レビュー

「スター・ウォーズ 無法者たち」レビュー

危機脱出のプレイ感と物語がマッチ! SW“ミリしら”勢も楽しめる、スペースファンタジー超大作

【スター・ウォーズ 無法者たち】

8月30日 発売予定

価格:
スタンダードエディション:9,790円
ゴールドエディション:15,400円
アルティメットエディション:18,150円

 ユービーアイソフトは、プレイステーション 5/Xbox Series X|S/PC用オープンワールドアクションアドベンチャー「スター・ウォーズ 無法者たち」を8月30日に発売する。アーリーアクセスは8月27日0時より開始。アーリーアクセスはゴールド/アルティメットエディション購入者に適応される。

 今作はMassive EntertainmentとLucasfilmが開発し、ユービーアイソフトが発売する「スター・ウォーズ」史上初のオープンワールドゲームだ。映画「スター・ウォーズ エピソード5/帝国の逆襲」と「スター・ウォーズ エピソード6/ジェダイの帰還」の間に起きた出来事が描かれていく。

 「スター・ウォーズ」シリーズと言えば、ジョージ・ルーカスが製作したスペースファンタジー作品の金字塔。現在では映画のみならず、小説、アニメ、漫画、ゲームと、多岐にわたるマルチメディア展開で多数のスピンオフ作品が生まれ、世界観の広がりを見せている。

 今作「スター・ウォーズ 無法者たち」も、そうしたシリーズの世界で展開するスピンオフの1つであり、物語本編の裏で起きている出来事を題材にしている。「スター・ウォーズ」ファンならグッと没入できるが、「スター・ウォーズ」のことをまったく知らないというプレーヤーでも、主人公のケイ・ヴェスと一緒にこの世界を楽しめる良作となっていた。さっそく、レビューをお届けしていきたい。

【『スター・ウォーズ 無法者たち』:公式ローンチトレーラー】

冴えないコソ泥が裏社会の大物相手に成り上がる!

 主人公ケイ・ヴェスは、砂漠の惑星カントニカのどこか冴えない若き泥棒だ。カジノ都市カント・バイトの労働者地区にあるバーの屋根裏部屋で、マーカールと呼ばれる種族の相棒ニックスと、スリで日銭を稼ぎながら借金まみれの生活を送っている。ある日ケイは、カントニカから旅立つために、以前から練り上げてきた計画として、街を牛耳るギャング組織のナイトクラブから、シャトルに乗り込むための偽造IDを盗み出そうとするも失敗してしまう。

 ギャングから追われる立場になった彼女は、リスクは伴うが、惑星を出るための船が買える高額報酬の依頼を引き受け、一発逆転を狙う。しかし、その仕事には裏があり、結果的に裏社会で急速に勢力を拡大中の組織「ゼレク・ベシュ」を敵にまわすことになってしまった。成り行きで宇宙船を盗み出し、カントニカから脱出したものの、今度は犯罪の温床になっている衛星トーシャーラに不時着する不運が続く。

 宇宙船も損壊して、トーシャーラからしばらく身動きが取れなくなったケイは、相棒ニックスと共に、裏社会で生き抜くための知恵を身につけていくことになる…...というのが、今作の導入部分。プレーヤーは、サバンナの衛星トーシャーラから本格的な旅を始めて、各惑星で活動するギャングたちの勢力争いに介入していくのだ。

 コソ泥から始まって裏社会に名を馳せる大物へと成長する、良い意味での王道なストーリーラインは、「スター・ウォーズ」に詳しくなくても楽しめる物語設計だ。しかし、こうしたシナリオ展開そのものは、マフィア映画、ヤクザ映画などで見られがちな手垢のついた手法とも言える。そのため先の展開が読みやすく物語の没入感も薄まりそうなところだが、「スター・ウォーズ」という題材が王道なストーリーラインを引き立てている。

 主人公たちのやることなすことはとにかく派手になりがちで、そのドタバタ感が「スター・ウォーズ」らしくもあって、プレーヤーを夢中にさせてくれる。逃げた宇宙の先でドッグファイトが繰り広げられたり、シリーズお馴染みの「銀河帝国」に喧嘩を売って指名手配されたりと、冒険活劇のエンターテインメント成分はしっかりと色濃い。

 今作のように裏社会にフォーカスしたクライム作品、例えばマフィア映画やヤクザ映画などにおいては、“いつ誰が裏切るかわからない”サスペンスのハラハラ感も魅力的だ。今作も「スター・ウォーズ」の名を冠してはいるのだが、そんなクライム作品のようなスリルをゲーム中に味わうことができる。

