インタビュー
「ファイナルファンタジーXIV: 紅蓮のリベレーター」超特大インタビュー
2016年11月14日 14:00
バトルシステムの改修。「ロール共通アクション」とは何か?
――4.0の要素として、バトルシステムの改修が行なわれますが、もう少し詳しく聞きたいです。専用のUIみたいな話が出ましたが、もう少しヒントがあると。
吉田氏: 今は基調講演でお話ししたところまでです。
――竜血だったり、エノキアンだったりしたものを維持しようとするコンテンツ自体はかわらない?
吉田氏: 実際に組み上げて調整をするまで、何も確定では内ので、これはあくまで一部の例としてお聞き下さい。たとえば持続系で言うと、エノキアンを永続にしてしまう可能性はあります。ただ、永続する代わりに、特定の手順を踏んでエノキアンを更新した黒魔道士には、DPSにボーナスが掛かる……。本当にあくまで例えですが、エノキアンをかけると、エノキアンのタイマーが回り始める。今と同じようにカウントダウンして、切れると自動発動し、何周しようが基本的には消えない。しかし、自力で更新するとボーナスが付き、自動更新と自力更新で「ジワジワうまさやDPS差が出てくる」というイメージです。
例えばですが、魔紋を出して、出した直後にAoEがきて、避けなきゃ……と魔紋へ戻ろうとしたらまたAoEがきて……どんどん魔紋から遠ざかっていくシチュエーションがあったりします。「いっそ、魔紋にエーテリアルステップしたい!」。この辺りを実現することで、単に移動して避ける人と、ステップする人のうまさの差を出していきたい。どの黒魔道士もきちんとファイジャを撃ちまくっているけど、ああ、あの人のファイジャは特定効果が掛かってい、さらに強いな! といった感じです。今はエノキ更新に失敗すると、ファイジャorファイアですから、差が大きく出すぎだということでもあります。
――そのUIはジョブ事に変えるのですか?
吉田氏: 効果発生に時間があるものは、できるだけ専用UI化してジョブ別に変えるつもりです。まだ決まっていませんが、例えば暗黒騎士には「暗黒」ゲージが専用に用意されていて、見た目も暗黒騎士に合わせたデザイン。暗黒のゲージ管理は、そのUIを見ながら視覚的に行なう、というイメージです。例えばモンクの疾風迅雷だったら、ゲージでは無く、3つの丸いオーブのような専用UIにして、疾風迅雷1だと1つ目の玉が輝いていて、3つ貯まるとコンボゲージのように現在疾風迅雷マックス中、一気に消費すれば特定のスキル発動! とわかりやすく表示するとかですね。これ以上バフアイコンとにらめっこしていては、新規の方に厳しいゲームになってしまいますし、もっとグラフィカルにしていこうと。あとは、わかりやすさによって、ジョブの使いこなしを進めたいという思いもあります。
――今はみんなバフゲージをキャラクターの近くにおいて、それで確認するという感じですもんね。
吉田氏: 「疾風迅雷をすべて消費する」とツールチップに書くよりも、「オーブゲージが全部空になる」という見た目の方がわかりやすいと思うのです。そこを1ジョブずつ丁寧にやっていこうと思っています。
――新しいバトルシステムだとバフのゲージを全然見なくてもいい?
吉田氏: さすがに全部ではないです。デバフは見る必要がありますし、DoT管理も必要です。
――代表的なものを外に出すけれど、いくつかは残すイメージですか。
吉田氏: 例えばサンダーは今まで通りバフで管理してください。ただ、エノキアンの管理はバフから外してもっとわかりやすくなります、のようにです。今だとサンダーもエノキアンも魔紋も、すべてアイコンでかつ、コンテンツ側のAoEなども見るなどちょっと味気なさ過ぎるのです。
――各ジョブ事に1つ、2つ外に出すようなイメージですか?
吉田氏: 「4.0」の既存ジョブの最終的なジョブデザインにも関わってくるので、全ジョブが専用を持つかどうかはわからないです。ただ、たぶん竜騎士は竜血がメインにはなるので、そこをガラっと変えるつもりはなくて、竜血を使ってさらにジョブ特性を伸ばすために、流血ゲージはあるのかもなあ、という想定です。
これ以上はあらぬ誤解を生みそうなので、ここまでとさせてください。くれぐれも、まだ何1つ確定しておらず、今のお話はあくまで「方向性」の例になりますので、ご注意下さい。
――GCDを意識しながらコンボを繋いでいくというところは?
