インタビュー

「ファイナルファンタジーXIV: 紅蓮のリベレーター」超特大インタビュー

吉田Pに拡張パックの構想と「FFXIV」の課題と未来について5時間聞いてきた

【ファイナルファンタジーXIV: 紅蓮のリベレーター】

2017年初夏リリース予定

「ファイナルファンタジーXIV: 紅蓮のリベレーター」

 ちょうど1カ月前の10月14日、米国ラスベガスで開催された「ファイナルファンタジーXIV」のファンイベント「FFXIV Las Vegas Fan Festival 2016」において、拡張パッケージ第2弾「ファイナルファンタジーXIV: 紅蓮のリベレーター」が発表された。サービス開始時期は2017年初夏、PS3のサポートを打ち切り、PS4とPCでのサービスとなる。

 発表内容については、基調講演レポートで詳しくお伝えしたとおりだが、発表当日の夜、プロデューサー兼ディレクターの吉田直樹氏に、食事をしながらインタビューする機会に恵まれた。インタビューは食事の時間だけでは終わらず、吉田氏の宿泊先に場所を移して続けられ、都合5時間にわたって話を聞くことができた。

 インタビュー内容は、「FFXIV: 紅蓮のリベレーター」についてはもちろんのこと、拡張パックに合わせて実施される「FFXIV」そのものの仕様拡張や、現在抱えている課題についてまで、ありとあらゆることを質問することができた。

 今回のインタビューでとりわけ注目して欲しいのは、吉田氏が特にこだわって開発しているレイドコンテンツに対するこだわり、現役プレーヤーとしてのコミュニティに対する想いが語られているところだ(本記事5ページ目)。本来なら本題と関係ないため、カットされる部分だが、特にお願いしてほぼそのままの形で入れさせていただいた。そういう感じで楽しい話をあれもこれも入れ込んだため、新作ゲームのインタビューとしてはとんでもない長さになってしまったが、12月24日の東京ファンフェスまでの繋ぎとして、ぜひ数回にわけてじっくりお楽しみいただきたい。

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謎だらけの「紅蓮のリベレーター」ティザートレーラーについて

基調講演を行なう吉田氏

――今回の基調講演はいかがでしたか?

吉田氏: 今回の基調講演は、生涯でベストワンツーに入るくらい……、第1回プロデューサーレターLIVEくらいのプレッシャーでした(苦笑)。生放送は結構な回数やっているので、開幕でセリフが飛ぶことはなかったのですが……「ウェルカム・トゥ・ザ・FFXIV ファンフェスティバル 2016 in ラスベガス」というつもりだったんですが、あまりにも歓声がすごくて、話すタイミングを探っていたら、あれ、なに言うんだっけ? と。ファンフェスティバル、トゥ……なんだっけ。シックスティーンだけ出てるんですよ。サウザンドがでてこなくて(笑)。

――全然緊張している感じじゃなかったですね。リラックスしてみえましたけど。

吉田氏: ステージ下で見ていたスタッフはみんなそう言うんですが、相当緊張しました。前回の2014年の北米ファンフェスで、トラウマになるくらい失敗したと思ったことがあって、余計に緊張してしまいました。初のファンフェス、イベントのオープニング、有料放送の基調講演。講演は1時間の予定でした。しかしあまりの緊張にタイプキープができなくなってしまい、結果、40分くらいで終わっちゃったんです……。僕はすごくやり切った感でステージを降り、スタッフもみんな「よかったですよ」と言ってくれてたんですが、自分の時計をその後みたら「えっ、45分しか経っていない!」って。案の定ネットを見たら「短い」、「有料放送の価値が……」という反応がありました。

 あの時、しゃべる内容に取りこぼしはなかったのですが、ゆったりプレゼンするということができなくて、結果短くなってしまったので、今日はその2014年のトラウマを払拭するために、きっちりタイムキープをしつつ、冗談も挟み、上手く間を作ろうと思っていたので、余計に緊張してしまいました。

