レビュー

「ロマンシング サガ2 リベンジオブザセブン」レビュー

ちょっと遊ぶつもりが気付いたら最終皇帝だった……時間を忘れてのめりこむ、シリーズファンも初心者も楽しめるリメイク作!

【ロマンシング サガ2 リベンジオブザセブン】

10月24日 発売予定

価格:
6,820円(パッケージ版/ダウンロード版)

 スクウェア・エニックスから10月24日に発売予定のプレイステーション 5/プレイステーション 4/Nintendo Switch/Steam用RPG「ロマンシング サガ2 リベンジオブザセブン」。(Steam版は10月25日発売予定)

 「ロマンシング サガ2 リベンジオブザセブン」は、1993年12月10日にスクウェアから発売されたスーパーファミコン用RPG「ロマンシング サ・ガ2」のフル3Dリメイク作品。「ロマサガ」シリーズの特徴として、ストーリー面、戦闘面において高い自由度が魅力の作品で、プレーヤー独自の歴史を作ることができるようになっている。

 今回は、「ロマサガ2 リベンジオブザセブン」のレビューをお届けしよう。なお本稿は「リベンジオブザセブン」の副題に迫るリメイク版ならではの新要素にも触れるため、できるだけネタバレなく楽しみたいという人は、注意してほしい。

 ちなみに副題の「リベンジオブザセブン」について、田付プロデューサーへのインタビューにてその内容を伺っている。今作では2018年秋に行なわれた舞台「SaGa THE STAGE 七英雄の帰還」のシナリオを元に、第一幕の部分を本作用に再編した内容が収録されている。オリジナル版には未収録の要素であり、これを「リベンジオブザセブン」という副題ならびにゲーム内の追加要素として加えた作品となっている。

 今回のレビューではPS5版をプレイしたが、プレビュー記事の際にプレイしたSwitch版と比較してロードが全体的に早く、マップの読み込み時の待ち時間も一切気にならない形となっていた。

【『ロマンシング サガ2 リベンジオブザセブン』アナウンスメントトレーラー】

まずは「ロマサガ2」について振り返ろう

 一部プレビュー記事と重複するが、大まかなストーリーについて紹介していく。プレーヤーはバレンヌ帝国の皇帝となり、「七英雄」の打倒を目指していくことになる。ちなみに、七英雄とは古代、数多くの悪しき魔物を倒し、いずこかへ消えた者達のことで、「いつの日か、七英雄は戻ってきて世界を救う」という伝承のことだ。

 そんな七英雄が、ついに復活した。帝都アバロンの東の港町ソーモンを占拠した七英雄の1人クジンシーによって、皇帝レオンの長男であるヴィクトールが殺害される。七英雄は世界を救う存在ではなく、人類の敵だと確信した皇帝レオンは志と能力を継承する術「伝承法」を教わり、自らの命を犠牲にしてクジンシーの技を見切り、「伝承法」を受けた次男ジェラールは、見事クジンシー討伐を果たしたのだ。

 その後皇帝に即位したジェラールも命尽きる時、伝承法によって次代の皇帝へと志と能力を託す。こうして、何千年にも渡る歴代の皇帝達による、七英雄との戦いが歴史に刻まれていくのだった。

七英雄たちは世界を救う存在だというが……

 自由度の高さが魅力の作品で、各種イベントで複数の攻略法があり、七英雄を倒す順番もプレーヤーによって異なる。イベントをクリアした後に何百年か経つと新たなイベントが発生することもあり、まさにプレーヤーの手で紡いでいく物語となる。

