2019年3月1日 07:00
「LEFT ALIVE」は極限の生き残りを描くアクションアドベンチャーだ。プレーヤーは3人のキャラクターの視点を通じて彼らの戦い、過酷な戦場で進行するドラマ、そして次第に明らかになる真実を見ていくこととなる。
本作はかなり難しく、そしてプレーヤーの心を試すゲームであると言える。敵は多く、突破口は見えづらく、そして得られるリソースは常に足りない。しかし前に進めるための試行錯誤をし、時には運にも助けられて難関を突破したとき、それは大きな爽快感に変わる。自分自身が成長したような、ゲームでの攻略を見つけたような気持ちになる。この爽快感は、本作の大きな魅力だ。
そしてちりばめられた謎がある。3人のキャラクターはそれぞれ背景を持っており、さらに様々な事象や人物に出会う。バラバラのピースが徐々につなぎ合わされ、敵の襲撃から始まった戦争の裏に潜む何かが見え始めてくる。状況は厳しいが、ストーリーはプレーヤーを後押しする強いエネルギーとなる。レビューでは物語序盤の展開、システム、本作ならではの面白さを紹介していこう。
敵に占拠され、手持ちのアイテムもない状況でいかに生き残るか
「LEFT ALIVE」で舞台となる街は黒海近くに位置するルテニア共和国の国境沿いの街ノヴォスラヴァ。この街はルテニアとガルモーニヤで所有を争っており、数年前の“ノヴォスラヴァ解放運動”によりルテニアに併合された過去を持つ。
しかし、西暦2127年12月ガルモーニヤは突如としてノヴォスラヴァに侵攻、配備されていたルテニア軍は壊滅的な被害を受け防御線は総崩れとなり、ガルモーニヤ軍に占拠されてしまう。主人公達はこの突然の襲撃のただ中に取り残されてしまう。
この世界で鍵を握るのが人型機動兵器「ヴァンツァー」である。科学反応によって変質するアクチュエーターと、バッテリーと水素エンジンなどの動力、重装甲と銃火器を持ち、ヘリでの輸送・強襲も可能である。戦車にはない走破性、運動性を獲得したヴァンツァーは戦場を変え、その革新的な戦力は各地の紛争を激化させた。ガルモーニヤの電撃的な侵攻作戦もヴァンツァーがあってのことだろう。
物語は自分のヴァンツァーを破壊され孤立したミハイルから始まる。ヴァンツァーに憧れ、パイロットになるためだけに軍に志願した青年は、戦場に取り残され、そして必死に生きぬこうとする。民間人を助け、戦争の裏で進行する陰謀に巻き込まれ、様々なことを学びながら一夜にして成長していく。彼は何を見ていくのだろうか……。
「LEFT ALIVE」はヴァンツァーというロボット兵器を中心に戦うシリーズ作品「フロントミッション」と世界観を同一にするものの、人間の目線から物語を描くサバイバルアクションとなる。“サバイバル”というと食料を得たり生活するための物資の確保をするイメージがあるが、本作の場合は占領下の街で、こちらを見つければ即銃殺しようとしてくる戦闘状態での生き残りとなる。友軍は壊滅し絶体絶命状態で、プレーヤーは試行錯誤していく。
武器や弾薬は落ちていても極めて少ないし、敵は強力なボディアーマーを装備している上に数が多いので戦闘での突破は難しい。このため、影に隠れ、空き瓶や空き缶、携帯端末やドローンの残骸などを拾い集め、即席の武器を組み立てて戦っていく。敵の位置がわかるセンサーや、火炎瓶、爆弾、ワイヤートラップなどを活用していく。もちろんフラググレネードやショックグレネードなど強力な武器も手に入る。どこで、どう使うか、生き残るためにどう戦いかが重要となってくる。
特集記事でも触れたが、まず今作は戦いの駆け引きを知ることが重要となる。敵に見つからないルートはどこか、どのくらい近寄っても見つからないか、攻撃する場合、敵を多く巻き込むにはどうするか、チャプター1から試行錯誤の連続である。何度も失敗しながら、何とか生き残りの道を見つけなくてはならない。
そして“意外に戦闘が多い”のも本作の特徴と言える。ステルスアクションの場合は敵に見つからず、スマートに通り抜けられるルートが用意されている場合が多いが、「LEFT ALIVE」の場合、戦闘が避けられないシチュエーションが多く用意されている。特に敵がこちらに殺到してくるときにいかに迎え撃つかに頭をひねる必要がある。ワイヤートラップ、オートタレット、地雷……赤いドラム缶は撃つと大爆発を起こす。敵の侵入経路はどこか、何度もやり直し効率の良い方法を試すこととなるだろう。
