2019年3月5日 13:45
パールアビスジャパンは、Android/iOS用オンラインRPG「黒い砂漠MOBILE」の正式サービスを2月26日より開始した。基本料金は無料で、ビジネスモデルはアイテム課金制。
厳密に言うと異なるのだが、本作はある種の原作モノだ。PC用のハイエンドなMMORPG「黒い砂漠」というタイトルがあり、その体験をモバイル端末でも楽しめるように、ということを目的に制作されたのが本作「黒い砂漠MOBILE」になる。
“PC用MMORPGのハイエンドな体験をモバイル端末で楽しめるように”と言葉で説明するのは簡単だが、そもそもデバイスのスペックは違いすぎるし、入力するインターフェイスもまったく異なる。相当チャレンジングな作品である。
実際にプレイしてみるとはこれは誇張表現ではなく、これまでのモバイルオンラインRPGにはなかった濃厚な魅力が詰め込まれていると感じた。PC版「黒い砂漠」が日本に上陸してきた時には「PCのMMORPGのレベルを1つ上げる黒船のようなタイトルだな」と感じたのだが、モバイル版の「黒い砂漠MOBILE」をプレイした時もまた「モバイルオンラインRPGの世界にもまた黒船がやってきたな」と思わせるほどのデキだ。
その1つが幅が広すぎるキャラクターメイクだ。キャラクターメイクについては独立して企画記事として掲載しているのであわせてチェックして欲しい。またゲームの概要などについても弊稿のインプレッション記事などとあわせて参照していただけると幸いだ。
さて、それでは黒船級のモバイルMMO「黒い砂漠MOBILE」のレビューをお届けしていこう。
関連記事はコチラ!
・モバイル向けMMORPGをワンランク上げる!「黒い砂漠 MOBILE」ファーストインプレッション
https://game.watch.impress.co.jp/docs/kikaku/1168066.html
・「黒い砂漠MOBILE」をハリウッド俳優でプレイする!プロの手を借りてキャラクタークリエイトの限界に挑んでみた
https://game.watch.impress.co.jp/docs/kikaku/1172708.html
グラフィックスの表現力に圧倒される。モバイル端末とは思えないほどの美しさ
ゲームを起動して最初のインパクトを与えてくれるのはこの美しいグラフィックスだ。モバイル向けのゲームは端末の進化にあわせてゲーム側の表現力も進化してきたが、素直に「ついにここまで来たか」という印象だ。
フィールドは細かなところまで表現されており、視点をグルグルと動かして周囲を自由に見ることができる。あらゆる方向から見ても作り込まれている事がわかるし、そう見られるように作っていることがわかる。また天候や時間も変わるし、水の反射などの表現力も高いし、戦闘のエフェクトはド派手だ。
スクリーンショットや動画などを見ると表現力ばかり注目してしまうが、最適化されたエンジンも個人的には推しポイントだ。というのも筆者はスマートフォンで様々なゲームをプレイしているが、他のゲームと比べると電力の消費はかなり抑えられている印象だ。スマートフォンでゲームを長時間プレイすると電力の消費とバッテリーの発熱に悩まされるものだが、本作はそれらが驚くほど抑えられている。後述するオフライン時の自動狩りなどもあり、"バッテリーに優しい”タイトルでもある。
アクション要素の高さは健在。また自動狩りで端末を触れない時もサクサク
そして自動狩りなどが超優秀な点もポイントだ。いくらハイエンドな体験を、といってもPCやゲーム機の前に座って腰を据えてプレイするMMORPGと、モバイル端末でスキマ時間や、何かをしながらプレイをするMMORPGでは遊び方が異なる。本作はそんなプレイスタイルの違いもきっちりと吸収している。
PC版の「黒い砂漠」ではマウスとキーボードを使った操作で派手なアクションが楽しめる作品だが、本作でもモバイル端末向けにカスタマイズされたUIにより、簡単な操作で派手なアクションを楽しめる。
