レビュー

「Lies of P」レビュー

手応えとバランスに文句なし! 独自のギミックも癖になる大満足”ソウルライク”

【Lies of P】

開発元:Round8 Studio

発売元:NEOWIZ

ジャンル:アクションRPG

プラットフォーム:PS5/4/Xbox Series X|S/Xbox One/Steam

9月19日 発売予定

価格:
8,360円(スタンダードエディション)
9,680円(デラックスエディション)
14,300円(コレクターズエディション)

 9月19日に発売となるNEOWIZによるアクションRPG「Lies of P」は、童話「ピノッキオの冒険」をベースに”ゴシックホラー”や”ダークファンタジー”のテイストを多分に取り込んだ、今までにない世界観が特徴の作品だ。自ら”ソウルライク”を謳っており、その名の通りの手厳しい難易度のアクションと奥深いキャラクタービルディングを楽しめる作品となっている。

 自ら”ソウルライク”を名乗っているだけあり、俗に言う「死にゲー」としての満足度は非常に高い上に、他のソウルライク系作品にはない独自のアクションギミックや世界観に惹き込ませる強いストーリー性が注目されている。体験版が配信後3日で100万ダウンロードを突破するなど、今現在多くのアクションゲーマーが期待を寄せているタイトルだ。

 今回はそんな本作を一足早くプレイする事ができたので、重大なネタバレに触れない範囲で紹介していきたいと思う。「歯ごたえのあるやりたいなぁ」……なだおと思っているゲーマーに特にオススメできる作品となっていたので、是非最後までチェックして欲しい。

【Lies of P - 発売日発表トレーラー】

一切容赦のない残酷な世界観! ”嘘”が鍵となる「P」の冒険が幕を開ける…

 まず初めに本作の世界観やキャラクターについて軽く紹介したい。本作の物語は童話「ピノッキオの冒険」がベースとなっている事もあり、世界観や一部のキャラクター等にその特徴が大きく反映されている。

 舞台は産業革命真っ只中のベル・エポック時代。美しくもどこかスチームパンク感が残る世界を冒険する事になる。プレーヤーは主人公「P」を操作して、「ゼペット」や「ジミニー」といった聞き馴染みのあるキャラクター達とも交流しながら冒険を進めていく。

 ここまで聞くと、「ピノキオ」のイメージ的にも明るい物語が展開されそうだが、本作は独自の新解釈によって”ダークテイスト”が多分に含まれた、闇深い世界観となっている。イメージとはむしろ逆の、残酷な物語が展開される事が大きなポイントとなっている。

プレーヤーが操作する主人公「P」の姿がコチラ! 既存のピノキオ像を覆すような、世界観や物語とマッチした凛々しいイケメンの姿となっている

 今作の世界では、「エルゴ」と呼ばれる大きな力を秘めた物体が発掘されたことによって文明レベルが一気に上がっている。その力を用いて人々のために忠実に働く自立マシーン「人形」が生み出された事で、人々は一時の華々しい時代を向かえる。しかし、そこで突如として発生したのが「人形の暴動」。それまで生活を支えていた大量の「人形」達が、無差別に人間を殺戮し始めてしまう。

 さらに追い打ちを掛けるように、身体が本当に石のように固まってしまう「石化病」という感染病までも蔓延し始める。この地獄のような現状に、精神が限界を迎えて悪事を働く狂人が現れてしまうなど、舞台となる「クラットの街」は一瞬にして地獄と化してしまうのだ。

 そんな中で突如として目を覚ましたのが、本作の主人公「P」だ。
「P」は自分を含めた全ての人形の生みの親である「ゼペット」や「エルゴ」の力を操る不思議な女性「ソフィア」などの人々に導かれながら、地獄と化した「クラットの街」で人々を襲う「人形」や悪事を企てる「狂人」、はたまた正体不明の「モンスター」達との戦いに身を投じる事となる。

 「人形の暴動」はなぜ発生したのか、特殊な人形である「P」はどのような存在なのか、そして「クラットの街」で何が起こっているのか……。など、プレーヤーは次々に提示される様々な謎と陰謀が渦まく中でダークな物語を体験する事となる。

「ゼペット」は人形の生みの親としての責任から現状の解決に動くキャラクターとなっており、「ソフィア」は原作の「ブルーフェアリー」をベースとしたキャラクターになってるなど、「ピノッキオの冒険」をベースとしたキャラクターが多数登場する
ベル・エポック時代の華やかさを残しながら、数多の惨劇によって全体的にダークな雰囲気に包まれている独特の世界観が本作の魅力の1つ。陰鬱さと美しさが入り混じった様々なロケーションで、「P」のバトルアクションを楽しめるのだ

