インタビュー

「The Elder Scrolls Online」クリエイティブディレクターインタビュー

11月15日よりPS4/5/Xbox One/Xbox Series X|S向けのサービスを開始

【The Elder Scrolls Online】

11月15日よりコンソール版サービススタート

対応ハード:PS4/5/Xbox One/Xbox Series X|S

 ゼニマックス・アジアはMMORPG「The Elder Scrolls Online」において、11月15日よりPS4/5/Xbox One/Xbox Series X|S向けのサービスを開始することを発表した。今回この発表と、東京ゲームショウ2023視察をかねて来日した「Elder Scrolls Online」のクリエイティブディレクターを務めるゼニマックス・オンライン・スタジオのリッチ・ランバート氏にインタビューを行った。

 「The Elder Scrolls Online(以下、ESO)」は2014年よりサービスを行っているMMORPG。「The Elder Scrolls V: Skyrim」や、「The Elder Scrolls IV: Oblivion」などRPGシリーズ「The Elder Scrolls」と世界観を共有しており、「Skyrim」より1000年前の世界を舞台にしている。広大なタムリエル大陸を舞台に冒険を楽しめる作品であり、特に大規模戦闘が楽しめるのが特徴だ。

 「ESO」のコンソール版サービスは海外ではPC版から2カ月後である2014年6月からサービスが行われていたが、日本ではサービスしていなかった。PC版とコンソール版は同じサーバーで冒険できるが、コンソール版のみヨーロッパサーバーでもプレイできる。今回の発表はファンが待っていたものと言えるだろう。インタビューではこれまでの「ESO」を振り返った上で、今後の構想や、ランバート氏おすすめの遊び方などを聞いてみた。

「Elder Scrolls Online」のクリエイティブディレクターを務めるゼニマックス・オンライン・スタジオのリッチ・ランバート氏

"旅を楽しんで欲しい"、広大な世界を探索できる「ESO」の魅力

――ランバートさんは「ESO」の開発がスタートした2007年からずっと本作のクリエイティブディレクターとして関わっているとのことですが、まず最初にこれまでを振り返り感想をお聞かせください。

ランバート氏:非常に誇りに思っています。「ESO」は2014年4月からサービスを開始しましたが、現在の「ESO」は大きく変化、成長しています。これらはプレーヤーの方々のフィードバックのおかげです。プレイできる世界が広がっただけではなく、レイドコンテンツや、ハウジングなど多彩な要素が追加できた。プレイスタイルそのものを広げることができたのは、プレーヤーコミュニティがあってこそだと思っています。

「ESO」は念頭にコンセプトを発表し、1年をかけてコンテンツを追加していくアップデートを行っている。最新は神々達との戦いを描く「ネクロム」

――初期の「ESO」と、現在の「ESO」、一番の大きな変化は何でしょうか?

ランバート氏:それはやはり2016年に実装した「ワン タムリエル」です。それまでの「ESO」は各派閥でスタート地点が違い、プレーやキャラクターのレベルに合わせて探索地域が増える設計でしたが、「ワン タムリエル」を実装することでモンスターの強さがプレーヤーのレベルに合わせて変化し、どの地域でも自由に行くことが出来、違う派閥のプレーヤーとも協力して戦うことができるようになりました。「Skyrim」などと同じようにより自由に冒険が楽しめるようになりました。

――「ESO」においては多くのプレーヤーが派閥に分かれて戦う大規模戦闘が大きな魅力ですが、現在の状況はどうでしょうか?

ランバート氏:戦争でのプレーヤーバランスは私たちが最も注意しているところです。プレーヤー達のコミュニティによる勢力バランスはありますが、私たちが注意するのは「各クラスのバランス」です。職業によって大きな優劣が生じないように気をつけています。

 バランスをとった戦いの上で、重要となるのが「プレーヤースキル」です。優れたプレーヤーは自分のクラスのスキルの特性と使い方を熟知していて効果的に使います。アクションの駆け引きやスキルの使い方、仲間との連携、リーダーによるプレーヤー集団の投入時期など様々な駆け引きが楽しめます。サービスが続いていく中で、うまいプレーヤーはこういったところを洗練させています。

仲間達との冒険は「ESO」の最大の楽しさ

――次は追加されていくコンテンツについて聞きたいと思います。「ワン タムリエル」で自由にプレーヤーが冒険の場所を選べるようになってからは、様々なストーリー要素が追加されている印象があります。「Skyrim」以降、本編である「The Elder Scrolls」シリーズの新作が出ていない現状、ユーザーは「ESO」で新しいストーリーを求める状況にあるのではないでしょうか?

