レビュー
「Forza Horizon 5」レビュー
愛車と共に自然豊かなメキシコへ! 次世代機×オープンワールドで堪能するモータースポーツの祭典、ついに開幕
2021年11月4日 16:01
- 【Forza Horizon 5】
- ジャンル:オープンワールドレースゲーム
- 発売元:Xbox Game Studios
- 開発元:Playground Games
- プラットフォーム:Xbox Series X|S/Xbox One/Xbox Game Pass/Xbox Cloud Gaming/PC(Windows 10/11、Steam)
- 発売日:2021年11月9日(早期アクセス:11月5日)
- 価格:
- 7,590円(税込、スタンダード エディション)
- 9,680円(税込、デラックス エディション)
- 11,880円(税込、プレミアム エディション)
クルマは好きですか? クルマが好きなら、まだ見ぬ世界中のクルマをコレクションしてみたい、夢のスーパーカーで自由気ままにドライブしてみたい、アクセル全開の限界走行でレースの興奮を味わってみたいなどなど、1度はこんな憧れを抱くのではないだろうか。しかし、そうとはいっても現実のクルマは身近な移動手段でありながら高級品。そう簡単に何台ものクルマは所有できないし、数千万円以上もするスーパーカーなど夢のまた夢。8,000rpm、9,000rpmと高回転のレッドゾーンでエンジンを吹かし続けたり、ひとたびコースアウトしたりすれば、せっかくの愛車は立ちどころにレッカー送りになってしまうだろう。
では、現実が厳しければゲームならどうだろうか。そんなクルマへの大きな夢を叶えてくれるのが今回レビューをお届けするレースゲーム「Forza Horizon 5」だ。レースゲームといっても、「グランツーリスモ」や「Forza Motorsport」、「Project CARS」、「Assetto Corsa(アセット・コルサ)」といったレーシングシミュレーター系から、「マリオカート」や「リッジレーサー」などのカジュアル系まで、そのラインナップは実に多種多様。その中でもとりわけ、強烈な個性を輝かせているのがオープンワールドレースゲームの金字塔「Forza Horizon」シリーズだ。
前作「Forza Horizon 4」(2018年10月発売)より、実に3年振りの登場となるシリーズ最新作「Forza Horizon 5」。プレミアム エディション購入者への早期アクセスは11月5日よりスタートし、11月9日にいよいよ発売日を迎える。これまでのアメリカ、南ヨーロッパ(イタリア/フランスの地中海沿岸)、オーストラリア、イギリスに続いて、今作は自然豊かなメキシコが舞台。500台以上の実在するクルマに乗り、実在する地域をモチーフにした公道・オープンワールドを舞台にドライブからロードレース、クロスカントリーレースまで、モータースポーツの醍醐味を味わえる作品だ。
1つの作品の中に“無限”とも思える膨大なコンテンツが収録されている本作。今回レビューということで20時間程度プレイしてみたが、とてもじゃないが全てを味わい尽くすことはできない。本稿では1つ「クルマ」をキーワードに、次世代機「Xbox Series X|S」向けに開発されたタイトルならではの“フォトリアル”な最新グラフィックス、新録およびレイトレーシングにより進化したサウンドなど、クルマファン期待の最新作「Forza Horizon 5」の製品版を紹介していこう。
モータースポーツの祭典はメキシコへ! 最新グラフィックスで堪能する“クルマとの果てなき冒険”
「Forza Horizon」シリーズは、ご存じの通り「Forza Motorsport」のスピンオフ作品。Turn10 Studiosが開発する本家「Forza Motorsport」シリーズは、実在するサーキットを舞台にリアルな挙動でコンマ0.01秒を競うストイックなレーシングシミュレーターなのに対し、姉妹作の「Forza Horizon」シリーズはどちらかというとリアル系カジュアル。フォトリアルなオープンワールドを舞台に誰もが運転しやすい挙動で自由気ままにドライブとレースが楽しめる。
そんなオープンワールドレースゲームのシリーズ最新作「Forza Horizon 5」の舞台はメキシコ。これまでアメリカ、ヨーロッパ、オーストラリアを舞台とした過去作に続いて、今作では初のラテンアメリカが登場する。本作は前作より約1.5倍のシリーズ史上最も広大なオープンワールドとなっており、バハ・カリフォルニアやグアナフアト、テオティワカンといった実在するロケーションも盛り込みながら、砂漠にジャングル、沼地や火山など11種類の「バイオーム」でマップが構成されている。
