「ロボ道 イングラム1号機」レビュー
ロボ道 イングラム1号機
コクピット開閉、パトランプ点灯、多彩なギミックと金属パーツ使用のしっかりとしたアクションフィギュア
- ジャンル:
- アクションフィギュア
- 発売元:
- グッドスマイルカンパニー
- 開発元:
- threezero
- 価格:
- 17,000円(税別)
- 発売日:
- 2020年6月30日
2019年12月13日 00:00
香港のトイメーカーthreezeroが新しく展開する金属パーツを使用したアクションフィギュアブランド「ロボ道」。その第1弾となるのが「ロボ道 イングラム1号機」だ。2020年6月発売予定で、価格は17,000円(税別)。現在予約受付中だ。
“警察が扱うロボット”としてリアルな視点を取り入れた「機動警察パトレイバー」は、OVA、劇場アニメ、コミックスとメディアミックスで展開された。主役機である「AV-98 イングラム」は人気の高いモチーフだ。弊誌ではワンフェスで本商品を取材し、ユーザーの強い期待を実感した。
関節パーツなどに亜鉛ダイキャストを使用し、全高約23cmのボディをしっかりと支え、様々なギミックを搭載する「ロボ道 イングラム1号機」は、注目度の高い商品である。今回、threezeroよりサンプルを借りることができたので、各ギミックを検証し、魅力を紹介していきたい。なお、サンプルは実際の商品と比べ、一部塗装や関節の固さなどで小さな違いがある。製品はさらにクオリティが上がるものになるとのことだ。
弊誌では現在「2019年最高のホビーアイテムを手に入れろ」として様々なアイテムを紹介している。本商品は予約中のためリストには加えてないが、フィギュアやプラモデル、RCなど様々な魅力溢れるアイテムをどしどし追加している。本稿と合わせコーナーそのものもチェックして欲しい。
布で覆われた関節、細かいマーキング……イングラム1号機を余すことなく再現
「機動警察パトレイバー」の劇中の設定は1998年以降、本作がスタートした1988年の10年後の未来を想定して世界観は作られている。作中では1995年に東京南沖地震という大地震が起き、このガレキの撤去と、地球温暖化による海面上昇への備えとして大堤防を築くことで東京湾を埋め立てることで東京の土地事情にも対処しようという「バビロンプロジェクト」が立ち上がり、ここに最先端の多脚型作業機械「レイバー」が多数投入されることとなった。
このことでレイバーが都市部に集中、そしてレイバーの強力な力を使った犯罪「レイバー犯罪」が起きることとなった。レイバーはテロリストにも利用され大きな事件も起き、警察はこれに対処するため警察用レイバー「パトレイバー」を導入、運用するための「特科車両二課中隊」、通称「特車二課」を設けた。
第一小隊は既存のレイバーを警察用に改造したものだったが、第2小隊に配備された新しいパトレイバー「AV-98 イングラム(以下、イングラム)」は、人型に近いシルエット、拳銃など様々なオプションを使いこなし、当時のレイバーとしては一線を画す高い運動能力を持つ、革新的な能力を持っていた。主人公・泉野明と第2小隊のメンバー達はイングラムと共に様々なレイバー犯罪に立ち向かっていく……。
ファンにとって、「機動警察パトレイバー」とレイバーの世界は非常に斬新だった。「機動戦士ガンダム」から始まった「リアルロボット」とは一味違う“リアル”な世界。レイバー犯罪が酔っ払いのケンカだったり、大型機械を都市部で使う際の不都合な点の描写や、物語で第2小隊が役立たずのように扱われていたり……それでいながらドラマとしてサイバー犯罪や企業犯罪、さらには戦争論などの重厚なテーマも扱われ、多くのファンの心を掴んだ。作業機械そのままのレイバーや、無骨な軍用レイバー相手に、スマートなイングラムが戦う姿も格好良かった。
「ロボ道 イングラム1号機」は金属パーツを使用したリッチなアクションフィギュアとしてイングラムに挑戦している。イングラムは人気のモチーフであるが、昨今の技術が向上した中での立体化はBANDAI SPIRITSコレクターズ事業部の「ROBOT魂」があるがこちらは全高12.5cm。今回の「ロボ道 イングラム1号機」は全高約23cmの大型サイズでの立体化ということで「大きなイングラムフィギュアが欲しい」というユーザーにとって注目だろう。
まず全体を見ていこう。頭部アンテナの先の灰色の塗装や、背中のダクト、左の鎖骨部分に描かれたALPHONSEの文字などから、メーカー側から明言はされていないが、劇場版の設定を元にしていると思われる。各部はシャープで、表面は艶のある光沢になっており、まるで新車のようにも見える。野明が丁寧に磨いているイメージも感じられる。