 物語では多くの犯罪組織が登場し、そこに属する狡猾な人物たちはやはり一筋縄ではいかない。彼らは、ケイのようにどこにも属さないはみ出し者の命を軽く見ているので、ときには使い捨ての手駒のような扱いを受けそうになったり、友好的な人物かと思えばとんだ食わせ者だったり。騙し騙されが日常的に繰り返される過酷さと厳しさを、プレーヤーはケイの視点から身をもって体験できるのだ。

 そして、ゲームを進めていけば無知ゆえに不運が続いたケイも、惑星を巡りながらいっぱしのアウトローへと成り上がり、仕掛けられる側から仕掛ける側へと成長していく。その頃にはプレーヤーも「スター・ウォーズ」の裏社会を生きる術を身につけており、クエスト中に起きた危機的な状況や、物語中のスリルを刺激として受け入れ、楽しめるようになっていることだろう。ケイのアウトローとしての成長と、ユーザーの総合的なプレーヤースキル向上体験はシンクロしている。

潜入、ハック、脱出のステルスアクションがベース

 “「スター・ウォーズ」史上初のオープンワールドゲーム”、“クライム作品のようなスリル”などと耳にすれば、中には広大な世界でやりたい放題の自由なゲームだと思うユーザーが一定数はいるかもしれない。ここは勘違いを招きかねないのであらかじめ断言しておきたいが、今作は、自由度に振り切ったオープンワールドゲームではない。

 実際は、物語の進行で訪れた星々がオープンワールドなフィールド構造を持ち、そこで色々なサブクエストを引き受けて、各地に奔走していくというのがゲームの基本スタイルとなる。それらのサブクエストは犯罪組織の依頼から始まり、武器・乗り物のアップグレードに関係するもの、街・酒場などで耳にした噂や誰かの困りごとを解決するものなど、種類は多岐に渡っている。自由度がとにかく高いゲーム性というより、物語進行タイミングをプレーヤーに握らせ、その中で自由に惑星間を移動しながらさまざまなクエストをこなすデザイン、と紹介しておくのが適切だろう。

バイクのような乗り物「スピーダー」で惑星内のさまざまなエリアを奔走
クエストが終わったと思うと、些細なキッカケでどんどん新たなサブクエストが登場していく

 各依頼を引き受けるケイは、反乱軍でもなければジェダイの騎士でもない。「スター・ウォーズ」の単語ですぐに連想されやすい、ライトセーバーやらフォースの力やらなんてものは当然扱えない。彼女はルーク・スカイウォーカーよりもハン・ソロのポジションと言うべきで、武器は基本的に小型のブラスターが1丁あるだけだ。なので、相棒ニックスとブラスター1丁を引っ提げ、どこへでも潜入していくのがケイの戦い方である。

 潜入する場所は主に、犯罪組織の拠点と銀河帝国の基地が多い。場合によっては、廃墟などのほとんど敵と遭遇しない場所にて、アイテムを持ち帰ってくるだけのような内容も。特にストーリーでは、大量の敵が巡回する重要施設の潜入後、最奥のコンピューターをハッキングして、ド派手に脱出するのがお約束展開だ。

 悪態をつきながら銃撃戦が始まり、拠点から命からがら逃げ切っていくケイ。こうした潜入、ハッキング、脱出の流れで進行するクエストの存在感が目立ちやすく、“オープンワールド要素を含んだステルスアクション”と、するのが今作の正しい見方だろう。

ゲームの基本は敵から身を隠しながら潜入するステルスアクション
鍵の掛かったドアはアクセスキーを盗むかピッキングにて解除
潜入の目的は重要なアイテムや機密データを盗み出す場合が多い
多くの場合は、目的達成後に警報ブザーが鳴り響く中、銃撃戦を展開しながら脱出する

 筆者はステルスアクションがどちらかと言えば不得意な方で、序盤は慎重に行動し過ぎた結果、全く奥に進めないことが多かった。クエストによっては、敵に見つかると即チェックポイントからやり直し、などというものもあり、安全なルートと進むべきタイミングが分からず行ったり来たりを頻繁に繰り返す。

 しかし、幾つかの潜入をやり遂げると、潜入のコツが掴めるようになってきて、見張りに立つ敵のすぐ真後ろを移動するなど、大胆な行動を取るまでになった。敵の巡回行動はよく見るとパターン化されているし、そこまで賢いわけでもない。