前作「Forza Horizon 4」は、Xbox One/Windows 10 PC向けに2018年10月に発売された後、2020年11月にXbox Series X|S本体に最適化された。今作「Forza Horizon 5」は元々Xbox Series X|S向けに開発されており、次世代機ならではの高精細なグラフィックスでドライブを楽しむことができる。各カーモデルの細部に至るまでの精巧な再現はもちろんのこと、空模様や遠景の描写も“実写”だとを感じさせるフォトリアルなものになっている。また、前作に引き続き季節、天候・時間の変化も実装される。
本作の対応ハードは、ざっくりに言うとXbox Series X|S、Xbox One、Windows 10/11 PCだ。そのほか、Xbox Game Pass、Xbox Cloud Gaming、Steamにも対応している。Xbox Series Xでは4K(3,840×2,160)、Xbox Series SではFull HD(1,920×1,080)での出力が可能で、さらにXbox Series X|S版では30fpsの「クオリティモード」、60fpsの「パフォーマンスモード」での動作を選択できる。両モードでは解像度に違いはないが「パフォーマンスモード」を選択すると、鑑賞モードである「ForzaVista」のレイトレーシングが適用されなくなる。これは好みに応じて選択したいところだ。
さて、シリーズ最新作「Forza Horizon 5」の特徴を簡単ではあるが記してみた。されど百聞は一見に如かず。「Forza Horizon 5」の最高にクールなオープニングシークエンスをご覧頂ければ、本作の進化をすぐに感じ取ることができるだろう。輸送機よりカバーカーでもある「Ford Bronco(2021)」や「Mercedes-AMG ONE(2021)」など4台のクルマが降下し、それらを操りながら舞台となるメキシコの多種多様な自然環境が眼前に現われる。ちなみに、本作のオープニングシークエンスについては別稿にて詳細を紹介しているので、こちらも参照していただきたい。
ところで、オープンなワールドでレースゲームと聞いて、あなたはどんなゲームをイメージするだろうか。ハワイ・オアフ島を再現した「テストドライブ アンリミテッド」、アンダーグラウンドなストリートレースが楽しめる「ニード・フォー・スピード」、もしかしたら架空の島・クルマではあるが「グランド・セフト・オート:オンライン」といったタイトルを思い浮かべる人もいるかもしれない。
筆者の場合はというと、今回「Forza Horizon 5」をプレイしてみて思い出されたのは中学生の頃に夢中になっていた「Midtown Madness 2(ミッドタウンマッドネス2)」だ。奇しくも同じMicrosoftのレースゲームではあるが、2000年にPC向けに発売されたレースゲームながら、実在するサンフランシスコとロンドンの街を舞台にしたオープンワールド的なマップで「チェックポイントレース」や「シティドライブ」などが楽しめたほか、すでに収録されるクルマにはインパネ(内装)視点まで搭載されていた。
CPUとタイムや順位を競うだけでなく、スタントカーやロンドンタクシーのドライバーになって課題をこなすモードもあれば、お気に入りのCDを再生しながら、ただただサンフランシスコの街を自由気ままに走る回ることもできるなど、このプレイスタイルの幅広さは「Forza Horizon 5」にも共通するのではないだろうか。
とはいっても各作品にはそれぞれの魅力があり、何も「Forza Horizon」シリーズがオープンワールドレースゲームの元祖というわけではない。ただし、ロードレースやダートレースなどモータースポーツのあらゆる要素をオープンワールドに落とし込みつつ、MMORPG的なランク要素を加えゲームとしても成立させている「Forza Horizon 5」のコンテンツ量は、当該ジャンルの金字塔たるにふさわしいものがある。
Xboxの「Forza Horizon」シリーズは知っているけれど、オープンワールドでドライブするだけで何が楽しいの? すぐに飽きるのでは? と購入を前に心配な方もいるかもしれない。筆者も最初はそんな不安と「オープンワールドレースゲーム」という稀有なジャンルをプレイしてみたいという期待感の両方でいっぱいだった。でもひとたびプレイすれば、そんな不安はたちまち吹き飛ぶことだろう。
本作の収録コンテンツは“無限”ともいえるコンテンツ量を誇る。広大なメキシコの大地で、自分だけの愛車に乗って自由気ままにドライブするもよし。さらに、マップ上に設けられたある地点に行けば、ロードレースやクロスカントリーレース、ダートレース、ストリートレースといった様々なレースに参加するのもよし。本作では前作の「影響ポイント」に相当する「アコレードポイント」を一定量貯めることで「Horizon アドベンチャー」のチャプターを進めることができ、クルマvs飛行機&バイクといった異種間レース、活火山や古代遺跡の探検など、舞台であるメキシコを味わい尽せる大興奮の「エクスペディション」もアンロックできる。
