レビュー
「鉄拳8」レビュー
今作は攻撃が最大の防御!? 「鉄拳」史上最もアツい殴り合いが楽しめるゲームバランス
2024年1月23日 23:00
- 【鉄拳8】
- ジャンル:3D対戦格闘ゲーム
- 発売元:バンダイナムコエンターテインメント
- 開発元:バンダイナムコエンターテインメント
- 発売日:1月26日
- 価格:
- 通常版 9,680円
- Deluxe Edition 13,970円
- Ultimate Edition 14,960円
- 特装版 26,180円
- フィギュア付通常版 31,680円
- 超特装版 53,680円
「鉄拳」シリーズは、過去に群雄割拠だった3D対戦格闘ゲームの中から生き残った3D格闘ゲームの王者だ。そして3D格闘ゲームの王者たる理由は豪快な対戦が楽しめることだろう。攻撃を叩き込んだときの気持ちいいエフェクトや、派手な効果音と共に大ダメージを与えた時の壮快感は唯一無二だ。
一瞬で相手が吹き飛ぶ豪快さが「鉄拳」の魅力である。「鉄拳8」の新しいバトルシステムは、さらに攻撃的で、過激な方向に進化していた。
今回は製品版のプレイステーション 5版「鉄拳8」を用いて、最新の対戦を体感してきたのでその様子をお伝えしたい。
「鉄拳」の操作感はそのまま。ただし今まで難しかった入力に見直しが!
まずはトレーニングモードで本作が過去作品と比べて操作性がどうなっているか確かめることにした。というのも、SNSや、交流のある格闘ゲームプレイヤーから「クローズドβテストに参加したが、『鉄拳7』からバックステップの移動距離が変化したような気がする」という意見を見る機会が多かったためだ。
「鉄拳」は、シビアな距離調整が要求されるゲームとなっており、2D格闘ゲームで言うところの「地上戦」に近い立ち回りが重要だ。勝率を上げるには、相手の攻撃を空振らせ、そのスキにこちらの攻撃を叩き込む「スカ確」、他の格闘ゲームでは差し返しと呼ばれるスキルが求められる。そのため、素早く相手の攻撃を回避するためにバックステップの重要性は非常に高い。
早速、バックステップを連続して行ってみた。感覚的な話にはなるが、過去作品より少し機敏に下がれるように変化したように感じた。だが、これでは攻撃を避けるには厳しい。なのでここからは「鉄拳」特有のテクニックを試すことにした。
バックステップの終わり際の硬直を横移動にてキャンセルし、再度バックステップを行い横移動を行い……を繰り返す「野ステ」や、横移動ではなくしゃがみにて硬直をキャンセルする「山ステ」を行ってみた。過去作品でも最重要テクニックに挙げられるこれらは健在だった。バックステップより素早く後退できるので、今作でも重要なテクニックとなるだろう。
そして大きく変化したと感じたのが、スラッシュキックと呼ばれる技の入力難易度である。スラッシュキックはキャラクターが一定距離を走り込んだ時にのみ出せる蹴り技で、突進力があり奇襲に向いていて、更にガードされても攻めを継続できる優秀な技である。
スラッシュキックを繰り出すには、基本的には前、前と方向キーを素早く操作して一定距離を走ってからLKボタンを押せばいい。
しかし、至近距離からスラッシュキックを繰り出す少し特殊な入力方法も存在する。それは一般的に「前前前+LKボタン」、または「前前(少し間をおいて)前+LKボタン」と入力方法だ。筆者は後者の入力を用いている。至近距離でスラッシュキックを繰り出すのはかなり難しく、できるだけでプレイヤーのステータスとなるようなスキルとなっていた。
至近距離でのスラッシュキックの入力は筆者は前作「鉄拳7」では殆ど行えなかったのだが、今作では容易に繰り出すことができた。今作のキーワードに「アグレッシブ」があるのだが、コマンド入力の緩和により皆が積極的に接近戦を行えるようになっている。
余談だが、キャラクターによってはスラッシュキックが存在しない。その時は今作から追加されたスペシャルスタイルで、方向キーを前方へ入れたまま□ボタン(PS5の場合)の得意技ボタンを入力しよう。スラッシュキックの代用となる技を入力してくれるので、性能の理解が捗るはずだ。
今作では後退する暇さえない!? とにかく攻め続けるゲーム性へ
ここからは実際に筆者がオンライン対戦を行って感じた「鉄拳8」のゲーム性について述べていく。
