レビュー

コンソール版「The Elder Scrolls Online」レビュー

大陸中に多彩なクエストが待っている、メインストーリーはデイドラ・プリンスとの対決!

 メインクエストでは、本シリーズでたびたびストーリーに絡んでくる不老不死の存在、デイドラ・プリンスの1人、モラグ・バルが企む世界征服の野望を阻止するのが目的となる。かなりオーソドックスな勧善懲悪ストーリーになっている点も「ESO」の魅力の1つと言える。

 さらにこのメインクエストを開始するとなかなかショッキングな出来事が起こる。なんとプレーヤー操作の主人公はいきなり殺されてしまうのだ! 監獄スタート以上の衝撃! スカイリムの時は処刑寸前で救われたが、今回は普通に捕まり普通に殺される。ところが死んだと思われる描写から気が付くと再び牢獄スタートとなり、ここで登場するリリス・ティタンボーンという謎の女戦士に助けられるので、彼女についていきつつ、敵を撃退したり、彼女と会話することで、物語が展開していく。

 このメインストーリーを進めつつ、エリア内の他のクエストなどをクリアしながら物語を進めていくのが本シリーズの基本的な楽しみ方だ。本作ではメインストーリーのみを進めることはできず、メインストーリーがお休みの間は、いくつか別のクエストを進めていると、メインストーリーの続きが遊べるようになり、これをクリアするとまたしばらく別のクエストを進める、という流れとなる。他のクエストには一連の繋がりがある自身の陣営内で発生している事件を解決するための物などが用意されており、これらもかなりのボリュームがあるため、クリアにはかなりの時間が必要になる。

 ESO」では複数のクエストを同時に受けても問題なく進行できる。クエストの管理はタッチパッドを押すと表示されるマップ画面でオプションを開くことで行なえる。ここには受注したクエストの一覧が表示されるので、進行したいクエストを選択する事で、フィールド上のマーカーのデザインが変化する。

色々あってなぜかいきなりマニマルコに殺される主人公……
死んだはずがコールドハーバーと呼ばれるエリアで再び監獄暮らし。どうしてどうして……
謎の女戦士、リリス・ティタンボーンに救われて、物語が展開していく
物語が進むと、モラグバルの企みが明らかになっていく

 なお、本作においてちょっと分かりにくいと感じられた地域を跨いだクエストの話と、クリアするのにちょっとしたクセがある尾行イベントについて紹介しておこう。

 先ず、地域を跨いで行なわれるクエストの場合、マーカーは異なる地域に向かうための馬車や船などに表示されるのだが、この表示だと目的地がとても分かりにくいのだ。本作ではロードを挟まずに移動できる場所と、建物内や異なる地域など、ロードが必要になる場所への移動ではマーカーの形状が異なるので、これを意識して確認しながら移動することで、間違えて移動してしまうミスを防ぐことができるのは覚えておこう。

 また、本作では目的の相手を尾行するイベントが発生する場合がある。尾行イベントでは、尾行相手にマーカーが表示されない。そのため、素直に肉眼でチェックしながら相手を追う必要があるのだが、本作の尾行ではしゃがんで移動する「隠密」による移動を使ってもあまり意味がない。なぜならたとえ隠密で発見されていなくても、相手との距離が一定以上近くなるとなぜか尾行がバレてしまうからだ。この場合、常に一定の距離を置きながら移動する事でクリアできるが、離れすぎると見失ってしまい、失敗してしまうため、この距離の感覚が非常に分かりずらい。

 幸いな事に、本作のこの手のイベントは何度でもやり直しが可能になっており、クエスト丸ごと失敗になるような事はないため、トライアンドエラーで何度もやり直して感覚を掴むのがいいだろう。

マップを開き、オプションを選ぶことで、メインで追うアクティブクエストが設定できる
アクティブクエストのマーカーのみ塗りつぶされたアイコン表示になるのでわかりやすい。また、階段を昇った先に目的の場所がある場合、マーカーは階段などデータをロードするポイントに表示される
隠密を使っても距離が近すぎると尾行に失敗してしまう

急な武器変更は難易度が爆上がり!スキルとの絡みなどをしっかりチェック!

