レビュー
「黒神話:悟空」レビュー
“緩い死にゲー”で楽しい「西遊記」アクション! 心掴まれるストーリーも魅力
2024年8月16日 23:00
- 【黒神話:悟空】
- 8月20日 発売予定
- 価格:
- 7,590円(通常版)
- 8,580円(デジタルデラックス)
- 開発元:GameScience
- 販売元:GameScience
「黒神話:悟空」(Black Myth: Wukong)は、中国のGameScienceが8月20日にリリースする新作アクションRPGだ。プラットフォームはPC、プレイステーション 5。中国4大奇書の1つ「西遊記」をモチーフとしたUnreal 5 Engineによる高品質のビジュアルが特徴だ。
西遊記と言えば日本でも人気のある創作作品で、数多くの漫画やアニメ、ゲームなど、西遊記をモチーフとした数多くの作品がリリースされている。ゲームならファミコンの「元祖西遊記スーパーモンキー大冒険」やアーケードの「ソンソン」など、漫画なら寺沢武一氏の「ゴクウ」や鳥山明氏の「ドラゴンボール」などなど、様々にある。
また個人的には、俳優の堺正章氏が主演を務めた1970年代放送のTVドラマ「西遊記」が印象に残っている。中国では今でも人気の題材の1つのようで、毎年のように映画やドラマなどが数多く製作されていた。
今回は本作を発売前に遊べる機会が得られたので、ゲームシステムやストーリーなどの概略についてレビューしていきたい。
回避アクションが強力な「緩めの死にゲー」
本作のゲームの感触を一言でまとめると「緩めの死にゲー」だろう。数多くの妖怪が敵として登場する本作では、ストーリーを進める上で、多くの巨大な妖怪との戦いが発生する。これらの巨大な妖怪たちはかなりの強敵で、普通に殴りかかってもあっさりと返り討ちにあってしまう。
一方で本作においては「回避」が非常に有効なアクションで、回避をタイミングよく駆使して戦う事で、難敵であっても乗り切れることが多い。そしてアクションゲームが苦手な人であっても、弱い妖怪との戦いを繰り返すことでレベルアップし、スキルを強化できる。
そのため上手な人は低レベルのままサクサクと、そこまで得意でないという人でもも死んで覚えるスタイルで繰り返し挑むことで、段々とクリアできるようになっていく。“死にゲー”と考えるとやや緩め、“アクションゲーム”とするとやや厳しめくらいの難易度といった感触だ。
豊富に揃う棍の技。スキルを駆使して妖怪どもをぶちのめせ!
オープニングのカットシーンではいきなり驚きの展開から幕を開けることとなる。ネタバレになるため、ここで詳しくは触れないが、「西遊記」をぼんやりとでも知っている人ほど盛り上がる内容になっており、このオープニングを見るためにプレイするのもアリなほどの完成度だ。またチュートリアルについても、かなりテンションの上がる仕掛けが用意されているので、この辺りは是非自分の手で確かめてみてほしい。
本作の主人公は孫悟空ではなく、名もなき猿の「天命人」である。この猿が石から生まれたかは定かではないが、棍の扱いが巧みで暴れん坊、勝手気ままの悪戯好きな猿という様相で、まるで孫悟空の生まれ変わりのような猿なのだ。この「天命人」を操作して、「西遊記」の後日譚と呼ぶに相応しい衝撃のストーリーを紐解いていくこととなる。
本作はかなりシンプルなアクションRPGとなっている。主人公の天命人は棍を常に持ち歩き、これでフィールドにいる他の小物の妖怪(小妖)たちをなぎ倒し、道中獲得できる術の数々を駆使して、より強力な妖怪たちを倒しながら物語を進めていく。
敵を倒す事でレベルが上がり、スキルポイントを獲得できるので、これを使って棍法や術などを強化することもできる。強化方法はスキルツリー形式で、最近では「ゴッド・オブ・ウォー」や「Ghost of Tsushima」をイメージしていただくとわかりやすいかと思う。
ともあれ基本は棍による攻撃だ。棍を軽快に振り回して敵を削る小攻撃「軽棍」と、発生までに時間がかかるが、強烈な一撃を決められる大攻撃「重棍」の2種類の攻撃で敵の小妖を蹴散らしていく。