 本作はこの独自性の強いストーリーの中でさらに「ピノッキオの冒険」らしさが存分に表現されている要素がある。それが”嘘”の存在だ。

 主人公の「P」は人形の中で唯一”嘘をつける”特別な存在となっており、本作ではゲームを進める中で様々な選択肢では嘘をつくことができる。そしてその選択次第によって「P」の中で変化が起こり、物語にもその変化が反映されるシステムとなっている。自分を守る為に明らかに人を騙すような嘘もあれば、人を傷つけないための嘘も存在していたりなど様々な嘘が用意されており、プレーヤーの尺度によってどの選択を選ぶか分かれるのが本作の面白い所だ。

 メインストーリー以外にもサブクエストや探索要素などで「P」の心境に変化を与える選択肢や行動は多数潜んでおり、「P」を通してダークな世界観を直に味わう事ができる。この凄惨で過酷な世界で起こる悲劇にどうアクションをとるのか、プレーヤーの選択が大きく関わってくるゲーム性となっているのだ。

 「ピノッキオの冒険」といえば”嘘”がキーワードになる事は想像に容易いが、その要素をゲーム性として上手く落とし込めている点が筆者はかなり気に入っている。

”嘘をつける”という特性を持った「P」は選択次第で毎回何かしら変化が起こる。作中でも語られた「嘘は人間が生きるための武器」という事を考えると「P」は嘘をつく事で人間に成長しているのかもしれない
精神が崩壊した相手に優しい嘘をつく、信用ならない相手に嘘の情報を教えるなど、選択肢のロケーションは様々だ。この写真の場面では相手に「安全な場所を教えろ」と言われたが、明らかに見た目が怪しい事と、自分たちの拠点は信用できる者にしか教えるなと「ゼペット」に言われた事もあったので、全然安全じゃない場所をあえて教えることに。因みにこの後再会したら、メッチャ普通に良い人だった(だが後悔はない)

 ”ソウルライク”作品の中でも特に独自のストーリー展開やシステムに力が入っているタイプの作品となっているため、キャラクターや世界観に惹かれればそれだけでもどっぷりハマれる作品だと筆者は感じている。本作の世界観やストーリー性については別途ご紹介する予定なので、是非そちらも合わせてチェックして欲しい。

”ソウルライク”の基本操作を踏襲しつつ、本作独自のアクションギミックが光る!

 続いて”ソウルライク”で一番重要と行っても過言ではないアクション部分について触れていこう。

 本作では「P」を操作して様々なダンジョンを探索しながら、各所に存在する「人形」や「モンスター」等の敵を倒していく事がプレイの軸となる。基本的な操作は移動、ダッシュ、ガード等に加えて、「基本攻撃」と「特殊攻撃/タメ攻撃」の2種類の攻撃がある。スタミナを消費する事で各アクションを行うシステムはソウルライク系作品を遊んだ事のあるプレーヤーなら直感的に分かりやすい仕様だろう。

 バトルアクションは小回りが効き比較的連続で素早く攻撃できる「基本攻撃」をしながら、相手の隙や状況を見計らって「特殊攻撃/タメ攻撃」を当てていくのが基本的な動きだ。そしてこの基本となる攻撃は、当然装備している武器によって性能やモーションが異なり、自分のお気に入りを極める事もできれば敵やダンジョンに合わせて装備を変化させるなど様々なプレイが可能だ。

 さらに本作で装備できる武器はほぼ全て「ブレード」と「柄」の2種類のパーツで構成されており、プレーヤーは自由にこの組み合わせを変えて武器を生み出せるのも大きな特徴となっている。

 武器の攻撃力やリーチは「ブレード」部分が、攻撃モーションや能力補正は「柄」の部分がそれぞれ担っており、その組み合わせで1つの武器となる。敵を大量に巻き込めるモーション+大剣で雑魚一掃用の武器を作ったり、回避アクション多めで中距離からそこそこの速度で沢山攻撃できるボス用の武器を作ったりなど、各プレーヤーの味が出そうなシステムなのだ。