ランバート氏:私たちは様々なストーリーを「ESO」に追加しています。「Skyrim」、「Morrowind」など「The Elder Scrolls」の要素を積極的に盛り込んでいるのもプレーヤー達の強い思いに応えたものです。

 「ESO」に追加する要素において、「The Elder Scrolls」らしさというのは、もちろん意識はしますが、「意識しすぎない」というのも大事だと私たちは考えています。例えば1つの物語も語り部の視点で異なる。王の視点、騎士の視点で、同じ物語が全く違うものに変わる。史実や守らなければいけないことはありますが、そこに私たちの意見や視点を盛り込むことはできる。

 その上で私たちが大事にしていることは「探索の楽しさ」です。未知の世界を冒険し、様々な新しいことを知る。そして展開するストーリーにおいては「正しい/間違っている」というものははっきりせず、グレーゾーンというか、勧善懲悪のような割り切ったものではなく、時には苦い後味が残るようなビターなストーリーというものも大事にしています。

――昨年実装された「ハイアイル」アップデートでは、人間達の権力争い、各勢力の思惑、特に人間ドラマに力を入れている印象を受けました。

ランバート氏:「ハイアイル」では「ゲーム オブ スローンズ」のような陰謀渦巻く中世ドラマを描きました。各勢力が駆け引きをする政治劇にフォーカスしました。

 一方今年の「ネクロム」では、「コズミックホラー」がテーマとなった非常にスケールの大きな物語が展開しています。他次元からの神々達が介入して来る壮大な物語となっているので、こちらも是非プレイして欲しいです。

【ネクロム】
「コズミックホラー」がテーマとなった非常にスケールの大きな物語が展開した

――アップデートは1年を通じて行われる感じでしょうか?

ランバート氏:そうです。これまで同様、年の初めにテーマを発表し、ロードマップを提示した上で、1年を通じてストーリーが盛り込まれていく形となります。来年の予定は……。まだ話せません(笑)。来年を楽しみにしてください。

――運営というところでは、プレーヤーのコミュニティをもっと活発にしたいとか、より戦いを盛り上げていきたいなど、今後のビジョンはありますか?

ランバート氏:「あらゆるプレイスタイルを活発にしていきたい」というのが運営の大きな目的です。「もっとハウジングを充実させたい」、「いろいろなものを作れるようにしたい」、「より激しく手応えのある戦闘コンテンツを追加したい」、「プレーヤー達の対戦が活発になるルールを導入したい」、「ソロでもっと冒険をしたい」……。様々なプレーヤーが、それぞれの遊び方ができるように、多くの要素を足していき、プレーヤーが「ESO」をより楽しくプレイできるようにするのが大きな目的になります。

――現在ベセスダでは「Fallout 76」もサービスしています。こちらも様々なプレイスタイルを充実させて言っていますが、差別化というのは意識しているでしょうか? 例えば「ESO」ではより戦争にフォーカスしている、というような要素はありますか?

