「CONTROL」レビュー

CONTROL

異世界からの“歪み”に浸食された世界、プレイするほどに不安が高まるアクションシューティング

ジャンル:
  • アクション
発売元:
  • マーベラス
開発元:
  • Remedy Entertainment
プラットフォーム:
  • PS4
価格:
6,800円(税別)より
発売日:
2019年12月12日

 「CONTROL(コントロール)」は、Remedy Entertainmentの最新作である。PS4向け日本語字幕版が12月12日に発売される。

 小説家がその土地に潜む謎の存在に取り込まれてしまう「Alan Wake」、タイムマシンの失敗によって世界そのものが歪んでしまう「Quantum Break」とユニークな作品を生み出してきたRemedy Entertainmentだが、今作は異世界からこちらを侵食する謎の存在と、“超能力”が大きなテーマとなる。

 「CONTROL」の主人公・ジェシーは強力な念動力を使う。床や壁を引き剥がし、自分の何倍もの重さを持つそれらを敵に投げつける。自分が暴風をまき散らす竜巻になったような爽快感が楽しめる。ストーリーは謎めいており、どこか不安になる歪んだ雰囲気が大きな魅力だ。異世界の雰囲気と、超能力を思うさま振るって戦う楽しさをぜひ味わって欲しい。

【「CONTROL(コントロール)」Launch Trailer 日本語字幕版】

この世界を浸食しようとする異世界の存在・ヒスとの戦い!

 「CONTROL」はかなり奇妙な味のあるゲームだ。まずプレーヤー自身に主人公のジェシーがどういう状況に置かれているのかがわからない。ゲームが始まるとプレーヤーはアメリカ国旗が掲げられた政府組織「連邦操作局(FBC)」の建物「オールデスト・ハウス」にいる。奇妙なことに警備員も職員も、誰もいない。

 建物の中に入りフィンランド訛りの言葉を話す清掃人の助言を受け、エレベーターを登ったジェシーはこの建物の責任者らしい男がいるオフィスにたどり着く。しかし、その操作局の局長“トレンチ”はこめかみに銃を押し当てて自殺していた。……そしてなぜかジェシーが「新しい局長」として、現在この建物の中で起きている、恐ろしい事象に立ち向かうこととなるのだ。

主人公ジェシー。彼女の境遇は徐々に明らかになる
突然の局長の死。ジェシーがなぜか後任の局長となる
死んだはずの前局長・トレンチがジェシーを導いていく

 ……このように文字に起こしても、一体何が起きてるのか、このゲームのストーリーの整合性がとれずに混乱するだろう。「CONTROL」の物語はまさにこの“わけのわからなさ”が大きな特徴だ。ジェシー自身にも秘密があり、それは中々語られない。プレーヤーは何が起きてるのか、この物語をどう受け止めて良いのかわからない、とても居心地の悪い感覚を抱きながら、ゲームをプレイしていくこととなる。「話がよくわからない」という感想ももっともだが、この奇妙な感覚こそが、作品の魅力であることも確かだ。

 局長が自殺した銃。それは「サービスウェポン」と呼ばれる武器で、ジェシーのメインウェポンとなる。このサービスウエポンは弾数が無限な不思議な銃だ。ただし弾は無限である程度連射するともチャージ時間が必要となる。サービスウェポンはジェシーと共に成長し、ショットガン状の「粉砕」、マシンガンタイプの「連射」など特性を変化させることができるようになる。ジェシーはサービスウェポンと超能力を活用し戦っていくのだ。

本作の基本はアクション+TPS。武器となるサービスウェポンは弾数は無限だが、連射すると弾切れになり、チャージが必要となる

 ジェシーの超能力は今いる連邦操作局で起きている怪異と無関係ではない。その怪異は「ヒス」と呼ばれている。ヒスは操作局の建物内で発生し、そして局員を取り込んでいく。捜査局の職員達は空中に吊り下げれ徐々にヒスに冒され、ヒスと化した人間達は特殊な能力を持ち襲いかかってくる。連邦操作局はヒスの研究をしており、何らかの形で異世界の存在であるヒスと繋がってしまったようだ。

 ……そして操作局は17年前、ジェシーの弟を連れ去ったのだ。ジェシーとその弟は異世界の存在と遭遇、操作局は弟を誘拐し研究材料にした。ジェシーは自身の秘密の力でようやくそれを探し当て、連邦操作局に侵入した。しかし状況は大きく変わってしまっていた。なぜかジェシーは“新しい局長”として迎え入れられ、生き残った職員と協力して操作局を支配し、そして外の世界にその侵略の触手を伸ばそうとするヒスと戦う事となる。

