インタビュー

セガ 3D復刻プロジェクト「3D パワードリフト」インタビュー

スペシャルモードはセガ尽くし!単体配信で久々の“スペシャルおまけ感”をプラス!

左から順に、奥成洋輔氏、堀井直樹氏、下村一誠氏
11月2日 配信予定

価格:800円(税別)

CEROレーティング:A(全年齢対象)

 ニンテンドー3DS向け「セガ 3D復刻アーカイブス2」(以下、『アーカイブス2』)の目玉タイトルとなった「3D パワードリフト」の単体ダウンロード版配信が、11月2日より開始される。

 「3D ぷよぷよ通」に続く単体配信となったが、今回の「3D パワードリフト」はセガタイトルのメドレー曲とセガキャラクター登場というスペシャルモードを搭載しており、力の入ったものになっている。そこで、恒例のインタビューを行なわせて頂いた。

 インタビューにご参加頂いたのはセガゲームスよりリードプロデューサーの下村一誠氏、シリーズプロデューサーの奥成洋輔氏、制作を手がけるエムツーの堀井直樹氏。12月22日に発売予定のパッケージ版最新作「セガ 3D復刻アーカイブス3」も控えており、“その先”にもちょっとフライング気味に触れているので、ぜひ注目頂きたい。

【【3D パワードリフト ゲーム紹介PV(3D映像対応)】】

「アーカイブス2」の成功で実現した単独配信! そこで“スペシャルおまけ”のリベンジ!!

【パワードリフト】

 1988年にセガよりリリースされたアーケード用レースゲーム。開発は後のAM2研、鈴木裕氏らが手がけている。筐体にはハンドリングにあわせて座席が動く「デラックスバージョン」、スタンダードな「シットダウンバージョン」があったほか、後年、通信対戦が可能な「ツイン筐体バージョン」も登場した。

 ゲームとしては、プレイ開始時にコースとドライバーを選択し、全12台が出走する各コース(5コースの中から選択可)で3位以内への入賞を目指してレースを繰り広げるバギーレースゲーム。アップダウンの激しいコースと、60フレームで描画されるスピード感から、“ジェットコースターのようなレースゲーム”となっている。

 コンシューマー機への移植は、1990年にPCエンジン版が、1998年にはセガサターン版が、2001年には「鈴木裕ゲームワークス Vol.1」という書籍の付属ディスクとしてドリームキャスト版が発売。2015年にニンテンドー3DS「セガ 3D復刻アーカイブス2」に収録された。

単体ダウンロード版の魅力のひとつと言える、起動画面の筐体もしっかり
この日の奥成氏はこれにあわせて背中にパワドリの筐体が描かれたシャツで登場
パワドリの消しゴム人形は奥成氏が持参。「GEEK LIFE」が販売するセガTシャツのおまけでもらえる「セガ消しコレクション」

――「3D パワードリフト」の単体ダウンロード配信ということですが、まずはその単体配信版リリースの経緯を伺わせて頂けますか?

奥成氏:昨年に「アーカイブス2」を作るときに、新規収録作品として「パワードリフト」と「ぷよぷよ通」の2タイトルを開発しました。当初のシリーズは単体での配信でしたが、その方針は「3D サンダーブレード」、あるいはその後の海外向けメガドライブ3タイトルから「ソニック2」、「ベアナックル2」、「ガンスターヒーローズ」で終息しました。ここまでで一旦、プロジェクトとしては終了していたんです。

 ところがアーカイブス1がお客様やお店からの反響が良く、私の後を引き継いだ下村プロデューサーがアーカイブス2を立ち上げることができたと。それでパッケージに追加タイトルを加えるというアイデアになり、増えたのが「パワドリ」と「ぷよ通」だったわけです。

 とはいえ、もともとは配信のみだったプロジェクトであったので、「アーカイブス2の2タイトルもいつか単体配信ができたらいいね」という気持ちは、「アーカイブス2」の制作中からあったんですよ。

下村氏:単体配信は話に挙がったこともありましたが、実際に計画に入れて開発を進めようとしていたことは全くなくて。そもそも、「アーカイブス2」自体が事業計画外のプロジェクトでしたので、まずは「アーカイブス2」が売れてくれないと、次のお話にいけるかどうかというところで。正直、「アーカイブス2」自体が失敗の許されないギリギリの中でしたから。単体配信はやりたいという意思はあったけども、「アーカイブス2に集中しよう」という話でしかなかったです。

 そして「アーカイブス2」が発売され、ユーザーの皆様に受け入れてもらえたのですが、僕らはその次に何をしようとしたかというと、単体配信版を検討するのではなく「アーカイブス3」へと移行していったんですよ。「アーカイブス2」が成功したら、必ず「3」をファンの皆様にお届けする、というのをお約束していましたからね。

 結局、単体配信版には手を付けずに「アーカイブス3」に集中していたのですが、セガ社内から「単体配信版の配信ってやらないの?」という話が浮上してきたんです。でも、それは「パワードリフト」を指してではなく「ぷよぷよ通」を単体配信したらっていう話だったんですね。パッケージの中に入っていると気付かれにくいですが、「ぷよぷよ通」を遊びたいっていう人が多いだろうっていうところで。

奥成氏:「ぷよぷよ通」はローカルプレイでの通信対戦がありましたから。例えば家族と対戦するとして3DSはそれぞれ持っているとしても、「アーカイブス2」が2本あるというのはないかもしれない。でも、そこで単体配信版だけ購入頂けるようにするというケースはありかなと。

――なるほど。確かに「ぷよぷよ通」だけ遊びたいっていう人も多そうですよね。

下村氏:ユーザー層としても、「ぷよぷよ通」に注目してくれる人は、本格的なセガファンというより「ぷよぷよ」ファンな人もたくさんいると思うんですよね。そこで、全部入りな「アーカイブス2」はちょっと悩むけど、「ぷよぷよ通」単体だったら買いたいっていうニーズがあったと思うので。そこで単体配信を出すという話になっていったんです。