 さらに、ほとんどの施設に通気ダクトが裏道的に用意されているので、そこを通り抜ければ比較的安全に進むことができる。ほかにも潜入中は爆発物で敵の注意を惹きつける、ニックスをけしかけて視界を奪う、わざと目立った行動を取り、敵をこちら側に呼び込むなどなど、厳重体制を突破する手段がたくさんあるのだ。失敗しても近くのチェックポイントからリスタートでき、ステルスアクションゲームとしては、慣れさえすればだいぶマイルドなバランスの仕上がりになっている。

狭い通路に複数の敵が配置されている場所も多い。監視カメラなども取り付けられているのでどう進むか悩めるポイント
ケイの潜入を助けてくれるもう1人の相棒(?)こと「通気ダクト」。敵に見つかって警戒されてもここへ逃げればとりあえず安全
ニックスは警報を破壊したり、手の届かない場所に潜り込んでスイッチを押したりと非常に優秀。使い方次第で潜入の難易度は大きく変わる

 ケイには成長要素が備わっているのも忘れていけない。旅の中で出会った人物からインスピレーションを受けて、規定の条件を満たせば、有益なアビリティを習得することができる。戦闘、隠密、探索、移動など、ケイ自身が取れるアクションの幅が増えるので、ゲームプレイそのものが快適になっていく。

 最初は近接攻撃では倒せないドロイドを倒せるようになるほか、スピーダーでジャンプができるようになったり、戦闘中敵の視界を遮る発煙弾を発射できたりなど、あらゆる面で重宝する能力を習得できるわけだ。

 クレジット(「スター・ウォーズ」世界における通貨)や素材に余力があれば、ブラスターをアップグレードするのも、攻略を快適にする手段の1つ。クエストをこなしていくと、ケイの装備品も増えていくので、その装備に付いた能力だってバカにはできない。ただ、装備品には見た目を変更するコスチュームの側面も強い。その辺はプレーヤーの趣味趣向といったところだが、ニックスにアクセサリーを付けると、より愛らしい姿になるので、戦闘中や潜入中でも時間を止めて「フォトモード」が捗りそうだ。

裏社会を牛耳る数々の組織とどう向き合うか。ゲーム中の体験に華を添える「評判」システム

 今作の特徴として、犯罪組織からケイがどのように思われているかを示す「評判」システムがある。ストーリーが進むにつれて、関係を築く組織の数は増えていくが、組織同士はいずれも対立していることから、どこの組織に肩入れしているかがプレイ中に影響してくる。

 たとえば、ある宙域では長い歴史を持つ組織「ハット・カルテル」の縄張りがあり、プレーヤーとハット・カルテルの関係性が良好なら、気にせず通り抜けることが可能だ。さらに、彼らと提携している商人からアイテムを購入する際、価格が下がるなどのメリットも共通で存在している。逆に敵対関係ならば、どこへ行っても見つかり次第襲撃されてしまうし、最低評価になると暗殺部隊が送り込まれる事態に繋がる。

 組織との関係性は、ストーリーやクエスト中の選択肢、縄張りへの侵入と破壊行動などによって上下する仕組み。ブローカーから関係性が悪い組織の依頼を引き受け、それをこなすことによって信頼を取り戻すこともできる。だが、特定の組織に肩入れしがちだと、今度はその組織と敵対している方からの評判が落ちてしまうので、世渡り上手的に裏社会を立ち回らなければならない。

 プレーヤーのやり方次第で、各組織とのバランスを取っても良いし、好きなキャラクターがいるといった理由で、一方だけに偏っても面白い。物語が進み、その組織が本質的に信頼できないからこそ、裏切るかたちで依頼を全て断るのも自由だ。評判システムは、さまざまな惑星を巡りクエストをこなす過程で、関係性する組織の影響が作用する一長一短な仕組みと言える。旅の中で起こる突発的なイベントも、もとを辿ると組織間抗争にケイが巻き込まれているような構図である。

 しかし、こうしたイベントと組織の関係性で変化する旅のドラマこそが、今作のオープンワールド体験が持つ、ある種の刺激なのだと考えられる。ただ広く、平和に惑星を巡るだけでは「スター・ウォーズ」の世界観が持つ、無秩序な感じを体験するには至らないはずだ。ゲーム中でケイが遭遇するトラブルの数々を、ゲームシステムとして巧みに昇華しているように感じてならない。

