レビュー
「Microsoft Flight Simulator Game of the Year Edition」レビュー
ついにエアレース実装! そしてスーパーホーネットやヘリで飛べる日がやってきた
2021年11月16日 23:00
- 【Microsoft Flight Simulator Game of the Year Edition】
- 開発・発売元:Microsoft/ASOBO Studio
- リリース日:2021年11月18日
- 価格:無料アップデート/リノ・エアレースは有料DLC
- ジャンル:フライトシミュレータ
今回ファーストインプレッションをお届けするのはリリースから約1年が経過し、着実に進化を果たしてきた「Microsoft Flight Simulator(MSFS)」の大型無料アップデート「Game of the Yer Edition(GOTYエディション)」です。
「MSFS」は2020年8月にWindows10向けにリリースされましたが、これまでに日本を皮切りに、アメリカ、イギリス、フランス、ベルギー、オランダ、ルクセンブルク、デンマーク、スウェーデン、ノルウェー、フィンランド、アイスランド、ドイツ、オーストリア、スイスといった都市単位のアップデートが行われ、それはもう素晴らしく美しいビジュアルの中を飛行させてくれました。
ざっくりではありますが、「Microsoft Flight Simulator」をおさらいしておきましょう。この「MSFS」はPC上で1982年から作られ続けている根強い人気を誇るPC用航空機シミュレーターです。リリースを繰り返すたびに航空機のシミュレーションレベルとビジュアルの進化はすさまじいものがあり、最新作MSFSでのフォトリアリスティックな描写は息をのむ美しさで、ただ遊覧飛行しているだけでもとても楽しい体験を得られます。
2021年7月からは家庭用ゲーム機Xbox Series X|Sでもリリースされ、大きな話題となっています。家庭用機でありながらビジュアルはPCと遜色なく、手になじんだコントローラーでレシプロ機からジェット機まで手軽に飛ばせてしまうのがとても魅力的なコンテンツとなっています。
そして今回「Game of the Year Edition(GOTYエディション)」として無償アップデートが提供されることになりました。このGOTYエディションでは公式初の戦闘機「F/A 18E スーパーホーネット」が実装され、eVTOL(電動垂直離着陸機)機の「VoloCity」といった機体や、ドイツ「ライプツィヒ・ハレ空港」・スイス「チューリッヒ空港」・米国「パトリック宇宙軍基地」などの空港、新しいミッションやチュートリアルの追加、天候システムのアップデート、DirectX12版への早期アクセス、MOD開発者への支援なども行われます。
今回GOTYエディションのプレビューが許可されました。VTOL機やスーパーホーネット、なによりエア レースの実装が皆さん気になるところだと思いますし筆者ももちろん楽しみでしたのでさっそく飛んでみたいと思います。なお、今回のプレビューはXbox Series X上でのレポートです。正式にリリースされるものと違う場合がありますことをご了承ください。
ヘリコプターの追加でどこにでも降りて景色を楽しむという夢がついに実現!
「MSFS」登場時から「滑走路がいらずどこでも降りて観光できる機体」……つまりは「ヘリコプター」の登場が望まれていました。これだけフォトリアリスティックなビジュアルを見せられたプレイヤーなら誰しもがそう思うのではないでしょうか。もともと離着水・離着陸のできる「アイコン A5」という機体は収録されてはいましたが、陸上・水上どちらも加減速をするための広大なエリアが必要でした。
GOTYエディションで追加されたVolocopter社の「VoloCity」は“VTOL(垂直離着陸)”機で、滑走路を必要とせずにその場から垂直に離着陸ができます。この「VoloCity」は厳密にはいわゆるヘリコプターではなく比較的小さな18個のローター(回転翼)を持つマルチコプターで人を乗せて運べる近距離輸送用の機体です。現在空中タクシーサービスの事業展開を目指して実機のテストが行われています。
この機体はeVTOL機ということで“e”が付いてます。これは電動の意味で昨今ニュースでも取り上げられているシティ・コミューター的に使われる近距離用の機体です。今回は実際にどこでも降りられるのかをチェックしてみましょう。MSFSにおいてこういう実験的な機体が登場すると2022年に予告されているヘリコプターの実装に着々と進んでいるようでワクワクしてきますね。
そしてこの巨大なドローン的なマルチコプター機の操作方法も特殊です。スロットルコントロールで上昇と下降、スティックを横に倒すと正面を向いたままその方向にスライド、LRトリガーでその場で回転、何もしなければホバリング……と本当にドローンと同じような挙動が可能となっています。人が乗るので厳密にはドローン(無人航空機)ではありませんが自分で操縦できたらその不思議な感覚がとても楽しそうです。
実際にはここまでの高度と近距離での飛行は許可されないと思いますが、これはすばらしい乗り物になる予感……MSFSだと自由に飛ばせるのがとても楽しいです!将来実現したら一度は利用してみたいと思わせてくれます。そしてこの機体の実装によってもうどこでもホバリングして降りることができることが分かりました。正式リリース後はSNSにはランディングの動画・画像があふれるのではないかとそういった盛り上がりも楽しみの一つとなりました。
ボーイング F/A 18E スーパーホーネットの追加も見逃すな!