こちらがオリジナルの「ロマンシング サ・ガ2」。画像はスクウェア・エニックスのページより

何を言っているかわからないかもしれないが、気づいたら最終皇帝だった

 既に体験版も出ているため、本作を楽しみにしているプレーヤーたちはもう本作がどのような方向性でリメイクされているかは知っているかもしれないが、改めてどのようにリメイクされているのかについて紹介する。原作は2Dだったグラフィックスは現代風の3Dタイプになり、BGMも現代の音質にあわせてアレンジ(SFC版にも切り替え可能)、バトルはタイムラインバトルになり各キャラごとに行動順が回ってきて、行動順が来たらコマンドを入力するように変更された。そして「カジュアル」、「ノーマル」、「オリジナル」という3つの難易度が設定されている。難易度はいつでも変更可能だ。

グラフィックスは3Dになっている

 ちなみに筆者は31年前の発売当時、SFC版の「ロマサガ2」をかなりプレイしたほうだ。そのため、ここで原作ファンとして厄介な感情が起こる。「リメイクは嬉しいし、楽しみだけど、ここまで変わっちゃうと、昔好きだった作品とは変わっちゃうんじゃないのかなぁ……」という不安だ。

 だが、そんな不安はすぐに消し飛んだ。何故かと言うと「気付いたら最終皇帝だった」からに他ならない。

 この最終皇帝とは「伝承法」を受け継ぐ最後の皇帝。全ての物語に決着をつけなければならない、最後の皇帝のことだ。ここに及ぶまで、何百年もの時代を経てきたのだが、本作があまりに面白くて、無我夢中で2~30時間を超えプレイしていたら、いつの間にか最終皇帝になっていたのだった。

最終皇帝にまで時代が進むと、皇帝継承で最終皇帝しか選べなくなる
これ以上伝承法を使えないことを告げられる、最終皇帝

 いやはや、「リメイクで変わっちゃうんじゃないか」なんて、まったくもって杞憂だった。確かにたくさんたくさん、現代風にアレンジされている本作ではあるが、「ロマンシング サガ2 リベンジオブザセブン」は、31年前のあの頃と同じように、夢中になってプレイできるゲームに仕上がっていた。

 特に本作は、バトルが大半を占めているタイトルとなるが、「バトルがおもしろいゲームに駄作はない」が筆者の持論であり、本作ではこの肝心要のバトルのバランスが素晴らしい具合に調整されている。

 難易度は、カジュアル、ノーマル、オリジナルを色々と切り替えながらプレイしていたのだが、特に「サガ」シリーズ特有の高難度バトルを、初心者でもプレイしやすく調整したカジュアルが素晴らしいと感じた。この辺りの話は体験版をプレイ済みのプレーヤーには既知のことと思うが、個人的にどうしてもカジュアルを推したいので、もう少しこの話にお付き合いいただきたい。

 「サガ」シリーズには「LP(ライフポイント)」という生命力を表す数値が設定されており、HPが0になるとLPが1減り、LPが0になると完全に死亡して復活できなくなる。

 このLPは皇帝だけではなく全キャラクターに設定されており、高い難易度を誇るオリジナルだとLPにかなり気を配らないとならない。SFC版「ロマサガ2」と同様で、傷薬や「生命の水」などのHP回復手段をどんどん用いる各キャラクターの世話役を最低ひとり、キツい戦いではふたりは作っておかないとならない、というのに対して、難易度カジュアルだと、LPが全く減らないということはないが、そこそこ脳筋なパーティを作っても、世代交代までLPは多分充分もつだろう、という印象だった。

現在のLPはステータス欄に表示されている

 ちなみに、七英雄などとの激戦時、難易度オリジナルでは一度敗戦したものの、難易度をカジュアルにしたらあっさり突破できた、という場合もあったので、どうしても上手く勝てない場合に難易度を切り替えてみるという手段もある。

七英雄戦の中でも激戦になりがちなワグナス戦。一度負けてしまったので、難易度カジュアルにしてみたところ、割とあっさり(そこそこにはLPを失ったが)突破できた

 もちろん、敵の弱点にあわせてパーティを編成する、前述の通り回復役をしっかりと入れる、きちんと育成をする、などの手順を踏めば難易度オリジナルでも突破が可能なように作られているのだが、「ここまできてまたアバロンに戻って編成するのも面倒だな~……」という気持ちになってしまった時に、難易度を変更するという手段もある、ということである。

