インタビュー

セガ 3D復刻プロジェクト「3D パワードリフト」インタビュー

“セガだらけ”! スペシャルモードの曲は3D復刻でもなじみ深い作品のこだわり必聴メドレー!

――ここまでのお話を伺って、今から触れていく「3D パワードリフト」の追加要素なんですけど……結構いろいろあって(笑)。最初に資料を見させて頂いたときに「これ、どうなっているんだろう!? 」って驚いたぐらいなんですけども。

堀井氏:ご覧頂いて、かなり笑ってもらえたのではと思うのですが!

奥成氏:そうなんですよ、前回の「3D ぷよぷよ通」はあっさりリリースしたんですけど、「3D パワードリフト」の単体配信版については「エムツーさんが喋りたいことがあるだろう!」と。なのでGAME Watchさんに来てもらったんですよ(笑)。

堀井氏:好きに喋っていいなら、相当に喋ることありますからね!!

奥成氏:今回のインタビューについては、僕と下村は前座なので(笑)。

堀井氏:だってそもそも、社内でこの単体配信のために人を確保していたわけではないですから。確保していない人がなぜか「3D パワードリフト」の作業をしていて、色々なラインの人達とケンカしながら作っていたんですよ!

――そうですよね、お話の流れからしても今年も「アーカイブス3」は動いているし、他のプロジェクトだってあるし。単体配信版に追加要素を入れる余裕なんて昨年同様にないはずなのに、みたいに思ってました。

下村氏:「パワドリ」のファンにはもうしわけないですが、1番大事なのはきちんと「アーカイブス3」を作り上げることですので、最初は「追加要素なしでいいから」という話でしたからね。

――「3D ぷよぷよ通」のようにスッと単体配信版をリリースするということですね。

奥成氏:実はパッケージの詰め合わせ的なものから単体配信版を出すというのも、1から作るほどではないものの、結構大変なんですよ。

堀井氏:切り出すにしても実は結構な手がかかりますし、SDKが変わったらそこも手を入れて……とかがありますね。

奥成氏:まずはそこの労力があるんですよね。でも……「アーカイブス2」を買ってくれた人にも、そうでない人にも、もう1度「3D パワードリフト」という商品を出すのであれば、そこにはなんらかの新しい魅力が欲しいよね、というのがあって。

 それって、僕らが子供のときにレコードのアルバムを買って。曲を聴いた後に「1曲目がシングルカット」として出た時に、アルバムとは変えてくるじゃないですか!

堀井氏:あー! そうそう、それ!

奥成氏:それを聴くと「何このイントロ、聴いたことないよ!? 」ってなりますよね。そこからはシングルカット版が気に入って聴くようになったり。シングルカットをただ切り出すだけではなく、これは単独の商品として出すんだというのが、今回のアプローチですよね。シングルにはシングルの魅力を作ろうということですね。

 さぁ、ここからは堀井さんに語ってもらいましょう!

セガ 3D復刻プロジェクトでお馴染みのセガキャラたちがドライバーとして登場!
「パワードリフト」では5種類のコースにそれぞれのBGMが用意されているが、スペシャルモードではその5曲が、セガ名作タイトルのアレンジメドレー曲に!

堀井氏:えー! えーとですね……一言に言うと“たくさんのセガキャラクターが登場する賑やかなモードをつけました!”という誠にカンタンな話なのですが!

奥成氏:今回のスペシャルモードは、ゲーム内容そのものはオリジナルそのままです。ですが、プレーヤーキャラクターが全てセガ 3D復刻プロジェクトの他の作品に登場していたキャラクターになっています。クレジットにしか顔を出していなかったキャラも含めて(笑)。

 また、「パワードリフト」と言えば各コースごとに1曲ずつの全5曲があるのがポイントだったのですが、その5曲が全てセガの人気ゲームのメドレー曲になっています。“パワードリフト風アレンジ”ですね。そのメドレー曲を楽しみつつ、セガキャラクターで爆走するというモードになっています!

――このスペシャルモードは誰がアイデアを出したのでしょう?

堀井氏:おそらくディレクターの松岡だったと思いますね。でも、「そんなのできないよね? 」っていう話になりました。なぜかというと、そもそも「パワードリフト」を3DSで動かすだけでも結構大変だったのに、そこにさらにキャラクターを乗っ取って、それ用に使える色のパレットを変えて、画を出すということ。その画ももちろん新たに作らないといけない。

 これをシングルカット向けに作るのは無理ではという話になりましたし、そのラインの人員も空きがないし、できないよねとなったんです。……でもどこからかそれを作ろうという人が出てきてしまったんです、出てきたアイディアの中では軽めの負荷で作れるものでしたし。

 それに、サウンドに関しても「スペースハリアー」なら「スペースハリアー」の元の曲でメドレーを作ってストリームで再生するぐらいなら、なんとかなるんじゃないかっていうぐらいの話だったんです。

 ……でも、いつの間にか「パワードリフト」の基板で鳴るような音色でのアレンジを再生できるようにみんなが作っていて。「別の仕事があるはずなのに、君は一体何をやっとるのかね!? 」っていう話を延々としたりもあったのですが。

 松岡が「これは譲れない!! 」とか言いだしてですね。むしろ他のチームから人を引っ張ってきたりして。そうして作られたんです(笑)。

奥成氏:このアレンジは誰が作ったんです?

