レビュー
「聖剣伝説 VISIONS of MANA」レビュー【ネタバレあり】
悲しくも偉大な使命を持つ御子たちが織りなすストーリー
2024年8月27日 10:00
- 【聖剣伝説 VISIONS of MANA】
- 8月29日 発売予定
- 価格:
- 通常版 8,778円
- デジタルデラックスエディション 12,100円
- CEROレーティング:B(12才以上対象)
- プレイ人数:1人
スクウェア・エニックスから8月29日に発売されるプレイステーション 5/プレイステーション 4/Xbox Series X|S/Windows/Steam用アクションRPG「聖剣伝説 VISIONS of MANA」。今回はこの作品においてある程度のストーリーまでプレイすることができたので、その内容についてご紹介していきたい。
「聖剣伝説」は、1991年から発売され続けているロングランのアクションRPGシリーズだ。ニンテンドーDS用タイトルとして「聖剣伝説 HEROES of MANA」が2007年3月に発売されたあとはスマートフォン向けに発売されていたシリーズだが、今回は久しぶりにコンシューマー向けタイトルとして登場した。
「聖剣伝説 VISIONS of MANA」はナンバリングタイトルではないが、「マナ」を巡って展開されるストーリーは変わりない。そして最新の家庭用ゲーム機に対応することで、美麗なグラフィックと共に重厚なストーリーが展開される作品となっている。
なお、ここから先はストーリーのネタバレを含むので、注意してほしい。
「マナの樹」に「御子」の魂をささげる物語
本作のストーリーでは、本作の主人公であるヴァルと、ヒロインのヒナの2人がマナの樹を目指す旅が描かれる。どうして旅立つのかというと、4年に1度「マナの樹」に魂をささげる「御子」が必要だからだ。その御子にフェアリーから指名されたのがヒナだ。つまり、御子の貴い犠牲の上に世界が成り立っているのだ。
なんて悲しいストーリーから展開されるのだろうと思うのだが、村に住むものからは、御子に選ばれることは光栄なことなのだ。魂をささげるという悲しい出来事ではあるが、それだけに御子は重要な役目であり、この世界の住人にとっては必要な存在だ。
そして主人公ヴァルの役目はというと、その御子を無事マナの樹に送り届けるための「魂の守り人」となっている。こうしてまずは、ヴァルとヒナがマナの樹へと旅立っていく。
このあと、「風の谷ロングレン」、「月の街エテラナ」、「水の都エリスタニア」、「樹の里ヴィラルス」ヘと旅をし、それぞれの御子が合流しつつ、ストーリーが展開されていく。
風の谷で出会うのはカリナという少女だ。カリナは自分が御子へと選ばれるものだと自負しており、その通りにやがて御子へと選ばれることになる。エテラナで出会うのはモートレアという青年。モートレアは自分のせいでエテラナが壊されてしまったと思い込んでいるという負い目を背負いながら生きているが、村を救うための御子として指名される。
続いて訪れるのは、世界で一番大きな都市であるエリスタリアだ。そこでは女王・パルミナに出会う。実はパルミナが御子へと選ばれていたのだが、あくどい大臣プサルに王座を狙われているために、マナの樹へ旅立つことをためらっていた。だがヴァルたちの活躍によりプサルは排除され、無事旅立つことになる。ギッドはちょっと特殊な村だ。とある理由で滅んでしまっており、そこに御子は存在しない。
続いて訪れるのがヴィラルスで御子に選ばれたのはジュリ。ジュリは「草人」という種族で、眠っている間は植物のような姿で、起きている間は人のような姿で生活している。
そしてヴァルたち5人はいよいよマナの樹へと向かうことになり、聖剣が刺さっているという巨大な岩を目にすることになる――。今回紹介できるストーリーはここまでだ。
これら御子たちのほかに、たびたび登場する青年「オーリン」がいる。彼の素性は知れないのだが、旅の重要なポイントで登場する。彼の役割とは何なのだろうか。それも本ストーリーを進めていくに従って、わかるようになる。
またこの旅にはアクセントとして登場する「ラムコ」、「アナグマ」、「サボテン君」というサブキャラクターがいる。ラムコは基本的にカリナと一緒にパーティに参加し、弱いながらも戦闘を助けてくれるキャラだ。主に町にいるアナグマにはクマミツをあげられるほか、サボテン君はフィールドの各地でかくれんぼしている。見つけてあげるといいことが待っているという。
バトルは通常攻撃と特技で戦う!