 バトルの詳細は後述するとして、「サガ」は全体的な難易度が高めに設定されているので、「もうちょっとライトにゲームを楽しみたい」という人に本作の難易度カジュアルがうってつけである、ということは声を大にして言いたい。

 きっと、気付いたら最終皇帝の即位まであっという間に感じるくらい、夢中になれるはずだ。

皇帝を継承しながら、フリーシナリオで自分だけの帝国の歴史を作ろう

 さて、いきなり最終皇帝の話から入ってしまったが、「ロマサガ」シリーズはフリーシナリオが魅力のひとつだ。

 フリーシナリオというのは、「どのストーリーから遊ぶのも自由」というもので、現代で言えばオープンワールドのゲームに近いと言えるだろう。

 本作はワールドマップがあり、特定の条件を満たすことで各地域の街やダンジョンが開放され、開放された街やダンジョンをクリアしていくことで新たなシナリオが発生していく……というものになっており、攻略可能なシナリオは同時に複数発生する。

本作のワールドマップ(の一部)。街やダンジョンを選択すると、そこにファストトラベルする、と思ってもらえばわかりやすいだろう

 この中からどのように物語を進めていくかは、プレーヤーの自由。序盤こそ皇帝レオンから皇帝ジェラールへと継承し、発生するシナリオも少数で、まずは七英雄のクジンシーを倒し……と、「ロマサガ2」のチュートリアル的なストーリーが進行するものの、ジェラールから次の皇帝へと継承していくその先は、プレーヤーによって全く異なる展開となるだろう。

 言ってしまえば、本作一番の目的「七英雄を倒す」ですらも、七英雄を倒す順番はほぼ決められていない。ある程度年代を進めないと出てこない七英雄や、勢力下の地域などにも左右されるので、おおよその順番というのはあるのだが、人によっては最終皇帝まで出会うことがない七英雄とかも普通に出てくるはずだ。

自由とは言っても、クジンシー戦だけは、チュートリアルのひとつのようなもの
筆者のように男性パーティが大好きなプレーヤーには鬼門とも言える、七英雄ロックブーケ。このあたりにたどり着くころには、倒している七英雄もプレーヤーにとって大分ばらつきがでるだろう

 また、中には特定の条件を満たす皇帝でなければ進められないシナリオなどもある。(例えば、武装商船団が皇帝でなければ進められないシナリオ、等)

 そういったシナリオを進めたり、どうしても攻略上他の皇帝に代替わりしたい、という場合、玉座で「皇帝退位」を選ぶことができるので、活用していきたい。

皇帝退位は積極的に使うほどのものでもないが、筆者の場合シナリオ回収と一部のボス戦に備えて数回ほど皇帝退位をした

 ちなみに、オリジナル版の「ロマサガ2」では、「ルドン高原」にて皇帝のLPをわざと0にして退位させて次の皇帝へと継承し、求めるクラスの皇帝になるまでそれを繰り返す……という通称「ルドン送り」が当時のプレーヤーに使われていたのだが、今回ルドン送りは一切する必要がなかった。「2代連続で退位はできない」という制約こそあれど、オリジナル版では4名から選出することになっていた皇帝を、本作では6名から選出、継承直前にパーティーにいたクラスから必ず1クラスは候補に選ばれるようになっていたり、退位した場合は候補の抽選をやり直せるので、より自由に好きな皇帝を選べるようになったためだ。

 ならば最初から好きな皇帝を選ばせてほしい、という気持ちもあるかもしれないが、ランダム性によって皇帝が決まるのも「ロマサガ2」の良いところだ。例えば筆者はついついホーリーオーダー(男)が好きで、こちらが候補にいれば必ずホーリーオーダー(男)を選んでしまうという性癖があるので、やはりランダム性によって「あえてホーリーオーダー(男)が選べない状況」をシステム側に強制的に作ってもらえるのは、むしろ有り難いと言える。

