【特別企画】
「逆転裁判」が今日で21周年! 個性的なキャラクターにユーモア溢れる言葉選びが魅力の法廷バトルアドベンチャー
2022年10月12日 00:00
- 【逆転裁判】
- 2001年10月12日 発売
カプコンの法廷バトルアドベンチャーゲーム「逆転裁判」が、本日で発売21周年を迎えた。本作はゲームボーイアドバンス用のアドベンチャーゲームとして2001年10月12日に発売され、ゲームクリエイター・巧舟氏が企画、シナリオ、ディレクターとして制作に携わっている。
「逆転裁判」は、主に会話で進みながら裁判で勝つための証拠品を集める「探偵パート」と、探偵パートで得た証拠品を使って依頼人の弁護を行なう「法廷パート」に分かれており、特に法廷パートで、いかにして証人の”矛盾”を暴くかが本作の醍醐味となっている。
この探偵パートと法廷パートの出来の良さはもちろんのこと、本作の一番の魅力は個性的すぎるキャラクターたちや、非常にテンポ良く、ユーモアのあふれるシナリオにあるといっても過言ではない。
本稿では、そのキャラクターたちなどに焦点を当てながら「逆転裁判」を振り返りたい。また、記事の主旨上 ネタバレには一切配慮していない のでご注意願いたい。
新米弁護士・成歩堂龍一とその周囲を取り巻く人たち
「逆転裁判」の主人公は、新米弁護士の成歩堂龍一。青いスーツとギザギザヘアが特徴で、得意なことは根拠のないハッタリ。だが、依頼人の無実を信じる気持ちは非常に強い。
そんな成歩堂を導くのが、綾里姉妹。姉の千尋は成歩堂の先輩として、妹の真宵は成歩堂の助手として彼の助けになる。
美人たちに囲まれてキャッキャウフフ……と思いきや、成歩堂は人との絆を築くことに長けている割に恋愛には一切興味がない様子で、どんな美人にも全く動じない。そんな彼の過去が明かされるのは「逆転裁判3」でのこととなるのだが……それについての話はまた別の機会にさせてもらおう。
成歩堂の前に立ちふさがるのは、刑事や検事たち。ミスをするたびに給与査定で給料を減らされていく糸鋸刑事を始め、ベテラン検事でありつつ少々弱気なところが見られる亜内検事や、「検事局始まって以来の天才」と呼ばれ、20歳で検事になってから一度たりとも負けたことがないという御剣検事、そして成歩堂の前に最大の敵として現れるのが40年間無敗という御剣の師匠でもある狩魔検事である。
そしてもうひとり欠かせないのが、成歩堂の小学校からの親友で、第1話で彼女を殺害した罪で捕まってしまう矢張だ。
成歩堂と御剣、矢張は小学校からのクラスメートで、しかも御剣はそもそもは弁護士だった父親に憧れて弁護士を目指していたことがわかる。そんな御剣が、何故手段も選ばず被告人をひたすら有罪にするような検事になってしまったのか、それがわかるのが第4話「逆転、そしてサヨナラ」だった。
御剣以外に犯行は不可能とすら思える殺人事件を前に、成歩堂は御剣の無罪を信じて弁護を振るい狩魔検事と戦うのだが、ストーリーのボリュームといい、犯行に使われたトリックといい、これまでの全てを繋ぐ物語の伏線の回収といい、この第4話「逆転、そしてサヨナラ」の内容は実に素晴らしかった。
特にあと3日で時効を迎えてしまうという15年前の「DL6号事件」はその名前だけは第2話から登場しており、綾里姉妹にも深く関わる事件となっていたのだが、今回の殺人事件だけに限らず「DL6号事件」の解決まで含めたストーリーは非常に重厚で見せどころ満載な内容となっている。
「逆転裁判」の魅力は証人や犯人にアリ!
「逆転裁判」の最大の魅力は、シリアスなところとコミカルなところの緩急にある。それらを上手く結びつけるのが、証人として登場するキャラクターたちや、犯人たちだ。
ここで外せないのは、やはり「トノサマン」だろう。ネオ・オオエドシティを守るため、アクダイカーンと戦う正義のヒーロー「トノサマン」。真宵を始め、「トノサマン」の熱狂的なファンは非常に多いが、そんな「トノサマン」の撮影現場が血で塗れることとなるのが第3話「逆転のトノサマン」だ。
「逆転裁判」シリーズは音楽も非常に評価したい作品のひとつだが、「トノサマン」にはBGMとしても「大江戸戦士トノサマン」という専用曲があり、和太鼓っぽい音が印象深く特撮ヒーローものらしく非常にノリのいいメロディが特徴。発売から20年以上が経った今でも「逆転裁判」シリーズのコンサートで演奏され、観客を熱狂させるほど高い人気を誇る。後付けではあるが、巧舟氏によって歌詞もつけられ、コンサートではボーカルバージョン入りが演奏されることも多い。「逆転裁判2」以降では「着信メロディ/成歩堂龍一」として携帯電話の着メロ風アレンジなども登場しており、この着メロは御剣も愛用しているほどだ。
音楽の話がしたい
前述の通り、「逆転裁判」のBGMはいずれも良作だ。そのベースを築いたのが、作曲家の杉森雅和氏である。当時のGBA音源ながらも状況や裁判を盛り上げるのにひと役どころか二役三役買っていると言ってもいいだろう。
シリーズを重ねた今でも「法廷組曲」などと称して演奏されることが多い「尋問」や「成歩堂龍一 −異議あり! 2001」などを始め、特にファンの人気が高いのは「追求 −追いつめられて」。裁判パートでも一番盛り上がるクライマックスシーンでかかることが多く、裁判の緊張感と成歩堂の持つ熱を表している曲で、「逆転裁判」シリーズの中でも屈指の名曲だろう。
法廷の曲以外も「綾里真宵 −逆転姉妹のテーマ 2001」や、「糸鋸圭介 −イトノコ刑事ッス」、「おめでたい人々」など、探偵パートのBGMも粒ぞろい。アガる曲はもちろんのこと、哀愁漂うエレジーまで、巧舟氏のシリアスさとコメディが混在するテキストに非常にマッチした楽曲が多く、BGMあってこその「逆転裁判」なのだとしみじみ感じる。事実、杉森氏が作り上げた世界観は、後の「逆転裁判」シリーズにも非常に色濃く引き継がれている。
以上、駆け足での振り返りとなったが、最後にひとつだけ筆者の思い出話を語りたい。実はこの「逆転裁判」発売時、筆者は身重の体だった。そして、切迫早産(早産しかかっている状態)で絶対安静の身で病院に長期入院中だったのだ。もしも早産してしまったらどうしようという不安でいっぱいで、毎日病院のベッドの上で暮らす生活が辛かったのだが、そんな不安を一時でも忘れさせてくれたのが「逆転裁判」だった。GBAという病院のベッドに持ち込めるゲーム機で一日中夢中になって何回も繰り返し遊んだことは、21年経った今でも忘れられない出来事だ。
ちなみにその時早産しかかった子供は無事に予定日近くに産まれ、今では「やっぱり逆転裁判は面白いよね〜」と言いながら、DSやswitchなどに移植された「逆転裁判123」などのシリーズを繰り返しプレイしている。もちろんこの子供は、もうすぐ21歳になる。
我が家は全員「逆転裁判」が大好きだ。後のシリーズに比べれば粗削りな部分もあるものの、システム的にも一番シンプルだったこの「逆転裁判」が一番好きだ。そんな作品について、こうして今改めて言葉にすることが出来て良かったと心から思う。
また何かの折、お祝いをできるチャンスがあれば嬉しい。
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