スピーダーで走っていると敵対する組織に追いかけ回される場面が多々ある
初めて来たばかり土地では、そこを管轄する組織に気に入られることが最初の一歩

「スター・ウォーズ」ファンも、作品を“ミリしら”でも楽しめる手応え

 物語が進むと、ケイは宇宙船を修理して惑星間を移動できるようになる。せっかく「スター・ウォーズ」史上初のオープンワールドゲームだ。序盤に訪れた惑星カントニカへ戻りクエストを進めるもよし、スピーダーを乗り回してあちこちを見てまわるのもよし、である。

 作中で訪れる街はどれも荒んだ雰囲気を放ち、路地裏で弱者が虐げられているような場所ばかりだが、ゲーム内の観光ロケーションとしては作り込みを感じられる出来栄えだ。また、街中を歩き回っていたら、新しいクエストが発生することもあったので、各地を散策するのは決して無駄にはならないだろう。

 クエスト以外にも、初めてその街へ訪れたプレーヤーが歩きまわりたくなる仕掛けとして、アーケードゲームやギャンブルなどのアクティビティ要素が仕込まれている場所もあった。気になりプレイしてみると、どのミニゲームもやたらと凝っていて遊び心を感じる。しかも運が良ければクレジットまで稼げてしまうのだ。

極寒の惑星「キジーミ」では道端に屋台が出ていた。身体も温まる「デュラダン・スープ」をニックスと食す
カントニカの街「ミロガナ・ヴァレー」で見つけたアーケードゲーム。銀河帝国の戦闘機TIEシリーズを撃破してスコアを稼いでいく
こちらは9マスのテーブル上でシャッフルされたカードの中から正解を1つ探すゲーム。惑星「アキヴァ」にて確認
競馬のような「ファジアー・レース」。クレジットを賭けてホログラム越しにゴールするファジアーを予想する

 こうした寄り道的な遊びが随所に散りばめられていて、クレジットを稼ぐ手段にもなるからつい遊び続けてしまう。これらのミニゲームの一部は、映画「スター・ウォーズ」でも登場していたり、劇中のシチュエーションをアーケードゲーム風味にアレンジにしていたりと、ファンはニヤリとできるポイント。

 特にNPCと、手札の役を勝負するテーブルゲーム「ケッセル・サバック」は、ニックスを使ったイカサマが可能。さらに特定のアイテムを集めると、新しいイカサマを発見できるから、実に妙なところを作り込んでいる。もちろん、バレると相手に警戒されるし、警戒状態でイカサマが発覚すると、ゲームから強制的に退場させられてしまう。なんというか、無法者たちによる闇の遊びといった感じで、今作の世界観にはピッタリだと思える。

最大4人で遊ぶテーブルゲーム「ケッセル・サバック」では、“ゼロ”に近い数字のペアカードを作って勝負する
イカサマができるのだが普通にバレてしまった

 「スター・ウォーズ 無法者たち」は、確かに「スター・ウォーズ」の世界を題材としたオープンワールドゲームだ。ゆえに、映画「スター・ウォーズ」の物語本編との直接的な絡みや、物語時系列に沿った世界情勢の影響など、ファンか前提知識を押さえたユーザーでなければピンとは来にくいだろう。もともとのファンであれば、映画などでお馴染みの惑星を自由に駆け巡れる感動をすぐに体験できるだろう。

 その一方で嬉しいのは、今作は「スター・ウォーズ」を“1ミリもしらない”、つまり「ミリしら」状態であってもゲーム単体で、十分スペースファンタジー超大作の魅力が味わえるつくりなことだ。

 主人公ケイが、反乱軍でも帝国軍でもジェダイでもなく、特別な力を持たない「泥棒」なことから、基本は一貫してステルスアクションが主体となる。だが、経験を経て、着実に裏社会で名を馳せるにふさわしい技術を身に付けていく。プレーヤーの操作で数々の困難を切り抜けてきたケイが、物語の危機的な状況を乗り越えても違和感はなく、そこに自然と説得力さえ生まれているようである。

 アクションゲームの遊びごたえを存分に得られるボリューム感があるし、そこに物語のエンタメ性、そしてコンテンツの多様性が加わっている。「スター・ウォーズ 無法者たち」は、1つのオープンワールドアクションゲームとして、上手くまとめあげられている作品だ。

惑星「アキヴァ」
惑星「タトゥイーン」