 組み合わせの元となる武器はプレイを進めるほど手に入るので、自由に組み合わせられる幅がどんどん広がっていく。基本操作だけでも戦略の自由度はかなり幅広い印象だった。

雑魚敵であれば小回りが効く「基本攻撃」の連撃で隙を与えずに倒す事ができるが、仰け反らないタイプの相手や複数の敵に囲まれている場面では一撃の威力が高い「特殊攻撃/タメ攻撃」を隙を突いて放った方が有効な場面も多い。状況に合わせた使い分けが重要だ
「ブレード」と「柄」を組み合わせて1つの武器を作る。このシステムが戦略の自由度を広げている

 このように武器毎の組み合わせで様々なバトルアクションを可能とする本作だが、さらに武器ごとに用意された固有のスキルである「フェーブルアーツ」が用意されているのも特徴の1つだ。

 「フェーブルアーツ」は武器のパーツである「ブレード」と「柄」の双方にそれぞれ備わっているスキルで、バトル中に溜まる「フェーブルスロット」を消費する事で発動する事ができる。派手な攻撃モーションで大ダメージを与える物から、自身のステータスをアップさせるサポート系のスキルまで多種多様に用意されており、コストを払って発動する分バトルでの恩恵は大きい。

 武器の組み合わせの際には「フェーブルアーツ」の噛み合わせや性能も考慮した上で選択する必要があるのだ。

一気に間合いを詰めて攻撃出来たり、連続の剣技で大ダメージを与える、カウンター技やサポート技など「フェーブルアーツ」の性能は多岐に渡る。バトル中に切り替えられる武器は2つまでなため、スキル内容や武器の役割をしっかり考えた上で武器を選ぶのが重要だ

 そして”ソウルライク”作品のアクションで真っ先に頭に出てくるアクションが本作でもしっかり用意されている。そう俗に言う”パリィ”要素だ。

 パリィは相手の攻撃に合わせてタイミング良くガードする事で敵の隙を生み出す要素の事を指すが、今作ではそれが「ジャストガード」という形で実装されている。

 通常のガードの場合は攻撃を防いでも少しダメージが入ってしまったりスタミナが消費されてしまうのだが、文字通り攻撃がヒットする直前でガードし「ジャストガード」に成功すると、派手なエフェクトが発生しそれらのデメリットをなくす事ができる。加えて、着実に決めていけば後述する「致命攻撃」にも繋がっていく。

 「ジャストガード」が成功した際の「ガキンッ!」といった鉄と鉄がぶつかり合った様なゴツイ音が非情に心地よく、連続で成功した際の脳汁の出方はえげつない。

 パリィ要素の気持ち良さはソウルライク系作品にとっては特に大事な部分だと筆者は思っているのだが、本作は問題なくプレーヤーを快感の沼に引きずり込んでくれるだろう。

「ジャストガード」をしても敵の攻撃を中断させたりはできないため連続攻撃の際は注意が必要なのだが、その連続攻撃を全て「ジャストガード」で捌ききれた際の爽快感たるや凄まじい。思わず「俺ゲームうめぇぇぇぇ……」と光悦してしまうに違いない

 そしてパリィ要素が出てきたという事は当然”致命攻撃”も用意されているのがソウルライク!

 本作の場合は「ジャストガード」をすれば即致命攻撃ができるわけではなく、幾つか工程を挟む必要があるのが大きな特徴だ。攻撃を与えてダメージを与え続けたり「ジャストガード」を成功させていると敵のHPバーが白く光り始め、その状態の時に「フェーブルアーツ」か「タメ攻撃」をヒットさせると敵を無防備な「スタッガー状態」にする事ができる。

 「スタッガー状態」になると敵はフラついて攻撃ができなくなるため攻撃し放題だが、その状態中に特定の場所で「基本攻撃」を行う事で、大ダメージを与える「致命攻撃」が行えるのだ。

 「致命攻撃」は装備している武器の「ブレード」毎に異なるカッコいいアクションで敵をぶっ飛ばして大ダメージを与える最高のシステムで、狙うのは少し難しいがその分決まった時の気持ちよさは演出と合わせてこの上ない。オリジナリティを出しつつ、ソウルライクらしいバトルアクションを存分に今作でも味わえるわけだ。

「致命攻撃」の過程が少し長く難しいが、決まった際の達成感はアクションのカッコ良さと相まって随一! 特にボス戦等では攻撃の隙がなく「致命攻撃」を狙うのも難しいため、上手くアクションを繋げてぶち込めた際の気持ち良さは凄まじい