「LEFT ALIVE」は“難しい”ゲームである。余りに無理な状況に、「うわー無理、ホント無理だから」とコントローラを投げ出したくなることは1度や2度ではない。しかしだからこそ、その難局を越えたくなる。もう1回やれば、リソースをうまく使えば切り抜けられるかもしれない。そういう思いで気持ちを奮い立たせてコントローラを握りしめる。そして越えたとき、無事にセーブポイントを見つけたとき、達成感がこみ上げる。
「ダークソウル」シリーズなどアクションでの難しさを提示するゲームは人気だが、筆者はちょっと自信がない。「LEFT ALIVE」はうまく立ち回れば、ルートを考え、リソースを活用すれば突破できそうな道があり、それを探すところに楽しさを感じている。もちろんアクションに自信がある人は別なアプローチができるかもしれない。本作をどのようにプレイしていくか、発売後ユーザーの反応に期待したいタイトルである。
交差していく3人の運命。助けを待つ生存者を救うことができるか?
本作ではミハイルの他に2人の主人公がいる。「オリガ」と「レオニード」である。オリガは女性警官。ノヴォスラヴァ市内で頻発する行方不明事件を追ってドクター・ラヴロフという人物を追っている。その過程で1人の少女と出会うが、その直後ガルモーニヤ軍の襲撃に遭い、戦場に取り残されてしまう。
オリガは実はかつてガルモーニヤ軍でヴァンツァーに乗っていたがノヴォスラヴァの解放運動での争乱に巻き込まれ娘を失っている。オリガは戦場で取り残された人々に手を差し伸べるが、最初に出会った1人の少女には特別な思い入れを見せる。それは少女に娘の面影を見ているからだろうか……。
レオニードは“すでに死亡しているはずの人物”である。彼は元傭兵で、ノヴォスラヴァ解放運動グループ「NGFP」のもと幹部メンバー。解放運動は成功しノヴォスラヴァはルテニアに併合されたが、彼はNGFPのリーダーを暗殺した人物として捉えられ、死刑を宣告される。そして刑は実行された……はずだった。
しかし彼は生かされていたのだ。彼は囚人として閉じ込められていたが、この戦争で脱獄を果たした。そして彼が暗殺したとされるリーダーも生きていることを知る。何が起きたのか、自分を捕らえ、生かしていたのは誰の思惑なのか、その謎を解き明かすために彼は戦場を走る。
3人のキャラクターはチャプターをクリアすることで交代し、3人それぞれの視点で戦争が描かれていく。オリガはミハイル以上に戦いに慣れた人物だ。彼女の戦いでは“待ち伏せ”でのシチュエーションが多い。突然敵に包囲されてしまう状況でどう戦うか? それはイベントの前にあらかじめ罠を張っておくのが重要となる。ストーリー的には齟齬が出てしまうが、次の展開を予知するように、敵が出現する場所に罠を張っておくのである。プレーヤーはまずオリガで、敵を待ち伏せる戦いを学ぶことになる。
そしてレオニードで学ぶのは“強行突破”だ。彼は敵が多い戦場を強引に突っ切らなくてはいけないシチュエーションに遭遇する。この時役に立つのが“前転”である。PS4版なら×ボタンを押すことで行なう前転が、移動を助けてくれる。物陰から飛び出すときなどにも有利で、筆者はこれを多用している。
そして「LEFT ALIVE」のゲーム性に大きく関わってくるのが「残された生存者」である。彼らは無力な存在で、1人では生き残ることができない。戦場にはシェルターが用意されており、生存者をシェルターまで導くことができれば、戦場に残された人達を助けることができる。
しかしそれはとても困難だ。戦場にはたくさんの兵士、ドローンが配置され、周囲を厳しく探索している。生存者は敵に見つかるとその場でうずくまってしまい、撃たれるのを待つだけになってしまう。そうならないためにルートの確保が必要となる。敵との戦いはリソースを多く消費するし、リスクも大きい。彼らを全て助けると良い事もあるようだが……見捨ててしまうこともある。
「LEFT ALIVE」は2週目のプレイで有利になる要素もある。リソースを多めに持って、展開もある程度わかる状態なら彼らを全て助けることも可能かもしれない。もちろん1週目で全ての生存者を助けるという使命に燃えるのもありだ。……ちなみに生存者をあえて進ませ、敵を引きつけてもらっている間にルートを進むという非道なプレイもできる。そういう決断はしっぺ返しを食らうことになるのだろうか?