筆者は前作では州光(クニミツ)というキャラクターを使用していた。州光は機動力や横移動での回避性能に優れるため、前述のスカ確を狙うのが勝ちパターンとなるキャラであった。なので、自然とプレイスタイルも守備的なものになっていった。
今作はアグレッシブがテーマだと聞いているが、ステップの使い勝手もあまり変わっていないと感じたので、ある程度守備的な戦い方もできるのだろうと高をくくっていた。が、その考えは甘かった。とにかく突進力のある技が多く、上手く後退してスキを伺うことが中々できないのだ。
また、今作から追加されたヒートシステムが攻めるという行為を強くしていた。「鉄拳8」では体力ゲージの下に青いゲージがある。これがヒートタイマーと呼ばれるゲージである。
ヒートタイマーが存在している時にヒートバーストというR1ボタンで出せる特殊な攻撃を発動する、あるいは各キャラクターに複数存在するヒート発動技を地上の相手にヒット(空中コンボや、ダウン中の相手へのヒットはNG)させると、キャラクターがヒート状態という強化状態になる。
この状態で得られる恩恵は多岐に渡る。まず、強力な攻撃である「ヒートスマッシュ」という攻撃が使用できるようになる。使用するとヒート状態は終了してしまうが、当たれば大ダメージを与える必殺技のようなものだ。
他には、キャラクターごとに特殊な能力が付与される。今回筆者が使用した麗奈を例にすると、普段は1フレームの誤差もなく方向キーとボタンを同時に入力しなければ出せない強力な打撃技である「最速風神拳」という技が、ヒート状態ならば同時入力に失敗しても最速風神拳扱いになるというものだ。1キャラクター辺り複数の能力が付与されるので、キャラクターの個性やプレイヤー自身のヒラメキを強調することにも成功しているシステムだ。
また、ヒート発動技をヒート状態中に繰り出し、ヒットまたはガードさせている間に方向キーを前、またはR1ボタン(PS5の初期設定時)を入力し続けることでヒートダッシュという行動が行える。ヒット時は相手の被弾モーションが変化し、ヒート発動技をコンボ始動技の起点として使えるようになる。ガードされても、猛ダッシュで相手を追いかけるため、続けざまに攻めることも可能だ。
そしてヒート中のすべての攻撃は、ガードしていても体力ゲージを削る効果が付与される。この削られた体力ゲージは相手に攻撃をヒットさせることで回復が可能ではあるが、削られているプレイヤーに「回復しなければ体力が減っていく一方で負けてしまう! どこかで反撃しなければ!!」という強いプレッシャーを与えられる。
個人的には「ヒート中の全ての攻撃は、ガードしても体力ゲージを削る効果が付与される」というシステムがとても重要に感じた。
いざ対戦でヒート状態に相手がなっていても、落ち着いてガードを固めて効果が終了するのを待てばいいと思っていたのだが、思いの外ヒート状態は防御しているだけでは終了しない。ヒート状態はヒートスマッシュまたはヒートダッシュを使用する、あるいは時間経過で体力ゲージ下の青いゲージが無くなれば終了する(公式サイトによると15秒経過でゲージは無くなる)のだが、筆者にはその15秒間が非常に長く感じられた。
それもそのはず。ヒート状態のキャラクターが攻撃を相手に当てているときや、相手キャラクターがダウンしている間はヒート状態のタイマーは減少しないのだ。筆者はそのことを失念したままガードを続けたり、ダウンした状態をわざと長くしてヒート状態が終了させようと考えていたが、それらは全くの無意味であった。結果としてヒート状態の相手に攻め続けられて敗北するというパターンが頻発したのだ。
対戦していて感じたのはヒート状態を早期に終了させるには、ヒート状態の相手に攻撃を当てることでヒートゲージを減少させるのが一番であるということだ。相手が強化されているにも関わらず、攻めなければならない。攻撃は最大の防御という言葉があるが、強化されてる相手に攻撃をするのは非常に恐ろしい。
間合い調整を軸にした防御寄りの戦い方を軸にしていた筆者でも、今作では「相手を豪快にぶん殴る」という「鉄拳」の原点に戻らなければならないと感じた。
筆者は過去の「鉄拳8」のβテストにも参加し、その時点ではヒートシステムはあまり勝敗に大きな影響を及ぼすシステムではないと感じていた。だが、製品版発売直前にここまで大きなバトルバランス変更が起きるとは思いもよらず、攻め続ける鉄拳を楽しめると嬉しい悲鳴をあげることになりそうだ。
複雑すぎて不安? そんな悩みを解消してくれるのがアーケードクエスト!!