――「ぷよぷよ」ファンな人に気軽に買って頂けるようにということですね。

下村氏:ただ、僕らは先ほどもありましたけど「アーカイブス3」にもう集中していて、単体配信版配信の話はひとまず置いていたんですよ。

 でも、「アーカイブス2」の売り上げ目標をなんとか達成できたこともあって、単体配信版を作ってもいいかもと思える状態になったんですよ。そこで「ぷよぷよ通」と「パワードリフト」の単体配信版をやってみましょうか、というのを堀井さんに相談して。

 ……でも最初は、「『ぷよぷよ通』はできても『パワードリフト』はちょっとしんどいかも」っていう話になってましたね。

堀井氏:そうでしたね。

下村氏:やっぱり単体配信版にするならなにか“オマケ”をつけないといけない。「ぷよぷよ通」はすぐに「こういうのがいいんじゃない?」っていうアイデアが上がってきましたが、「パワードリフト」で何かやるとなると、僕らの想定している開発予算や労力を越えてしまいそうで。だったら、オマケなしでも良いので、世に出してプレーヤーに楽しんで頂くことだけにしましょうと提案していたのですが、そこは結局エムツーさんの愛情と熱意でここまでの素晴らしいものにしてもらって(笑)。

堀井氏:ですね(笑)。

――(笑)。

奥成氏:立ち上がりとしては、「アーカイブス3」が作れることになったので、この2本の単体配信ができるようになった、プロジェクトが継続できることになったというところですね。

 どちらかというと今回の単体配信は「アーカイブス3」にくっついているプロジェクトなんですよ(笑)。

――なるほど、「アーカイブス2」から予定していたものではなく、「アーカイブス3」の枠組みで可能になった単体配信なんですね。

奥成氏:「アーカイブス2」が成功して「アーカイブス3」を立ち上げることができましたし、こういう単体配信のプロジェクトも加えることができたということですね。

――「アーカイブス2」が発売後どうだったのかは初めてお聞きしたのですが、当初の予定を上回る結果になったのでしょうか?

下村氏:そうですね、やはり新作移植の「ぷよぷよ通」と「パワードリフト」の2本があったこと、「ファンタジーゾーン」での新しいチャレンジなどが喜んでもらえたのかなと思うのですが。

奥成氏:「アーカイブス1」は当初のプロジェクトの集大成として、最後にパッケージの形でも欲しいという人に向けて、シリーズを追ってくれている人にさらに欲しいという人に買ってもらった、という感じがあったと思うのですが。「2」からは新しい方向性になりましたので。

 ただ、やはり制作期間は限られていて、立ち上げから年末の発売までという1年弱のなかですよね。「アーカイブス2」はそのなかで新作の移植を2本作っていて。

 僕がプロデューサーだった頃の“単体配信版にスペシャルモードをつけていた”というパワー、いわゆる「グラントノフ(※)」は、“新作移植そのものを作る”という方向にシフトしていますので。スペシャルモード的なものまではできなかったんです。

 ですが、「今回の単体配信版では、そのスペシャルモード的な要素を補完したい」というのがエムツーさんの目標なんですよ。

※グラントノフ……「セガ 3D復刻プロジェクト」における、「オリジナルには無い新規要素」のこと。セガ・マークIII版「アフターバーナーII」のボス「グラントノフ」にかけてこう呼ばれていた。

堀井氏:そうですね、言わなきゃよかったって思ってます(笑)。アーカイブス収録版にはない、単体用のクレジットを作ったり、スペシャルモードを作ったりというのをしています。

――できなかった分を……ということですね。でも「3D パワードリフト」では、追加要素をどれぐらいのバランスで入れるか、最初は難しさがあったということで。

奥成氏:移植の新作を1本作るということでも、過去にやっていたバーチャルコンソールであれば、“ちゃんと再現する”ということで良かったのですが、このプロジェクトだと“3D立体視化する”、“何か追加要素を入れる”というものがあり、どんどんハードルが上がっていったんですよね。

 元のあるゲームに対して何かのスペシャルモードを入れるというのはエムツーさんでないとできない労力の部分なんですよね。そこだけで物によっては半年とかかけちゃうときもあって、そうなるといつまで経っても出来上がらないんですけど(笑)。

堀井氏:出来上がらないよねぇ(苦笑)。

奥成氏:それが「アフターバーナーII」の、井内ひろしさんがバランス調整をしてくださったスペシャルモードであったり、「アウトラン」で並木学さんが新曲を書いてくれたりといった要素だったんですよね。

 その部分が「アーカイブス2」を買ったユーザーさんにとって、「パワードリフト」は「追加要素はパワードリフトそのものです!」と言われてもちょっとピンと来なかったかもとは思います。……「パワードリフト」を作るということで労力のほとんどを割いていますからね(笑)。

堀井氏:そこそこ! 何度も言いたいけど、そこ! 3DSであれは本当は動かないから!

奥成氏:(笑)。とは言え、お客様が単体配信のシリーズにはあったグラントノフという追加要素を望んでいる部分はあったのではないかと。そこで今回の単体配信の機会は、エムツーさんにとってようやくおとずれたリベンジなわけです。

――なるほど、できなかったことができる……けど、だけど! みたいな。

堀井氏:苦労はしましたけど1度出したものではありますので、動くのはわかっているし、その上に何をするかを決めて積み増していけばいいだけ……ではあります。後は残り時間を考えつつやっていけばよい、という話ではあるのですが! 思っていたよりもずっと、大変なことになっちゃいましたね。