レビュー
ソニー製ゲーミングモニター「INZONE M10S」レビュー
有機ELでQHD×リフレッシュレート480Hz! Fnatic共同開発の超高速モニター
2024年10月24日 00:00
- 【INZONE M10S】
- 10月25日 発売予定
- 市場想定価格:175,000円前後
ソニーは、ゲーミングブランド「INZONE」よりゲーミングモニター「INZONE M10S」を10月25日に発売する。価格はオープンで、市場想定価格は175,000円前後。
「INZONE M10S」は、INZONEのゲーミングモニターとしては初めて有機EL(OLED)を採用した高性能ゲーミングモニターで、QHD解像度(2,560×1,440)ながら480Hzという非常に高いリフレッシュレートを実現していることがウリだ。今回、INZONE M10Sをお借りすることができたので、本製品の使い心地やトッププロチーム「Fnatic」と共同開発した画質モード、「VALORANT」での実際のプレイフィールを紹介したい。
パネルタイプ | 有機EL(OLED)パネル |
画面サイズ | 27インチ |
解像度 | 2,560×1,440(QHD) |
応答速度 | 0.03ms |
ピーク輝度(HDR) | 1,300cd/m2 |
VESA DisplayHDR | DisplayHDR True Black 400 |
リフレッシュレート | DisplayPort:24Hz~480Hz、HDMI:24Hz~480Hz |
可変リフレッシュレート | Adaptive-Sync、NVIDIA G-Sync Compatible |
画質モード(SDR) | FPS Pro+、FPS Pro、MOBA/RTS、シネマ、ゲーム、標準、sRGB |
画質モード(HDR) | DisplayHDR、シネマ、ゲーム、RPG |
INZONE Hub | 対応 |
ゲーミングアシスト機能 | ブラックイコライザー、24.5インチモード(センター・ボトム)、クロスヘア、タイマー、フレームレートカウンター |
PS5との連携機能 | コンテンツ連動画質モード |
入出力端子 | DisplayPort×1(Ver2.1 UHBR10)、HDMI 2.1×2、USB Type-B×1(アップストリーム)、USB Type-A×2(ダウンストリーム)、USB Type-A×1(ソフトウェアアップデート用)、ヘッドホン出力 |
サイズ(スタンド有り) | 60.4×50.4×19.7cm(幅×高さ×奥行) |
付属品 | AC電源アダプター、AC電源コード、DisplayPortケーブル、セットアップガイド、取扱説明書、Color Calibration Factory Report、保証書、INZONEステッカー |
有機EL搭載で480Hzという超高速リフレッシュレートを実現
「INZONE M10S」は、主にFPSコアゲーマーを対象とした27型ゲーミングモニターであり、「VALORANT」の国際大会を2連覇した世界有数のトッププロチーム「Fnatic」と共同開発した商品だ。最大の特徴は有機EL(OLED)パネルを採用し、広いダイナミックレンジと480Hzという超高速なリフレッシュレートを実現したことだ。解像度はQHD(2,560×1,440ドット)で、解像度よりもリフレッシュレートを重視したモデルだ。
有機ELは、非常に高速な応答速度が利点の一つだ。液晶は液晶分子が動くことで画像を表示する仕組みなので応答速度に限界がある。液晶パネルの応答速度は高速なものでも1~0.5ms(GTG)程度だが、有機ELパネルを採用した「INZONE M10S」は0.03ms(GTG)という桁違いの応答速度を誇り、FPSなどで素早く頭を振るような動きでも残像感を感じることはない。
また、有機ELはバックライトが不要な自発光方式のため、黒がしっかり締まり高いコントラストを実現できる。「INZONE M10S」はスタティックコントラスト比は150万:1と非常に高く、ピーク輝度も1,300cd/m2と一般的な液晶モニターの数倍である。視野角も水平/垂直ともに178度と広く、斜めから見ても色が変化するようなこともない。
もちろんHDRにも対応しており、DisplayHDR True Black 400を満たしているほか、表示色域はDCI-P3カバー率98.5%と優秀で色表現も素晴らしい。可変リフレッシュレート機能としては、VESA Adaptive SyncとNVIDIA G-Syncの両方に対応しており、ティアリングなどを防ぐことができる。