「重棍」はそのまま放っても大ダメージだが、ボタン長押しで「棍勢」を溜めることで、画面下部のゲージを上げていき「蓄力」状態になることで、さらに強力な攻撃も行なえる。「棍勢」を貯める方法は長押し以外に、後述の回避(瞬身)でも貯めることが可能だ。
特に序盤の小妖については、発見したら近付くタイミングで「棍勢」を貯めながら、ほどよい距離感で「蓄力」が最大になるように移動していき、射程内に入ったところで攻撃を放つことで、相手の攻撃を喰らう事なく、一撃で粉砕するのが気持ちいい。序盤の移動では積極的に使っていきたいところだ。
ただし、「重棍」の攻撃はモーションがかなり長く、溜めている間やモーション中に敵の攻撃がくると回避できない。そのため、敵の行動を常に観察してから溜めを作るのがポイントと言える。なお「蓄力」状態の攻撃を上手く当てることができると、相手の攻撃を潰せるので、かなり有利に戦いが展開できる。
棍での攻撃の基本は縦横に振る「劈棍の型」が基本だが、レベルが上がると棍を立て、その上に乗ってダメージを軽減したり、立てた棍を軸に回転して攻撃できる「立棍の型」や、真正面に突き刺すように攻撃する「刺棍の型」なども覚えられる。本作での武器は棍のみながら、そのアクションは豊富で、棍術などの発祥とも言える中国らしさが感じられる。
攻略に重要な「回避」と「法術」
本作において超重要なアクションの1つが「回避」だ。敵の攻撃のタイミングで回避ボタンをおすことで、敵の動きを華麗にかわせる。本作の回避行動はそれなりにレスポンスがよいので、多少タイミングが早すぎても回避の連打で逃げ切れる場合も多い。
また、敵の攻撃が命中するタイミングで同時に回避を行なうことで「瞬身」が発動する。これはジャスト回避とも言えるアクションで、成功すると、自身の残像が残るという演出が発生し、敵の攻撃を無傷でかわせるだけでなく、前述の棍勢が貯まるというありがたいアクションだ。
「瞬身」についてはとにかく敵の攻撃のタイミングを覚えるのが重要だ。この辺りは慣れもあるが、敵の攻撃が当たるよりも気持ち早めに回避するくらいのタイミングがちょうどよさそうな印象だ。失敗しても早めに押していれば回避は成功するのでダメージを受けずに済む可能性が高まる。
本作における天命人の主要ステータスは、生命力と法力と体力だ。このうちHPとも言えるのが生命力で、これが0になると猿は死んでしまう。体力はいわゆるスタミナのようなもので、回避や攻撃、特に「重棍」の溜めの際には体力をかなり消耗する。体力は少しのインターバルですぐに全快するので、相手との距離感はかなり重要だ。
本作において、天命人は「法術」が使える。こうした術は山々の地神から伝授される場合もあれば、ボスクラスの妖怪を倒す事で得られる場合もあり、使用には法力を消費する。つまり法力はMPのようなものと言える。最初に覚える「定身術」は相手の動きを一定時間動けなくするという強力な術だが、クールタイムがかなり長いので連続では使えず、MP回復の手段が乏しい本作では、使いどころを慎重にする必要がある。
頭目として分類される強力な妖怪「広智」を倒す事で得られる「変化」の術では「広智」に変化して敵と戦える。この術のユニークなポイントは、「広智」に変化して戦っている間の生命力は「広智」の生命力が別に用意されていること。
変化したまま生命力が0になった場合も、術が解けて元の天命人に戻るのみで、生命力は消費しないところだ。かなり強力な術だが、術を獲得するには「広智」を退治する必要があり、これがかなりの強敵なため、入手がそもそも困難というのもまたユニークな要素といえる。
敵を倒す事で経験値が得られ、一定以上稼ぐことでレベルが上がり、スキルポイントが獲得できる。このスキルポイントを使用して、棍法や法術などを強化できる。ここで割り振ったポイントについては後述の「祠」で再割り当ても行なえるので、レベルアップしたタイミングで気になるスキルにガンガン振ってしまっても問題ない。
回復用のひょうたん「葫蘆」は特殊効果をつけられる