吉田氏: そこは変わらないです。ベースはあくまでも「FFXIV」なので。あれ以上忙しくなることは絶対にないです。
――アディショナルスキルについてですが、クラスごとのアディショナルスキルがあって、それをやりくりして自分なりのスキルをつくりますよね。いくつか共通のものが生じることで、例えば戦士のブラッドバスとかはジョブ固有になるのですか?
吉田氏: これもバトルシステム改修のひとつである「ロール共通アクション」のお話ですね。ご質問の通り、今までアディショナルだったスキルが、ジョブ固有化していくこともあると思います。
――「ロール共通アクション」というお話ですが、DPSは1つのルールで処理するには結構複雑なところがありますよね。近接だったり、遠隔だったり。
吉田氏: どこまでのロールを共通化するかはバランス次第なので、まだ確定していません。遠隔物理と遠隔魔法は同じロールにしても大丈夫そうだね、というのが現状ですが、これも決定ではないです。
――タンクはタンクで共通のものがあるんですか?
吉田氏: そうですね。「一定時間物理耐性20%アップ」のようなアクションは、無理にそれぞれのジョブにアクションを作らず共通化していきます。その分だけ、ジョブ専用のアクションをユニーク化してジョブの特徴を出し、全体のアクション数をこれ以上増やさないようにする。これをすることで「新アクションがありつつ、汎用的なものは共通化され単純に」なります。工夫の余地がありつつ、操作アクション数を現状維持にして、破綻を防ぐためでもあります。
このロール共通アクションや、ジョブ専用UI、ジョブバランスの調整は、「ゲームが簡単になる」というイメージになってしまうかもしれないですが、そうではありません。
よりパーティの連携を高め、より上手くやるために、あえて無駄だというところをなくして、シンプルにする。それにより、よりプレーヤースキルの高い人は突き詰めやすくなるようにしていきたいのです。ただ、上下の差をこれまでほど極端にしないので、差が付くのはより上位の人の間でというイメージになります。
――確かに今は黒魔道士だったら、エノキアンを維持するコアプレーヤーと、エノキアンを落としちゃってファイアーマンになっている黒との違いが大きすぎですよね。
吉田氏: はい。この改修を入れることでカジュアルとミッドコアの差はほとんどなくなるはずです。逆に一部のコアとミッドコアの差が開き始めるので、ここを上手くプレイする余地としていきたいということです。
ただ、上手い人たちのプレイを覆せるような変更ではないので、上手い人たちは相変わらずトップに君臨すると思います(笑)。彼らはサーバーログを見ていても、数段突き抜けていますね……人間ってここまで突き詰められるんだなぁ、と感心します。
――全然違いますか?
吉田氏: 瞬間判断力が凄い。特定ルートの突き詰めは完璧で、その上でランダム性の攻撃が自分を対象にしたときや、味方がミスした際に、まるで最初から決まっていたかのように、ローテーションを飛ばしてフォローしたり、あえてバフの更新を早めておくなど、プレイアルゴリズムが仕上がっていますね。
――ジョブの専用UIはレベル50以降でアクションを習得したタイミングで?
吉田氏: たぶんそうなります。50までは変わらないですね。要はそのジョブの根幹に当たるものを覚えた瞬間に、そのシステムが組み込まれるというイメージだと思ってもらえれば大丈夫です。
――ロール共通アクションの導入もレベル50以降ですか?
吉田氏: ロール共通アクションは、早い段階からシステムに組み込む予定です。白魔道士をプレイしているのに「黒魔道士の迅速魔とってないの?」みたいなことは、減っていくと思います。
――初めて初心者の方が捨身を習得するのも結構大変みたいですね。
吉田氏: 結局の所、捨て身は全近接が使っている。なら、捨て身をジョブ専用化しつつも、他に物理攻撃力アップの共通アクションを作って、ジョブの特性を維持しつつ、わかりやすくもできるよね、と。これもまだ想定です。結局捨て身をロール共有アクションにして終わりにするかもしれません。
既存ジョブの調整について。白魔道士の命中はなくなる!?
――Q&Aで気になる質疑応答がありました。ヒーラーの命中に関しても「4.0」で大きく変える予定だと。
吉田氏: 以前から命中の扱いをどうするかは「4.0」で変えていくつもりです。
――でもジョブの基本的な考え方自体は変わらないですか?
吉田氏: 命中自体を無くしてしまうことも含めて、まだ検討中です。ヒーラーから命中を外してしまうのか、いっそすべてにするのか、命中は残してヒーラーの装備に高い命中を施すのか……いずれにせよ変更は入れます。
――受け流しはどうですか?