 さらに本作には「フェーブルアーツ」以外にも本作を代表するような独自のバトルアクションが存在する。それが「リージョンアーム」の存在だ。

 筆者はデモ版や試遊版の時からとにかくこの要素が好き過ぎて、この作品をずっと追い続けてきた理由になっていると言っても過言じゃないほど、本作を語る上で欠かせない要素となっている。

 「リージョンアーム」は「P」の左腕に備え付けられた特殊義手で、装備する「リージョンアーム」毎に様々なバトルアクションを可能とする。敵との距離を一気に詰められる「パペットストリング」を基本として、広範囲に電気ショックを打ち込む「フルミニス」や火炎放射器のように炎を噴射する「フラムバージ」など、多岐に渡る攻撃方法でバトルアクションの面白味を一段階アップしてくれるのだ。

 「リージョンアーム」はシナリオ上で入手したり、「リージョンプラグ」という素材を使う事で開発する事が可能となっている。また「リージョンキャリバー」という素材を用いる事でレベルアップする事もでき、攻撃範囲を広げたり新たなアクションを追加できたりする。

 ただ、プレイした感じだと「リージョンプラグ」も「リージョンキャリバー」も大量には入手できない貴重な物となっている印象で、ストーリー中に全てのアームを片っ端から作って強化するといったことは難しい形となっている。自分のプレイ方針に合っているアームを見つけ出し、しっかり戦術に合わせて強化する範囲を決めて使い分ける必要があるのだ。

装備する「リージョンアーム」によって敵の弱点を突いたり、遠距離戦・集団戦に有利になったりなど戦略は大きく変化する。男は幾つになってもオートメイルとかガジェットとかマシニックな物を好きになってしまう生き物なのだ……
「リージョンアーム」に関する素材は普通にプレイしているだけだと入手機会が限られるため、サブイベントやダンジョン探索をくまなく行う必要がありそうだ
筆者が特に気に入ったのは遠くの敵に徹甲弾を放てる「ファルコンアイズ」! 遠回りしないと倒せない屋根上の敵を先んじて倒せたり、集団戦やボス戦でも大きなダメージリソースになってくれたりなど使い勝手が良く、なによりカッコいい!!!

 また直接「リージョンアーム」が関係する訳ではないが、左手の特殊義手を用いたモーションとして砥石を作って剣を研ぐアクションが存在する。

 今作では武器を使い続けると攻撃力が落ちていき、定期的に武器を「グラインダー」で研ぐ事によって攻撃力を元に戻す必要があるのだが、その際のモーションが非常に男心を擽るのだ。刀を血払いするかのように腕で武器を挟み、「ウィーーン!!」と火花を散らしながら研いでいく。そのモーションが「P」の機械性を上手く活用できており、ボス戦などで隙をついて行えると独特のカッコ良さを演出できる。

 物語中盤からは研いだ際に1度だけ武器に属性を付与できる「特殊砥石」が登場し、武器を研いだ際にエフェクトが追加されてさらにカッコ良さに磨きがかかる。ゲームシステム的にも設定的にも非情にイカス要素となっているのだ。

このモーション嫌いな男の子いるのか? と思ってしまうほど機械人形であるピノキオの設定と特殊義手を上手く活用した素晴らしい機能。アクション的に言えば、油断していると武器の威力が下がるシステムは少し面倒かもしれないが、しっかりカバーして上手く立ち回れた時のカッコ良さは味わい深いだろう

千差万別のビルドで自分好みの「P」を作り上げる!

 「P」は上記で取り上げた「武器の調合」や「リージョンアーム」だけでも十分にオリジナリティのあるビルドが楽しめるのだが、当然それ以外にもビルド要素が多く用意されている。

 まずは「エルゴ」を用いた基礎的なレベリングだ。敵を倒す事で入手できる「エルゴ」はいわば経験値のような物で、「生命力」「気力」「積載力」「動力」「技術」「進化」の6つに分かれたステータスに必要数の「エルゴ」を支払ってレベルを上げられる。

 HPを増やしたいなら「生命力」に、スタミナを増やしたいなら「気力」にといった具合に、プレーヤーが望むアクションに合わせて独自にレベルを割り振る事ができるため、自由度の高いビルドを楽しめる。ここら辺もソウルライク系作品を経験した事のあるプレーヤーには馴染み深いシステムだと思われる。

強化する項目が6つに絞られているため、ある種自分のビルド方針は固めやすい印象。筆者はどうしても強い武具を装備したいし、それで体重が増加し動きが鈍くなるのも嫌なので、装備重量を挙げられる「積載力」を過度に振る傾向があった。ここのビルドはプレーヤー次第で大きく異なるだろう