 今回、筆者はチュートリアルを終えたあと、再びスカイリムにやってきた。スカイリムで困っている人たちを救いつつ、再度スカイリム観光を満喫してみることにした。見るからに象徴的な「ドラゴン・ブリッジ」はスカイリムでよく見たドラゴンの顔を模した石の像が特徴の橋だが、スカイリムより数百年前の「ESO」の時代から存在していた事が確認できるのは興味深い。

 クラスをナイトブレイドにしたので、「二刀流」のスキルを活かすため、両手に短剣を持たせ、スピーディーな連続攻撃で敵を仕留めていく。なお、「ESO」ではパーティーを組まなくても、同じサーバー上で同じクエストをプレイする他のプレーヤーと自然に共闘できる仕組みとなっている。そのため、敵との戦いで苦戦するような場合でも、人気のあるクエストであれば、同じタイミングでプレイしているプレーヤーと一緒に戦うことで、楽に倒して報酬を得る事もできる。報酬はプレーヤー毎に個別に入手できるため、取り合いでもめる事もなく、優しい世界となっている。

 また、敵のレベルについても、こちらのレベルに合わせて自動でコントロールされているため、見知らぬ場所でとても倒せないような予期せぬ強敵と遭遇するといった事が起こりにくくなっている点は初心者向けにも嬉しい配慮と言える。

 ここでふと思い立ち、今までの短剣二刀流から装備を弓に変更してみる事にした。弓なら遠方から狙撃ができて楽に戦えるかなと思っていたからだ。ところが、本作の弓はそこまで遠方からの狙撃は行なえず、相手が認識できる中距離くらいからの攻撃となるので、さながら物理の魔法攻撃のような感覚だ。弓は両手武器のため、防御行動も取れるので、通常攻撃のやり取りなら問題なく対応できる。

 ただし、これまで取得したスキルはいずれも二刀流が前提の物ばかりだった上に、装備の変更のみで弓のスキルを一切取らずに武器を変更して戦いをはじめたため、敵との戦闘では苦戦の連続となってしまった。遠方から狙撃するイメージで弓を取得したため、思った以上に近距離での戦闘を強いられることになってしまった結果、火力が足らず、敵の攻撃に押し切られる状態になってしまったからだ。その後はスキルを取得して付け替えて、戦闘を再開する事でギリギリ戦えるようになってきた。

 ただ、ナイトブレイドの固有スキルがいずれも短射程の物ばかりで射程距離が長い弓との相性が悪いこともあり、弓の選択はやや失敗だったと感じた。一方で弓固有のスキルには指定範囲に対して大量の矢を発射できる「斉射」などのユニークなスキルもあるため、今後どちらの武器をメインにするかは悩ましいところだ。今後はメインを二刀流としつつ、弓もうまく併用しつつ戦っていくことにしたい。

プチスカイリム観光として簡単に来られるドラゴン・ブリッジを紹介しておこう。ドラゴンの顔のある特徴的な橋だが、スカイリムの頃から数百年以上前のこの「ESO」の時代から存在している点は興味深い
今回は短剣二刀流を中心にスキルを使用。同じスキルを使い続ける事でスキルの性能が変化する「変異」が発生する。変異は2種類提示され、プレーヤーが好みに応じて進化する先を選択できる
弓を使って狙撃を試みようとしたところ、標的が範囲外という無情な表示が……あの距離が狙えないのか……。実際に戦っていると魔法と同じくらいの射程感覚だったので完全に想定外だ
いきなり弓に変えたためスキルが噛み合わずに大苦戦!装備変更だけでなく、スキルも重要なのがよくわかった
弓のスキル、「斉射」は範囲内に大量の矢を降らせる強力なスキルとなっており、ビジュアルもかなりカッコいい

