インタビュー

「VALORANT」、「2022 VCT Stage 1」ZETA DIVISION優勝インタビュー! Laz選手「世界大会ワクワクせずにはいられない」

【VCT 2022: Japan Stage 1 Challengers Playoffs】

3月24日〜3月27日 開催

 3月24日から4日間に渡って開催された「VCT 2022: Japan Stage 1 Challengers Playoffs」。Week1およびWeek2を勝ち抜いた国内の計8チームが、世界大会「VCT 2022: Stage 1 Masters Reykjavík」への切符をかけて激闘を繰り広げた。出場枠は、たったの1チームである。すでにアッパーブラケットで勝利を収め、ファイナルで先に待ち構えていたのはZETA DIVISION(以下ZETA)。ファイナルの対戦相手となったのは、ローワーブラケットを勝ち上がってきたCrazy Raccoon(以下CR)となった。Week1から数えると3度目となるまさに因縁の対決。熱い戦いに、日本中の「VALORANT」ファンの注目が集まった。

 3月27日に行なわれたファイナルで、機先を制したのはZETAだった。最初のマップはバインド。いきなりオーバータイムまで突入するほどの接戦だったが、底力を見せたZETAが勝利を収めた。次のスプリットはZETAがピックしたマップということもあり、13-6でZETAが圧勝。このまま3タテかと思いきや、次のヘイヴンではCRが意地を見せ勝利をもぎ取った。4戦目となったアイスボックスでも序盤はCRの猛攻撃が光ったが、後半になるにつれて勢いを増したZETAが逆転勝利! 見事優勝を果たし、世界への切符を掴んだ。

 今回、優勝したZETAのLaz選手、crow選手、SugarZ3ro選手がメディア向けのインタビューに応じてくださるということで、弊誌でも取材を行なった。以下、選手との一問一答。

新メンバーで国内大会優勝「努力が実になって良かった」

――日本一おめでとうございます!まずは、率直な感想を聞かせてください。

Laz選手:新しいメンバーでの初めての大会だったので、こうして結果が残せてすごく嬉しいです。練習段階ですでにこのチームのポテンシャルが高いなと思っていて、どれだけいいところまでいけるか楽しみで仕方がなかったんですけど、それに加えてめちゃくちゃ練習しているので、チームとしての成長具合も見ていて楽しいものがあるなっていうのを感じています。

crow選手:本当に嬉しいし、努力が実になって良かったという感じですね。このメンバーは国内トップの選手たちが集まっていて、コーチ陣も含めてほかのチームよりも絶対優れていると思っていたので、ちゃんと練習して成長すれば絶対に勝てるという自信を持っていました。今日明日ぐらいはちょっと肩の荷を下ろして、これからまた練習できたらいいなと思っています。

SugarZ3ro選手:去年ずっと負けていて、しかも「あと1勝で世界」っていう悔しい負け方をしていたので、今年勝てて本当に良かったです。大会前はもう日本で一番「VALORANT」をやっているんじゃないかなっていうレベルで練習してきたので勝てる自信はもちろんあったんですけど、実際ファイナルでCRと戦ってみて、ここまで上がってくるだけあってやっぱり強いなと感じました。最後勝てて、本当に嬉しいのひとことですね。

――ファイナルはCRとの再戦になりましたが、どんな対策を練ってきましたか。

Laz選手:CR戦の対策は、前日の試合と前々日に自分たちが試合したのも含めて、相手がやっていることを見て自分たちがどう戦えばいいかを軽く話し合って。試合になるとやっぱり想像していたのと違うことがすごく多いので、そのときはまあそのとき頑張ろうっていう感じでしたね。

crow選手:大会を通して3回も同じチームと戦うのって初めてに近くて、こっちも対策はしているんですけど向こうも対策していて「対策の対策の対策の対策」みたいな感じで、人読みの部分も大きく出てくる試合数だったので本当に大変でした。

SugarZ3ro選手:本当にCRのMunchkin選手のメンタルが強いというか、大会決勝戦でこのムーブができるのかよ、みたいな感じのムーブをしてくるので、そこに気をつけていた感じですかね。

