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世界最大規模のeスポーツ大会「IEM Katowice 2018」がカトヴィツェにて開幕

世界のeスポーツファンを魅了する「CSGO」、そしてIEM Katowiceの魅力とは!?

3月2~4日開催

会場:Spodek Arena

 世界最大規模のeスポーツ大会「Intel Extreme Masters Katowice(IEM Katowice) 2018」が現地時間の3月2日より、ポーランド カトヴィツェにて開催されている。

 カトヴィツェは、ワルシャワやクラクフに次ぐポーランドの大都市のひとつ。工業都市として栄え、郊外には大規模な工業施設や煙突が目立つ。もともとポーランドはeスポーツが盛んな地域だが、IEMを主催するIntelとESLが、この地で2012年よりIEM Katowiceを始めたことで、ヨーロッパ中からeスポーツファンが集うイベントに成長。2017年はeスポーツイベントとして世界最大規模の17万3,000人の参加者を集め、eスポーツの一大聖地になりつつある。ちなみにTwitchを通じたオンライン配信の視聴者数は4,600万人に達し、これは、様々なeスポーツイベントをホストしているESLでも過去最大規模ということで、IEM Katowiceがいかに巨大で成功しているeスポーツイベントであるかを伺わせてくれる。

 こうしたことからIEM Katowiceはeスポーツアスリートのみならず筆者にようなeスポーツファンにとっても憧れの地であり、一度はスタンドで観戦したいと思っていたところ、今年ついにその夢を叶えることができた。本稿は初報として、IEM Katowiceの概要とその魅力をお伝えしたい。

世界最大規模のeスポーツの祭典「IEM Katowice」とは?

会場となるポーランド カトヴィツェ中心部にあるSpodek Arena
3月3日の朝の様子。マイナス10度の極寒の中、数千人が列を作る
街の中心部には、パブリックビューイングが出来るなど、街全体がeスポーツに染まる

 IEM Katowiceは、世界各地で開催されているIEMのシーズンファイナルを飾る大会だ。今年の種目は「Counter-Strike: Global Offensive(CSGO)」と「Starcraft II(SC2)」の2タイトルで、従来のIEMがGlobal Challengeと呼称されるのに対し、IEM KatowiceはWorld Championshipと銘打たれており、他地域のIEMより格が高い大会となっている。本大会をもってシーズン12は終了となり、5月にシドニーで開催が予定されているIEM Sydneyから、シーズン13がスタートする。

 IEM Katowiceでメインとなるタイトルは、チームベースFPSの元祖である「CSGO」だ。賞金総額は IEM最高額を更新する50万ドル(約5,500万円)。さらにIntelが創設した賞金20万ドル以上の大会を対象に、直近10大会で4勝したら100万ドル(約1億1,000万円)を与えるという「Intel Grand Slum」プログラムの対象大会でもあり、すでに2勝しているSK Gaming(ブラジル)がIEM Katowiceでも優勝すればグランドスラムに王手をかける。このプログラムをさらにスリリングにするために王手をかけたチームを対象大会で撃破するとそのチームは10万ドル(約1100万円)が獲得できるというビッグボーナスも設定されている。いずれも大会賞金とは別枠の賞金で「CSGO」1タイトルだけで、日本では信じられないような高額賞金が乱れ飛ぶことになる。IEM Katowiceは、SKがグランドスラムに王手をかけるかどうかという点でも要注目の大会となっている。

 また、上記2種目の他に、「PUBG」や「Dota2」において、招待チームによるInvitationalも開催された。「PUBG」は前回IEM Oaklandに続いて2度目のInvitational開催であり、IEMの正式種目採用に向けて着実に足場を固めつつある印象だ。

 その「PUBG」部門には、日本からSunSister Royaltyが出場。今回のInvitationalは開催時期が本戦の会期から1週間前倒しして行なわれたため、残念ながら現地での観戦はできず、日本からTwitchで観戦することになった。結果は6戦の総合スコアで16チーム中16位と、世界の壁の厚さ、日本におけるSQUAD戦でのタクティクス構築の遅れを痛感させる内容となったが、「IEM Katowice出場」という日本のeスポーツの歴史に新たな1ページを刻んだことは間違いない。

 そして主催のIntelを始めPCメーカーなどがブース出展を行なうIEM Expoも併催されている。各ブースの目玉イベントは、各メーカーがスポンサードしているプロチームの選手によるサイン会だ。ヨーロッパ中から集まったeスポーツファンが贔屓のチームからサインをもらうために数時間待ちの長い列を作る。

 加えて、Expoでは賞金付きの当日参加可能な大会も複数同時開催されており、来場者は世界トップチームの試合観戦を始め、サイン会、自身の大会参加と、文字通りeスポーツに浸り切ることができる。日本にはまだこのレベルのeスポーツイベントは存在しないが羨ましいばかりだ。

【IME Katowice PUBG Invitational】
16チームを収容するための特設の2階建てステージ
移動中をたびたび狙撃され本来の実力を発揮できなかったSunSisters RoyaltyのWesker選手
観戦システムはますます進化し、極めて戦況が把握しやすくなった。IEMの「PUBG」観戦システムは早くも完成しつつある
それにしてもトッププレーヤーは遠距離からの狙撃がうまい。視認するスピードも速く狙った敵を逃さない

【IEM Expo】
至る所にステージがあり、最新eスポーツタイトルが試遊可能で、ゲーミングギアにも触れられるというまさにeスポーツに特化したIEM Expo
こちらは「Starcraft II」会場として使われているAudytorium。決勝戦は「CSGO」と同じSpodek Arenaで開催される