 そもそもホーリーオーダー(男)を選びがちになってしまうのは、SFC版の時に皇帝の候補にホーリーオーダー(男)がいたから選んでみたら自分好みだった、という経緯があってのことなので、皇帝継承でランダム性を持たせるというのは、ある種、まだ出会っていない自分の推しをシステムのほうから丁寧にお出ししていただけるものでもあるのだ。

新たな「好き」を見つけられるかもしれないとわかっていつつ、ホーリーオーダー(男)がいたら“ついつい”選んでしまうんですけれどもね! それでも今回はホーリーオーダー(男)を皇帝にしたのは1回だけでした

「リベンジオブザセブン」の副題には大きな意味があった

 冒頭でも紹介した通り、本作の副題である「リベンジオブザセブン」には大きな意味がある。本作には2018年秋に行なわれた、舞台「SaGa THE STAGE 七英雄の帰還」のシナリオを元に、主に舞台の第一幕部分を本作用に再編された内容が収録されているのだ。

【舞台「SaGa THE STAGE ~七英雄の帰還~」冒頭シーン】

 オリジナル版の「ロマサガ2」では七英雄についてはあまり掘り下げられず、「なんとなく倒していった」というプレーヤーが多いと思うが、本作では七英雄の過去をしっかりと描かれている。

 では、その七英雄の過去はどのようにシナリオに挟まれているのか。それが気になるところだが、基本的にはダンジョンなどに「七英雄の記憶」と呼ばれる端末が配置されており、その端末に触れることで七英雄の過去を垣間見る、という風になっている。

 七英雄の記憶の近くまでくると、以下のようにスーっと青い線が伸びており、この線を辿っていくと七英雄の記憶を見れる端末にたどり着くので、基本的には非常にわかりやすく配置されている。

プレーヤーを七英雄の記憶へといざなう、青い光
七英雄の記憶より。タームとの戦いを経て彼らが七英雄と呼ばれるようになった経緯や、七英雄が復讐者に堕ちた理由が、この記憶からわかる。「七英雄の帰還」ではノエルとオアイーヴのロマンスが描かれていたが……

 ただこの七英雄の記憶はダンジョンに紐づいて設置され、「大体プレーヤーがこの順番で訪れそうなダンジョンに置かれている」といった感じになっており、ここでフリーシナリオの弊害が出てくる。

 見つけた七英雄の記憶は、メニューの「帝国国力」から確認ができるのだが、例えば筆者はこの時点で「七英雄の記憶12」までを見つけているのだが、見つけた順番はほぼランダム。1番こそ序盤で行く場所にあるため誰でも最初に見つけることになると思うが、2番以降は入手した順番も前後しているし、10番はいまだ見つけるに至っていない。

帝国国力のメニューから、見つけた七英雄の記憶を振り返れる。しかし10番が歯抜け

 もちろん、順不同に「七英雄の記憶」を見て、次第に全貌が明らかになるという形になっているとも取れるが、ここだけは個人的に少々残念な作りになっており、フリーシナリオである以上、端末を見つけたら1番から順番に再生されるようになっていて欲しかった……という気持ちはある。このランダムな仕組みはいいが、良さが十分に活かされていないと感じるところもあり、そこだけは惜しいと感じた。

 しかし七英雄の記憶については非常に良い試みで、特に舞台「七英雄の帰還」を見て何度も涙を流した身としては、こういう形で良いシナリオを掬い上げてくれた試みに、心から感謝をしたい。