本来であれば今頃は映画「トップガン マーヴェリック」が公開されていたはずでしたが2022年5月に延期されてしまいました。「MSFS」でもコラボレーションが予定されていて、主演トム・クルーズ(コールサイン:マーヴェリック)が搭乗する「ボーイング F/A 18E スーパーホーネット」が実装されることになっていたのです。ですが、いったん保留になってしまい通常塗装の軍用機版スーパーホーネットが実装されることになりました。映画公開までお預けかと思っていましたのでこれはこれでうれしいサプライズかと思います。
リアルなフライトシミュレーターといえども、やはり「戦闘機に乗って空を飛びたい!」と思うのは抗いようのない事実ではないでしょうか。ビデオゲームに登場する戦闘機は扱いも簡単で弾数無制限のミサイルをバンバン放ち、敵を撃墜しまくれるわけですが、「MSFS」で格納庫に収まる様子を眺めていると実際には飛ばすこともままならない“戦闘マシーン”だということがヒシヒシと伝わってきます。しかしながら今回レビューに使用しているXbox Series X|Sの標準コントローラーでさくっと飛べてしまうのは素晴らしい経験です。
それでは早速飛んでみましょう。舞台はアメリカ・ニューヨークです。飛んでみてすぐに思うのはそのスピード感の違いです。「MSFS」でこれまで飛ばしていたどの機体よりも速いスーパーホーネットはパワフルさも画面から伝わってきてケタ違いなのがよくわかります。そのためとても広い旋回半径が必要で、それは左右だけでなく上下も同様ですからさらに広い視野と飛行経路の予測が必要になってきます。いつもの感覚で旋回するとあっというまに目的地を逃してしまったり、墜落することになるのでとても難しいです。
待望のエア レースが実現!とてつもなくストイックな内容にシビれる
そしてこちらは有料DLCになりますが「RENO AIR RACE(リノ エア レース)」が実装されました。このエア レースは実際に存在する競技で、アメリカのネバダ州・北西部にあるリノ・ステッド空港で1964年から毎年9月に行われている最古参のエア レースを再現しています。
日本人からするとエア レースといえば千葉・幕張で開催されていた「レッドブル エア レース」が思い浮かぶのではないでしょうか。こちらは会場でのアクロバット的なマニューバを取り入れながらタイムを競うものですが、「リノ エア レース」では楕円軌道を描くオーバルコースとなります。
アメリカではオーバルレースが盛んで、有名どころではインディーカーやナスカーといった自動車レースでも取り入れられています。「オーバルって同じところをぐるぐるまわるだけでしょ?」よく言われることで、確かにその通りなんですが実際にはそんなことは皆無で、毎周路面状況が違ったり戦略を練ったり駆け引きしたり……そのぐるぐるの中で高度な戦略が求められるストイックなレース・フォーマットです。
自動車でもかなりな高速でレースが行われるオーバルレースはそれに比例して高度なドライビングテクニックが要求されますが、路面にへばりつかせることで車体を安定させることが可能です。しかしエア レースともなると機体をどこかに預けることもできず次元がもう一つ増えることになります。さらに速度やG(重力加速度)も段違いですから私たちがなかなか経験することのない領域のスポーツです。
「MSFS」でのエア レースで使える機体は4種類。複葉機からジェット機まで幅広い機種が並び、それぞれの機体特性は飛ばしてみればすぐわかります。出力が一番低い複葉機が簡単そうに見えますが、その軽さから機動性が一番高く左スティックを軽く倒しただけでもロールの速度が速くあっというまに墜落してしまいます。逆にジェット機だとロール速度は緩いものの、速度が高いため旋回半径も広くなってきますので“曲がらない”状態になります。
なんてことは頭の片隅においといてさっさと飛んでみましょう! いやもうスティックを倒し込んだときの機体の反応は“レース用機体とはこういうものか!?”と思わせるほどの運動性能が感じられます。とにかく動きがクイックですし、レースですから基本スロットル全開!飛行機を旋回させるには操縦桿を行きたい方向に倒して引く……これが基本ですが「MSFS」ではちゃんと空力をシミュレートしていますから気流によって機体があらゆる方向にぶれまくります。
