インタビュー
「FFXIV」、いよいよ始まる「新たなる冒険」。絶竜詩戦争からハウジングまでパッチ6.1の見どころを吉Pに聞く
2022年3月31日 12:00
- 【ファイナルファンタジーXIV: 暁月のフィナーレ パッチ6.1「新たなる冒険」】
- 2022年4月中旬実装予定
スクウェア・エニックスは、プレイステーション 4/Windows/Mac用MMORPG「ファイナルファンタジーXIV: 暁月のフィナーレ(以下、FFXIV)」の最新アップデートパッチ6.1「新たなる冒険」を4月中旬に実装する。
「旧FFXIV」から10年余をかけてつづられてきたハイデリン・ゾディアーク編が「6.0」で完結し、今回のパッチ「6.1」からは全く新しい冒険が始まることになる。また、エオルゼア十二神の秘密を解き明かす新たな24人用アライアンスレイド「ミソロジー・オブ・エオルゼア」や、延期になっていたエンドコンテンツ「絶竜詩戦争」など個性的なバトルコンテンツも登場する。
「第69回プロデューサーレターLIVE」の放送直後となる3月7日に、プロデューサー兼ディレクター吉田直樹氏にパッチ6.1の見どころなどを聞く機会を得た。直後に迫るPLLとともに、パッチの空気を感じて欲しい。
パッチアートのラフなタッチに込められたこだわり
――まず、先日の「プロデューサーレターLive(PLL)」で発表されたパッチアートとパッチタイトルについて、どんな思いを込められているのか教えてください。
吉田氏:「新生エオルゼア」から「暁月のフィナーレ」までの物語を体験された皆さんは、「この先どうなるんだろう、何と戦うのだろう……」と感じたのではないかと思います。ある意味、区切りがつきすぎて、もしかすると「ちょっと燃え尽きた」といったように感じることがあるかもしれません。フィナーレをしっかりお届けするつもりでやってきたからこそ、その反動はあるだろうと思っていたのです。
今回は、「暁月のフィナーレ」のラストで英雄という肩書を1回下ろし、改めて冒険者として、新しい世界にまだまだ残っている謎に向かっていきます。その時に、「FFXIV」では、まだまだこれから色々なところに行くし、色々な楽しみがあるよ、ということを届ける方法は何かなと考えた時に、大切なのはシンプルなメッセージだろう、と考えました。ですので、その最たるものがパッチタイトル「新たなる冒険」かなと……。それが本当に最大の理由です(笑)。
僕は「スター・ウォーズ」オタクでもあるので、「新たなる希望」(編注︓エピソード4の副題)というわかりやすさに近づけたかったんです。「スター・ウォーズ」では、まだ見ぬ世界の「新たなる希望」でしたが、「FFXIV」では「6.0」までやったからこその、「新たなる冒険」というタイトル。そのストレートさがよく伝わるんじゃないかと思ったんです。
パッチのビジュアルはそういう話を踏まえて、発注を行ないました。プレーヤーの分身である光の戦士が、色々な冒険や戦いを経てここまできた。そのシルエットを背景に背負いながらも晴れ晴れとした形で、「ようし次の冒険行くぞ︕」というのをストレートに書いて欲しいと。あとは象徴的な青空。僕の中では「FF」は青空のイメージが結構強く、それをしっかり出して欲しいと色の調整をしつつ、今回のアートを仕上げてもらいました。
また、冒険感を出すために、主線はフィニッシュさせないで、ちょっとラフにして欲しいと伝えました。くっきりした線で描くよりは、いろいろな未来があるということも含めて、あえてラフなタッチで描いて欲しいとお願いしました。
絵の印象というのは、線のタッチから受ける印象も大きいと思っているんです。だからこそ、主線の描き方は毎回キチンと結構指定するようにしています。今回はラフに仕上げてほしいという話をして、そのほうが良い意味で方向が定まらない。今回は意図的にあまり描き込まないでくれという話をしました。
――思い起こしてみれば、今までのメインストーリーは政治劇的な側面が強かったように思います。今回のパッチイラストからは、とても冒険者らしさを感じますが、どういった冒険になるんでしょうか。
吉田氏:これまでも特段、「政治劇がやりたい」という思いが強かったわけではないのです。ただ、旧「FFXIV」から続く初期三国のストーリーを紡いでいくうえで、避けては通れなく、でも、結果的には世界に厚みが生まれることになりました。
世界のすべての人が、肩を抱き合い手を取り合って安定したという綺麗ごとを言うつもりはなく、またいずれ冒険の世界が広がっていけば、新しい問題に出くわすと思います。ただ、それは、政治劇というよりも、世界の謎をどんどん明かしていこうという先に出てくる障害になる……まずは純粋に、世界にまだ残っている謎を追いかけていく物語を描こうと思っています。
例えば、世界が分かたれた原因は分かったけれど、ほかの世界はそもそもどうなっているのだろう? 光の戦士は、第一世界にも肉体を持って渡れますが、今のところはそこだけですからね。原初世界の地図もすべてが埋まったわけではないです。まだ見ぬ海の向こうには何があるのか……新たな大陸ではどんな営みが繰り広げられているんだろうとか、まだまだあると思うんです(笑)。次はどこへ向かうんだろう、どうカードがめくられていくんだろうというところを、当面は楽しみにしていただければと思っています。
――それはすでに明言された次の拡張「7.0」への布石ということですか?