――決勝ならではのBo5ということで、体力面やメンタル面もこれまでと違ったのかなと思うのですが。

Laz選手:Bo5が長丁場になるのは最初からわかっているので、みんなしっかり休んで体力をつけてって感じでした。ただ下から勝ちあがってくるチームは一度Bo3をやってからうちとBo5を戦うことになるので、ローワーブラケットでバチバチにやりあってその熱のまま来るというのがどうしてもあって、1マップ目のバインドで実際0-7までとられて敵ちょっと強すぎるなとは感じていました。でもこれも「大会あるある」なので、気を抜かずそこからいかに勝っていくかだけを考えて実際にカムバックできた感じです。向こうが熱い状態で来るのはわかっていたので、チーム全体のウォーミングアップとしてスクリムを2回していたのも生きたかなと思っています。

crow選手:最初の試合では3-9からカムバックしたのでこちらもすごく熱のある状態だったんですけど、「一旦落ち着こう」とみんなで言っていて、冷静になって2マップ目もいい感じにとれました。そこでも「スコア2-0だけど気は抜かないでいこう」とみんなで話していて、「勝てる、勝てる」って前のめりになる感じではなく割と落ち着けていたと思います。つい勝気になると前に出ちゃうのは「あるある」なので、大会だと刺さることもあるんですけど、やっぱりいつも通りの勝ち方が理想的ではあるので、それを意識できていたんじゃないかなと思います。

SugarZ3ro選手:試合中のメンタルケアに関しては、大会前にメンタルコーチングを何回か受けていました。例えば「このマップ負けちゃいそうだな」とかネガティブなことを考えると本当にそれが現実になっちゃうので、ちょっとでも思ったらもうその考えを無にして「リセット」みたいな感じで、というのを僕はやりましたね、今日は。

CRとのファイナルを振り返って

――試合開始後、立て続けにCRにとられて0-7から巻き返し始めましたが、タイムアウトではどんな話をしましたか。

Laz選手:タイムアウト、何話したか覚えてる?

crow選手:俺も全く覚えてない、ちなみに(笑)。たぶんアドレナリンが出すぎていて全然思い出せないですね、試合内容見返さないと。

Laz選手:自分たちの状況整理とか相手がどんな攻め方してるよ、とかですかね、たぶんですけど(笑)。

――その後のマップでも結構タイムアウトをたくさんとっていたと思うんですけど、そのたびに同じような話をしていたのでしょうか。

Laz選手:自分たちの形に穴があるときに、XQQコーチが一旦止めて話をしてくれたり、こういう戦い方が刺さりそうだよっていうのがあったときも止めてくれたり、あとは重要なラウンドやクラッチシーンを味方がとったときって心臓がバクバクして次のラウンドに影響が出ちゃったりするので、1分間休めて深呼吸してっていうのはやっていましたね。

――ヘイヴンはとられてしまいましたけど、そのときチームで話したことはありましたか。

Laz選手:「自分たちの強みを出そう」というシンプルな話はしたんですけど、前日と比べてCRが進化していたんです。こちらが得意だった「Aサイド内耐久」も結構相手に使われていて、それが自分たちの攻め方にすごく刺さって上手く止められちゃっている感じはしていましたね。あとはやっぱりMunchkin選手のプレッシャーがグイグイきていて、逃げるとA側をひとりでコントロールされてほかのところに人数が集まるみたいな状況を無理やり作らされてしまったので、そこも敗因かなとは思います。

――続くアイスボックスでも序盤Munchkin選手のオペレーターが刺さっていましたが、どう対処しようとしましたか。

Laz選手:アイスボックスでもMunchkin選手の圧力はすごかったんですけど、僕個人の話だと僕が使えるエージェントはキルジョイかチェンバーなので、ぶっ倒しに行きたいなってすごく思っていました(笑)。一応戦い方としてはジェットのオペレーターがいないほうに行くか、いても何とかなるような攻め方のほうが強くはあったんですけど、向こうが結構合わせに来ているなみたいなのはありましたね。まあ、アイスボックスは多分自分たちの実力が非常に高かったので、上手く修正してそこを最終的にぶつけられたかなとは思っています。

――チームの公式ツイッターにアップされていた優勝の瞬間の動画を拝見しましたが、SugarZ3ro選手と抱き合っていたTENNN選手は嬉し泣きしているように見えました。あのときSugarZ3ro選手はどんな気持ちでしたか。

SugarZ3ro選手:TENNNさんはもう泣いていましたね。初めてでめちゃ喜んでるなぁって感じでした。僕は優勝した瞬間、なんか実感ないというか「わぁ……」みたいな、「終わったのか……」みたいな、本当に「何があったんだ」みたいな、実感がないのひとことですね。その後から嬉しさがこみあげてきました。