――確かに前回に比べてたっぷりありました。まだあるのかと思いながら見ていました。

吉田氏: 本当はもっと色々お出ししたいのですが、あと2回、東京とフランクフルトのファンフェスが残っており、パッチ3.5のリリースも控えているため、ラスベガスで言えることがどうしても限られてしまいます。今回は新拡張パッケージの発表というのがニュースのすべてで、具体的なことはまだとっておかないと、ネタがもたなくなってしまいます。それをどうやって期待感を持ってもらうかというプレゼンをしなければいけないので、そこが本当に悩みどころでした。

 「蒼天のイシュガルド」の時には、そもそも拡張パッケージを予告なく発表したので、ある意味それだけ驚きの根幹は達成できました。しかし、今回のファンフェスは、「絶対に拡張パッケージの発表があるよね!」という既定路線でした。その上で、次の発表まで期待感を繋ぐ必要もあり、とても神経を使いました。なんとかやりきって、ホッとしています。

――今回100点ですか?

吉田氏: うーん、お客様の目線では違うと思いますが、あくまで僕個人としては、頑張れたのかなと……。5,000人の欧米人を目の前にして、大歓声を受けつつ、台本もセリフのカンペも無し。自分でタイムキープしつつアドリブも入れてと、あれ以上やれと言われても僕の能力ではこれが限界だと思います。

――台本はないのですか?

吉田氏: ないです。テキストの返しモニターもカンペもなしです。僕は台本を作る時、当然自分で作りますが、台本通りに喋ろうとすると、かえって緊張してしまいます。ですので、通訳をやってくれるコージのために、「このスクリーン表示の時は、こんな感じの話をするよ」というラフ台本だけ作りましたが、あとは普段から考えていること、お伝えしなければいけないことを、漏らさずお話しすることに集中するようにしています。リハーサルも1回だけざらっとやって終わりました。お話ししようと思っていることをタイムキープしながら、場の空気を読んでアドリブで尺を作っていくというか……というか。

 今回は2014年に続いて2回目のファンフェスティバルです。しかし、すべてをバラバラにカウントすると通算4回目となります。つまり基調講演も4回目。レイドに例えると、2014年のファンフェスが「大迷宮バハムート」で、2016-2017が「機工城アレキサンダー」。しかし、皆さんはすでに過去に大迷宮バハムートを「邂逅編」、「侵攻編」、「真成編」と体験しており、今回は通算4レイド目なので、より強い刺激を期待される……。こんな風に考えていたので、具体的な発表はできないけれど、期待感はしっかり後ろへ繋ぐ……という意識は強くありました。

 次回の東京以降は具体的な内容や、まだ発表していない新フィーチャーに期待をして貰いつつ、パッチ3.5がリリースされて、徐々に「紅蓮のリベレーター」の全容が見えてきます。「新生」するときの、「シナリオ、どうなっていくんだろう?」というあの雰囲気を拡張パッケージの発売まで作っていきたいな、というのが今回の狙いでもあります。

謎のヒロイン
光の戦士はさらにワイルドになった

――トレーラーのあの女性のキャラクターは、あの人じゃないかとか「FFXIV」コミュニティの間でさっそく噂になっていますね。

吉田氏: そうみたいですね(笑)。色々予想をお楽しみ下さい。もちろんどのような反応や予測をして頂けるかは、ある程度僕たちも想定しています。これからどのような推測や議論になっていくのか、僕たちもライブ感覚で楽しんでいきたいと思っています。今はまだ現実の時間軸は「パッチ3.4」です。しかし、発表を少しずつ垣間見ることで、未来を予測して議論する……このような感覚は他のゲームでは味わえないと思いますので、そういった楽しみを作っていければと考えています。

――私の勝手な予想では、あの女性はイダではないと思うのです。イダとパパリモって非常に重要な人物ですよね。あの2人は「4.0」でも重要な人物として登場するのは間違いないですか。

吉田氏: 誰が、とは限定しませんが、暁の重要キャラはちゃんと「紅蓮のリベレーター」でも活躍します。

――今言えるのはそのくらい?

吉田氏: そうですね。特に今日トレーラーにいた赤い衣装のキャラが、それこそ新キャラなのか、それとも実はもう既存に登場しているのか。誰なのか。それはこれからのパッチ展開にも関わってきます。この先にある「未来のシーン」だけをちょっと切り取ってお見せしたという感じなのです。ぜひあれこれ議論したり、予想したりするのを楽しんでいただきたいと思います。

――今回モンクがいわゆる主人公的なポジションとなりますが、「蒼天のイシュガルド」でいうところのエスティニアン的なポジションに、ウィダルゲルトが入ることはありますか?

