インタビュー
「ファイナルファンタジーXIV: 紅蓮のリベレーター」超特大インタビュー
2016年11月14日 14:00
「禁断の地 エウレカ」について。「全員が行く場所ではない」
――「禁断の地 エウレカ」については教えて下さい。まだちょっと茫漠としていますが。ビジュアルコンセプトと、この地に与えられる役割が知りたいです。基調講演では武器の強化ができるということでしたが、それ以外の役割を教えて下さい。
吉田氏: 基本的には「FFXIV」をいつも通りにテーマパークと例えたら、エウレカは全員が行く場所ではないと思っています。例えば実際にあるテーマパーク内の「ホラーハウス」。行かない人は絶対に行かない(笑)。なぜわざわざ怖い思いをしに行くの?と。例えば女性とテーマパークに行くとき、男性の中には自信があるとやたら女性を誘う奴がいる。でも女性からすると、「はぁ、付き合うか」って人もいれば、「は、バカじゃないの? 強いとこ見せたいの? 私はイヤだから」みたいな人も絶対にいる。今回、エウレカという場所は、この例のように「行きたければどうぞ!でも人によっては合わないのでご注意下さい!」というコンテンツです。FCの中でも好き嫌いが分かれると思いますし、エターナルバンド相手でもご注意下さい!という感じでしょうか。誰しもがホラーハウスにはいかないですが、あの刺激がたまらないという人達は通う……そんな場所にしたいと思っています。
――そういう場所って今の「FFXIV」にはないですよね。
吉田氏: 今まではないですね。今まではゾディアック・ウェポンやアニマ・ウェポンで、「FFXIV」ランドという中の色々なコンテンツに導線を張ってなんとかそれをやっていたのですが、既存エリアを行き来するのはもういい加減飽きただろうと。僕たちも作るネタがもう限界です……。それならそれをやる専用のエリアを創ろうかというのが、なんとなくの切っ掛けです。
また、第一世代MMORPGの「またポップしねーよ、ふざけんな!」とか「ようやく倒したのにドロップしねー!」などを実装したいスタッフもいるので、では合わせてみようかという感じです。レベル70以降の遊び場なのでまだフワッとした内容ですが。エウレカは強力な武器、防具、魔法が封印されていた土地という設定なので、そういった一発の魅力があるけど徒労に終わるかもしれない。そんな場所にしたいと思います。
――72時間に1回ポップするモンスターもそこで出る?
吉田氏: 今日例として出しましたけど、どうなるかはわからないです。今の時代、72時間はさすがに無理な気がしますが(笑)。
――“72時間ポップ”って懐かしい響きで、「FFXI」にそういうのいっぱいありましたよね(笑)。
吉田氏: そうですね、一部だけでも復活できたらな、と。全部そうするつもりはまったくなくて。それなら「FFXI」でよくなってしまうし、そうじゃないから「FFXIV」をプレイして下さい方もたくさんいらっしゃいます。
――ビジュアルイメージはあれでFIXですか?
吉田氏: あれはぜんぜん仮です。まだこれからですね。おそらくまだ「FFXIV」のシナリオの中で未解決の部分も包括していきたいので、アートはガラッと変わると思います。
――「FF3」のファンからすると「懐かしいな」という感触を得られますか?
吉田氏: うーん、クリスタルタワーほどは無いかもしれませんね。今回は「FFXIV」ならではのエウレカを作ろうと思っています。
――「エウレカ」は「ディアデム諸島」と、今度3.5で公開される「ディアデム諸島2」みたいな雲海探索の延長線上にあるコンテンツなのですか?
吉田氏: かなり異なります。もちろん雲海探索のフィードバックを受けたうえで、エウレカの調整はしていきますが、コンテンツ企画の出発点が大きく異なります。次のパッチ3.5で予定している探索の第2弾は、そのコンテンツの中に4パーティじゃないとクリアできないレイドとかがあったりするので、全然違う遊びになっています。
――リワード的には前回のエーテライト装備のようなものになるのですか?
吉田氏: いまリワードは最終調整中です。ちょっと今までの「FFXIV」とはまたちょっと違う遊びですので、リワードも苦労しています。このコンテンツの反応を見て、エウレカをさらにパワーアップさせる。引き続き、新しい価値観を提示しようかなと思っています。
――過去のインタビューでアニマウェポン的なバトルコンテンツをあまりやり込んでいない人でも、強い武器が手に入るコンテンツをちょっと変えたいなと言ってましたが、それは?