具体的には画面左下のバーチャルスティックで移動、右下のバーチャルボタンで攻撃や各種スキルの発動など、モバイル向けのアクションゲームなどでもよく使われるスタンダードな操作方法がベースになっている。
本作がユニークなのは右下にあるスキルスロットで通常時は4つのスキルしか表示されていないがルーレットのようにスキルスロットをくるくると回すことができ、合計で8つのスキルを使用することができる。筆者はジャイアントという両手に斧を持って暴れまわるキャラクターを使っているのだが、現時点で12個のアクティブスキルを習得している。スキルスロットに設定できるのは最大で8個のアクティブスキルだけなので、この時点でどのスキルをスロットにセットするか、という選択肢が提示されているわけだ。
さらにスキルには連携というシステムがあり、スキルを使用した後に特定のスキルを使用するとさらに効果が増すようなものもある。これらの組み合わせや、自分が操作しやすい配置を選ぶ要素など、ベースの操作感はスタンダードに落とし込みつつも、アクション性の高さは残す、という2点を上手く両立させている印象だ。
そして手動プレイももちろん楽しめるのだが、今のモバイルオンラインRPGではスタンダードになっている自動狩りもちゃんと搭載されている。しかもこの自動狩りが優秀で、雑魚モンスターはもちろん、ボスまできっちり倒してくれるほどだ。さらにクエストや商店のNPCまでの移動などももちろんオートで進行できるので、「ながらプレイ」が大いに捗る。
ちなみにこうして筆者が原稿を書いている横でもまさにクエストは進行しており、モバイルMMOならではの「片手間でプレイできる」、「スキマ時間でプレイできる」という要素はきっちりと抑えられている。
さらにゲームをある程度進めるとゲームからログアウトしている時でも自動で狩り、採集、釣りを行なってくれる機能が使用できるようになる。モバイル端末、特にスマートフォンではいくら放置していてもゲームが進むとは言え、メールや電話などゲームからログアウトする必要はかならず出てくる。そんな時にログオフ時でもゲームを進めてくれるのは非常にありがたい。
ただ自動でできることはあくまでも単純作業だ。クエストを進めたりショップでアイテムを売買したりといったことは画面を操作しなければならない。ここもまた絶妙なところで、放置していてもゲームが進むのでその点ではプレイ時間による極端な差は出にくい、だが画面を見ないとクエストなどが進まないのでちゃんと画面を見ながらプレイした方が有利、という差別ができているのだ。オンラインRPGはかけた時間が見返りとして帰ってくるジャンルなので非常に納得感があるシステムである。
PC版「黒い砂漠」から要素を削ぎ落としつつ、新たな要素も盛り込みモバイルに最適化
確かにハイエンドな体験ができるのだが、完全にPC版「黒い砂漠」に寄せることに注力せず、カットできる要素はカットし、独自に進化させる部分は進化させるという具合にオリジナリティを出しているのもポイントだ。
例えばカットされた要素の1つとして完全なオープンワールドが挙げられる、PC版「黒い砂漠」は例外はあるものの「目に見えるところすべてに行くことができ、なおかつそのフィールドがオープンワールドで繋がっている」というのがウリの1つだった。
だが本作「黒い砂漠MOBILE」ではロケーションや見える背景などはPC版にかなり寄せているもののエリア制となっており、エリアとエリア間の移動では少時間のローディング時間を挟むことになる。
また馬の捕獲や釣り、採集など直接戦闘に影響しない要素も一部引き継がれているが、妙に凝ったことができる調理などの要素はカットされている。
これは2つの理由が考えられる。1つが端末側の問題。特にローディングなしの完全オープンワールドなどは仮に実現しようとすると端末側に要求される性能がかなりの物になってしまい、下手すれば現行の端末では動かないような事象も起こりうる。
そしてもう1つが遊び方の問題だ。正直言って今の「黒い砂漠MOBILE」でも十分すぎるほどのコンテンツや遊び方が実装されている。これ以上に細かい要素を追加しても、UIが煩雑になったり、ゲームの遊び方がややこしくなったりとネガティブな要素が出てくるだろう。