吉田氏: 受け流しも同じです。受け流しは効きが悪い上に、方向も限定的なので、命中を同じく何らか手を入れます。
――今回、新アクションの方向性はどんな感じになりますか?
吉田氏: 既存ジョブなら、竜騎士がより竜騎士らしく楽しめるようにというのが「4.0」のジョブコンセプトではあります。ナイトはより硬く、より味方を守れて、そこをまっすぐにしようと。共通化できるところはなるべく共通化して。それぞれの特徴をちゃんとというのが今回のテーマです。
――共通のアクションが増えることで、ジョブそれぞれの個性がより先鋭化していくんだなと思っていいのですか?
吉田氏: 近いと思います。ロール共通にする部分を共通にするだけ、逆にジョブ専用アクションを個性のあるものにして、ジョブ先鋭化するという感じでしょうか。
――基調講演であった、「効果小、用途限定的なスキルを見直す」ということですが、もう少し詳しく教えて下さい。
吉田氏: 日本語の書き方でちょっと迷いました(笑)。
――これって召喚士でトライディザスターを修正したような、例えばレベルキャップの人はログインすると新しい修正されたアビリティやアクションが入っているイメージなのですか?
吉田氏: 例えるならそうですね。あくまでもこれも例ですが、フェザーステップは使っていませんよね? いやもちろん「ソロでクエストをやるときに使ってた! なんでも個性を無くすな!」という方もいらっしゃるのかもしれないのですが、もっとモンクの特性を活かせるものに変えてしまった方がいいと思っています。たとえば戦士のラースも「原初」というゲージに統一してしまい、いずれのスタンスでも原初を消費して技を繰り出すようにして、切り替え用のアクションとかは、減らしてしまいたいのです。
――これ以上増えるとキー/ボタンが足りないよみたいな話もあったと思うのですが、総数自体は?
吉田氏: 今と同じ総数に留めます。全ジョブのレベル70までの新しいアクションを含めた個数シミュレーションは1回終わりました。増えたとしても特定のジョブだけ1増えるとか。1減るとか、そのくらいの誤差に収まると思います。
――ちなみにいまタンクのモードチェンジ的なものがあると思います。DPSモードとタンクモード。アディショナルが共通になるにあたって、そのモードチェンジそのものもなくなったりする可能性はありますか?
吉田氏: 楽しみはあまり奪いたくないので、モードはできる限り生かすと思いますが、煩わしさは減らしたいですね。
――ともあれ既存ジョブの調整は単純に楽しみではありますよね。
吉田氏: 繰り返しですが、今日のお話はあくまで例です。このインタビューの内容を議論していただくのは良いですが、断定的に語ることだけは避けていただきたいな、と。僕の場合は、「未確定とお話しした上で説明しているので、その時点で誤解があったとしても、最終実装に影響はない」と断言できるのですが、開発チームはどうしても気にしてしまいます。どうぞよろしくお願いします。
レイドコンテンツ/アライアンスレイドについて
――「4.0」で実装されるトッププレーヤー向けの新たなレイドコンテンツですけど、2017年に出てくる新たなエンドコンテンツはどういう姿であるべきだと考えていますか?
吉田氏: 少なくとも挑戦したいという人たちが、ワールドファーストを争うレイドレースが終わったとき、「今回の挑戦も楽しかったね」と言って貰えるようにしていきたいです。難易度など色々あると思いますが、エンタメである以上、ゴールを迎えたときに今回は大変だったけど面白かったね、エキサイトしたね、と仲間同士で言えるかどうかが重要だと思っています。天動編はその辺りに上手く着地できたと思っています。
ただ、その一方で物足りなさは感じているプレーヤーさんもいたと思います。人間というのは不思議なもので、ストレスを与えられると、喜びに感じてしまう部分もある。ストレスが強ければ強いほど、そのストレスを乗り越えた時の喜びも大きい。それを知っているからこそ、もっと難しくして良い、という観点があるのもわかります。今の時代に合わせたレイドは、天動編くらいががいいのかなと正直思っています。だけど、それでは満足できないドM属性の方にも、何か提供できないかなとは考えています。あとは、4層突破後のモチベーションですね。自分たちだけが挑戦できる、という優越感などは救っていきたいと思っています。
――基調講演では新たなレイドコンテンツにノーマルと零式の2段階のスタイルを維持したいかどうか聞いていましたよね。吉田さん自身はどうするべきだと思いますか?