10時間ほどプレイしてみて「イントロダクションも終わったし、まあこれくらいかな」と思っていると、チャプターを進めるたびにマップに表示されるレース、アクティビティもどんどん解放されていく。道路や地形がはっきりと映し出されていたマップは気づけばアイコンだらけに。これに加えて、プレーヤーオリジナルのイベントレースを作成できたり、毎月のアップデートも配信されるというのだから、果たしてどれだけの時間を掛ければ全てを遊び尽せるのだろう。本作のキャッチコピーにもある“果てなき冒険”も納得の無尽蔵なコンテンツがプレーヤーを待っている。
エンジンサウンドが気持ちいい!「Forza Horizon 5」の進化はサウンドにあり
クルマを扱うゲームだからこそ、まず気になるのはどんな挙動シミュレーションなのかというところだろう。
意外にも挙動自体はアーケードゲームのようなカジュアルさ。ややアンダーステア寄りかなと思って、アクセルを踏み込めばすぐオーバーステアに。ブレーキからステアリング、アクセルオン/オフで簡単にドリフト(パワースライド)を決めることができるなど、悪く言えば走っているというよりも滑っているという感覚が強い。クルマの駆動方式は大きくFWD(前輪駆動)、RWD(後輪駆動)、AWD(四輪駆動)に区分されており、AWDならオフロード走行時に若干グリップが効くという感じ。オープンワールドだからこそ路面環境に合わせてチューニングするというよりも、フラットにどこでも走れるようなシミュレーションになっていると感じた。
シフトチェンジはオートマチック(AT)、マニュアル(MT)に加え、MT(クラッチあり)も選べる。デフォルト設定ではLBボタンがクラッチに設定されており、スポーツカーの運転はマニュアル一択という方もよりリアルな体験ができるようになっている。そのほか、タイヤ空気圧やギア比、サスペンション設定など「チューニング」も用意されており、自分好みのマシンに仕上げて走りやすいものに調整できる。クルマとの対話を続け、チューニングのコツを掴んでいけば、本作の挙動にも次第と慣れていける。
ドライビングの手触りとしては、前作「Forza Horizon 4」から劇的に変化しているわけではないように感じられた一方で、本作のサウンド面は大きな進化を感じられた。本作ではクルマのエンジンサウンドやエキゾーストサウンドなどが新規収録されているほか、レイトレーシングによる環境に応じた音の跳ね返り、エコーなどもシミュレーションされ、より現実に近いリアルなサウンドを強化・再現している。
「トヨタ スープラ(A80型)」のNAエンジン、「マツダ RX-8」のロータリーエンジンなども音ではっきりと区別されており、クルマそれぞれの官能的な個性がプレーヤーの耳をダイレクトに刺激する。また、ポルシェ初のフルEVスポーツカーとして話題となった「ポルシェ タイカン」であれば、ほぼ無音の中に微かなモーターの音を感じる。EVならではの驚異的な加速度と、それに伴って大きさを増す風切り音が相まって、まるで実際に乗っているかのような恐怖感を味わえた。
本作で進化したサウンドを体験するスポットとして、とりわけ筆者がおすすめするのは、マップ中央南にある「グラン・プエンテ」大橋付近。海外では日本のように山を切り開いてトンネルを開通させることはめったにせず、山の斜面に沿ったワインディングロードを整備することが多いそうだが、「グラン・プエンテ」大橋を通過するルートではトンネルがいくつも用意されている。
ここではお気に入りのラジオは切って、クルマが奏でるエンジンサウンドだけを味わってもらいたい。まるでジェット機が加速しているような興奮と共に、愛車のエンジンサウンドが最高のBGMになっているはずだ。
サウンドのほかにも、クルマに関わる新機能を少し紹介しておきたい。
本作では、対応しているオープンカーであれば走行時にルーフの開閉ができるようになった。デフォルトではボタンの割り当てが設定されていないので、オートマチック(AT)でプレイしている人なら、使用しないクラッチボタン(LBボタン)に割り当てるのがおすすめだ。美しいコーストラインに差し掛かったら、一旦クルマを停めてオープントップに。天候が悪くなったらまたハードトップにする。メニューを挟まずボタン操作でリアルタイムにできるのは便利だ。
さらに、今作では「4WS(四輪操舵)システム」も再現されている。4WSは「4 Wheel Steering」の略称で、前輪の操舵だけで曲がるのではなく、後輪も操舵させることで旋回性能や安定性能を高めるシステムのこと。近年ではフェラーリやポルシェといった一部のハイパフォーマンスカーにも採用されている。ゲーム内で簡単にいえば、ステアリングに合わせて後輪も動くということだ。筆者が確認できたのは「Ferrari 812 Superfast(2017)」で、フェラーリか称する「バーチャル・ショートホイールベース2.0システム」が実装されているのには驚かされた。
収録台数は500台以上! 日本ではお目にかかれないクルマも愛車にしよう