吉田氏: それが「エウレカ」だと思っていただければ。たぶん防具もやるのかな……死んじゃいますね(笑)。
――専用エリアを用意することで、遊びそのものを変えてしまうのですね。
吉田氏: でも以前からお話ししている通り、「FFXIV」のベースのゲームデザインを変えるつもりはないです。今の時代に合わせて作ったゲームデザインだからこそ、新しい時代の流れに沿うように、形を変えることはあります。しかし、昔に戻ることは絶対にない。昔に良かったものが、今のトレンドになることはありますが、それは必ず過去とは似て非なるものです。ただ、過去の面白さがあってこそ今がある、過去を全否定するつもりはないので、そのエッセンスをどうにか遊びとして復活させられないか、と考えています。
防具の方は気に入ったデザインを登録して強化していく方がいいのかなあ、などぼんやり企画を進めています。トナカイを鍛えまくる人もいれば、初期服の人もいる。ミラプリすればいいって考えもありますが、そのデザインで強い、もこだわりがありそうだし……と色々。
――固定メンバーで衣装を揃えてユニフォームみたいにして遊んでいるグループがいますね。全身ピンクで零式突破とか流行ってますね(笑)。
吉田氏: 以前の中村さんのインタビューで定型文化してしまいましたけど、「本当に1番いい遊び方をしていただいてますね」。そうやって遊んでいただけると、大変に嬉しく思います(笑)。
ハウジングの追加について
――4.0でハウジングを足すということですが、パッチ3.4でもアパルトメントで、ハウジングはある意味で無限に増やしたのに、さらに足す理由と意味について教えて下さい。
吉田氏: スタンドアロンのRPGだと、複数の地域がゲームに登場したとしても、そのときに想定した地域特性の文化圏でいったんゲームは閉じます。「FFXIV」の場合はMMOなので、新しい土地へ行ったら、新しい文化に触れてもらいたいという思いがあります。その地域の宗教とかその地域に生息しているモンスターによって、当然作られる家も違うし、作られる家具も違ってくる。もちろん1つの家にすべての家具を置くことはできるのですが、文化圏毎に揃えることでゲームの中に住んでいる意識が変わってくると思っているます。まったく違うエリアにハウジングエリアを足すことが、プレーヤーの皆さんの継続モチベーションに大きく寄与する、という風に僕は考えています。
もちろん、アパルトメントじゃなくて地下工房が作れる庭のある個人宅が欲しいという人だって、いっぱいいると思いますし、新たな土地にハウジングゾーンが開けることによってFCに対してまた新しい目標ができる。「よーし、ギル貯めて引っ越すぞ!」とかですね。そう考えた時に、また結束が一段深まるし、仲間意識の新しいモチベーションができると思っています。これらは一見すると普通ですが、すごく重要なことだと思っているので、コストをかけてでも新しい土地のハウジングエリアは必要だと思っているのです。
――私が勝手に妄想したのは、「4.0」でアラミゴの反乱軍に加わるので、その中で一緒にバラックみたいなところに暮らして、ひどい生活をしながら少しずつ生活レベルを上げていく、そういう生活コンテンツみたいなものを想像していたのでですが、そういうものではなさそうですね。
吉田氏: バラックだったら、誰も新しい家を買わないと思うんですよ(笑)。ゲームの中ではできるだけ理想的な家にしたいと思うのが普通。「俺はリムサのあのリゾートを捨てて、バラックに住むぜ!」という人はさすがにいないかなと……。そこは追加される土地がイシュガルドにせよ、アラミゴにせよ、自分たちの手で建設できるようになった感、などは持ってもらいたいなとは思います。
――今回アラミゴが舞台ということで、アラミゴにグリフィン騎兵団というのがいるという設定があったんですが、勝手な妄想ですが、グリフィン騎兵団ですからフライングマウントに乗ったまま戦ったりとか、そういう新しい試みみたいなものはありますか?
吉田氏: 空中戦をやるのなら、以前からお話ししている通り、独自のコンテンツを作ります。例えばアレキサンダーみたいな巨大なやつを、全員でフライングマウントに乗りながら爆弾を運んで上から落としたりとか、専用の遊び、専用の演出にしていかないと絶対におもしろくならない、やれたら面白そうだけど、まだ予定にはないです。
PS4 Proへの対応について
――今日のQ&Aでは吉田さんが半分冗談で「それはPS5が必要ですね」と何度か発言されていましたが、やっぱり吉田さんの中ではPS4すらも結構きつくなりつつあるなという感覚があるんですか?