七英雄の記憶より。舞台「七英雄の帰還」ではノエルとオアイーブのロマンスもストーリーの主軸になっていたが、七英雄の記憶ではそこはすっきりと落とされているようだ

バトルがおもしろいゲームは絶対におもしろい

 大分後回しになってしまったが、本作のバトルシステムについても触れておきたい。

 本作は「タイムラインバトル」と呼ばれるシステムとなっている。タイムラインバトルという言葉だけを聞くとシリーズ最新作「サガ エメラルドビヨンド」のような完全ターン制を想像する方もいるかもしれないが、本作のタイムラインバトルは、各キャラクターごとに行動順が回ってきて、行動順が来たらコマンドを入力するタイプのタイムラインバトルである。タイムラインは画面左上に表示されており、そこで確認することができる。

画面左上のタイムラインで敵味方の行動順がわかり、また敵の危険攻撃もアイコンで表示されるので、敵の危険攻撃にあわせて防御をすることができる。

 本作には「陣形」というシステムがあり、陣形によって防御ボーナスや攻撃ボーナスなど様々な恩恵を受けられるのだが、例えば原作「ロマサガ2」でも最強の陣形のひとつと言われている「ラピッドストリーム」にすれば、パーティ全員が敵よりも先制して行動可能になる。下図のタイムラインを見てもらえれば(小さいが)、ラピッドストリームの恩恵がわかるだろう。

必ず敵より先制できる、ラピッドストリームという陣形。5人まとめて敵より必ず早く動けるので、本作でも最強の陣形のひとつとなりそうだ

 また、本作では技を「閃く」ことで、様々な技を修得していく。序盤のうちは全然閃いていないので大した技を使えないが、様々な技を閃いていくうちに戦術の幅も広がっていく。

斧の技のひとつである「高速ナブラ」。消費BP(※BPとは技や術を使用するために必要なポイント)は多いが、ダメージも大きく、元祖「ロマサガ2」の頃からお気に入りの技のひとつだ
大剣の技のひとつである「乱れ雪月花」。こちらも元祖「ロマサガ2」の頃からお気に入りの技のひとつ。演出も派手で、ファンからの人気が高い技である

 技は相手が強敵であるほど閃きやすく、行動リストに電球マークがついている行動は、新たな技を閃きやすい。

本作から、閃きやすい行動に電球のアイコンが付くようになった。非常にわかりやすいが、ついつい電球アイコンのついている技ばかりを選ぶようになってしまうので、オリジナル版のようにわからないほうがいい、という人はこのアイコンをオフにすることもできる。技を閃くと、頭の上にピコーンと電球のアイコンが表示される

 オリジナル版「ロマサガ2」にはなく、本作で新たに追加となった近年のシリーズお馴染み要素もある。それは「連携」だ。

 連携とは通常であれば単発で出る技や術が、一定の条件を満たすことで間髪入れず連続で繰り出されるもので、単独で技・術を発動させたときよりも、敵に与えるダメージや効果が大きくなる。また、BPも消費しない。

 画面右下のオーバードライブゲージが満タンになることで、任意で連携技を出すことができる。オーバードライブゲージは主に敵の弱点攻撃を当てることで溜まっていくので、いかに敵の弱点を狙えるようなパーティにするかも重要だ。

最初は2連携しか出せず、物語が進んでいくにつれて3連携、4連携が開放されていく。2連携を出したあとにバトル内で再びオーバードライブゲージが満タンになると3連携が出せ、3連携を出したあと更にゲージがたまると4連携が出せる……というようになっている。なので基本的に3連携以降は、ボス戦のような強敵相手に出すことが増えるだろう

 「サガ」シリーズはバトルの難易度が非常に高いのだが、前述の通り難易度設定ができ、しかも基本的にいつでも変えられるので、まずは好きな難易度でプレイしてみてほしい。特に難易度オリジナルでは、SFC版で「かなりの高難度ゲーム」と言われただけはある、ヒリついたバトルを楽しむことができる。これぞ「サガ」と言いたいところだが、個人的な推し難易度はカジュアル。何せ時間のない昨今のゲーマーにとって、「名作と言われているゲームをプレイしたいけど、時間がなかなか取れない」という悩みは尽きないだろう。そんなゲーマーに優しいのが難易度カジュアルで、お手軽に「ロマサガ2」をプレイできるというのは、やはり魅力的である。