機体をロールさせると天地のどちらかに傾いていきますからそれを修正するためには水平に戻すのが一番です。飛行時は既定の高度を超えたらペナルティが課せられてしまいますので機体をロールさせてからのコントロールが肝になります。基本的には曲がるなら機体をロールさせ、パイロンを通過したらすぐ水平に戻して安定化させる……ということをしたいのですが水平に戻すのがまた難しい!パイロン間が短いところではその先の経路を予測しながら機体を若干傾けた状態で飛行する方がいいこともあります。
飛行高度もとても重要で、高度制限は前述のとおりですが、低すぎてももちろんダメで地面はフラットに見えますがところどころ丘のような場所もあり、機体の運動性の高さもあることからあまりに低い高度で飛んでいるとあっというまに地上に激突……ということも多々あります。スティックを慎重に操作しながら高度に気を付けてパイロンをクリア、次のパイロンへ向かっていくレースはとにかくストイック!無事に1周できたときは息を止めていたことを思い出すでしょう。まさにシミュレーターベースの“ゲーム”が完成した、と言える内容となっています。
なお、この「リノ エア レース」はマルチプレイヤーで飛ぶことができるのですが今回のプレビューではマッチングできなかったり落ちたりということがありましたので割愛させていただきます。一人で行うタイムトライアルではゴーストが出てきますのでライバル心メラメラで競い合えます。正式リリース以降はマルチが正常に遊べると思いますのでぜひ楽しみにお待ち下さい!
GOTYエディションで追加された要素をいくつかご紹介
最後にGOTYエディションのコンテンツをまとめて紹介しておきたいと思います。まず、ホームメニューにF/A 18E スーパーホーネットを使用したランディングチャレンジが設置されています。機体がクイック&ハイパワーなこともあってとても難しいです。チャレンジのし甲斐があるランディングチャレンジをトップに持ってくるあたり、開発者からの“難しいでしょ?”という挑戦状のようでもあります。
GOTYエディションでは新しい空港も追加されています。ミラマー海兵隊航空基地なんて映画「トップガン」ではこの基地でトップガン達の訓練が行われる舞台でもあり、ファンの方にはうれしい更新・追加ではないでしょうか。現時点ではF-14トムキャットは公式には収録されていませんが今後のコラボレーションに期待したいですね。
v 観光フライトができるディスカバリーフライトに6つのロケーションが追加されました。その中から3つ紹介します。どれも美しい風景が楽しめます。
「Microsoft Flight Simulator Game of the Year Edition」のファーストインプレッションを終えて
とにかく「MSFS」の進化が止まるどころか広がり続けていることに驚きました。マルチコプターによる垂直離着陸は新しい次元の楽しみ方を提供してくれましたし、戦闘機の追加は飛行機好きにはたまらないのではないかと思います。軍用機がOKならばアパッチなどの軍用ヘリなんかも期待しちゃいますよね。こんな素晴らしいアップデートが無償で行われるとは……「MSFS」持っててよかった!と感動しっぱなしです。
有料ではありますがエア レースの実装で「MSFS」はほんとに楽しいコンテンツに進化したな、と素直に喜べる内容でした。シミュレーターをベースにそれを超えてゲームになったと思える進化でストイックなまでの操縦テクニックとガマンが必要なレースはそれだけでパイロットの心を鷲掴みにしてくれます。リノでのエア レースはオーバルでしたが、今後の拡張があるならば「レッドブル エア レース」みたいなアクロバット系のエア レースも望みたいと思います。
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