「鉄拳8」をプレイしていると苛烈な攻めが多く、一方的に負けてしまうこともある。特に初心者の方は何から手を付けていけばいいのかわからないと思う。そんな時は1人用モード「アーケードクエスト」がオススメだ。「アーケードクエスト」では架空のゲームセンターを舞台にキャラクターたちと交流しながら「鉄拳8」を遊ぶためのスキルが身につくモードだ。
「鉄拳博士」を名乗るMaxという人物が、鉄拳の戦い方に迷うプレイヤーを手取り足取り指導してくれる。一通り遊べば、鉄拳で必要なスキルは身につくはずだ。
実際に彼のアドバイス通り、攻め込まれて辛い時に相手の攻撃を受け止めながら反撃する「パワークラッシュ技」を用いて戦えば、ヒート状態の相手に一方的に攻め込まれて敗北する機会は減っていった。ゲームセンター内にいるキャラクターの中にはかなり手強い難易度のCPUも存在するので、システムを理解している「鉄拳」経験者でも飽きること無く基礎の復習や、模擬的な練習が行えるはずだ。
その他、オンラインの快適性など
オプション設定の中では、オフラインの大会用のオプションの存在も確認できた。これをONにすると、勝利に必要なラウンド数や、制限時間が大会用の設定に切り替わるようだ。オフラインでの対戦会イベント主催、参加経験がある筆者の経験談だが、対戦会では殆どの場合様々な方のゲーム機を持ち寄って行う。その際、持ち寄った人によって普段使いでの最適なゲーム設定が異なることは多々あり、ゲーム設定の統一はかなり手間な作業である。これが一瞬で済むのは大変便利である。
同じくオプション設定についてだが、前作「鉄拳7」からオンライン対戦を快適にするためのロールバック機能が実装されているが、オプション設定で更に詳細な変更ができるようになった。
具体的には攻撃モーションに違和感がないような挙動にするか、入力のラグ軽減を重視するような挙動にするかが追加で変更できるようになった。試しに入力のラグ軽減を重視する設定でオンライン対戦を行ってみたが、入力はオフライン対戦を行っているように滑らかだった。その代わり、キャラクターの動作にしわ寄せが来てしまい、筆者は攻撃モーションを見切るのに苦労してしまった。なので、前作のロールバックで不満がないのであれば、設定は変更しないで初期設定の標準で問題ないと思われる。
また、オンラインでのランクマッチでの連戦が無限に行えなくなった。今作では2試合先取で次のマッチングを検索するようになったので注意が必要だ。段位を賭けてどちらかが降格、昇格するまで戦い続ける、というのは「鉄拳」プレイヤーあるあるだったが、今回は不可能なようだ。
最後に、オンラインでの対戦動画をいくつか公開する。マッチングからの対戦移行までの時間の早さ、連戦のスムーズさはβテストから高い水準で快適だ。
そして対戦内容ではヒートシステムを多用したド派手な殴り合いが見られるはずだ。オンライン対戦では過去のβテストでは使用できなかった新キャラクター、麗奈の使用率が非常に高く、試合の九分九厘近くは麗奈同キャラ戦となっていた。ある鉄拳の名物キャラを彷彿とさせる技を是非見てほしい。
そして韓国の30連勝超えの猛者ヴィクターと遭遇し惨敗した動画も掲載する。既に今作のシステムを使いこなしており、素早くヒートを発動し、圧倒する攻めは必見である。何度か対戦を挑んだが、良くても最終ラウンドにもつれ込むのがやっとであった。この動画が発売日までのモチベーション維持につながれば幸いである。
「鉄拳8」は、接近戦でド派手に高速で殴り合えるゲーム性へ変化し、一撃必殺の壮快感がたまらない「『鉄拳』らしさ」がより強調された。また、「鉄拳」ビギナーがゲーム内だけで攻略情報を学べるモードが実装され、ここ数年の世界情勢の影響でプレイヤーが遊ぶ環境が変化したことが配慮されている。
今後ゲームの攻略が進むと、「鉄拳」の戦い方が一変した山ステ、野ステ、台湾ステップの様な高速バックステップの様に、今作でもプレイヤーの研究で新たなテクニック、戦術が見つかる可能性はある。その様な応用テクニックの練習機能も充実すれば、更に「鉄拳」シーンの人口増加へ繋がるはずなので「『鉄拳8』1つあれば『鉄拳』の参考書は事足りる」ような練習機能の継続的なアップデートを期待したい。
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