吉田氏: 僕は基本維持するべきだと思っています。まだディスカッション中ですが、「偶数パッチでは難易度が高いコンテンツばかりでやることがないというカジュアルな方も、ノーマルにいってシナリオを体験できるというところは非常に大きかったです。そこで自信を付け、極蛮神へ行く方も増えましたし、プレーヤーバリューの点から見てもあの形は崩すべきじゃないと思っています。しかし、コアプレーヤーがそれに引っ張られるのは良くない、「俺たちしか挑めないものがある」というエリート意識はあって良いと思うのです。それが下から見えるから、あこがれだったり、自分も! と思う気持ちが出てくる。この点は、先ほども言いましたが、何か手を打ちたいと思っています。
――それはどういう方向性でのチャレンジですか?
吉田氏: 選ばれし者たちだけが挑戦する、孤高の1コンテンツみたいなものはありかもですね(笑)。
――零式のさらに上ということですか。
吉田氏:解けたか、解けないかがすべて。でもそこに挑戦する権利があるのは、零式4層突破が必須、そのフラグ持ち以外、参加NGとかですかね。
――零式を突破したら挑めるというような?
吉田氏: あくまで例えばですが、そういうことです。その代わり僕らも妥協せずに作るので、難しすぎても文句なしでお願いします、という(笑)。
――私はアライアンスレイドがとても大好きで、責任が薄い中でワイワイ遊べるのがいいですね。仕事帰りにアルコールが入った状態でワイワイ遊びたいので、アライアンスレイドが丁度いいんです。今回アライアンスレイドの新しいものが入るということですが、さらに「ビッグニュースもある」と言うことで、楽しみで夜も眠れないんですが。なにかヒントがありますか?
吉田氏: このヒントはどうしても出せないんです。ごめんなさい。
――それは48人になりますとかそういう話ではないですよね?
吉田氏: そういう話ではないです。「FF」好きにはたまらないはず!とだけ。
――プレイ人数は24人のままですか?
吉田氏: それは変わらないです。今の世の中、24人以上のレイドは無理だと思います。人が集まらない。みんなで楽しくワイワイやれてこれ以上集めなくてもいいという限界値が24人だと思ってます。
――残り2回のファンフェスで詳細は出るのですか?
吉田氏: 発表はします。そういうスケジュールで動いています。遅れて、これ日本で言えないよってことになったら困りますが(笑)。
新装備・アイテム・アイテムレベルについて
――今回の発表でジョブ専用装備が何種類か公開されましたが、微妙に男女でデザインが違っていましたね。「4.0」から男女で衣装デザインが変わるのですか?
吉田氏: 特に白魔道士を使う男性キャラのプレーヤーから、「あまりにも白は女性というイメージでデザインしすぎじゃないか」、というフィードバックをいただいていたので、今回、いくつかのジョブは特に注意して、男女のデザインを明確に分けることで、どちらが着てもジョブのイメージが崩れないようにやっています。
――あのジョブ専用装備はレベル70ですか?
吉田氏: はい。70になってからです。
――残りのジョブのジョブ専用装備はいつ公開になりますか?
吉田氏: 来年以降のPLLあたりですね。12月には東京のファンフェスですからね。3.5の情報も出さなければいけないし。
――「4.0」では今回もアイテムレベルはガーンとあがるんですか?
吉田氏: はい、上がります。ただ、1度アイテムレベルテーブルは整理しました。昔「2.0」の頃に500までのテーブルを作成しましたが、途中でちょっと計算式が破たんが出たので修正しました。今回も4.0に合わせてマイナーチェンジをしていきます。数字が増える喜びは絶対にあるんどえすが、ダメージがインフレーションしすぎても興ざめするので、落としどころを考えているところです。
――所持品の総数が増えるということですが、リテイナーの所持品も増えるのでしょうか?
吉田氏: リテイナーまで手を広げるかどうかは未確定です。なぜならプレーヤーのインベントリとリテイナーのインベントリで決定的に違うためです。プレーヤーのインベントリはコンテンツにマッチングして、インスタンスワールドに行くとき、実は所持品をすべて持ち込んでいます。「FFXIV」は1キャラクター辺りアイテムを持てる数が相当多いMMORPGなので、これをスムーズに同時多数エリア移動させたりするのが、もの凄く高度でもの凄い高負荷なのです。今回はこれを増やすためにインフラをさらに増強し、負荷を上げても大丈夫なギリギリまで、所持品を拡大するというのが目的です。
逆にリテイナーのインベントリは、「旧FFXIV」を反面教師に作りました。「旧FFXIV」のリテイナーはどこからでも、誰からでもアクセスできたため、データが不安定になりやすく、サーバーダウンを引き起こすトリガーでもありました。その分、結局高負荷になってしまった。新生の場合には「リテイナーベル」を通じてしか呼び出せない、アクセスできるのも常に自分ひとり。これが前提の仕様です。それ故に、リテイナーが所持しているアイテムのデータはセキュリティレベルが高く、とても安全に管理されています。アイテムが無限増殖するようなデュプリケイトのバグを防ぐためしようなど、一部不便にすることで、安全性を高くしてあります。こちらの容量は単純にストレージ次第ですが、プレーヤーの所持品を増やすインフラ増強と一緒にすると、計算が狂ってしまうので別の機会にさせていただきたいと思います。
――それは今回PS3のサポートを切って、メモリ周りの制限から開放されたことによる影響はありますか?
