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「セガ 3D復刻アーカイブス2」インタビュー Part2

3D立体視化で魅力が高まる!! ハンドリングの感覚や筐体環境音もこだわり再現

「パワードリフト」- 3D立体視化で魅力が高まる!! ハンドリングの感覚や筐体環境音もこだわり再現

「パワードリフト」をプレイ中の模様。筐体モードにすると、当時のゲームセンターの光景が再現されているのが楽しめる

――それでは、「アーカイブス2」の「パワードリフト」をプレイさせてもらいます。これは……筐体モードの背景には、「スペースハリアー」や「サンダーブレード」の筐体があって。「ギャクシーフォースII」や「ファンタジーゾーン」のポスターもありますね。今回も凝ってますねー。

奥成氏:それもファイナル直前まで毎回位置が変わっていたんですよね。「『サンダーブレード』の位置がちょっと……」とか気になったみたいで。宣伝資料用に画面写真を撮影しても、またすぐ変わっちゃって。しょうがないな……と撮り直すと、また変わって(笑)。

――でも、そういう細かなこだわりが嬉しいですね。手間は大変でしょうけども。ちなみに今回は筐体モードでの筐体から発生する環境音の収録に関してはどのようにされたのでしょう?

奥成氏:セガでは「パワードリフト」以降の筐体は保管していないんですよね。ですから、高田馬場のミカドさんへ行って、お店が閉まったあとの深夜に筐体音を収録させてもらったんです。結局は収録漏れやミスがあったりで、2回録らせて頂いたんですけど。

 音以外のところでは、ミカドさんにある筐体にはステアリングの中央に本来あるはずのエンブレムがなくなっているんですよね。そこで埼玉県深谷市にあるROBOTさんにも行って確認させて頂きました。

――現存する筐体を巡って収録されたんですね。ちなみに「アーカイブス2」版では、オプションにはギアタイプが4つあって、AT(オートマチック)も入ってますが、これは?

奥成氏:ATはアーケードにはなかったので、新規の要素ですね。「スイッチ」、「トグル」、「ホールド」は、L/Rボタンを同じ機能にするかどうか、あとはドリームキャストと同じ方式にするかどうかという設定になります。

【ギアタイプと入力設定】

――ドリフトするときにギヤを瞬間的に入れるなど、操作方法は人によってやり方が変わってきますから、「3D アウトラン」の時と同じくギアの操作タイプをたくさん用意したんですね。しっかりと遊びやすさをフォローされているなぁと感じます。

奥成氏:気を使ったところですね。というのも「パワードリフト」って、これまで家庭用にあまりちゃんとした移植がされていなくて。PCエンジン版、セガサターン版、ドリームキャスト版と移植されたものの、ドリームキャストでは「鈴木裕ゲームワークス」に収録された中の1タイトルでしたし、あの時代には「パワードリフト」で喜ぶ人もあまり多くなかったと思うんですよ。「パワードリフト」をちゃんと遊んだという人は、アーケードでプレイした人がほとんどではないかなと。

 そこで、起動時に今回も表示されるアソビン教授のアドバイスも、できるだけ攻略に役立つ内容にしました。

 そのあたりは、エムツーに途中参加した久保田さんがアーケード版でのプレイヤーだったのでコツをいい感じに加えてくれました。コーナーを曲がるときの減速の仕方ひとつとってもいろんなやり方のあるゲームなので。そのあたりを覚えつつプレイしてもらえるといいですね。

堀井氏:もともと久保田くんは「ファンタジーゾーン」をやりこんでいたんですけど、「パワードリフト」も同じぐらいやりこんでいて。例えば、デバッグ作業で“全コース1位でゴールして欲しい”なんていうときも、久保田くんがすんなりやってくれたり。助かりましたね。

――感覚的なところで大事な「ステアリングの操作感の再現」はどうされたんですか?ステアリングのアナログ入力の分解能は3DSのスライドパッドにキレイに当てはめられるのでしょうか?

堀井氏:分解能は足りているのでそのままアサインできますね。ただ、そのままだと操作方法の違いから操作感覚にも違いが出てしまうので、そこはミカドさんの筐体でプレイして、3DSでの感触を合わせていって……というようにして調整していきました。

 そこから最終的には、基板を貸してくれた人のご厚意もあり、基板にドリームキャストのハンドルコントローラーを繋げて遊べるようにもして。ミカドの筐体の感覚と、そのドリキャスハンコンでの感覚とで3DS版を最終調整していく、という感じでした。

奥成氏:曲がりやすさには特に気を使ったのですが、「アーケードっぽく曲がれる!」と言ってもらえるのか、「アーケードと感覚が違うじゃん!」と言われてしまうのかは、実際にプレイしてもらえたユーザーさんからの判定待ちですね。これはもう感覚的なものですから。

堀井氏:ハンドリングの感覚再現は苦労したところなんですけど、久保田が加わった頃にはもうできていて。久保田から見ても違和感がないということでしたね。多分、ドリームキャスト版よりも遊びやすいと思います。

奥成氏:ちなみに「パワードリフト」ってマシンの軌道に補正がかかるんですよね。それのおかげで走りやすくなっているんですが、オプションでそれのオン/オフもできるようになっています。