ここでゲームシステムについてご紹介していこう。「聖剣伝説 VISIONS of MANA」では主に2つのパートに分かれており、ワールドでモンスターを倒しつつストーリーを進めていくモード(仮にフィールドモードとする)と、ムービーが流れるモードに分かれている。フィールドモードを進めていくと、その先でたどり着くシーンでムービーが流れ、旅の様子について紹介していくというわけだ。
フィールド上にはモンスターがうろついており、モンスターと接触することでバトルが開始される。バトルは□と△ボタンを押す通常攻撃のほか、MPを消費して使える特技攻撃がある。基本的にはこの2つを組み合わせてコンボなどを決めていく。
なお属性相性(属性耐性)があり、武器の種類による「斬」、「打」と、「火」、「水」、「風」、「土」、「闇」、「光」、「月」、「木」の8種類の属性に対して、モンスターはそれぞれ弱点、半減、無効の3種類の相性を持っている。通常攻撃が効きにくいモンスターも存在するので、この相性を見極めて戦うと、強い攻撃が可能となる。
ちなみに特技だが、オプションボタンを押して開くメニューから「リングコマンド」に登録して使うのだが、同時にR1を押して表示されるショートカットに登録しておくと、素早く発動できるので、これは利用しよう。
このほか「必殺技」が使える。必殺技は戦闘中にダメージを受けたり、敵にダメージを与えたりするとSPゲージがたまり、これが100%になると発動できる。仲間がいれば仲間が受けたダメージや、仲間が与えたダメージでもSPはたまっていく。
またエレメントボードという項目があり、ポイントを利用してアビリティや特技を習得できるのも特徴だ。習得することで強力な特技やアビリティを獲得できる。
なお、戦闘に参加できるのは3人までだ。プレイヤーは1人を操作し、残り2人はオートで戦ってくれる。戦闘中でも操作キャラクターをワンボタンで変更できるので、状況に応じてキャラクターを使い分けることが可能だ。
ストーリーの中では、ポイントポイントごとに中ボスが登場して、ヴァルたちの行く手を阻む。最初は単純に攻撃していれば倒せるのだが、ストーリーが進んでいくと範囲攻撃をしてくる敵や、ダメージの高い攻撃をしてくる敵など、かなり手ごわくなっていく。
ボスの強力な攻撃は、攻撃するエリアが赤く表示されるので、回避アクションでかわしながらスキを見て攻撃を繰り出していくことが重要となる。
ただし負けてしまっても、その場で復活して再度戦いを挑むことができるので、ゲームシステムとしては優しい作りになっている。
旅を進めていくと、精霊の力を宿した「精霊器」を得ることがある。精霊器は属性ごとに存在し、精霊器を装備すると「クラスチェンジ」が可能になる。クラスチェンジをすると衣装が替わる他、ステータスや装備できる武器が変化したり、専用アビリティや特技が使用できるようになったりする。初めてクラスチェンジする時は派手なアニメーションが映され、気分を盛り上げてくれる。
精霊器は敵の動きを封じる技や、味方に継続的に回復効果を付与する技など、クラスによって獲得できるアビリティや特技の効果は変わる。なお、同じ精霊器であっても、装備するキャラクターによってクラスの個性は少しずつ異なる。
迷子にならない工夫あり。広大なセミオープンフィールドを駆ける
本作は「セミオープンフィールド」となっており、ある程度の制限エリアはあるものの、その1つ1つのエリアはかなり広大だ。このため「ファストトラベル」が用意されている。
タッチパッドボタンを押すとマップが表示されるが、現われる竜脈を指定することで、フィールド中の任意の位置に移動できる。旅の途中にはサイドクエストがあるのだが、これを達成するためにファストトラベルを利用するのも1つの手だ。
なお、フィールドで行き先がわからなくなった場合は、L1と△ボタンを押せば光の線が現われ、行くべき方向を示してくれるので活用しよう。
聖剣を巡る壮大なストーリーを体験しよう
ここまでストーリーやフィールドの他、ゲームシステムについてもご紹介してきた。本作の特徴はすでに述べたが、アクションRPGとしての難易度はそれほど高くない。あえて敷居を下げてきたとも見える。それ故に、誰がプレイしても楽しめることは間違いない。だからといってやりこみ派の人をないがしろにしているわけではなく、エレメントボードをだんだんと解放していき、キャラクターを強くする楽しみもある。全体が絶妙なゲームバランスで構成されている。
またそれだけでなく、次々と展開されるストーリーも、本作の奥行きを作っている。公開できるストーリーまでをたどって感じたのは、魂をささげるという御子という存在が、なぜ喜んで自らを犠牲にするのかということの不思議だ。命をささげるということは、かなり辛い行動で、普通ならば生きていたいと思うのが当然だろう。筆者だったら、旅の間でやめてしまおうかと心が揺れ動いてしまうと思う。
自らの決意で進む御子たちだが、そんな不安定な心も、キャラクターを通して描かれていく。本作の魅力はゲームシステムだけにあるのではなく、ムービーパートでテンポよく展開されるストーリーにも存在する。ぜひともこの物語を味わってほしい。
エリスタニアでヒナは、御子として魂をささげるのが怖くなったと告げる。しかしそれは許されない願い。これはこのあとのテーマにもつながっていくのだが、果たしてどのような展開になっていくのか興味が尽きない。悲しくも偉大な使命を持つ御子たちが織りなすストーリーを楽しみに、この先の展開を楽しんでいきたいと思う。
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