吉田氏: いいえ、まったく関係ないです(笑)。一部誤解があるようなので、ちょっと技術的なお話をしておきます。そもそもゲームにおける「メモリ」とは、読み込みの早い「仮想ハードディスク」のようなものです。HDDやBlu-rayから読み込むのでは、あまりにも時間が掛かる「モデル」や「テクスチャ」を格納しておき、ゲーム側が「そのデータが欲しい!」と言ったら、即座に渡してくれる箱のような存在。それがメモリ。もちろん、できるだけアイテムのソートを早くするために、グラフィックスデータだけでなく、ゲーム内のリストもオンメモリにしておく場合もあります。ですが、インベントリやアーマリーチェストの中身は、全部サーバーで管理されているので、PS3もPS4もWindows PCもMacも何も関係がないのです。たとえば「同時に開けるウィンドウ数をもっと増やしたい」はメモリが影響してきます。これもすでにPS3/PS4/Windows PCで個別管理になっています。コリジョンの読み込みスピードは、メモリというよりハードウェア性能で下限があったりしますが、表層増の数とかには、実はあまり影響がないのです。
――ユーザーにはメモリ管理の知識はそれほどないでしょうしね。
吉田氏: そうですね、今は若い世代のゲーム開発者でも、メモリを管理しなくなってきたのもあります。僕や皆川、髙井、祖堅なんかは、「メモリをいかにうまく使うか」でゲームを開発してきた最後の世代かもしれません。芸術的にメモリを使うことで言えば、「FFXIV」が今は世界一細かくギリギリまで使っていると思います。皆川の口から「メモリガ」が出たら、たぶん世の中の誰が作っても無理なんじゃないかと……。
しかし、僕たちが「メモリガ」を発動するときは、PS3だろうが、Windowsだろうが引っかかるものの時に使っています。ですのでPS3のサービスが終了したとしても、メモリという奴は必ず我々を苦しめにやってくるのです。例えば同時描画対数をもっと増やそうと思ったときに、PS3だけはもう増やせない。100人対100人みたいなコンテンツが作れない、というのはわかりやすいPS3のスペック成約になります。しかしこれも実現の必要性があるか?と考えると、これだけでは判断できない。このように、細かいことの積み重ね協議、デバッグの範囲拡大、開発機材の老朽化、ハードウェアの故障、プレーヤーのハード移行、これらを全部ひっくるめた決断が、今回のサポート終了のお知らせなわけです。
今日僕が基調講演で言ったとおり、PS3は一時代を作った素晴らしいハードなのです。僕たちが「FFXIV」を立て直し、新生するに当たって、PS3版がなければここまでは到達できなかったと思っています。敬意を払うというのは、全然嘘でもなんでもなくて本心なのです。しかし、ここまで献身的にサポートして下さったSIEさん自らも「次のジェネレーションであるPS4に全力です」ということであれば、むしろそのPS3で培ったノウハウや精神をしっかりPS4版でさらに昇華させましょう、というのが両社で出した結論です。
――その説明にはかなり時間をかけられていましたね。会場全体の雰囲気としては、やっと厄介者のPS3がいなくなるみたいな雰囲気があったなかで、静粛に話を聞いてみたいな感じでPS3をちゃんとリスペクトするみたいな感じで。
吉田氏: 実際リスペクトしていますし、少なくなったとはいえ、PS3版で楽しく遊んでくれている人たちはたくさんいるのです。僕は今日その人たちに「ごめんなさい、もっともっとゲームを楽しくするためとは言え、4.0が発売されると、PS3版では遊べなくなるということを言わなくてはいけない。キャンペーンなどで最善は尽くすにせよ、個人の出費のなかでPS4というハードを買っていただかないと遊べなくなってしまう。みんなでPS4版へ行こうぜ!とは言えたとしても、会場の「イエー!」は僕の感覚とはちょっと違うのです。でもそれは、良い悪いの話では無く、ひとつの時代の区切りが来るということ。だからしっかりお話ししておきたかったのです。