 サブクエストをいくつかプレイしたところで、今回は初心者向けに途中からメインストーリーをプレイしてみることにした。ところが、いきなりスカイリムに来て、サブクエストを進めてしまった結果、メインクエストをどこで受ければいいのか分からなくなってしまった。

 本作ではクエストを受ける前のマーカーはクエストを受けるエリアにいないと表示されず、今回のようにメインクエストを受けずに他のサブクエストを進めてしまうと、どこで受ければいいのか分からなくなってしまう。そこで、船や馬車を駆使してとりあえず自身の陣営である「ダガーフォール・ガバナント」のエリアに移動してみたところ、瞬間移動で謎の「フードの人物」が出てくれたので、無事にメインストーリーを開始できた。

 このメインストーリーをはじめるというのが本作では少し癖がある。「ESO」では様々な地域に移動し冒険ができるようになっているので、メインストーリークエストの前に、地域のクエストが始まってしまうのだ。このためゲームを進めてもメインストーリーが始まらないという事も起こりかねない。地域のクエストも面白いのだが、メインクエストを進めたい場合は一度自分の種族が所属している地域を調べ、その地域に移動するのが良いだろう。

 メインストーリーのクエストはデイドラ・プリンスの1人、モラグバルという神話クラスの強豪を相手にプレーヤーが強力なNPCの仲間たちとともに、力を合わせて戦う展開はかなり胸が熱い。NPCとして登場するのは前述のリリス・ティタンボーンの他にも、真面目な戦士のサイ・サハーンや、「予言者」と呼ばれる謎の盲目の仙人、陽気さと狂気さが感じられる異世界、コールドハーバーの住人キャドウェル、元裏切者ながら本作では重要な役割を持つ、魔闘士のアブナー・サルンなど個性的な仲間たちが続々と登場してストーリーを展開していく。

 アブナー・サルンは「ESO」のメインストーリーでは仲間として共に戦うが、後の世でナンバリング1作目「The Elder Scrolls: Arena」にて皇帝になりすまして帝国を乗っ取ろうとするジャガル・サルンの先祖という点も興味深いところだ。

 また、モラグバルの部下として登場して、プレーヤーたちの行く手を阻む敵の中には、虫の王マニマルコも登場する。マニマルコはオブリビオンでも登場するが、書籍などで他のTESシリーズにも登場するほど人気の悪役なのだ。

 このように魅力的な敵やNPCたちが、軽妙なセリフの掛け合いとともにストーリーを紡いでいく非常に魅力的なストーリーなのだ。現在の仕様だと地域クエストなどに埋もれてしまう可能性がある。できればデフォルトで最初の受注場所のマーカーを用意しておいてほしかった。今後、チュートリアルを修正する際には、メインストーリーがより簡単に受注できるようになってくれるとありがたい。

豊富な有料コンテンツ。おススメは月額課金の「ESO PLUS」

 「ESO」では前述のメインストーリー以外にも多くのコンテンツが用意されている。例えば「The Elder Scrolls III: Morrowind」では敵となる不老不死の現人神たちと協力して、モロウウィンドの脅威に立ち向かうエピソードのように、過去のTESシリーズに絡んだクエストもあれば、ハイエルフの故郷であるサマーセット諸島のように、今までのTESシリーズでは触れられてこなかった地域に足を踏み入れ、種族に関する細かな習慣やエピソードなどを楽しむこともできる。それ以外に新たな職業(クラス)や、PvPコンテンツなどを楽しむことも可能だ。

 これらは年に1度の大型アップデートで有料のDLCが追加販売されてきた経緯がおり、これらを追加で買う事で、こうした新たなタムリエルのエピソードが遊べるようになっている。

 コンソール版「ESO」でもこの辺りの仕組みは同様で、現在はメインストーリーと「Morrowind」が遊べる「Base Game Edition」、過去にリリースされたDLCから先日追加になったばかりの最新DLC「Necrom」など全て含む「Collection」と「Necrom Deluxe Collection」の3製品が用意される。過去のDLCが全部入ったパックは9,900円とかなり高価だが、次の最新DLCが出るまで最初の購入のみで済む点は非常にありがたい。