 そしてデモ版などでは触れられなかった、新しいビルド要素が「P機関」だ。

 「P機関」はゲーム中に入手できる「クオーツ」と呼ばれる貴重なアイテムを使用する事で「P」の根本を強化できるシステムだ。「P機関」では、各フェーズ毎に分かれた能力の中から獲得したい内容を選び、そのスロットに「クオーツ」を嵌め込むイメージで強化していく。1つの能力にはスロットが2つあり、どちらも埋めることで獲得する。ただし、スロットを1つ埋めるごとにも能力が獲得できるので、2つ嵌めれば合計3つの能力を獲得できるという計算になる。

 強化内容は「エルゴ」によるステータスアップとは異なり、例えば「フェーブルアーツ」に使用する「フェーブルスロット」の数を増やす、連続して回避アクションを行う「連続回避」を習得するなど、直接ゲームプレイに大きく関与する、その基盤の強化を行えるイメージだ。

 「クオーツ」もまたゲーム中に簡単には手に入らない代物となっているため、どのスキルを獲得しどの方向性で強化するかなどを吟味する必要がある。じっくり探索したり、あえて強敵に挑んでみたりすることで、見つけることができるだろう。

回避アクションが増えたり、回復回数が増えたりなど直接ゲームの難易度を左右するような内容も多いため、クオーツの貴重性も考慮しながら慎重にビルドする必要がありそうだ

製品版で感じた新たなゲーム体験! 自由度の高さとソウルライク”らしさ”を改めて実感する事に……

 ここまででおおよそのゲーム性と本作独自の面白味を紹介できたと思うので、最後に今回製品版を実際にプレイして新たに感じた魅力をお伝えしたい。

 まずダンジョン攻略について。本作ではダンジョンを進む際に「スターゲイザー」と呼ばれる簡単に言えば装備変更やワープが行えるリスポーン地点を開放していくのだが、「スターゲイザー」同士の距離感や個数が非常に丁度良く、探索のボリュームと面白味がかなり大きいと感じた。

 今作はダンジョンを進む際にショートカットを開放して既存の「スターゲイザー」へのアクセスを容易にするといった攻略も重要になっており、それに伴いメインルートから外れた地点にレアなアイテムがあったりサブイベントがかなり用意されているのだ。

 デモ版では最序盤のダンジョンをプレイしたこともありボリュームはそこそこくらいに感じていたのだが、1つの「スターゲイザー」を拠点に周辺をかなりウロチョロして探索を楽しめる時間がかなり増えたことで、ゲームのボリュームとしてはかなり満足度が高く感じられた。

 やけに次の「スターゲイザー」遠いなぁと思っていると、自分がショートカットを開放していない事が原因だったり、探索で偶然見つけたキャラクターとバトルが始まって特殊なアイテムを入手したり、後のストーリーに影響する選択肢やイベントが生まれたりなど、かなり探索をする事のリターンが大きかった。総じて、ダンジョン探索自体を楽しめるプレーヤーは特に熱中できる作品だと感じている。

サブイベントやアイテム収集等を考慮した程よい大きさのダンジョンと「スターゲイザー」の配置数だったのでゲームプレイ自体は非常に快適だった。ただし、死んだ際の戻し作業を短縮できるショートカットの開通は攻略する上でかなり大事だったため、探索の重要度は高めと言える

 次に”死にゲー”としての難易度だが、しっかりちゃんと死にまくれる作品となっていた。正直デモ版の最初のダンジョンですらしっかり死にまくってクリアしていたので難易度の心配はしてなかったが、想像以上にちゃんと”ソウルライク”な死にポイントが多かった印象だ。

 操作キャラクターの死角となるイヤらしいポイントから雑魚敵に囲まれて殺されたり、綱渡り的なポイントで遠距離攻撃を喰らって墜落死したりは日常のように発生する。毒や腐敗といった状態以上を起こす毒沼に巻き込まれたり、突如中ボスクラスの敵が複数出てきたり、後はなんでもない雑魚敵でもダメージが大きいため油断して殺されたり等々……筆者がアクションゲームをそこまで上手くないという事を踏まえても、しっかり雄叫びを挙げてしまうような難易度の場所が随所に用意されていたのは楽しいところだと言える。