 何かの力で大きく歪んでしまった世界、次々起こる怪奇現象、謎めいたストーリーと「CONTROL」はこれまでのRemedy Entertainmentの作風を受け継ぐ魅力的で引き込まれるゲーム性を実現している。そして今作はこれまで以上に「探索」と「戦闘」に力が入っていると感じた。ジェシーは巨大な物体を念力で投げつけるという強力な能力を使えるのだが、敵は数が多く、しかも特殊能力を持っていたり数が多かったりで戦闘バランスはきつめで、だからこそたっぷり戦える作品だという印象を持った。

連邦操作局は異世界からの存在・ヒスにより占拠され、宙に吊り下げられた人々はヒスに取り込まれている
ジェシーは“浄化”を行なうことで、コントロールポイントをヒスから取り戻すことができる

 ジェシーは強いが継戦能力に不安がある。武器はすぐにリロード状態になるし、超能力は強力だがエネルギーを使い果たすとしばらく使用できなくなる。そして敵の数は多くAIは狡猾だ。建物の中でロケットランチャーをぶっ放す敵や、強力なバリアを張る敵、空中を浮遊する敵などヒスは様々な敵を差し向けてくる。弾と超能力のチャージ時間をうまく乗り切りながら銃で狙撃し、念力で吹っ飛ばして彼らを殲滅していく。

 Remedy Entertainmentは「マックスペイン」を手がけたメーカーでもある。時間をゆっくりにし、一方的に攻撃できる「バレットタイム」を生みだし、FPS/TPSに革命をもたらしたメーカーでもあるのだ。戦いは厳しいがそのギリギリを越える楽しさが本作にはある。ぐいっとのめり込んで戦いを楽しんで欲しい。

ジェシーは強力な超能力が使える。大きなものを吸い寄せ、敵にぶつけることが可能だ。この強大な力を使って戦える感触こそが、「CONTROL」の最大のウリだ

アイテムを入手し超能力を強化、サイドミッションでさらなる強さを獲得

 「CONTROL」の能力強化は、敵を倒すことで入手できる強化アイテムをスロットに入れることで行なわれる。キャラクターの体力を増やすか、特殊能力を強めるか、武器の威力を上げるか、リロード速度を上げるかなど手に入れたアイテムの特性と性能を考えて組み込んでいく。

 強化アイテムは能力はもちろん、特性値が細かい。強化アイテムは敵から多数ドロップされる。プレーヤーは頻繁に入手されるアイテムの性能を見て交換していくこととなる。アイテムにはレアなどの等級があり、「Diablo」に代表される「ハック&スラッシュ」の楽しさもある。

敵からドロップされる強化アイテムを装備し、ジェシーと武器を強化していく

 強化アイテムの他「素材」も手に入り、この素材でサービスウェポンのスロット解除を行なっていく。敵は何度も復活し、倒すとアイテム集めができるので戦うほどにキャラクターを強化させていくことができる。これらのアイテムを使うことで強化アイテムの作成もできる。武器の強化を優先しながら高い等級の強化アイテムを作るのも戦略の1つだ。

 能力ポイントはストーリーを進めていくことで入手できる。念力で敵を投げつける「投擲」が特に強力だが、全体的に敵の攻撃力が高いので、体力アップも忘れないでおきたいところ。強化アイテムの特性と合わせて、自分ありの戦い方を組み立てる楽しさがある。

物語が続いていく中で、ジェシーは新たな能力に目覚めていく
サービスウェポンもマシンガンやショットガンなど新しい形態が増えていく
よりレア度の高い強化アイテムを入手

 本作は激しい戦いが楽しめる作品だが、連戦が続くといささか単調に感じる部分もある。モノを投げつけつつ撃つという戦い方のコツがつかめてくると、次々に現われる敵の相手に気疲れしてくるし、しかもストーリーが進むと敵の数が増えかつ強くなってきて戦闘もきつくなってくる。

 ストーリーが盛り上がってきたところでかなり行き詰まってしまっていたのだが、サイドミッションを進めることでキャラクター強化、さらには新しい能力の獲得もできた。「CONTROL」のサイドミッションでは一緒に戦った職員達のストーリーを掘り下げたり、世界観をふくらませる要素もある。キャラクターを強くしこれからのメインストーリーに備えることもできる。謎めいたストーリーにメインストーリーを進めたくなるが、サイドミッションもオススメの要素である。