 ちなみにこれだけは言っておくが、難易度カジュアルでも「死なない」ということはほぼない。世代交代するまでにLPが0になるほどまでは戦闘不能にならないと思うが、難易度カジュアルでも割と普通に戦闘不能になる。せめて陣形とパーティメンバーに準じた並び順、アイテムや回復術くらいはまともに考えないとならない。全くの脳筋で勝てる難易度にはなっていないところは、やはり「サガ」らしいと感じられた。「サガ」ファンの筆者には非常に好印象な難易度カジュアルなので、ぜひ改めて難易度カジュアルを推させてほしい次第だ。

「流し斬りが完全にはいったのに……」河津節が光る名言たちも再現!

 「サガ」シリーズといえば、シリーズを通して大半でディレクター・シナリオを手掛けている河津 秋敏氏による独特な言い回しも名物。

 体験版でも既に話題となっているが、ジェラールの兄であるヴィクトールがクジンシーに敗れた場面の名言である「流し斬りが完全にはいったのに……」も、興津和幸さんのCVが付くことによって、よりシュールさが増した。(誉め言葉である)

「流し斬りが完全にはいったのに……」というこのセリフだが、そもそも流し斬りはそこそこ熟練の域に到達しないと覚えられない技であり、ヴィクトールが死ぬこの場面では父である皇帝レオンすら覚えていない技なので、それを使えるヴィクトールはめちゃくちゃ剣の達人と言えるのは間違いない。しかし流し斬りという技名を口にしてしまうところで、謎のシュール感が出る。言い変えれば「高速ナブラが完全に入ったのに……」みたいなものである。このセリフの妙が河津氏らしいのだ

 また、ジェラールの父であるレオンがクジンシーに敗れた後の会話で、ジェラールが真面目な話の最中に「はい、はい」という上の空のような選択肢を返すことで「ちがう!! もっと真剣になるのだ!」というレオンのシーンもそのままである。

デフォルトだと「はい、はい」になっているところも原作通り。つまり適当にボタンを連打していると、「はい、はい」を選んでしまう
この時のレオンの気持ちを考えると本当にいたたまれないのだが、つい笑ってしまう。そして「はい、はい」と答えたジェラールの神妙な表情も最高だ。ドット絵の時代には表現できなかった部分へのある種の回答とも言える出来になっており、「なるほど、こういう感じだったんだなぁ」と、こちらもうんうん頷いてしまう
【「ロマンシング サガ2 リベンジオブザセブン」 TGS2024 スペシャルステージ】
ちなみに東京ゲームショウ2024で配信されたスペシャルステージでは、ジェラール役の小林 裕介さんが、このセリフが最もリテイクが多かったことを明かした

 他にも、皇帝の選択肢で門番に通せと命ずる場面の「通ーせよ。」や、「何をするにも金、金、金だなー」という本作のぷっと笑ってしまう河津節が本作でも活かされているのが非常に良かった。CVが入っているということもあって、この独特の河津節の温度感を出すのは非常に難しかったと思うのだが、どのセリフも非常に味のあるものになっていた。

「通ーせよ。」は、皇帝らしからぬ物言いの選択肢のひとつ。そのまま残してもらえたのは、とても嬉しい
帝国の発展にはお金が欠かせない。何をするにしても金を無心される。「何をするにも金、金、金だなー」というセリフはその中のひとコマだが、皇帝とそしてプレーヤーの本音が現われていて、こういうセリフ回しのセンスが河津氏ならではなのだ。こういう何気ないセリフのひとつひとつを本作の中で味わってほしい。ある種、今の時代では使われないだろうセリフではあるが、このセリフを「活き」にしている開発陣に、オリジナル版「ロマサガ2」への深いリスペクトを感じる

「せんせい」を探すのが楽しい!