吉田氏:「FFXIV」の良いところは、テンポが遅く感じられたとしても、極端なご都合主義に見えないように、時間をかけて物語を作っていくところだと思っています。それは開発チームの特性でもあるのかな、と。実際、闇の戦士という単語が出たのはパッチ「3.0」のラストからですし、闇の戦士の実情が見え始めたのはパッチ「3.4」です。
これまでも、次元が分かれていて、それぞれに物語があるということを、何パッチもかけてやってきています。冒険の納得感とか、世界の謎に挑んでいくために、これからまた得ていく知識とか能力というところも、引き続き丁寧にやってこうかなと思っています。
そんな思いがありますので、そんなに簡単に1パッチで怒涛の展開にみたいなことはあまりやるつもりがなく、じっくり新しい物語というか、新しい冒険に向かって一歩ずつ進んでいこうかなと思っています。
――暁の血盟の人たちは今後どうなるんだろうとか、第十三世界の復興計画はどうなるんだろうとか、色々と伏線として積み残しているものもあると思います。そういったところもこれから明らかになっていくんでしょうか?
吉田氏: この前のPLLでも言いましたが、全員記憶をなくして、もう1回ゼロからやり直しみたいなことではありません。「暁月のフィナーレ」は、ハイデリン・ゾディアーク編の完結編であり、「FFXIV」におけるサーガの第1弾が終了したとしても、物語の時系列や人の想いは地続きです。暁のメンバーがいきなり一新して、元のメンバーは一切出てこず、知らない人たちとの冒険がスタートするというわけではありません。
11年もやっていると、皆さんも当然各キャラクターへの思い入れを持っていると思います。彼らとの絆がそう簡単に消えることはありませんので、彼らと共にまた色々な冒険が続いて行くんだ、と思っていてください。
――今回のパッチでは、インスタンスダンジョン(ID)の名前が伏せられていますが、IDの名前が伏せられたのは初めてじゃないですか? これはメインストーリーの都合上、話すことができないような場所なんでしょうか。
吉田氏:話せない場所というわけではないのですが……。シークレットにしてくれという話をしたのは、放送の直前だったと思います(笑)。コミュニティチームがPLL用の資料を最終確認に回してくれた際、宣伝チームにも急に伏せて欲しい、と伝えました。
――まっさらな状態で旅をして欲しいという意味合いですか? 名前が出ると、そこへ行くことが分かってしまうということですね。
吉田氏:事前にイメージが付いてしまうかなと思ったのです。そこで展開される物語が、皆さんが事前に予想したものと、仮に全く違った展開にしていたときに、「きっとこうなるんだろうな」という事前の印象があまりプラスには働かないかなと。だったらもう伏せておいたほうがいいかなと。いずれにせよ、ちょっとしたいたずら⼼です。すみません(笑)。
――「暁月のフィナーレ」でひと区切りがついたということで、この6.1は例えば将来的に遊び始める人が、ここからなら区切りがいいからメインストーリーを追いやすいという、中間のスタート地点になり得るような場所なんでしょうか?
吉田氏:6.1がそうなっても良いように、自分の中では周辺準備は進めています。チームにはまだ明確にそうするとは伝えていませんが、いずれこの先もっと開発と運営を長く続けていく時に、区切りが良いこともあり、ここを第二のスタート地点にもしやすいのではないか、とは考えています。
今すぐということではありませんが、ゲームデザイナーとして、将来的な準備はしておこうかなという思いはあります。今回「愛用の見聞録」という手帳をこのタイミングから挿入するのもその一環だったりします。感覚的で申し訳ないのですけれど、くさびを打てるようにしておこう、というイメージはあるという感じですね。
――今回のパッチアートに描かれている服は実装されるんですか、このリュックサックが欲しいという声をかなり見かけました。
吉田氏:あのリュックは、背負い武器との干渉があって難しいのです……。何か方法はないか、と考えはしているんですが、服は、楽しみにしていただいていても大丈夫です!
――あのリュックは実装が難しいんですか?
吉田氏:そうですね、実装するためには、新しいシステムを作らなくてはいけなくなります。ファッションアイテムとしてなら可能ではありますが、背負いものというのは、武器だけじゃなく、他の装備との干渉も気にしなくてはいけないのです。体型差、性別差、キャラクターの姿勢、鎧に付けた時は、恐らく目も当てられない状態になってしまいます……。色々なものがめり込みまくっても良いなら、実装できると思いますが、さすがにそれは許されないだろう、と。