筆者はオープンワールドの割り切り方や、コンテンツを調整した結果はかなりの良調整だと感じている。実際に数世代前までの端末が動作保証されているし、遊び方も必要十分、これ以上の要素追加はややこしくなるだろうな、と考えている。
一方で「黒い砂漠MOBILE」にしかない要素もある。それが「領地」というシステムだ。
ここは家門(アカウント毎)に1つ与えられるインスタンスエリアだ。このエリアは庭のような扱いで、ある程度自由にカスタマイズできる。いわゆるマイルームのような遊び方ができるのだ。
他にも領地には重要な役割がある。このエリアには建造物を建てることができるのだが、装備の強化に使用する「ブラックストーン」の精製や、装備やポーションの作成など実際の冒険に役立つ機能もある。
そして領地に建造物を立てるためには採集で集めた素材などが必要になる……と、コンテンツを削ぎ落としつつも、新要素を入れ、既存の遊び方と融合させ、と全てが上手い具合にミックスされた作品になっているのだ。
あくまでも時短、便利要素に注力した課金要素は良心的
そして基本無料でモバイルのMMOとなると課金要素も気になるところだろう。一言でいうと本作の課金要素は良心的な印象で、文字通り「基本的なプレイは無料で十分楽しめるが、さらに快適さを求めるなら課金アイテムを買えば良い」という印象だ。
まず主要な課金要素としてザックリと「ガチャ」、「便利アイテム」、「装飾アイテム」、「ペット」がある。
「ガチャ」からは装備が入手できる。ガチャからは確かに高レアな装備が入手できるが、ゲーム内でも時間をかければ入手できるし、ゲーム内の取引所でも売買できる。
「便利アイテム」はその名の通り冒険を快適に進めるためのプラスアルファの効果だ。例えばアイテムを所持可能な重量や、アイテムの所持枠を増やしてより長く狩場にいられるようにすることができる。他にもゲーム内で消費する「行動力」というポイントを回復させるポーションなども入手できるが、行動力は時間経過で回復していくので必須で買う必要があるものではない。
他にもアバターなどの「装飾アイテム」はプレイに必須のものではないし、「ペット」もあれば便利だがなくても問題なく遊べる。
どの要素も”あれば便利だが”、"あれば時間を短縮できるが”という要素となっている。筆者も1,500円程度課金してみたが、ガチャで入手できたアイテムをベースにしつつ、あとはプレイする中で入手したアイテムを使うくらいでかなり快適にプレイできている。筆者はショートカットの意味で少し課金したが、自分のペースで遊んでいくなら十分な金額だし、この程度なら無課金でも全く問題ないだろう。
1点本作について気になるところがあるとすれば、これは良い点でもあるのだが、現状はかなりソロプレイに寄せているところだ。殆ど全てのコンテンツがソロプレイでも完結するようになっていて、オンラインRPGらしさというと、他のプレーヤーと協力してダンジョンを攻略する古代遺跡や、そしてPvP要素の闘技場といった要素だ。他のプレーヤーと協力したりPvPをするといっても1プレイの時間は短めでサクサクマッチングするし、オンライン要素ならではの重さはない。ギルドも入っていればメリットがあり、ギルドボスなどとも戦えるが、こちらも必須というわけではない。放置狩りやオフライン狩りを考えるとそれくらいのバランスが良いのかな、という印象である。
総じて開発元がテーマに挙げている“ハイエンドな体験をモバイル端末でも楽しめるように”という点は達成できている作品だと感じた。そして今後も「黒い砂漠MOBILE」オリジナルの要素の追加などアップデートも控えているという。モバイルでここまでのゲーム体験を提供してくれた本作の開発力から今後への期待も高まるというものだ。
基本無料でモバイル端末でプレイできることからもプレイへのハードルはかなり低い本作。ぜひお手持ちの端末でプレイしていただきたい。黒船級のモバイルオンラインRPGの魅力を感じられるはずだ。
©Pearl Abyss Corp. All rights reserved.