 本作での新要素に、「サガ」のマスコット的な存在「せんせい」を探す要素がある。せんせいとは、「Sa・Ga2秘宝伝説」で初めて登場した主人公の先生で、ひとつめと黄色い丸い身体が特徴。

 本作ではせんせい自体に大きな役割はなく、世界各地(街からダンジョンまで)に出没し、一定数発見するたびにご褒美がもらえる、といった風だ。

 このせんせい、わかりやすいところに悠然といる場合もあるのだが、「こんなところに隠れてる?」というようなとんでもない場所にいることもあり、結構あちこちをくまなく探す必要がある。

こちらがせんせい。黄色い身体が目立つので、せんせいがいる場所にたどり着けさえすればわかりやすい。見つけるとスタンプカードにスタンプを押してもらえる

 せんせい探しはクリアに必要な要素ではないのだが、スタンプを集めていくことによって宝箱の場所がわかるようになったり、鍛冶などの開発速度が上がったりと、様々な恩恵が受けられるので、探索要素のひとつとしてぜひ楽しんでほしい。

 特にマップに宝箱の場所が表示されるようになると、探索のしやすさが抜群にアップする。宝箱サーチはせんせいを25体見つけなければならないので、そこそこ後半までいかなければならないが、本作はダンジョンよりも街中にある宝箱のほうが見つけにくいため、必ず役に立つはずだ。

やっぱり「ロマサガ2」はおもしろい! リメイクされてもおもしろい!

 「サガ」シリーズは皇位継承システムとバトルが面白いのだが、本作でもオリジナル版と変わらぬおもしろさを体験できて、オリジナル版「ロマサガ2」好きの筆者としては非常に嬉しい。

 特に新要素となる七英雄の記憶が本作の目玉とも言える部分で、原作には収録されていなかった前日譚として彼らが英雄だった時代に何があり、なぜ世界に復讐することになったのかを知ることができる、とても貴重な作品となった。

七英雄の記憶より。移動湖の遺跡に住む古代人のサグザー。七英雄ノエルの旧友だが、原作ではあまり語られず謎多き人物だった。本作ではサグザーについてもかなり掘り下げられている
七英雄の記憶より。タームのクィーンを倒し、彼らは人々から七人の英雄――七英雄と呼ばれるようになった
ちなみにタームのクィーンといえば、忘れてはならない「アリだー!」。31年前から度々ネタにされている、シュールな一幕。もちろんボイス付きである
蟻だと思っていたら、とんでもなくデカい! 本作でクィーンの大きさがこうしてしっかりとわかるようになり、ターム族の脅威を改めて感じることとなった

 本作のおもしろさは折り紙付きで、本稿の冒頭でも触れた通り、夢中になってプレイしてしまい、気付いたら最終皇帝だった。次々と各地域を勢力下におき、国力を上げ、目の前に現われるシナリオをいそいそとクリアしていったら、「え、もう最終皇帝?」というほど、あっという間だった。ちなみにもちろん言うまでもないが、あっという間といえどこの時点でプレイ時間は35時間を超え、勢力下の地域は12まできているので、心情的にあっという間だったというだけである。

最終皇帝(男)は元々推しのキャラクターのひとりだったが、今回梅原裕一郎さんが声を当てることによってより一層かっこいいキャラクターになって、好き度が更に増してしまった。責任を取っていただきたい

 元々「スルメゲー」とも呼ばれている「ロマサガ2」だけあり、同じイベントでもプレーヤーの選択次第で攻略方法や展開が変わり、何周もプレイできる魅力を備えているところはリメイク版でも変わらずといったところで、本作でも様々な皇帝で様々な帝国史を刻むことができるだろう。