スタンドのデザインも一新され、より広いスペースを使えるように
まずは外観から見ていこう。先述のように有機ELパネルはバックライトが不要なため、パネル部分が非常に薄くなっていることが特徴だ。直線を基調にしたデザインで、額縁部分も非常に狭い。スタンドのデザインも一新され、コンパクトな円形の台座で支える設計になっている。
台座の厚みは4mmと薄く、ゲーミングマウスパッドの厚さとほぼ同じであるため、マウスパッドの延長のような感覚でマウスを移動できる。最近のFPSのプロ選手はローセンシに設定してマウスを大きく動かす選手が増えているが、スタンドの台座は直径159mmとコンパクトなため、マウスを動かすスペースを広く取りやすい。
また、スタンドの自由度も高く、高さの調整や上下のチルト角の調整はもちろん、左右のスイーベルも可能だ。画面の高さについては、上下120mmの範囲で調整が可能で、上下はー5度~+25度の範囲で調整可能だ。スイーベルは、±180度という仕様だが、実際には360度クルクル自由に回せるので、配線を繋ぎ直すときなどにも便利だ。
入力端子はHDMI×2とDisplayPort×1で、2ポートのUSBハブ機能も備えている。ただし、以前に発表されたモデルが備えていた、1組のキーボードとマウスとモニターを複数のPCで切り替えて使う「オートKVMスイッチ機能」は省略されている。
ゲーミングアシスト機能としてはブラックイコライザー、24.5インチモード、クロスヘア、タイマー、フレームレートカウンターが用意されている。画質モードの選択や画質の細かな調整などは、OSDと背面のスティックによる操作で行なう。OSDメニューの表示も分かりやすく、操作はしやすい。
有機ELということで発熱による焼き付きが気になるが、アルミパネルで熱を拡散し、サーマルパッドとヒートシンクで効率的に放熱するなどハードウェアレベルで焼き付きを防いでいる。
FPSに特化した「FPS Pro+」や「FPS Pro」モードを「VALORANT」で検証
「INZONE M10S」はFPSコアゲーマーをターゲットにした製品であり、Fnaticとの共同開発よるFPSに特化した機能を備えていることが魅力だ。Fnaticと共同開発した機能は、FPSに特化した画質モード「FPS Pro+」と「FPS Pro」、24.5インチモード、新しいスタンドデザインの3つだ。新しいスタンドデザインについては、すでに紹介しているので、残りの2つの機能を解説する。
まずは「FPS Pro+」と「FPS Pro」について検証してみたい。「INZONE M10S」はプリセットで用意されている画質モードが豊富で、SDR時は「FPS Pro+」、「FPS Pro」、「MOBA/RTS」、「シネマ」、「ゲーム」、「標準」、「sRGB」の全7モード、HDR時は「DisplayHDR」、「シネマ」、「ゲーム」、「RPG」の全4モードから選べる。
この中で特に注目したい画質モードが「FPS Pro+」と「FPS Pro」であり、その名の通り「VALORANT」をはじめとするFPSをより快適にプレイするためのモードだ。FPS Pro+は有機ELの性能を最大限に活かしFPSで敵が見やすくなる画質モードで、FPS Proは一般的なゲーミングモニターで使われているTNパネルと見た目が同じになる画質モードだ。
実際にFPS Proで「VALORANT」をプレイしてみた。FPS ProはTNパネルを採用したゲーミングモニターに近い色合いで表示されるモードであり、確かに普段使っているゲーミングモニターでプレイするのと似た感覚でプレイできた。これであればTNパネルユーザーも安心して有機ELパネルへ移行できるだろう。
画質モードをFPS Pro+にしたところ全体的に画面が暗めになったが、色がよりビビッドで鮮明になり遠くの敵の識別がより容易になった。特に赤や緑の発色が、FPS Proでは少しくすんだ色に見えるが、FPS Pro+ではより彩度が高くなっていることがわかる。
毎日のように「VALORANT」をプレイしている高校生の息子にもそれぞれのモードでのプレイフィールを聞いたところ「FPS Proでも、素早く視点を動かしても残像が感じられず、普段の液晶に比べて動きも滑らかでプレイしやすいが、FPS Pro+のほうが、遠くの敵を素早く見つけられるので、エイミングにも余裕ができると感じた」とのことだ。