 どこまでハマれるか、自信がなければ「Base Game Edition」を買って感触を確かめるのもいいだろう。また、個人的におススメなのが「Base Game Edition」を購入した上で、月額課金の「ESO PLUS」に加入することだ。というのも、「ESO PLUS」に加入すると、全てのDLCが即座に利用可能になる上に、毎日ゲーム内有料通過のクラウンが貰えたり、経験値ボーナスが入るなど、ゲームを遊ぶ上でのフォローが行き届いているのだ。同じストーリーを細部までじっくり何度も時間をかけて楽しむならDLCを買ったり、前述のCollectionのセットを買うのがいいが、ストーリーをさっと遊んで楽しむ用途なら「ESO PLUS」の満足感はかなり高いと言える。

 「ESO」はMMORPGらしく、他にもゲーム内有償通過のクラウンを単体で買う事もできる。クラウンを使う事で、ゲーム内で手に入る通常のマネーでは購入できないような特殊なアイテムなどが購入できるので、無課金で遊ぶのも手だし、こうした課金を活かして楽しむことができるのも、「ESO」の魅力の1つと言えるだろう。

ESO PLUSの購入や詳細情報の確認はキャラクター選択画面から行なえる
月額1,980円だが、半年パックだと10,230円となるため、実質月額は1,705円くらいに割引される

TESシリーズのファンなら迷わずプレイ!

 以上、ざっくりとではあるが、コンソール版「ESO」を久々に最初からプレイした様子をレビューした。チュートリアルがアップデートする前はいきなりメインストーリーの「死んで牢獄」状態からスタートだったため、違和感なくメインストーリーが開始できていたが、アップデート後のチュートリアルからメインストーリーを開始しようとすると、思わぬトラブルが待っている可能性がある事が確認できた。

 「ESO」はコンソール版でプレイしてもPC版と遜色ない高品質のグラフィックスとPS5コントローラーによる快適な操作性が満喫できる。筆者はPC版の頃からキーボードではなく、ゲームコントローラーでプレイしていたので、ますます違和感がなかった。ただし、テキストによる文字チャットを使う場合、ソフトウェアキーボードでの入力になるため、ボイスチャットの利用が最適だろう。その他に気になる点はほぼなく、PC版で遊んでいた時と変わらぬ気持ちでじっくりプレイできた。

 コンソール版「ESO」はこれまでPC版しかなかったために、遊ぶのを諦めていたてTESファンの人たちにおススメできるのはもちろんのこと、これから「TES」シリーズを知りたい人向けの1本としても十分に楽しめる仕上がりになっていると感じた。また、最近PC版を起動せず、ご無沙汰になっている人が久しぶりに再開するのにも、コンソール版の登場はちょうどいい機会になりそうだ。

PS5で文字チャットを使う場合にソフトウェアキーボードを使う事になる点はちょっと残念。仲間との会話にはボイスチャットを使うのがベストだろう
レベル10以上になると同盟同士の戦争キャンペーンにも参加が可能になる。参加するにはキャンペーンからシロディールを選択してグレイホストを選べばOK。元に戻るには祠に来る必要がある点には注意が必要だ
静止画では一見、カッコよく援護できているように見えるが、正直なところ戦っているプレーヤーキャラクターたちはどいつもこいつも化け物レベルの強豪ばかり。レベル10のひよっ子はこの後あっという間に瞬殺だった
モロウウィンドのクエストでは3人の現人神の1人、アルマレクシアに会う事ができた。この時代ではモロウウィンドを治める3人の現人神たちだが、シリーズ3作目「The Elder Scrolls III: Morrowind」ではその座を失墜することになる
テルヴァンニ家もシリーズ3作目「The Elder Scrolls III: Morrowind」に登場する名門5大貴族の1家だ。TESシリーズ過去作の情報があるだけで「ESO」は数百倍面白くなるのだ