吉田氏: あの濃いキャラ……汗がしみこんでいるであろうモンクの装束を渡してきた、あのウィダルゲルトですよね(笑)。ウィダルゲルトはジョブクエは絡むかもしれないですね。メインシナリオだと暑苦しそう……。そういった、アラミゴに関係が深いキャラクターの活躍も、色々楽しみにしていただければと思います。

――ちなみに今回公開したトレーラーはいつくらいに完成したんですか?

吉田氏: う……それ聞きますか(笑)。

――いや、純粋に完成度が高かったなと思って相当練り込んだのかなと。

吉田氏: 日本時間、金曜の深夜(10月7日)だったと思います……。完成という表現が難しくて、ほぼCG映画と同じ作り方になっています。アニメーションのFIXは、もちろんもっと早い段階で終わっているのですが、最後まで調整を依頼していたのは、展開がもたつく部分があった箇所。それと「世界観が見えにくい」というところは、シーンを追加してもらったりしました。これらが調整され、尺がFIXしたのは約3週間前。

 そこから調整として大きかったのは表情です。表情はキャラクター造形や、最終的にはシナリオにも関わるので、細かく注文を出しました。表情をFIXしたのが2週間前くらい。後は、空気がゆがむディストーションという、光の戦士と謎の女性がコンタクトしているときに、衝撃波で空気が揺らぐ表現や、ちょっと漫画的な手法をヴィジュアルワークスが取っているのでそれらの調整です。あれだけリアルなCGだと、やりすぎるとかっこ悪くなっちゃうので、さじ加減を調整させてもらいました。それらを最後の1週間前までやっていて、あとはもうひたすら色味の調整ですね。各シーンのカラーのバランスを1クリップずつ変えていく作業が終わったのが、先週の月曜深夜です。この作業はヴィジュアルワークスの腕を信じているので、これはチェックせず彼らにお任せして僕は北米に出発しました。

――あのティザートレーラーは長いものの一部だということですが、メインに格闘シーンを選んだ狙いは?

吉田氏: ネタバレが多すぎて、あそこしか出せなかったのです。今回も僕が自分で字コンテを書いたのですが、蒼天のイシュガルドよりも「全体を表現する」内容にしたので、かえってショート版を作るのが難しくなってしまいました。

――あそこのパート結構長尺でしたよね?

吉田氏: 2分くらいですが、でも全体の3分の1よりやや少ないくらいでしょうか。今回はフル尺のトレーラーを、シナリオやこの先のPRを見据えたものにした結果、「パッチ3.5」がリリースできるまでは、お見せできないものが多くなってしまったのです。ショート版の演出をもう少し考えてコンテを切るべきだったなと、次回は気をつけます。

――あの続きは東京で見られますか?

吉田氏: 東京ではまだ無理ですかね……。

――あれは前後を切ってるのですか?

吉田氏: どちらかと言えば後ろを大幅に切っています。

――そもそもの疑問としてなぜ光の戦士が重要そうな女性と組み手をしているのですか?

吉田氏: その辺りはご想像ください。4.0自体をプレイしないとわからない部分もありますし。また、今回のティザーにある最後に突進して2人がぶつかるシーンは、もともとの字コンテには存在しなかったのです。ショート版としてまとめようとしたら、ラストのインパクトが足りなくなってしまい、急遽ヴィジュアルワークスにお願いすることになりました(苦笑)。

 今回は敢えて「FF」らしくない雰囲気にした部分もあります。ファンタジーで、ダークで、竜がいて、竜騎士がいて、みんなが「うおー!」と感じて貰えるというのは、「蒼天のイシュガルド」で実施しました。今回は全部繋がったフルバージョンを見たときに、驚きと期待感が最大になるようにと思っています。徐々に明かされていく全容にご期待いただきたいです。