筆者の環境(Ryzen 5 3700X+Radeon RX 7600 XT)では、QHD解像度での「VALORANT」の平均フレームレートは300fps前後であり、リフレッシュレート480Hzに対応した本製品の性能をフルに引き出せてはいないが、それでも高リフレッシュレートと有機ELならではの応答速度の高速さは十分に実感できた。
画面全体を瞬時に把握できる24.5インチモード
続いて、24.5インチモードの検証をしてみた。24.5インチモードはその名の通り、27型の「INZONE M10S」の表示領域を減らして24.5型モニターとして使うモード。「VALORANT」のようなFPSでは視線を動かさずに画面全体を瞬時に把握することが重要であり、そのためには27型だとやや大きく、端の確認が遅れてしまうことからこのモードが搭載されている。
また、FPSの国際大会の公式モニターも24.5型が主流であり、普段の練習での環境と大会での環境を揃えたいというのも理由の一つだ。最近の27型ゲーミングモニターでは、同じような機能を備えた製品も登場しているが、本製品では24.5インチモードでの表示方法を2種類用意しており、画面を中央に寄せる「センター」、Fnaticメンバーのアドバイスによって搭載された画面を下に寄せる「ボトム」があるので、好みのほうを選ぶことができる。なお、24.5インチモードでは、解像度が最大2368×1332ドットとなる。
オフライン大会に積極的に参加し、自宅でも24.5型モニターでプレイしてきたという方は、24.5インチモードを有効にしたほうがプレイしやすいと感じるはずだ。24.5インチモードによってプレーヤーの選択肢が広がり、27型の大画面が好きだという人も、画面全体を把握しやすい24.5型が好みだという人も「INZONE M10S」1台で対応できる。
もちろん、プレイするゲームによって24.5インチモードを使うか使わないか自由に選択できるので、MMORPGやオープンワールド系アクションゲームなどでは、27型をフルに使って大迫力の画面で楽しみ、「VALORANT」をプレイするときは画面端も瞬時に把握できる24.5インチモードを使うといったことも可能だ。
有機ELのコントラスト比の高さが最大限に発揮されるHDRモード
「INZONE M10S」は有機EL向けのHDR規格である「DisplayHDR True Black 400」を満たしており、HDR対応ゲームではメリハリの効いたダイナミックレンジの高い映像で楽しむことができる。また、HDR時は画質モードを選択できないモニターも多いが、本製品ではHDR時でも「DisplayHDR」、「シネマ」、「ゲーム」、「RPG」の全4モードから選べることも評価できる。
そこで、HDR対応の「ホグワーツ・レガシー」を利用して、HDR有効時と無効時の表示を比べてみた。結果は下の写真の通りで、HDRを有効にすることで、HDR無効時には白く飛んでみえなくなっていた部分もしっかりとディティールが分かるようになり、画面全体のメリハリ感も向上した。実際にHDRを有効にしてプレイしてみたが、27型の大画面と有機ELならではのコントラスト比の高さで、迫力のある映像を存分に楽しめた。
あらゆるゲームを最高の画質で楽しめる至高のゲーミングモニター
INZONE M10Sは、480Hzという高いリフレッシュレートと有機ELによる超高速な応答速度、高いコントラスト比がウリのゲーミングモニターである。さらに単にモニターとしての基本スペックが突出しているだけでなく、Fnaticとの共同開発による「FPS Pro+」や「FPS Pro」モードや24.5インチモードといった、ゲームをより快適にプレイするための機能が多数されていることが魅力だ。
ソニーがこれまでテレビなどで培ってきた映像技術がつまったゲーミングモニターであり、FPSやMMORPG、アクションゲームなど、あらゆるゲームをそれぞれのゲームに応じた最高の画質で楽しめる。息子は「ストリートファイター6」をかなりやりこんでいるのだが、息子に「ストリートファイター6」をINZONE M10Sでプレイさせてみたところ、「残像が一切感じられず、画面が非常にくっきり見えて、ジャスパなどのタイミングも取りやすい」という評価であった。
価格は決して安くはないが、ゲーミングモニターとして長く使える性能を持っており、それだけの価値はある製品だ。24型フルHD/240Hzクラスのゲーミングモニターでは物足りなくなってきたベテランゲーマーに特におすすめしたい。
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