【WE ARE THE JAPAN CHAMPIONS OF VCT22 Challengers Stage 1】
ZETA DIVISION 優勝の瞬間

今大会全体を振り返って

――全体を振り返ってチームの活躍の要因って何かありますか。

Laz選手:戦い方が強くて、その戦い方の熟練度もすごく高かったからだと思います。

――では、今大会でお気に入りのラウンドをひとつずつ教えていただきたいです。

Laz選手:うーん……。
crow選手:うーん……。

――Laz選手は昨日のフラクチャーの1v2、IGZISTに解除されているところはどうでしょうか。

Laz選手:なんかそんなにだったなぁ……でもじゃあ、そのラウンドで(笑)。

【Laz選手のフラクチャーBサイト 1v2ラウンド】

アストラのコズミックディバイドで視界が制限された中、1v2で勝利を収める

――crow選手は、アイスボックスのネストのところ抜いたシーンとかはどうでしょう。

crow選手:あれは設置されていたら結構やばかったなと思ったので、やれて良かったですね。あれもJUNiORコーチに教わって、定点のショックダーツとかも教えてもらったりしたので感謝です。

【crow選手のアイスボックス壁抜きラウンド】

Aサイトでのスパイク設置を定点ショックダーツと壁抜きで阻止

SugarZ3ro選手:僕は1回目のCR戦のヘイヴンで、自分たちが攻撃でA設置後のMeiy君との1v1です。あと1キルでエースだったんですよね、Meiy君が。絶対撃ち合ってくると思って何回も吸い込み使わなかったんですよ。それがもう完璧に決まって最後吸い込み入れて勝ち、みたいな。もうめちゃくちゃ良かったので記憶に残っているラウンドです。元チームメイトだからこその心理戦も入っていましたね。

【SugarZ3ro選手のお気に入りラウンド】

アストラのグラビティウェル(吸い込み)でスパイク解除を中断させるテクニック。Meiy選手もそれをわかっていて解除フェイクを入れるが、SugarZ3ro選手は最後の最後までグラビティウェルを使用しない

――では、ZETAにとってCRはどういうチームですか。

Laz選手:因縁のライバルみたいな感じはしますね。いまのCRはMunchkin選手の鋼の心で突っ込んでくる感じをサポートしつつ、Meiy君もフィジカルが本当に強くてそれを押し出してくる選手で戦い方も上手いし、サポート陣のpopogachi選手、neth選手、Astell選手もみんな本当に強いです。

――Dep選手も「Munchkin選手とMeiy選手の入れ替えジェットがやばかった」と話していましたね。ところでMunchkin選手の強心臓の待ちやモク抜きを、された側の気持ちってどんな感じなんですか。

crow選手:強心臓で待っているときは強ぇなっていう感じなんですけど、モク抜きは誰にやられても腹が立ちますね。今日もスプリットでやられました、俺。Munchkinが来るのをわかっていて、いつ飛び出してやろうかなって思ったらなんか一発入れてきて、ちょっと腹立ちました(笑)。

選手たちが感じている新パッチの影響は?

――新パッチでのアストラはだいぶ変化があったと思うんですけど、SugarZ3ro選手はどういうところを改善したか教えていただけますか。

SugarZ3ro選手:前までの使い方をするとクールタイムの時間が延びちゃったので当然上手いこといかなくて、やっぱり星のスキルの管理を見直して絶対に刺さるときにしか使わないようにしてて、最適解を見つけてやったという感じですかね。

――ブリムストーンがいま強くなっているので使うのかなと思っていたんですけど、あえてアストラを選んだみたいな。

SugarZ3ro選手:アストラにしかできない固有の動きっていうのがめちゃくちゃあって、それが強くて前のパッチではずっと使われていたので、アストラにしかない強みはナーフされても強いんじゃないかなっていう感じです。

アストラルフォームにより、マップのどこからでもスモークや妨害スキルでサポートできるのがアストラの強み

――crow選手の使っているエージェントは新パッチの影響があまりなかったような気はしますが、全体を見ているプレーヤーとしてどうですか。

crow選手:今までのほぼ全マップでアストラが使われているようなメタからオーメンやブリムストーンが出てくるようになって、相手の防衛の寄る速度や戦い方が変わったので、そこは慣れるまで時間がかかりましたね。