海外ゲームメーカー開発のレースゲームをプレイすると、クルマ好きとして1つメリットがある。それは日本ではめったに出会えない海外のクルマ、いわゆる“外車”が多く収録されることだ。リリース時点での「Forza Horizon 5」における収録台数は500台以上。車種はアップデートやDLCパックなどを通じて今後も追加される予定であり、美麗グラフィックスによるオープンワールドレースゲームであると考えれば十分な台数といえる。
プレーヤーが運転できるのは、ピニンファリーナデザインのレジェンドカー「Ferrari 250 California(1957)」、映画「007」のボンドカーでお馴染み「Aston Martin DB5(1964)」といったクラシックカーから、世界最速の量産車「Bugatti Chiron(2018)」や、ロータス初のEVハイパーカー「Lotus Evija(2020)」などの最新モデル、ラリーカー「Hoonigan Ford Escort RS Cosworth WRC“Cossie V2”(1994)」に至るまで、クルマ好きも満足のマシンばかり。また馴染み深い「Toyota Supra 2.0 GT(1992)」といった日本車も海外仕様で収録されているので、新たな1面を知ることができる。
なお、公式サイトではカーリストも公開されているので、自分の気になる車種が収録されているか、プレイ前にチェックしておくのもいいだろう。カーリストの初回発表時には、BMWが記されていなかったことから未収録かと大きな話題となったがご安心を。最終リストにも製品版にもしっかり収録されている。
本稿冒頭で、本作のオープニングシークエンスを紹介したが、実はそのオープニングが終わるとまるでRPG作品の冒頭を思わせるような、最初の相棒を3台の中から選択することになる。今回は「Chevrolet Corvette Stingray Coupe(2020)」、「Ford Bronco(2021)」、「Toyota GR Supra(2020)」の3台。
ロードレースに勝つスーパーカーを取るか、メキシコの自然を走破するオフロードカーを取るか、ド派手にドリフトを決めるスポーツカーを取るか、その1台を選ばなくてはならない。これが実に悩ましい。最終的には3台すべてもらえることがわかったのだが、クルマ好きにとってはこれからの愛車を決めるこうした選択は本当に悩ましいものだった。
本作では「マシンコレクション」というモードも用意されている。これは入手したクルマを一覧で確認できるもので、各メーカーの車種をコンプリートすると賞品がアンロックできる。
単純に購入してクルマを増やしていくだけでなく、ランクアップや各レースの報酬などがスロット形式でもらえる「ホイールスピン(WheelSpin)」や、チャプターを進めたり特定のドライビングテクニックを披露したりしたときに達成される「アコレード」の報酬でしか入手できないクルマもあるので、カーコレクションをコンプリートするために新たなレースへという循環にもつながっている。
オープンワールドレースゲームの中に、カーコレクションの要素をも盛り込むことで、もはや永遠に終わらないレースゲームがここに誕生したのかもしれない。
さて、そろそろ本稿も結びとしたい。シリーズ最新作「Forza Horizon 5」をプレイして特に感じたことは、本作が「レースゲーム」であったということだ。オープンワールドレースゲームなのだから当たり前だと思われるかもしれないが、本作は「レース」の面白さを体験できるゲームだということである。
「Forza Horizon 5」は、次世代機の性能をフルに活用したグラフィックス、進化したサウンド、充実のカーラインナップに多種多様なレース、そして何より自由気ままにメキシコの広大な大地をドライブできるクルマ好きにはたまらない作品だ。現実には絶対にできない公道で思いっきりスピードを出したり、1つの作品にロードレースからダートレースまでモータースポーツの醍醐味を「オープンワールドのゲーム」として成立させている。ただ、求めすぎなのかもしれないが、広大なオープンワールドの中に、もう少しガソリンスタンドといった「愛車」を労わる要素も欲しかったと思うが……。
自国を代表する自動車メーカーは多いのに、なぜかモータースポーツは根付かない日本。本作を通じてモータースポーツの面白さ、クルマの持つ多様性の1面を感じ取ることできるだろう。クルマ好きはもちろん、普段レースゲームをプレイしない人もモータースポーツの魂が宿った「Forza Horizon 5」をぜひプレイしてみてほしい。リアルかつカジュアルにレースを楽しめるコンテンツ量の多さに時間を忘れて夢中になるはずだ。
気が早いかもしれないが、北アメリカ、ヨーロッパ、オーストラリア、ラテンアメリカに続く、次なる「Horizon フェスティバル」の地はぜひ「日本」で! そんな日が来ることを期待しよう。
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