インタビュー

「この時代に生まれたかった」人気ストリーマーMOTHER3、Jasperが高校生eスポーツシーンを語る

高校生eスポーツ合宿「eスポーツキャンプ」にゲストとして登場した両名にインタビュー

 8月22日、大阪府泉佐野市で高校生を対象にした3泊4日のeスポーツ合宿イベント「eスポーツキャンプ」が初開催を迎えた。競技種目は人気FPS『VALORANT』で、全国各地から総勢44名もの高校生たちが集い、『VALORANT』上達のために互いに切磋琢磨する濃密な時間を過ごした。

 そんな『eスポーツキャンプ』にゲストとして参加したのが、ストリーマーとして人気を博すJasper氏とREJECT所属のMOTHER3氏だ。イベント二日目に会場のステージに登壇すると、高校生たちから大きな歓声が上がり、会場は熱気に包まれた。両名が高校生たちにとっていかにカリスマ的な存在であるかが分かる。

MOTHER3氏(左)Jasper氏(右)

両名は高校生たちが練習に勤しむなか会場を歩いて回り、彼らにアドバイスをするなどしてそれぞれのチームを活気づけていた。色紙やユニフォームを持参した参加者には快くサインに応じ、参加者たちは練習の疲れを忘れてしまったかのような笑顔を見せていた。日頃両名の配信を見ているというある女性参加者は「本当に感動しました、私にとってはジャニーズみたいなものですから」と言っていたほどである。

忙しいスケジュールの合間を縫って、MOTHER3氏、Jasper氏がインタビューに応えてくれたので、本稿ではその様子をレポートしたい。長くeスポーツ業界を見てきた二人にとって、昨今の高校生eスポーツシーンはどのように映っているのだろうか。

参加者にサインを書く両名

――まず初めにお二人のゲーム遍歴をお聞かせください

MOTHER3: ゲームは小さい頃からずっとやっていますね。FPSでいうと『Counter-Strike Online』、『Counter-Strike: Global Offensive』、『Overwatch』とやって、今は『VALORANT』を主にプレイしています。

Jasper: 僕もFPSはずっとやっています。昔は『Sudden Attack』をやっていて、それから『Overwatch』で一時期プロプレイヤーとして活動していました。現在は『VALORANT』のストリーマーとして活動しています。

――今回の「eスポーツキャンプ」は高校生が対象の合宿イベントですが、お二人はどんな高校生でしたか?

Jasper: 『Overwatch』をゴリゴリにやっていた時期ですね。プロになったのもちょうど高校生のころでした。

MOTHER3: 僕は全寮制の野球部に入っていたので、野球漬けの日々を送っていたと思います。

――「eスポーツキャンプ」の存在を聞いた時、どのような感想を持ちましたか?

Jasper: 本当にうらやましいなと思いました。僕が高校生で『Overwatch』に打ち込んでいた頃は、ひたすら家でひとりオンラインプレイをしていたので、非常に孤独でした。たまたまプロチームにスカウトされたからラッキーだったものの、そういう人ばかりではありませんからね。こうして同世代の仲間とオフラインでゲームができる環境は貴重だと思います。

MOTHER3: すごい時代になったな、というのが率直な感想です。ゲームの合宿があるというのはもちろんのこと、参加者の皆さんの雰囲気が学年の壁を越えて打ち解け、和気あいあいとしているのにも驚きました。これが野球部の合宿だったら、1年生が3年生にタメ語で話すなんて決して許されませんからね(笑)。

参加者と交流するMOTHER3氏

――ゲームに打ち込むにあたって、仲間の存在は大きいと感じますか?

Jasper: 非常に大きいと思います。切磋琢磨できる仲間がいるのといないのではモチベーションが全く変わってきますからね。会場の様子を見ていても、仲間どうしで励まし合ったり、戦略について楽しそうに話し合ったりする姿があって、とても微笑ましく思いましたし、こういう環境があると早く上達できるだろうなと感じました。

――会場に来て、実際に高校生の参加者の方々に会ってみていかがですか?

Jasper: やっぱりファンの方と交流できるのは嬉しいですね。普段はネット配信が主な活動内容なので、こんなに近くでファンの方々と会える機会はあまりないんです。さっきなんかは北海道から来てくれた子に会いまして、みんな全国から来ているんだなと実感しました。

MOTHER3: そんな遠くから来てくれていると聞くと、なんだか申し訳なくなりますね(笑)。

Jasper: 本当ですよ、こんな汚い配信者に会いに来てくれるなんて。

MOTHER3: 汚いは言い過ぎでしょ(笑)。

参加者と交流するJasper氏

――参加者の中には、お二人に会いたくてこのイベントに参加したという方もいらっしゃいます

Jasper: そうみたいですね、驚きました。僕のオフイベに何回か参加してくれている子もいました。

MOTHER3: 僕もさっき自分が出演している演劇を見に来てくれていた子に会いましたよ、ありがたい限りです。

――昨今では高校生の全国大会も開催されるなど、ますます盛り上がりを見せている高校生のeスポーツシーンですが、お二人から見ていかがですか?