堀井氏:ほとんどはChibi-Tech(※)が曲を書いていますが、「スペースハリアーメドレー」のみサウンドチームの春日(※)が担当しています。春日は、このプロジェクトが始まった瞬間から勝手にパワードリフトの解析をはじめまして。アレンジBGMを入れようというのも、それをパワードリフト音源のままで作ろうというのも、春日の発案だったんですよ。

※Chibi-Tech……エムツー所属のサウンドクリエイター。エムツーの「アホ毛ちゃんばら」のBGMを担当したり、3DS「哭牙 KOKUGA」(グレフ)のサウンドトラックにアレンジャーとして参加している。

※春日達彦氏……エムツー所属のサウンドエンジニア。「セガ 3D復刻アーカイブス2」にてセガ・マークIII 版「ファンタジーゾーン」のOPLL化部分を担当したほか、エムツーより12月に発売される「バトルガレッガ Rev.2016」でもサウンドドライバの拡張を手がけている。なお、「タッピー」という名前でチップチューン系のDJとしても活動している。

――インタビュー前に少し聴かせて頂いたのですが、これはちょっと……オマケっていうものを超えてますね。

【スペシャルモードに収録されているアレンジBGM】

・Aコース「スペースハリアーメドレー」
・Bコース「アウトランメドレー」
・Cコース「ファンタジーゾーンメドレー」
・Dコース「サンダーブレードメドレー」
・Eコース「アフターバーナーメドレー」

(ここからはサウンド設定の画面でメドレー曲を再生しながら進行)

堀井氏:「セガ 3D復刻プロジェクト」の作品を買ってきてくれている人が、欲しがるようなものをChibi-Techが自分で考えて作ったのだと思うんですけど、それが僕にも刺さったんですよね。最初はスケジュールのことを考えると「そこまでやるのは止めてね」って言いたいのもあったんです。でも、それを言おうとしたときには既に音が鳴り始めていて。「これを止めるのは無粋だな」と思ったり、「っていうか俺も聴きたい」とも思って(笑)。周りと調整してなんとか進めてもらったっていう感じなんですよ。

奥成氏:Chibi-Techさんは、以前にPS3とXbox 360で展開した「セガエイジスオンライン」シリーズのときにも、ひとつひとつのゲームのメニューに違う曲を用意してくれたんですよ。本来はメニューの曲ならシリーズ共通で1曲あればいいかな、というところなんですけど、そこはこだわりたいということで。

 結局、“そのゲームの音源に則した、そのゲームの未使用曲です的なテイスト”のメニュー曲を全作品に作ってくれたんですよ。

――その頃から徹底していたんですね。

堀井氏:今回にも通じるものがありますね。今回は並木もいろいろとスケジュールが詰まっていて、Chibi-Techがやるという話になっていったのかなと思うのですが。

奥成氏:Chibi-Techさんのこだわりは昔からで。「モンスターランド」のメニュー曲は開発途中ではOPLで鳴っていて。でも「この『モンスターランド』はアーケード版で、MK III版ではないからOPLはおかしい」ってツッコミを入れると、基板準拠なPSGの音で作り直してきたり。

堀井氏:Chibi-Techは言われれば、どこまでもこだわりますし。言われなくても自分が思うところに延々とこねこねしている人なので。提出用ビルドの締め切りを過ぎてるんだけど「ここをこうしたら良くなった!」っていうのを出してきて、周りが騒然としたりなんてこともありますね。

――そのこだわりが今回のメドレーにも存分に出ている感じがしますね。

堀井氏:PCMのセットや音色は全て「パワードリフト」から持ってきていて。“「パワードリフト」を作っているノリで例えば「ファンタジーゾーン」の曲を作ったら……”っていうのを頭で……いや、頭じゃなくフィーリングなのかもしれないですけど……、

 これもう「パワードリフトの曲になってる! 」としか言いようがないんですよ。

――そうなんですよね。リズムもそうですし、ゲームプレイとの手触り感も完全に合っているんですよね。ゴールするまでのタイムが若干前後するのでズレはあると思うのですが、次のコースに変わるときにメドレーの繋ぎ目がちょうどくるようになっているのかな、とも思います。

堀井氏:おそらくそれも意識していると思いますね。

奥成氏:アレンジがただ流れているのではなく、曲のテンポやリズムが「パワードリフト」準拠になっているので合うんですよね。「パワードリフト」って曲に合わせてゲームが進行しますが、その邪魔をしない作りになってます。

――「パワードリフト」ってプレイ中に曲が途切れないですし、曲を聴きながら爽快に走っていくのが気持ちいいゲーム性なんだなと改めて感じます。そこにこれだけのアレンジ曲があると、プレイの気持ち良さが変わってきますね。

奥成氏:コースが違っていたり、キャラクターの性能差がついていたりはせず、あくまで曲とキャラクターが違うというだけではあるんですよ。だけど、これでもう1度遊び直してみたくなるという。

(メドレー曲終盤のうねるようなメロディーラインが聞こえてきて)

――このあたり、かなり“きてます”ね……!うわぁ~いいな、これ。

堀井氏:「スペハリ」のボスやボーナスの曲なのに、間違いなく「パワドリ」の曲になっているんですよ!

奥成氏:ちなみにこのメドレー曲は、YouTubeの紹介映像で少し聴けますので。ぜひ聴いてみてください!

【【3D パワードリフト ゲーム紹介PV(3D映像対応)】】