 現在、ゲーム市場のPRは以前とは明らかに変わったと考えており、新規の方に向けてのPRは長く行なうものではなく、発売直前の垂直立ち上げが主流だと思っています。今の市場は、よぼどコアじゃない限り、プレーヤーの、もしくは消費者の興味というものは発売直前の「すぐに触れる直前」じゃないと食指が動かない。MMORPGの場合は、継続してくださるお客様がいるので、中長期的なPRも大切ですが、拡張パックのように新規リリースに近いタイトルの場合は、両面を考えなくてはいけません。たとえば、「ドラゴンクエストビルダーズ」では、マスターアップのスケジュールがギリギリになり、偶然ではあったのですが、体験版をリリースできたのが発売の2週間前でした。しかし、この発売直前の体験版が、これまでのどの体験版よりもとても効果的で、「ああ、やっぱり大規模PRは発売目前に一発勝負の時代だなあ」と改めて感じました。

 昔のゲーム業界だと1年前とか2年前にタイトルを発表して、半年毎にちょっと情報が出て、というものが多かった。プレーヤーも市場も飢餓感があったから、それらの情報公開を待っていたし、情報が公開されれば、アレコレと想像して発売を待ちました。しかし、今は身の回りにゲームもエンタメも多く、それらの情報や期待感は、すぐに目の前にある遊べるもの、楽しめるものによって、かき消されてしまいます。

 確かに「紅蓮のリベレーター」が2017年初夏発売とは言っても、半年以上の期間があります。普通の人は一瞬「へぇ」となったあと、しばらくは忘れてしまいます。ですので、今回の発表は、マスに向けたものではなく、まずは既存プレーヤーの方向けです。まずはジワジワ盛り上がる下地を、プレーヤーの方と一緒に作っていく。この熱気を東京のファンフェス等であげていき、フランクフルトのファンフェス辺りから、一旦最大化します、その後、新規の方を含めた垂直大規模PRというイメージでいます。

――今回発表した内容は、全体の何割くらいですか?

吉田氏: ゲームのプレイ時間の割合で言えば、レベルキャップの開放とかは大きいですし、難しいご質問です。でも新フィーチャーは何もお話してないですし、発表自体で言えばちょうど三分割なのかな……。でも、やっぱり東京とフランクフルトのほうが発表のネタは断然でかいです。

――そういう感じがしましたね。まだ肝心の話をほとんどしていない。

吉田氏: してないですね。ですので、今回はプロローグです。引き続き東京やフランクフルトでの発表をお待ち下さい。

――タイトルに秘めたメッセージは?

吉田氏: 「蒼天のイシュガルド」ではフライングマウントがあって、空へということはかなり早い段階で決めていたので、そういう意味では蒼天という単語は割とすんなりと出てきました。空へ向かうということとイシュガルド。「Hevensward」というタイトルも、キリスト教的に言うと天国は1つだけれども、エオルゼアにはたくさんの天国があるという意味で「Hevens」なんです。

 前回のテーマカラーが青だったので、今回は赤です。アラミゴ奪還をベースにして、革命の旗印のもとに、熱気が渦巻いている。その熱に動かされた人たちが集まってきて、自由を勝ち得るというイメージが「赤」に象徴されています。他に「灼熱」などの単語も候補だったのですが、「蒼天」も普段使うイメージではないので、使うとしたら「紅蓮」がしっくりかねということで、「紅蓮」という単語は割とはすんなり決まりました。

 今回は解放するというところを強く意識したストーリーが念頭にありました。今日の基調講演でも少しお話ししましたが、そうはいっても誰もが「今」が変わってしまう「解放」を求めているわけではない。その辺りを掘り下げられればと思っています。

 ただ、“解放者”に当たる英語があまりいいのがなく、あっても法務的にNGで英語は苦労しました。日本人がぱっと聞いてわかる単語がなくて、例えば「新生エオルゼア」、「蒼天のイシュガルド」、造語だとしても地名だとわかればいいんですが、なかなか決まらず……。「解放者」というキーワード自体は割とすんなり決まったので、解放者にあたるワードをという話をしたら、「リベレーター」が英語的に1番しっくりくる。しかし、日本人になじみがなさ過ぎてわからない、ということで、漢字をルビとしてあてるということにしました。

――地名がくるかなと当初は思ったんですが。

吉田氏: 今回も地名にした場合、今後の拡張が全部その縛りを受けそうで、今回は地名は外しておこうと考えました。そもそも「新生エオルゼア」というタイトルも、イシュガルドだってエオルゼアの一地方なので、厳密には地名を指してしないのですが。

アラミゴを舞台にした理由、その意図

「紅蓮のリベレーター」ではアラミゴの奪還がテーマになる
アラミゴのイメージ

――アラミゴを舞台に選んだというのは、「旧FFXIV」で仕掛けた伏線を回収するためですか?