サイドミッションに挑戦することで、ジェシーをさらに強化できる

全てに“歪み”を感じさせる不安な世界。不条理な恐怖こそが本作の醍醐味

 「CONTROL」はこれまでのRemedy Entertainmentの手法を取り入れており、独特のゲームの感触を実現している。代表的なものの1つが「不条理感」だ。特にいきなり夏のモーテルに迷い込む「オーシャンビュー・ホテル」は明るい景色なのにとても不気味だ。出口の見えない閉鎖空間で、パズルそのものはシンプルなのだが、初期は特に閉じ込められた恐怖感が強い。

 古いブラウン管のテレビを通じて語りかけてくるのは「ダーリング博士」。陽気な研究者だが物語の鍵を握る人物で、映像の研究レポートはヒスの特性を断片的に語っていく。その語り口がとてもうれしそうなのが、世界観に“狂気”を足している。世界そのものが崩壊しそうな状況の中、ヒスの研究経過を喜々として語る博士。ヒスが恐ろしい現象を引き起こしている現在、博士はどこにいるのだろうか?

「オーシャンビュー・ホテル」。あるルールを見つけなければ出ることができない
連邦操作局には様々なセクションがある。しかしヒスにより、地図通り繋がっていない場所もあり、進むのは困難だ
施設にはヒスの侵入に対抗している職員達もいる。彼らと力を合わせヒスと闘っていく

 この映像が「実写」を使っているのだ。フィルムにエフェクトを書けて独特の古めかしい感じと、怪しさを付け足している。この実写のゲーム内映像は「Alan Wake」から取り入れられていて、作品内に味を加えている。この他ゲーム内の恐ろしい事象を思わせる不気味な人形劇も入っていたり、テレビ文化をうまく活かしているのだ。他にもゲーム内では様々な「研究と記録」、連邦操作局が集めた「事件ファイル」等の資料が世界観を補強してくれる。

 メインのストーリーだけでなく、“寄り道の楽しさ”も触れておきたいところだ。「CONTROL」には豊富なサイドミッションがある。他の局員のストーリーや、ヒスの秘密に迫るものなど、世界観をより掘り下げるものとなっている。また、突然戦闘場所を指定される「緊急指令」という突発的なサイドミッションもある。サイドミッションをクリアすることで強化アイテムや、キャラクターを強化できる能力ポイントが得られるのでゲームが有利になる。

Remedyが得意とする実写映像を使ってのダーリング博士のレポート。陽気で明るい博士の口調が、現状とのギャップを大きくしており、怖い
不気味な人形劇。本作の秘密を暗示しているところが楽しい

 筆者の場合、ストーリーの先が知りたくて、メインストーリーを進めていったのだが、敵が強い上に連続で戦う展開が続きすぎてきつくなってしまった。しかも目的地がわからず敵が復活してさらに戦いが続いてしまった。「CONTROL」は大きな物体を投げつける爽快なゲーム性がウリなのだが、戦いが続くと似たような展開が続いてしまう。また、閉鎖空間を進んでいくゲーム性なため、閉塞感が強かった。ロケットランチャーで難易度を上げるという所もいささかレガシーに感じるところがあった。

 しかし、気持ちを切り替えてサイドミッションをプレイすることで新しい楽しさが見つけられた。メインストーリーでは触れられなくなった行方不明になったり、膠着状態になった局員達のその後が描かれたり、中ボス的な敵が出てきて戦い方が変わったり、通常のプレイとは違う体験が楽しめた。

 そしてサイドミッションでパワーアップすると、きつかったメインストーリーにも光明が見えてくる。苦手な敵をより大きな物体を投げつけて倒せるようになったり、攻撃力が上がって戦いが楽になったり、自分の“成長”が実感できるのが良かった。

サイドミッションでは中ボス的な敵も登場する
連邦操作局を探索しながら物語を進めていく

 何より“悪夢の中に取り込まれたような気持ち”がいいのだ。意味がわからないのが不安を増やすひそひそ声、人の気配がない建物、空中に浮かぶヒスの犠牲者、異界に変わってしまった風景……その中を見えない出口を求めて走る感じ。これまで一貫して描かれてきた闇の中でもがき、光を求めて戦う気持ち。このもがく主人公の心情ときつめのゲームバランスは見事に融合し、プレーヤーをぐいぐいとゲームにのめり込ませてくれる。

 「CONTROL」はストーリーの怖さ以上に、目の前の事象にあるものの裏の歪み、現実が崩壊していく恐怖が楽しい。そしてその恐怖を打ち破っていく強さが楽しいのだ。この独特な世界観とストーリーをぜひ体験して欲しい。