各種マーキングやシールドや背面に描かれた「警視庁」の文字、ナンバープレートなど情報量も多い。ただ設定以上に装甲を分割したり、リベット状の装飾など情報量を多くする方向ではなく、設定画に近く作られていると感じた。
イングラムの立体物で注目なのはやはり関節部の“シーリング処理”だ、関節を布で覆っており、駆動部に異物が入らないようにしている。プラモデルではゴムパーツで覆うなどしていたが、「ロボ道 イングラム1号機」は布で覆っている。かなり余裕を持たせており関節を伸ばしても布のせいで動きが制限されることはない。反対に布を縮めても布の厚さで動きが制限されることもない。一見地味だが、このフィギュアの大きなセールスポイントだろう。
膝は2重関節で膝立ちも可能。足の付け根が外側に広がるので、腿の装甲が腰に引っかからず足を大きく広げ腰を落としたポーズも可能。前腕は肘のところで回転するので左腕の盾を前面に構えることも可能だ。全体的にきちんと動き、関節は堅めで自重をしっかり支えしっかり曲がる。肘を内側に向けるのが肩と上腕の付け根なので、ちょっと堅めかな、という程度で、取りたいポーズを取れるという印象を持った。関節の硬さについては、製品版で改良が加えられる予定だ。
やっぱりイングラムはいい。ヒロイックなポーズや派手なポーズではなく、銃をしっかり構えたり、背を伸ばして立っている姿が似合う。ヒーロー性の中に、レイバーならではの作業機械としての重厚さ、警察車両としてのナンバープレートやウィンチなどの“リアル感”も楽しい。
金属パーツは関節が中心で、触って確認できる部分は足程度だが、スタンドも使わなくてもきちんと立ちポーズがとれるのは好感触だ。「このくらいの大きさの、しっかりしたイングラムの立体物が欲しかった」という人には満足感をもたらす商品と言えるだろう。
ギミックもしっかり、コクピット開閉、リボルバーカノン収納、パトライプ点灯!
イングラムとして劇中で見せた各ギミックをきっちりと盛り込んでいるのも「ロボ道 イングラム1号機」のうれしいところ。最大はコクピットギミック。本商品ではコクピットハッチを開け、野明フィギュアを搭乗させることが可能だ。コクピットもきちんと造形されており、野明フィギュアも細かく彩色されているため、搭乗させると満足度が高い。
設定通り首元から野明のフィギュアがのぞく。こちらはシートを上げることでさらに野明の頭が首元にせり上げることができる。首元のヘットアップディスプレイも立ち上げられるので雰囲気はバッチリだ。
ただ、劇中ではシートが下がる場合はパイロットの位置がもっと胴体の中にいるイメージがある。コミックス版などは普段は外からはパイロットの姿が見えずモニターに囲まれている描写もあるので、今回の撮影ではあえてパイロットフィギュアを載せないでポーズを取らせているものもある。
「ロボ道 イングラム1号機」の場合は、胴体内にシートを収納するのはスペース、構造上難しいだろうなと感じた。映画やTV版では首元からパイロットが顔を出すシーンは印象的であり、その雰囲気はバッチリ再現できるので、製品の仕様として割り切るのが良いようだ。パイロットフィギュアを外すことで密閉式の感じもきちんと出る。
この他、印象的なリボルバーカノンを取り出すアクションもしっかり再現できる。イングラムは右足側面にリボルバーカノンを収納しており、カバーを開け、右腕を伸ばすことでこれを取り出せる。商品では劇中同様腕が引き出る。引き出し部分の造形や、赤いケーブルなどもしっかり再現されている。右足のハッチを開けると連動して銃が出てくるギミックも楽しい。
本商品にはライアットガンも付属している。ストックを折りたたむことができ、給弾用のポンプアクションも可能で、細かいポーズがつけられる。1号機はグリフォン戦でも積極的にこの武器を使わなかったが、これが同梱されていることで遊びの幅が広がる。
そして「パトライト」だ。高額商品のフィギュアだけにこのギミックはうれしい。発光用の基盤は非常に小さく、肩のユニットに電池ごとしっかり入る。つけるとライトが点滅し、かなり雰囲気が良い。「警察用レイバー」であることがしっかり伝わる演出だ。
シャープな造形、布に包まれた関節、しっかり動きポーズを保持する関節構造、コクピットやリボルバーカノンなどの盛りだくさんのギミック……「ロボ道 イングラム1号機」はアレンジの少ない、原作の雰囲気をきちんと楽しめ、そしてたっぷりと遊べるアクションフィギュアだ。特に「機動警察パトレイバー」のファンなら満足のいくアイテムだと実感できた。
(C)HEADGEAR