吉田氏: 「旧FFXIV」では特にアラミゴの話に関して、ウルダハがらみでかなり関わってきていました。「新生」でも、結局そこが根幹になってイルベルドの暴走があり、光の戦士は苦境に立たされてイシュガルドに行くことになりました。これからも「FFXIV」を運営していくためにも、やはりアラミゴは避けて通れないだろうと考えています。

――ではアラミゴを舞台にすることは割と初期の段階で決めていた感じですか。

吉田氏:うーん、イシュガルドほどすんなりではなかったですね。イシュガルドはそもそも僕が体制を引き継いだ時に、「ゴシックファンタジー要素はすべてイシュガルドにあります」と説明されたのですが、ゲームには登場していないし、設定だけじゃ意味がないなと思ったのです。

 ですので、拡張パッケージを作るのなら、最初にやらなくちゃいけないのは、イシュガルドの大審門を開けて、プレーヤーのみんなにイシュガルドに行ってもらうことだと思っていました。イシュガルドは竜と竜騎士の物語にできる、それもあってすんなり決められたのですが、特に日本の方は、日本が非常に平和な国でもあるので、アラミゴのような設定や価値観は受け入れられにくいかもしれないと、ちょっと悩みました。支配するものとされるものがあり、そこから自分たちの場所や土地を奪い返していくというのがあまり日本的ではなくて。発表直後の日本は、あまり評判良くないかもなぁと。

――アラミゴにしようと決めたタイミングは?

吉田氏: 「3.0」をリリースした直後くらいです。パッチを毎回ボリュームあるものにしつつ、早くスタートしないと拡張パッケージを大型にできません。パッチ3.3で竜詩戦争の完結を決めたのもその頃です。

――「蒼天のイシュガルド」ではラウバーンと戦うシーンがありますが、ラウバーンを登場させたのは、次はアラミゴにするというメッセージだったのですか?

吉田氏: 意識していたかどうかと聞かれると、意識はしていないですが、無意識のうちにスタッフがそうした可能性はあります。ただ、ラウバーンというキャラクターは、もともと闘技場でのし上がってきた、腕一本でアラミゴからのし上がってきたという設定の割りに、今一歩描き切れていなくて、パッチ2.55の時に1回大暴れはしていますが、真正面から戦うという意味では三国エオルゼアの中では動かしやすかったキャラクターですね。

――アラミゴの開放ということで、色々なところで解放軍とガレマール帝国が戦っていたり、世界観を表すための工夫はありますか?

吉田氏: そうですね、今までにない仕掛けに挑戦するつもりです。もともと政治的に占領されているところを奪還していく話なので、その辺りをMMORPGでありながら上手く見せたいと思っています。三国エオルゼアの連中が、あまりにも政治的配慮によって具体的に行動しないのもそろそろ終わりにしたいので、ちょっと新しいことはやります。これ以上はちょっと言えないですが、「FF」なのでシナリオを盛り上げるためにコストをかけるという、普通のMMOではやらないことをシステム的にはやろうとしている場所はあります。

――今回は新種族の発表はありませんでしたが、アウラに飛びついた割合は想定と比べてどうでした?

吉田氏: おおむね想定通りです。幻想薬で気軽に種族を切り替える人達も一定数以上いるというのがよくわかりました。ファッション的に種族を変える方が増えているのは、時代の流れだと思います。でもそれは決してロールプレイをないがしろにしているわけではなくて、自キャラが好きでたまらないから、ララフェルになったら、ララフェルらしい動きをするし、アウラだったらアウラらしいコーディネートをして戦闘に行こうとするし、それも一種のロールプレイなんだと理解しています。

――新しい蛮族は出ますか?