本作の回復要素は、腰にぶらさげたひょうたん「葫蘆(ころ)」に入れられた仙酒「椰子酒」を飲むことで行なえる。葫蘆にも種類があり、上級品になると特殊効果が付く物も用意される。例えば「争先紅葫蘆」という葫蘆を使う場合、満タンの状態で飲んだ時のみ、生命力が全快になるという特殊な効果が付いているので、これがかなり強力だ。通常の葫蘆は一口で最大生命力の3割3分しか回復せず、決められた回数を飲み切ると空になってしまい、以降は補充しないと回復できなくなる。
また、本作における状態異常は毒触や火焚、負傷などがあるが、この中でもかなり辛いのが毒触だ。毒触を使ってくる敵とは序盤のかなり早い段階から遭遇する事になるのだが、本作における毒触は攻撃を受けた場合もいきなり毒触状態にはならず、毒の準備段階のような状態になる。
画面には毒のマークとゲージが表示されるが、ここで安静にすることでゲージは減少していき毒状態にはならず、ちょっとの時間で毒の準備段階が解除されれば完治なので安心して旅を続行できる。ここは、「エルデンリング」などの死にゲーと同じ感覚だ。
ところが敵との戦闘中などで、攻撃したりダッシュしたりと激しい動きを繰り返したり、毒の追撃を喰らってしまうと、身体が完全な毒触状態になってしまう。毒触状態はステータス下部に緑色のアイコンが追加され、以降は時間経過毎に毒のダメージを喰らうようになってしまう。
この毒触状態をすぐに解除するには消費アイテム「度瘴散(どしょうさん)」が必要だ。手元にない場合、しばらく放置する事で毒触状態が解除になるのだが、そのためにはかなり長い時間の休憩を要する上に、生命力が低いと毒のダメージで死んでしまう事もある。そのためアイテムがない状況で毒触状態になってしまった場合は、後述するが素直に死を選ぶのが本作においてはかなり有効な手段だったりする。
いずれにせよ、毒の準備段階で安静にすることで、毒触状態にならずに済むため、ヤバいと思ったら安静にするのが無難な逃げ道と言える。
拠点は「祠」。スキルリセットなどのカスタムが可能
本作のフィールド移動中には「祠」が点在しており、ここに香を捧げる事で拠点にできる。例えば、過去に香を捧げた祠同士なら「縮地」で瞬時に移動、すなわちファストトラベルが利用できるほか、宿屋のように休息もできる。休息により、生命力だけでなく、回復用の葫蘆も満タンにでき、法力も回復する。ただし、休息を取る事で移動中に倒した小妖については復活してしまう。
スキルポイントを1度リセットして、再度自由に割り振れる「天賦の再習得」も祠で行なえる。特にデメリットはないので、プレイ中は適当に振りつつ、自分がよく使うスキルを厳選して強化したいような場合は有効な手段と言える。
他にもゲーム中に入手した素材を使った装備の鍛造や、椰子酒に漬け込む「漬け材」を変更する事で、回復以外の効果を付与することもできる。筆者のプレイ状況では使用できなかったが、将来的にはフィールドで拾った素材を使って丹薬なども煉成なども行なえるだろう。
また、敵の妖怪を倒した際には経験値とともに「霊蘊(れいうん)」と呼ばれる物が獲得できるが、これをお金のように使って祠で買い物も行なえる。前述の「度瘴散」なども購入できるので、在庫がある限り買っておくことをおススメしたい。
もう1つ、巨大なボスクラスの妖怪を倒した後に、青白い魂魄の状態になる物もいる。このような魂魄については、道中で人間の高士から「点化」の導きを得ることで、利用できるようになる。
具体的には、その妖怪に変化して固有の技を使えるようになるというもの。変化の術に似ているが、技の使用後はすぐにもとの姿に戻る。「点化」が使用できるようになると、魂魄を「蒐集(しゅうしゅう)」する要素が加わる。
蒐集した魂魄は祠のメニューから強化できるほか、どの魂魄を装備するかも選択できる。魂魄には装着中にプラスの効果を及ぼす「携帯効果」もあるため、「点化」はぜひ習得したいところだ。高士はカエルの妖怪「波裏浪」の周辺の山にいるはずなので、「波裏浪」と出くわしたら辺りをくまなく探しておくのがオススメだ。
デスペナルティほぼなし!困った時は死んでやり直しがベスト!