吉田氏: そうじゃないです。「FFXIV」プレーヤーの方は新しい世代の方も多く、初めてのMMORPGが「FFXIV」だという方が、世界中に本当にたくさんいらっしゃいます。それはアメリカだろうが日本だろうが変わらずで、そういう方たちの質問は、とてもナチュラルです。純粋に「こうなったらいいな!」なのです。例えばゲームのことにも詳しくないし、でもMMORPGはとても新鮮で、だからもっと「こうなればいいのに!」は僕にとってもの凄い剛速球なんですよ(笑)。
――なるほど。要するに新しい世代のユーザーは、MMORPGでできることとできないことがわからないから、ガンガン要望を挙げてくると?
吉田氏: そうです。こういうイベントでは1番怖いです(笑)。「キャラクターが着ているジャケットとTシャツ、両方の色を別々に変えられたらいいのに!」というのはわかります。現実でも別々に着ますし、しかし、実際にこれをゲームで実現するためには、それぞれの境界線に従い、彩色可能マテリアルを別々に作り、つなぎ目の破綻無く色を調整し、どこのカラーを変えるかという指定も必要だし、配色の単純な調整が、2カ所色変更できる1種の装備で、それが15ジョブデザイン分あったら、15×2×色数ですよね。リアルタイム演算して……やれなくはないけど、途方もない作業量で、パッチがリリースできなくなるか、できても数が激減します。つまり「不可能じゃないけど、すげー大変です!」という意味で、「PS5があればできるね」というのが今日のキーワードです(笑)。
PS4でもめちゃくちゃコストをかければできます。でも全然現実的じゃない。でもそういうド直球な、「どうしてジャケットとTシャツの色は別々に変えられないんですか?」とキラキラした目でいわれると、「それはね、PS5がないとできないんだよ」ってくらい、わかりやすく回答したいのです。すると「ああ、そうなんですね、では、いつかその日がくるのを楽しみにしています!」と目のキラキラは変わらず納得されます。今日はそのキャッチボールが多かったですね。僕も調子にのって使い過ぎましたね……。自分で言ってて4回目はさすがに「お前ウケたからって乱用しすぎ」って自分に突っ込んでました(笑)。
――でも現実に、PS5ではありませんが、11月にPS4 Proが出ます。前回のインタビューでは、「まだ様子見」というお話でしたが、「紅蓮のリベレーター」で対応することはありますか?
吉田氏: 「紅蓮のリベレーター」発売頃には、何かしらの4K対応はするかな、と思います。こちらも正式に決まったらアナウンスさせていただきます。
――それでは「4.0」以降、PS4とPS4 Proでビジュアル表現は変わる可能性があありますか?
吉田氏: もちろん、それはあると思います。今テレビの解像度は個人個人の需要に応じて変わってはいます。4Kという家庭内の最高解像度モニターで「FF」が綺麗な絵で動いている、というのはスクエニとしてはやるべきなのかなと思っています。当然それはスタンドアロンの「FF」と、これだけたくさんのキャラが出ている「FFXIV」では条件がまったく異なるのですが、双方やるべきなのかなと。社外から当時のスクウェアソフトを見ている時、「こんなクオリティのタイトル作りやがって! 俺たち弱小はどうすりゃいいんだ!」みたいなことを感じさせてくれたのが「FF」でした。MMORPGで4K対応とか、無茶するなよ! 比較される側の苦労も知ってよ! と思って貰えないと、「FF」としてはダメなのかなあ、と。
――PCのスペック下限の引き上げについての発表も行なわれましたが、DirectX 12への対応など、もっとスペックの高いPCを使うメリットが出るような計画はありますか?
吉田氏: DX11版があるのでDX12対応はやらないと思います。これからやるとしたらネイティブの4K対応。モニターの精度が上がってくるので、より高彩度高画質、高ピクセルレートで遊びたいという人に対してはやっていくと思います。
――もしやるとしたらそういった場合アセットはどうするのですか?
吉田氏: 「FFXIV」の場合はそもそもハイレゾですので、入れ替えは当面ないと思います。やるとしたら、5.0とか、6.0の時に描画エンジンごと取り換えて、シェーダーも何もかも変えることにならない限りは、リソース分割まではないと思います。エンドコンテンツプレイ中に、エフェクトをオフにする方もいますし、なかなか難しいですね。