ランバート氏:いい質問だと思います(笑)。世界観は違いますが、両者はかなり似ています。自分のプレイスタイルを目指したキャラクタービルドが出来、生産要素は充実していて、新しい世界を探索するというところが大きなモチベーションとなっている。

 その上で「ESO」は"中世世界での冒険"にフォーカスしています。これが未来世界の「Fallout 76」と大きく異なる。しかし一方で、究極的な意味では両者は似ています。なぜならばMMMORPGが目指すところは「その世界でプレーヤーがやりたいことを実現する」というところだと思うんです。

 特にやはりハウジングですかね。ここにのめり込むユーザーは多いです。「Fallout 76」は自分の生産拠点、生活拠点を作り、他のプレーヤーと協力しさらに大きなものとしていく。「ESO」もまた他のプレーヤーと協力しハウジングを充実させていく。こういった似ている要素は多いです。

 もう1つ、「ESO」の面白さで特筆できるのはクラスシステムでしょうか。クラスと選択するスキルによってキャラクターの戦闘スタイルが大きく変わります。ここを極めていくことは「ESO」の大きな楽しさの1つです。

――今回、ベセスダのゲームとして「Starfield」が加わりました。こちらはどんな印象を持ちましたか?

ランバート氏:大好きです。メインストーリーはクリアしましたよ。もう60時間はプレイしました。

――では次に11月15日よりPS4/5/Xbox One/Xbox Series X|S向けのサービスを開始するというところで、海外では2014年からスタートしているサービスですが、日本ではスタートが遅れたのはどうしてでしょうか? また、PC版と違いはありますか?

ランバート氏:コンソール版のサービスが遅れたのは技術的な問題です。今回ついに日本でもPC版同様、音声も含めたフルローカライズでPS4や5、Xboxといったコンソールハードでも「ESO」をプレイ可能となりました。PC版との違いはヨーロッパサーバーでもプレイできるところです。コンソール版はPCと同じ北米サーバーに加え、ヨーロッパサーバーでもプレイできます。

――コンソールサービススタートと言うことで、初心者も増えると思います。これから遊ぶ人へはどんなアドバイスがありますか?

ランバート氏:時間をかけ、ゆっくり、様々な場所を探索し、キャラクターを育ててください。無理にキャラクターのレベルを上げようとする必要はありません。"よい旅"をたっぷりと楽しんでください。「ESO」はMMORPGであり、いろいろな人とプレイできます。キャラクタースキルも後から振り直しも可能なので、まずはたっぷり冒険をしてみてください。コンソール版という新しいサービスを日本でもスタートできたのは私たちとしてもうれしいです。

――ランバートさんご自身は、「ESO」プレーヤーとして特に楽しんでいる要素はどのようなところですか?

ランバート氏:ソロで次々と襲いかかってくる敵と戦う「メイルストローム・アリーナ」です。「ネクロム」から追加された要素で、全9ラウンド。他のプレーヤーとはクリアタイムで争うことができます。

 私は回復や補助魔法が得意なテンプラーが好きで、範囲攻撃系のスキルが好きです。ターゲット系の攻撃スキルは敵を捕らえなくてはいけないが、範囲攻撃なら狙いをつけなくても当たります。範囲で敵に安定したダメージを与えてアリーナを勝ち抜いていくというプレイをしています。

「ネクロム」で追加された「メイルストローム・アリーナ」

――最後に、これから「ESO」を始めるプレーヤーへメッセージをお願いします。

ランバート氏:繰り返しになりますが旅を楽しんでください。「ESO」は10年近くのサービスで、たっぷりのコンテンツがあり、始めるとそのボリュームに圧倒されてしまうかもしれません。少しずつ楽しんでいただければと。

 もし困ったときは、コミュニティにご相談ください。「ESO」はプレーヤー間での良質なコミュニティがあります。是非コミュニティに参加し、仲間とともに冒険を楽しんでください。

――ありがとうございました。

「ようやく日本の皆様にコンソール版を届けることができます」と語るランバート氏

 「ESO」は魅力的なMMORPGだ。これからの人にお勧めしたい展としてはソロ志向が強いところ。1人でも様々なコンテンツが遊べる。連携が必要なダンジョンはよりよいアイテムを求めたりする場合に有用で、ソロでもストーリーを楽しむことができるのは大きな魅力と言える。

 もちろん仲間を作って遊べばさらに楽しい。特に大規模戦闘は攻城兵器なども活用し非常に派手になる。少ない人数でのゲリラ戦も独特の味がある。コンソールサービススタートにより、「ESO」の世界がより活発になることを期待したい。