今回、本作をプレイするにあたっては、とにかく逃げずに何度もボスクラスの巨大な妖怪との壮絶なバトルを繰り返した。そして見えてきたことがいくつかあるので紹介したい。
先ず、本作においてはデスペナルティがほとんどない。獲得した経験値は減らず、お金代わりの「霊蘊」も一切減らない。またアイテムなどのロストもない。
もちろん次の祠への移動中に死んでしまって戻されてしまうのは再度やり直しになるのでそこはロスになるが、それ以上にボス戦を繰り返し失敗してもロスが発生しない恩恵は非常に大きい。また、毒状態になった場合などは、無理に個数に限りのあるアイテムを消費せず、その場で死を選び、再度祠からやり直す方がメリットは多い。
敵そのものは強力で、死んで覚える「死にゲー」要素もある本作だが、オススメとしては、ボス戦の前に、なるべく小妖などを毎回こまめに倒してからボス戦に挑むことだ。本作では、これを繰り返し行なうことで、比較的スムーズにレベルが上げられるからだ。
レベルが上がるとスキルポイントが得られ、棍法や術などのスキルが強化できる。つまり、レベルを上げながら何度もボスに挑むことで、最初のうちは勝てない相手であっても、行動パターンを少しずつ把握した上で、さらにスキルが強力になっていくので、どんどん負ける要素が減っていくという寸法だ。
しかも無理にレベル上げを行なわなくても、道中の小妖はこちらが死んで祠に戻るタイミングで復活するため、あまり苦もなく自然とレベル上げができる。加えて、デスペナルティが少ない本作はどんどん霊蘊も貯まっていくので、買い物や強化など、霊蘊が必要な祠での作業がかなりスムーズになるのだ。
例を紹介すると、今回筆者は、ストーリー上はスキップしても影響がない強力な妖怪「亡魂」を倒してから進むことにした。動きがシンプルで分かりやすいと思って挑戦を決めたのだが、1度喰らうとかなりのダメージを負う事になるため、なかなかクリアできず、何度も挑戦することになってしまった。
その際に道中の小妖を何度も倒してからボスに挑戦するというのを繰り返していくうちにレベルもかなり上がっていき、最終的にはここでかなりレベルを上げ、無事に「亡魂」を退治することができた。
同じエリアにいるもう1体の頭目の妖怪「広智」についても同様だ。「広智」は倒す事で、変化の術が獲得できるが、ストーリーの進行上は倒さずに進めても問題のない妖怪だ。
当初は「広智」に挑戦したものの圧倒的敗北を喫したため、以降は挑戦を諦めて「亡魂」退治に執着していた。しかし、上記のように「亡魂」を倒した後に再度挑戦してみたところ……さすがに1発ではなかったが、何度か挑戦した時点であっさり倒せてしまった。動きを予測して溜め攻撃を上手く決められたことなども大きいが、レベルが高くなっていた事が最大の勝因といえる。今まで倒せなかった強力な敵を倒せたことで、テンションはかなり高まった。
古代中国テイスト満載の雰囲気も魅力。孫悟空のその後の真相は?
正直に言うと、筆者はこの手の「死にゲー」アクションがあまり得意ではない。が、本作は1度ハマるとどっぷり浸かれる要素が多く、かつ勝利できた時の爽快感がハンパないため、さらにガッツリ遊ぶ気になった。
その要因はやはり強力でユニークな術の数々や、ペナルティなしで簡単に再度割り当て可能なスキルだろう。実際、何度か戦って勝てない巨大な妖怪に対峙した際に1度スキルをリセットしたのだが、当初は説明文を読んでみたら強そうだったので取得したスキルを、実際の戦闘ではほぼ使っていなかった事に気が付いた。そこでこうしたスキルを取らずに、いつも使うスキル中心でガッツリと強化し直したらギリギリで勝利できるようになったりした。
術の数々は1度発動すると、クールタイムが長く、1度の戦闘ではそう何度も使えない事が多いのだが、限られた回復を有効に使いつつ、スキルを何度も使うような長期戦を試すなど、幅広く戦略を取れる仕組みは、アクションが苦手なプレーヤーでも試行錯誤できて面白い。
どうしても勝てない場合は道中の小妖たちを倒したり、少し戻ってレベルを上げれば勝率も上がるので、フィールド探索も兼ねてレベル上げることで、そのエリア内に隠された素材をゲットできるなどメリットは多い。実際同じエリアを何度も挑戦していると、何度も通った筈の道のそばに隠れた道を見つける事があるなど、本作のフィールドは絶妙に行ける場所が多く、探索が楽しい点も魅力の1つだ。
良くも悪くも、本作ではマップ上のマーカーといった分かりやすい移動の指標が存在しない。そのため、行けるところをくまなく探索して、進むべき道を探す形でストーリーを進めることになる。
そして、本作における大自然のビジュアルは見事だ。ほぼ人の手が入っていない草木の描写はかなり美麗で、繊細なので歩いているだけでも楽しい。大自然の中に朽ち果てた石造りや木製の人工物も存在し、一部の人工物は破壊する事で僅かな「霊蘊」がゲットできることもある。
一方で、精彩に描かれているためにアクセス可能な場所とそうでない場所が区別しづらく、ジャンプしたら弾かれてちょっと悲しい気分になることが多々あった。この辺りは、明確に移動できないように見える地形にしてほしかったなと思う。
何より、がっつり心を掴まれる衝撃のオープニングが強烈な前フリになっている。序盤ではまだほとんど何も見えてこないが、「孫悟空とそっくり」と地神にも言われる「天命人」は一体何者かなど、ストーリー展開はめちゃくちゃ気になる1本だ。
まだ見ぬ「西遊記」のその先の物語を楽しむため、「緩めの死にゲー」の難しさを体感するため、古代中国の世界観でアクションゲームを遊ぶためなど、本作をガッツリ遊ぶ理由は多くある。是非「黒神話:悟空」の世界を自身の手で堪能してみてほしい。
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