インタビュー
「鉄拳8」開発者合同インタビュー。格ゲーの面白さを初心者に! 上達への道標をゲーム内に導入
2023年12月12日 23:00
- 【鉄拳8】
- 2024年1月26日 発売予定
- 価格:9,680円~
バンダイナムコエンターテインメントは、プレイステーション 5/Xbox Series X|S/Steam用3D対戦格闘ゲーム「鉄拳8」におけるシングルモードのメディア向け体験会を実施した。本稿では体験会の後に行なわれた、メディア合同インタビューについての模様をお届けしたい。
質問内容は主にシングルモードの話が中心となっているが、開発の舞台裏のエピソードや開発陣の格闘ゲームに対する考え方、「鉄拳8」にかける思いも垣間見える内容となった。インタビューに応じたのは「鉄拳8」ゲームディレクターの池田幸平氏と「鉄拳」プロジェクト マーケティングプロデューサーの安田イースポーツ氏だ。
スペシャルスタイルは初心者向けの簡易機能。上達への道標をゲーム内に用意
まずは前作「鉄拳7」の頃から用意されていたコーチング機能の強化について、どのような思いで実装したのかについての質問があった。これに池田氏は「『鉄拳7』の頃からアドバイス機能自体は実装されていたが、当時はアドバイスをチェックしたあと、リプレイを終えてトレーニングモードに移動してコマンド操作を試す必要があった。そのひと手間が面倒だったので、リプレイ中にその場でちゃんと練習できる機能を追加する事で、攻略映像を見ながらその場で練習しているような感覚をプレーヤーに与えたかった」と説明した。
ここで池田氏は自身が以前、ゲーム雑誌の編集部に所属しており、攻略DVD制作に携わっていた経歴を披露。当時の経験が今回のアドバイス機能の改良に繋がったとしている。
また、スペシャルスタイルでプレイしていてもアドバイスされるコマンドが全てアーケードスタイルのみで、スペシャルスタイルでのコマンドがアドバイスされない点について訊ねると、スペシャルスタイル操作で発生する技はかなり限られるため、今回のアドバイスはアーケードスタイルのみという仕様であることがわかった。
もちろん、要望があれば対応する事は可能だが、コーチング機能自体が、ランクマッチなどで他のプレーヤーとの駆け引きを楽しんでいるプレーヤーが、さらに上を目指すために使う物と想定しているため、要望は少ないだろうと考えているとのこと。
ここで安田氏は改めて「鉄拳8」のスペシャルスタイルについて言及。スペシャルスタイルは操作方法の1つではなく、最初のうちは何をどう操作していいか分からない初心者向けに用意した簡易操作の1つだという。そもそも「鉄拳8」にはボタンを連続で押すような動きはあっても、特別なコマンド操作が存在しないため、スペシャルスタイルからアーケードスタイルの操作への移行はスムーズに行なえるとしている。
「鉄拳8」のスペシャルスタイルは試合中でも簡単に操作をアーケードスタイルに切り替えられる。アーケードスタイルで遊ぶようになってからでも、空中コンボなどタイミングが難しい技については、スペシャルスタイルに切り替えて簡単に出せるような利用方法を想定しているとのことだ。まだアーケードスタイルに慣れていなくても、困ったときにスペシャルスタイルに切り替えて戦うといった、幅広く使えるお助け機能としての位置付けを想定しているとした。
「鉄拳8」では「アーケードクエスト」やスペシャルスタイルなど、初心者でも上達しやすいような導線が数多く用意されており、「鉄拳」シリーズ未経験の方も始めやすくなっている。こうした初心者向け機能を充実する事になった経緯についての質問が出た。
これについては、世間では格闘ゲーム自体が難しいものという印象が強くなってきた事への対応だという。そのため、「鉄拳」シリーズの面白さの根幹でもある、打撃がヒットした際の爽快感や、空中コンボの気持ちよさを手軽に体験してもらうために、スペシャルスタイルの導入を決めたそうだ。
もちろんこれだけでは上達は難しい。格闘ゲームの本質として、対人の駆け引きや、仲間とのコミュニケーションも面白いポイントなので、それらを少しでも体験できるようにと考え出されたのが「アーケードクエスト」だ。これまで「鉄拳」シリーズに触れた事のない初心者が段階を追って格闘ゲームの楽しさを味わえる仕組みとなっている。