MOTHER3: すごい時代になったなと思いますね、自分たちのころでは考えられませんでしたから。

Jasper: 僕らの時代にもこれくらいの盛り上がりがあればよかったなと思います。うらやましい限りですね。

MOTHER3: ちょうどこの前、高校生のeスポーツ大会「STAGE:0」のウォッチパーティーを配信上で行ったんですが、それが予想以上に盛り上がっていて驚きました。視聴者からの反応もとても良好で、新しい文化が生まれていると感じます。

――最近では「eスポーツ部」のある学校もでき始めています

MOTHER3: すごいですよね、「eスポーツ部」ですからね。僕がゲームに打ち込んでいた時は年上のプレイヤーしか周りにいませんでしたから、同年代の仲間と部活として取り組めるなんてうらやましい。そんな時代に学生でありたかったと思うばかりです。

Jasper: 本当にそうですね、もし自分の学校に「eスポーツ部」があったら確実に入っていましたね。

――高校生のプレイを見ているのとプロの試合を見ているのでは、どんなところが違いますか?

MOTHER3: 何もかも違いますけど、やっぱり一番はメンタル面じゃないですかね。この前の「STAGE:0」では『League of Legends』の試合を見ていたんですが、とある選手がミスをしてしまったんです。彼はなんとか自分のミスを取り返そうとするんですが、焦りからどんどんキルされてしまうようになって。そんな不安定さが高校生らしいなと思いました。

――やはりメンタル面は重要ですか

MOTHER3: さっき会場を周っていた時も、とあるチームがギリギリの試合をあと一歩のところで負けてしまっていて、選手の一人がうなだれるようにしていたのが印象的でした。悔しがっている姿が高校生らしいなと思いつつ、合宿を通じてそういうところを改善して、敗北を次につなげられるようになると上達する気がします。あとやっぱり、物は壊さないように注意してほしいですね(笑)。

――「eスポーツキャンプ」では各チームに専属のコーチがついているのが特徴ですが、お二人がコーチだとしたら高校生たちに何を教えますか?

Jasper: もちろん戦略面のミクロなアドバイスも重要ですが、もし自分がコーチだったら、選手たちの感情に寄り添ってあげることを気を付けると思います。自分がプロだった時、試合に勝った時に自分よりも喜んでくれるようなコーチがいて、その方の存在がとても支えだったのを覚えています。

MOTHER3: 僕はコーチング企画を通じて簡単なコーチングの経験がありますが、コーチと選手の距離をいかに近づけるかが重要だと思います。コーチから選手はもちろんのこと、選手からコーチに対しても気軽に意見を言えるような雰囲気づくりが大事ですよね。

サインを書く両名

――高校生たちのプレイを見ていて、印象的だったシーンなどはありますか?

MOTHER3: このイベントには初心者から上級者まで、様々なランク帯の選手が集まっていますが、さっき見ていた試合ではランクの低い選手がチームを率いるようなかたちで試合に勝っていて、それがとても印象的でした。こういう環境になるとオンラインのランクは関係ないのだと実感しますね。

Jasper: オフラインの環境での『VALORANT』はチームゲームなので、オンラインでランクマッチを回すのとは全く別のゲームになると思っています。しっかりと役割を意識できればランクなんかは関係なくて、初心者でも声かけがよかったりカバー意識が高かったりすれば十分に活躍できるんですよね。

――参加者の中にはプロゲーマーやストリーマーを目指している方もいます。彼らに声を掛けるとしたら何と言いますか?

Jasper: 言うことはひとつ「中途半端にやるな」ですね。本気で目指したいのであれば、間違えてもいいから、とにかくゲーム一筋で打ち込んで欲しいです。才能がある人なら、がむしゃらにやっているうちに気づいたらプロになっていると思いますから。

MOTHER3: 僕も本気でやれということ、それからきちんと周りと折り合いをつけることをアドバイスしたいですね。僕らの時代から比べるとだいぶ良くなりましたけど、家庭によってはまだまだゲームを悪しきものと捉えているところも多いと思います。だからもし本気でゲームに打ち込みたいのであれば、きちんと周りの大人を説得した上で頑張ってほしいですね。

笑い合う両名

――最後に、参加者の方々には「eスポーツキャンプ」から何を得てほしいですか?

Jasper: 友達、仲間ですね。

MOTHER3: 同じく、このイベントで出会った仲間を大切にしてほしいと思います。全国から集まったゲーム好きの仲間と合宿できるなんてまたとない機会ですから、最高の友達になって帰って欲しいです。

会場を背後にポーズ