中学生、高校生、大学生、社会人へと年を重ねてきた。その間に結婚もして、子供も産んだ。大病も経験した。そんな自分の人生の中に、いつも「FF」があった。

 全ての「FF」が描くゲーム性、ドラマ性、グラフィック、音楽などに強く惹かれて、どの「FF」も何周もプレイした。「『FFVII』? まぁあれは誰もが認めるいい作品だよね」なんてちょっと上から目線で言いつつ、オリジナル版、インターナショナル版、諸々含めて30周以上プレイした。「誰がどこから見てもただの『FFVII』好きだろ」、と言われると「いやいや、私の最愛の『FF』はVIIじゃないから」なんて答えているが、実際にハードをプレイステーションに移して最初のチャレンジとなった「FFVII」は別格の別格で、もちろん今も「FFVIIリバース」の発売を心から楽しみにしている。

 「FFX」が好きすぎて、「新作歌舞伎 ファイナルファンタジーX」のチケットも取った。MMOタイトルだって「FFXI」では廃人の一歩手前というより完全に廃人だったし、「FFXIV」もサービス開始日から現在までのんびりこつこつとプレイを続けている。ここには挙げていない「FF」たちも、全部、全部、大好きだ。というより、どの作品も良いところ悪かったところも含めて大好きなので、優劣とかはあまりつけたくない(もちろん個人的に特に筆者の心に刺さった「FF」というのはあるのだが、それはここでは言わないでおくのが華というものだろう)。

 こんなにも筆者を惹きつけてやまない「FF」というタイトルの魅力は、何なのだろう。プロデューサーやディレクター、コンポーザー、開発スタッフがどれだけ変わろうと、「FF」というタイトルに共通していえるのは”チャレンジ”だったと思う。ビデオゲームというジャンルの中において、新しい演出。新しいシステム。新しい音。どこかに必ず最低ひとつ、実際にはもっといくつものチャレンジが渦巻く作品で、その開発者の熱を感じられる作品作りに、どうしようもなく惹かれて仕方なかったのかもしれない。すなわち筆者——”私”は、「FF」というタイトルに生きる気力をもらい、そして恋を重ねてきた人間だとも言える(割と気持ち悪いオタクだと思うが、そこは流してほしい)。

 35年「FF」に恋をしてきた筆者にとって、35周年というこのお祝いの日にこうして記事を書かせてもらえるきっかけをいただけて、非常に嬉しい。最後に1通の重いラブレターを綴ってしまったのだが、こんな機会もなかなかないだけに、広い心で許してもらえれば幸いだ。

 前述の「SOPFFO」も「FF」35周年を記念したタイトルの1本となっているが、来年(2023年)夏にはいよいよシリーズ最新作「FFXVI」の発売も予定されている。「FFXV」以来、約7年ぶりの予定となる「FF」の最新作「FFXVI」。召喚獣同士が争う召喚獣大戦という、非常に気になるキーワードが登場しているこちらも、ぜひ発売を楽しみにしたい。