――戦い方で言うと常にカバーが早い印象で、いてほしいところにちゃんといて押さえてくれるみたいな感じがしたんですけど、立ち回りで気をつけていることとかありますか。

crow選手:結構状況によるんですけど、アドリブでスキルとか立ち位置を変えなきゃいけないことが多くて、それは本当に毎回シチュエーションが違うのでその都度考えなきゃいけないんです。そういった部分はスクリムでも後から「こうしたほうが良かった」とか「こうしてほしかった」みたいなのを、いまブートキャンプしているのでわりとみんなと話し合えることが多くて、「次からこういうときはこうするね」みたいなのが共有できていたのでその辺は生きたんじゃないかなと思います。

――Laz選手は今回ヴァイパーを使っていたりしていて、どういう感じで使っていたのかなっていうのが気になったんですけど。

Laz選手:単純にヴァイパーが強いので、役割分担で自分がやるのが一番上手くまとまりそうというか、一番チームの総合力が上がりそうだなっていうので使っていましたね。個人的に別にヴァイパーは嫌いじゃなくて、ただ特有の難しさとか基本的にあんまり戦えるエージェントではないのでそこで相性がそんなに良くないのかなとは思っているんですけれども、ヴァイパーのそもそものセットアップを考えるのはすごく好きで、悪くもないかなっていう感じですかね。

――チェンバーに変わったとき生き生きしていたのは、そういうのもあったんでしょうか。

Laz選手:そうですね、負けていると本当にぶち倒したくなる衝動が出てきちゃって、ヴァイパー2回からのキルジョイで結構こめかみに血管が出るぐらいになっていて、4マップ目でチェンバー使えて絶対倒してやろうっていう気持ちが強かったですね(笑)。チェンバーはすごく戦いやすくて、デュエリストとはちょっと違った部分はあるんですけどすごく自分に合っているエージェントです。

――アイスボックスのマッチポイントなんか、撃ち倒すつもりで待ってましたもんね、箱のところで。

Laz選手:なんか狙われたなと思ったんですけど、倒してやろうっていう感じでしたね。結構勝負するのは好きなので、戦いに来てくれたらラッキーという感じはありますね。

日本代表ZETA DIVISION世界へ……まずは「1勝」が目標

――世界の壁はまだまだ高いという印象があると思うんですけど、日本が世界に勝つために必要なことって何だと思いますか。

Laz選手:ヨーロッパ圏はこの手のゲームが発展していて、そこで培った環境でまず一番リードしていると思います。そこに追いつけるように、まずは日本国内でもちゃんと給料が出てフルタイムでゲームができる環境が整うこと。次にゲームが有名になって色んなプレーヤーが出てきて、そのなかでひとにぎりの才能ある上位プレーヤーたちが戦えるようになれば、世界にもどんどん追いつけるようになると思っています。いまの日本の「VALORANT」は世界にすごく近づいてきているとは思うんですけど、普段の練習相手でもやっぱりまだ差があるなとは感じています。中国や韓国のチームもめちゃくちゃ強いんですけど、やっぱりヨーロッパのほうが強いチームが何倍もあるような感じで、実際ヨーロッパ予選でもどのチームが上がってくるかわからないぐらい本当にみんな強いですね。

――では、これからどんな準備をしていく予定ですか。

crow選手:たぶんアイスランドに行くまでそんなに日数もなくて大会よりちょっと早めに着くと思うんですけど、そこに来ているチームやほかのヨーロッパチームとのスクリムがすごく楽しみです。前のメンバーと行ったときも大会前のスクリムで得られるものや自分たちが成長できるものっていうのがかなりあって、いまの5人でまた行けてまたその経験ができるのが楽しみです。

――SugarZ3ro選手は初めてなのでまた違うかと思うんですが、アイスランドで期待していることはありますか。

SugarZ3ro選手:アジア以外のチームと戦うのが初めてなのでそこがすごい楽しみなのと、実際世界大会でビビらないようにメンタル最強でいこうかなと思ってるんで、頑張ります!

――最後に、日本代表としての意気込みを聞かせてください。

SugarZ3ro選手:まずは、1勝を目標に頑張ります!

Laz選手:世界大会ってやっぱり普段と違う特別なプレッシャーがあるのでそれと向き合いつつ、初めてで色々試しつつにはなりますけど、どこまでいけるんだろうっていうワクワクせずにはいられない感じだなと自分で思っています。

crow選手:去年のアイスランドは出場を逃してしまって、ベルリンでも1勝もできずに終わってしまったので、このチームで今回こそはかならず勝利できるように練習して挑みます。応援よろしくお願いします。

「VCT 2022: Japan Stage 1 Challengers Playoffs」優勝の瞬間。世界での戦いが楽しみだ