 ”ソウルライク”はある程度ストレスを感じる位の難易度を繰り返しプレイする事でクリアするのが醍醐味なため、その基本的な部分はしっかり押さえられていた印象だ。ゆっくり落ち着いて繰り返しプレイすれば、ちゃんと先へ進めるバランスの良い難易度だった事もあり、飴と鞭の使い方が上手いなと思わせるゲームバランスだ。

ハメ殺し、墜落死、油断死、初見殺しといった”ソウルライク”に求める程よい高難易度と理不尽が心地よいとまで思えた。自分の不甲斐ない死にっぷりに悶えるのがソウルライクの醍醐味なのよ……

 そんな数多の死にポイントを自分のプレイスキルだけでなく「P」のビルドでもどうにかできるタイミングが多かったのも、体験として非常に面白い印象だ。

 例えば人形タイプの的には電撃属性が、ゲーム中盤で登場する化け物のような敵「カーカス」には炎属性が効く事がゲーム内の情報で確認する事ができる。それぞれの属性に対応した「リージョンアーム」や「武器」が存在するため、たとえ使い慣れていなくても装備を変えたら意外と難所を突破できたりするのだ。

 他にも戦いづらいボスだと思っていた敵に対して武器のリーチを変えたら攻撃が届いて戦いやすくなったり、投擲アイテムやエンチャント付与のアイテムを惜しみなく使えば有利に立ち回れたりなど、プレーヤーが使える手札で試行錯誤する楽しさも十分に味わえるゲームとなっている。

死にまくる事で上達するプレイスキルに加えて、弱点を突く、武器を変えるといった状況に合わせた「P」のビルドもどんどん開拓されていく。そしてその度に作りたい欲しい「リージョンアーム」や強化したい武器などが増えて無限に遊べてしまう

 ボス戦に関してはもう何も文句なしの難易度。筆者は今現在に至るまで、戦えたボス全員において突破に1時間以上はかかっている。

 初見で突破できるボスはほとんどいなかった事に加え、何なら中ボスクラスで3時間以上沼ったポイントがあったほど、しっかりやり応えがあった。そんな中でも最初どれだけ絶望的な負け方をしても攻撃の隙や弱点、「ジャストガード」のタイミングを習得していけば、筆者のような雑魚系アクションゲーマーでもギリギリ勝てるような一番楽しい難易度となっていた。今までソウルライクをプレイした事のないプレーヤーにもオススメしやすい内容でもある。

 加えて本作では、ボスエリアでの戦いに限りお助け要素としてNPCが共に戦ってくれる「助霊」というシステムが存在するため、ある程度は難易度を自分の匙加減で緩和できる。とは言え中盤のボスからは敵も広範囲の攻撃が多くなり、結構早いタイミングで「助霊」が殺られてしまう事も多い。

 さらに「助霊」に頼りっきりだと「フェーブルスロット」が溜まらなかったり「ジャストガード」できる機会が少なくなって「致命攻撃」が狙いづらくなったりなどのデメリットもある。どうやっても最後は相手の攻撃を見切って自分中心で戦わざるを得ない事を踏まえても、多くの人が楽しめるほど良さなのではと思っている。

「助霊」は敵のヘイトを集めてくれたりダメージを与えてくれたりで非常に頼りになる存在だが、基本回復はできないし復活もしないため頼りきりになる訳にはいかない。体力が減ってくるとボスも本気を出して攻撃が苛烈になるため、そこで「助霊」に頼らず如何に上手く立ち回れるかがボス戦のポイントとなる

 ゲーム本編の物語についてはネタバレは避けたいので深くは触れないが、全体を通して様々なタイプの恐怖を体験できる作品だなと強く感じている。

 例えばプレーヤーを襲う存在にしても、無機質で淡々と人々を殺戮する人形の恐ろしさと、禍々しい姿に変容してゾンビ的な風貌で襲ってくる「カーカス」では恐怖の種類は異なるし、人間の狂気にしても純粋に精神が狂ってしまった人物も居れば、純然たる悪意で動いているようなキャラクターも存在する。ダークでホラーな世界を描くに当たって、今作でできる範囲の体験を全て詰め込んだような作品となっていた。

 筆者、実はとあるボスで詰まってしまいまだエンディングまでは見れていない状態だ。そのため、解明された謎や随所で選んできた「P」の嘘がどのように収束していくのか非常に気になっている。

 ソウルライク作品としてもアクションに独自性が有りやり応えも十分、世界観やストーリー性を楽しむのにも非常に適した怪作となっているので、気になる人は是非プレイしてみてはいかがだろうか。