改めて押さえておきたい「CSGO」の魅力

基本的なゲームデザインは、2000年に誕生した「Half-Life: Counter-Strike」以来変わっていない
世界最高峰のスナイパーとして君臨するFaZeのGuardiaN選手。今回も決定的な場面で正確なスナイプを決め、Cloud9を撃破した
固唾を呑んで見守るファン
Stewie2K選手の3人抜きでの勝利に沸くCloud9。会場も大盛り上がりだ

 ところで、IEMは10年に及ぶ歴史でさまざまなタイトルを競技種目として採用してきたが、「Counter-Strike: Source」から「Counter-Strike: Global Offensive」の移行期を除いて一貫して採用し続けているのが「CS」シリーズだ。チームベースFPSの元祖であり、初代「Counter-Strike」から「CS:Source」、「CSGO」と進化しながら、今に至るまでeスポーツの代表格として第一線の地位を守り続けている。

 過去を遡れば、「Special Force」や「Sudden Attack」といった韓国系のオンラインFPSや、直近では世界最高峰のソフトハウスであるBlizzard Entertainmentが手がけた「Overwatch」など、常に複数のライバルに囲まれながらも、「CS」がこの分野において常に存在感を示し続けているのは、単純にゲームとして、そしてeスポーツとしておもしろいからだ。

 5対5、カウンターテロリストとテロリストというシンプルな構図に、爆弾の設置/起爆を巡って、2チームが争う。16ラウンド先取の全30ラウンドの中で、お金を稼いで装備を調える必要があり、お金を貯めるためにあえてピストルのみで出撃するエコラウンドや、武器を保持するためにあえて1ラウンドを譲ったりなど、最終的に16ラウンドを先取するための様々な駆け引きがあり、お互いが装備を調えての決戦は、試合におけるハイライトだ。1対多、ピストル対アサルトライフルといった劣勢の状況下での2人抜き、3人抜きのスーパープレイや、ゲームの流れを決定づけるロングレンジのスナイピングなど、素晴らしいプレイにはひいきのチームかどうかに関わらず大きな拍手が送られる。「CSGO」は、eスポーツとして、極めて高い完成度を備えたゲームといっていい。

 もうひとつ知っておくべきことは、「CSGO」の国際大会の多さだ。「CS」シリーズ専門のeスポーツサイトとして知られるHLTVを見れば一目瞭然だが、ほぼ毎週のように世界のどこかで「CSGO」の国際大会が開かれていることがわかるはずだ。その数の多さ、シーズンの切れ目のなさは、メジャースポーツに勝るほど劣らないほどほどで、トップチームの選手たちは世界中を転戦することで、年間数千万円の報酬を手にしているとされる。

 eスポーツとしての「CSGO」が盛り上がり続けているのは、大会の多さと、トップチーム、トッププレーヤーに対する見返りの大きさだ。今をときめくバトルロイヤルシューター「PUBG」をメインに活動している世界的なストリーマーShroud選手は、「CSGO」のCloud9(米国)メンバーとして昨年のIEM Katowice 2017を戦った有名選手だ。FPS界の世界のトッププレーヤーが集結しているタイトルが「CSGO」だ。日本ではプレーヤーベースの少なさから、今ひとつ盛り上がらないままだが、「CSGO」を抜きにして世界のeスポーツシーンは語ることができない。

ついにスタートしたIEM Katowice 「CSGO」World Championship。SKはベスト4に残れたのか?

予選最後の戦いとなったNiPとLiquidの一戦。大方の予想を覆してLiquidが勝利した
20:21という前代未聞の延長戦となったCloud9とFaZeの死闘。今のところダントツのベストゲームだった

 さて、IEM Katowiceにおいて開催されている「CSGO」World Championshipだが、世界の「CSGO」大会で実績を残した招待チームと、各地域大会で優勝した地域代表チームの計16チームが参戦して世界一を決める。

 予選リーグは2月27日より開催されており、8チームずつ2つのグループに分かれてダブルエリミネーション方式でセミファイナルに進む4チームを決める。出場した16チームは、SKに、Cloud9、FaZe、Astralis、NiPと、「CS」ファンなら誰しも知ってるような伝統と実績のあるチームばかり。我らがアジアからは、アジア最強のTyLooがアジア選手権を勝ち抜いて出場したが、Cloud9とGambit(カザフスタン)に破れ、ベスト16止まりとなっている。

 ちなみに、先述したSK Gamingの「Intel Grand Slum」3勝目についてはお預けとなった。初戦はAVANGARを16:10で撃破したものの、準々決勝でAstralisに0:2、Cloud9に1:2でそれぞれ破れ、ベスト8止まりとなった。SKのほか、IEM Oakland大会で優勝したNiPや、優勝候補のCloud9も準々決勝で敗れ、多くの優勝候補が姿を消した。やはり、いかにトップチームでも、先述のshroud選手のように、メンバーの入れ替えは頻繁に発生するため、強さを維持するのは難しいと感じた。

 2月27日から4日間掛けて行なわれた予選リーグにおいて、ダブルエリミネーションによる死闘を乗り越え、3月3日のセミファイナルに勝ち進んだのは、Astralis、Fnatic、FaZe、Liquidの4チームとなった。Astralis、Fnaticは無敗での準決勝進出で今大会絶好調を維持している。セミファイナルでは、それぞれ敗者ブラケットから勝ち上がってきたFaZeとLiquidの挑戦を受ける。大会の模様についてはまた別稿にて詳しくお伝えするつもりなのでお楽しみに。

【ポーランドチームのエキシビションマッチ】
3月3日の午前中はセミファイナルの前座として、ポーランドチーム同士のエキシビションマッチが行なわれている。6,000ほどの客席はほぼ埋まり、グランドファイナルに向けて徐々に盛り上がりを見せつつある