ヴァンツァーを手に入れても戦いは厳しい。しかしやっぱり盛り上がる!
本作のヴァンツァーはとても恐ろしい存在だ。特に逃げるときは敵のヴァンツァーに要注意だ。ヴァンツァーの攻撃力は非常に高く、見つかって撃たれると大ダメージを負ってしまう。今作では人間の視点でヴァンツァーを見上げることとなる。ヴァンツァーの恐ろしさ、怖さをたっぷり思い知ることになるだろう。
もちろんヴァンツァーに乗って戦う事もできる。しかしその戦いもまた厳しいところが本作らしいところだ。本作ではヴァンツァーはロボットアクションゲームそのまま、自分で操縦していく。プレーヤーが乗るヴァンツァーは高い攻撃力を持っているが、弾数は限られているし、敵ヴァンツァーと正面切って戦ってしまってはあっという間にボロボロになってしまう。それなのにいきなり数体のヴァンツァーと連戦になるのだ。
この戦いの鍵を握るのがステップ移動だ。ヴァンツァーは×ボタンでステップし瞬間的に移動する。マシンガンをオーバーヒートで撃てなくなるまで撃ち、さっと建物の影に隠れ冷却を待つ。敵の攻撃から巧みに距離を取る。もしくは一気に距離を詰める。ステップを使いこなすことで生存率は上がるだろう。
連戦どころか複数のヴァンツァーと対峙しなければいけないシチュエーションも出てくる。これもまた「うわー無理、ホント無理だから」とコントローラを投げ出したくなる状況の1つだ。しかし敵の行動はある程度パターン化されているし練習を繰り返しヴァンツァーを手足のように使いこなせば複数のヴァンツァーと戦っていけるはずである。戦う場所を工夫したり、特性を知り、ヴァンツァーの性能を100%引き出せれば道は開けるだろう。
「LEFT ALIVE」は等身大の人間の戦いを描いていてもやはりヴァンツァー戦は“華”であると言える。これまでの「フロントミッション」シリーズでのカスタマイズ要素はないものの、ロボット兵器の戦いという派手なシーンをたっぷり楽しめる。本作のヴァンツァー戦は特に力が入る、というプレーヤーも多くなるのではないだろうか。
「LEFT ALIVE」は難しいゲームである。そもそも「戦場に1人で取り残される」という状況そのものが理不尽であり、その絶体絶命の窮地を何とかして生き延びる、その厳しさと達成感を味わうゲームと言える。生存者を助けようとすればさらに難易度は上がる。その難しい状況を限られたリソースで切り抜けることで「オレってゲームうまいかも!」という気分に浸れる。この爽快感は本作の魅力だ。
そしてストーリーだ。成長していくミハイル、過去を乗り越えようとするオリガ、自身の境遇の謎を追うレオニード。そして戦いの後ろで見えてくるガルモーニヤ軍侵攻の本当の意味。戦争の裏で何が起きており、主人公達はその陰謀を暴くことができるのか?
キャラクター性とストーリー性に強くこだわり、切り込んでいく“挑戦”が強く感じられる作品であり、その秘密を知りたいという気持ちがプレイを後押ししてくれる。ゲーム性、ストーリー、どちらも高いクオリティを目指して制作されたゲームだ。ぜひこのクリエイターの挑戦心を受け止めて欲しい。
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