こうして格闘ゲーム自体の面白さが見えてくると、今度は自身のプレイを上達させたくなるはず。そこで役に立つのがAIゴーストを使った自身との対戦や、リプレイ機能に備えたアドバイス機能としており、段階を追ってプレーヤーを成長させていきたい意図を示した。
また安田氏は、前作「鉄拳7」は世界累計で1,100万本売り上げている点についても触れ、現在の「鉄拳7」は正直なところ、ユーザーに対してあまり親切ではなかったが、それでも世界ではこれだけの数を手に取ってもらえたなら、もっと初心者に寄せた仕組みを加えたらさらに購入してもらえるのではないかと考えたとしており、マーケティングらしい視点を語った。
「スーパーゴーストバトル」のAIの学習において、まだキャラクターに慣れておらず下手だった頃の学習情報はその後の学習情報によってどう変化するのか、という質問があった。これには、「学習情報を保存できる容量には限界があるため、過去に学習した情報であっても、その後の経過であまり使わなくなったと判断されれば、そうした情報は忘れて新しい学習情報が反映されるように変化していく」のだとした。プレーヤーの成長に合わせてAIも成長していくため、自身とAIで切磋琢磨して、お互いに成長し合うようなプレイも行なえるとした。
また、AIはプレーヤーの意思や意図までは学習できないため、意図せず出てしまった技や行動についてもしっかり学習してしまう。そのため、直したいがなかなか直らないような手癖や、覚えはなくてもうっかり出してしまった行動などがあっても、AIは客観的に全て学習する。AIの開発においては、プレーヤーの動きの特徴を素早く再現することを最も大事にしているとしており、例えばスペシャルスタイルとアーケードモードの操作切り替えを頻繁に行なうような手癖がある場合や、相手から距離を取って煽るようなアクションを行なう頻度が高ければAIもそれらを学習する、いわばプレーヤー自身の子供のような物だと評した。
「スーパーゴーストバトル」の使い道については今の段階でも多岐に渡るという。例えばオンラインの対人戦が苦手なプレーヤーであっても、AIのデータをダウンロードする事で、プロプレーヤーなど、強豪との対戦がオフラインで簡単に楽しめるほか、あまり他のプレーヤーが使っていないキャラクターと対戦したいような場合であっても、数少ない使用プレーヤーのゴーストを使えば対戦が行なえるので、キャラクター対策も行ないやすいなど、新たに追加した「スーパーゴーストバトル」の機能に自信を見せた。
「鉄拳」30周年イベントについても構想中! ゲーム以外の分野とのコラボに期待
また、「鉄拳」30周年に際してのイベントなどの構想について聞かれると、具体的な内容については明言を避けつつも、ゲーム以外での鉄拳IPの活用について検討しているというヒントについて語った。例えば競技シーンでは「鉄拳」シリーズの大会を定期的に行なうなど、同社でも力を入れているが、他の分野、例えば音楽やイラストなど、これまで同社であまりきっちりと押さえていなかったところにも注力していきたい、と語った。
「鉄拳8」のシングルモードについて話を聞かれると、「ストーリーモード」だけでも前作「鉄拳7」の1.5倍くらいのボリュームになっているという。これだけでもかなりの時間を楽しむことができる上に、キャラクター毎に用意された「CHARACTER EPISODES」、「アーケードクエスト」など、1度買ったらオンライン対戦をしなくてもシングルモードだけで十分に遊べるという点を改めて強調した。また、「アーケードクエスト」をプレイするほど、ゲーム内で使えるファイトマネーが貯められ、キャラクターカスタマイズも捗るので、十分楽しめる。
シングルモードは格闘ゲームにあまり興味がなくても、アクションゲームが好きで美麗なグラフィックスを体感したい人や、音楽が気にいってくれる人などでも楽しめるように作られているとしており、これまで名前だけは聞いた事があるが、触った事はないという人を「鉄拳」好きにする自信のあるタイトルに仕上がっているとして、「鉄拳8」の完成度の自信をのぞかせた。
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