吉田氏: はい、蛮族は新たなものが登場します。

――今回、アラミゴ方面だけではなく、例えばイシュガルドのもっと北の方とかが追加される可能性はありますか?

吉田氏: それはわからないです。

――例えばイルサバート大陸やドマ付近とか。

吉田氏: 少なくとも、今日お話ししたのは、アラミゴの奪還をしていただくということですね。そこはいろいろと妄想を膨らませていただければいいかと思います。

――基調講演で発表されましたが、「4.0」でもフライングが続くというのが、意外に思いました。もちろん、飛んだ方が楽しいのは当たり前なんですが実装するのは大変ですよね?

吉田氏: 大変ではありますが、仕様は完成しているので、あとはマップの作り方次第です。また、MMORPGの場合、一度便利になったものを取り上げると強い反発が出てきますので、今後追加されるエリアは基本フライング前提です。

――ということは「4.0」はフィールドも立体的なものになりますか?

吉田氏: 少なくともフライングして楽しめるマップになっています。

――「4.0」のタイミングで三国のマップでも飛べるようになったりしますか?

吉田氏: 今のところ予定はないです。以前もお話ししましたが、フライングした時の遊びを作るコストがないからです。ただ飛ぶだけだったら、マップの穴をふさげば飛べるのですが、それでもかなりのマップ修正時間になってしまいます。その分は、どうしても新マップの作業に充ててしまう、という感じです。

――飛ぶ以外の、新しい移動手段は何か用意されますか?

吉田氏: 移動手段には限定しないですが、ゲーム体験はもう一段高めるつもりではいるので、さらなる情報公開をお待ちください。

――「FF」の順序としては、徒歩から入って海、空じゃないですか。「FFXIV」の場合、もう飛んでしまったので、後は潜るしかないんじゃないかという感じですよね。

吉田氏: 潜れたらいいですよね……。あんなに綺麗なグラフィックスで、みんな水着も着ているけど、走ることしかできないですからね。

――船に乗れるのも楽しそうですよね。

吉田氏: 急にドットのマップに切り替わって……MMOで2D俯瞰ドットマップになって、ハイデリンを船で移動する。パーティリーダーしか船が操作できなくてもめるという(笑)。意外とおもしろそう。

――今回アラミゴ付近のエリアが公開されて、今までのエリアと光源の使い方とか、エリアの雰囲気が違うなという気がしたのですが、今回の新エリアに関しましてエリアのコンセプトはありますか?

吉田氏: 「3.0」の絵作りが僕個人としては気に入っています。しっかりと今の世代に合わせ、妙に濃すぎず、でも「FF」らしさのきれいさやくっきりさは残しつつも、暗いところは暗いというメリハリはつけられたと思っています。これを踏襲しつつ、新たな表現を模索していきたいです。

 後は最近よく指示しているのは、エリアごとの感覚の違い、これはIDの開発でもすごく言っていることなのですが、例えばソーム・アルの空の色など、「一段上のファンタジーっぽさ」を目指して欲しいと。どうしてもデザイナーたちは、リアルな描画が実現できると、現実にある色に引っ張られがちになります。そこで現実の写真にも稀にある現実味のないファンタジーっぽさを目指して欲しいと言っています。

 それはライティングのシェーダーを追加するわけではなく、僕たちの創意工夫というか、デザイナー1人のアイデアやカラーコーディネートでまだやれることは山ほどあるのかなと思っているのです。それに合わせた雲の描きかた、天球のつくり方1つでまだまだ絵は変えられる、単に最新のテクノロジーを使うだけでは芸がない。今の世代の中で、創意工夫できる余地は、まだまだたくさんあると思います。

――その工夫がIDの中に行かされたりしているわけですね。

吉田氏: はい、その辺りはパッチでも感じていただけるのではないかと思います。

――蒼天のソーム・アルもそうですが、移動していくことによって時間が経過して、最終的に夜になって、一回戻ってみたくなるようなステージになっていると思います。

吉田氏: そうですね。あのあたりは直接的に課金会員数の上昇につながるものではないのですが、繰り返しやっていると離れられなくなるというか……このクオリティに慣れてしまうとほかのゲームが遊べない、というのが「FF」の魅力だと思いますので、今後もこだわっていきたいと思います。