――ハンドルの感覚が手触りに1番影響するところだと思うので、それだけ調整を重ねられているというのは嬉しいですね。続いて画面の3D立体視感についてですが、これはかなりすごいですね! 酔う人もいるかも。

堀井氏:なにしろガタガタな道を走っていくゲームですからねー。

――画面の奥側に向かっての深度がすごく感じられて。奥のかなり遠いところまで立体視がついていますね。「アーカイブス1」での「スペースハリアー」あたりから、視差をさらに強く出せるようになっているという印象があります。

奥成氏:「パワードリフト」はジェットコースター的なゲームですから、高いところから一気に落下するように走っていくところとか、3D立体視ならではの落下感が出る、というところが3D立体視化する際の恩恵になるはずなので。

――“3D立体視が加わってこその魅力”という部分ですね。これまでのタイトルにもその効果はありましたが、3D立体視で見えることで大量のスプライトで構成されたコースの形状が把握しやすくなったり、遊びやすくもなっているという。

奥成氏:遊びやすさという点ではもうひとつ、「パワードリフト」と「ぷよぷよ通」ではアーケードにあった難易度を移植した上で、もうひとつ下に1番低い難易度をオリジナルで加えています。

 「パワードリフト」は結構やり応えのある難易度だと思うので。最初に遊びはじめるときは、1番簡単な難易度から始めるぐらいでいいと思います。当たり判定なども緩くなりますので。それで思い出しつつプレイしてもらえたら。

――なるほどー。いやぁそれにしてもこれは、違和感も全然ないですし、立体感もすごく感じられるものになってますね。もともとのアーケードだとクラッシュしたときとかにオブジェクトが画面いっぱいに入り乱れたりすると、どういう状況なのかわかりづらかったですが、3D立体視で見られるとすぐに位置感や距離感が取り戻せますね。

堀井氏:そこは、(Z軸をもともと想定している)鈴木裕さんの作品だから、というのもあると思いますね。よく考えられているんです。ホントに。

――ちなみにゲームバージョンを日本版と海外版とで切り替えられますが。違いはどういうものなんでしょう?

奥成氏:ゲーム的には変わらないはずです。ゲーム内のメッセージに日本語が結構入っているのですが、そこが英語に変わるというものですね。

――リプレイ機能では、「アーカイブス1」でもありましたが、普通の3DSよりもNew3DSの方が早送りがスムーズにできたりという違いが今回もあるのでしょうか?

堀井氏:そこは変えていないので。同じように違いがでますね。

奥成氏:早送りは処理が特に追いつかないところで。スペックの差がもろに出ますよね。

――なるほど。またまたアーケードタイトルでは途中からおなじみになってしまいましたが、オプションでBGMとSEのバランス変更もできるようになっていますけれど、これもすんなりできることではないんですよね?

堀井氏:全部の音にリクエスト番号をつけて変えられるようにしているんです。これは1度やっていることではあるので、やり方はわかるから時間があればできるよね、とはなるものの、それが積もると作業量としては結構きつくなるところですね。

【画面サイズ】
オリジナルと同様の「4:3画面」、3DSの画面に合わせた「ワイド画面」、画面全体に広げた「フル画面」、アーケード筐体の雰囲気を「筐体モード画面」の4種類、さらに、「ムービング筐体」の設定がONの場合のみ、「筐体と背景だけが立体で画面の中は2D」という画面も選択できる

――ちなみに、今回は他にアーケード版にはないオリジナル要素を付けたりとかは、さすがにされていないですよね?

堀井氏:さすがにそれはなくて。画面のワイド化と3D立体視化がメインですね。

奥成氏:前回「アーカイブス1」では「スペースハリアー」のリマスター収録と、おまけタイトルの2作を入れたという3つが、僕らの言う“グラントノフ(※)”だったんですよね。今までは追加要素としてモードを増やす、ボスキャラを増やすなどしてきましたが、今回は“モードを追加するのではなくゲーム収録数そのものを増やす”ということが“グラントノフ”なんですよ。

 例えば、「サンダーブレード」にステージを足しました、ボスを足しましたということと同じ意味で、今回は“ゲームそのものを追加しました”。そして、今回の「アーカイブス2」ではそういう“グラントノフ”がソフト全体の半分を占めているという(笑)。

 そんなわけで、オリジナルを新規収録していること自体、その存在そのものが“グラントノフ”なので、“グラントノフの中にグラントノフはない”ですね。


※グラントノフ……「セガ 3D復刻プロジェクト」の第2期における、「オリジナルには無い新規要素」のこと。セガ・マークIII版「アフターバーナーII」のボス「グラントノフ」にかけてこう呼ばれていた。

堀井氏:「グラントノフの中にグラントノフを入れる」というのは、「パワードリフト」単体でやっていたら、何かやれたかもしれませんが。今回はもう他にも盛りだくさんですので。

 改めてのお話として、ユーザーの皆様には関係ないお話かもしれませんが、「パワードリフト」が3DSで動いていること自体が奇跡のようなもので。今回はサウンドまで再現できたので、もう奇跡の上の奇跡というものになりました。ぜひお楽しみ頂きたいです。

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(山村智美)