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eスポーツの世界大会IEM Oaklandが開幕 「CS:GO」はSKが敗退する波乱の幕開け

初採用の「PUBG」は20チーム80名によるバトルロイヤルがスタート!

11月18、19日開催

会場:Oracle Arena

 IntelおよびESLが主催するeスポーツの国際大会Intel Extreme Masters(IEM) Oaklandが、米国オークランドのOracle Arenaにおいて米国時間の11月17日開幕した。

会場となったOracle Arena
大人気の「CS:GO」会場
「PUBG」会場。中央の蜂の巣のようなエリアには1チーム4人ずつ入っている
Intel Grand Slamの現在の状況

 IEM Oakland 2017は、現在進行しているIEMシーズン12において、5月のシドニー、7月の上海に続く3つ目となる大会で、2018年2月のカトワイズでシーズンファイナルを迎える。今シーズンは「League of Legends」から手を引き、「Counter-Strike: Global Offensive(CS:GO)」と「Starcraft」の2部門となり、オークランド大会では、「CS:GO」に加えて、エキシビションとして「PLAYERUNKNOWN'S BATTLEGROUNDS」を初採用し、2種目で行なわれた。

 IEMは「CS:GO」と共に成長してきたeスポーツ大会といっても過言ではないが、とりわけオークランド大会は現在唯一の米国開催ということもあり、毎年盛り上がる大会となっている。会場となっているOracle Arena自体はそれほど大きな会場ではなく、シドニー大会で使われたQudos Bank Arenaの半分以下、しかも半面を「PUBG」が使用するため、せいぜい2,000~3,000人ほどしか入れないが、Twitchのライブ中継は25万人以上が視聴するなど、eスポーツ大会としての盛り上がりは文字通り世界最大規模だ。

 この人気の背景には3つの理由がある。1つは一発の大会で賞金総額が30万ドル(約3,300万円)という高額賞金の大会であること。もう1つはそれに付随して出場チームが世界最高峰のチームばかりであるところだ。出場するチームは今回のIEMをはじめESL ONE、DREAMHACK MASTERS、ESL Pro League、ECSといった「CS:GO」のメジャー大会に出場する世界の強豪ばかりが一堂に会し、シングルエリミネーションによるトーナメントを行なう。これで盛り上がらないわけがない。

 IEMは伝統的にほとんどの枠が最初から招待枠で、今回も12枠中9枠が招待枠となっている。「CS:GO」ファンにとっては見たいチームの対戦が必ず見られるという大きなメリットがある半面、世界最高峰の大会への出場を目指す在野のチームにとっては閉ざされた大会という側面もある。残る3枠は、アメリカ、ヨーロッパ、アジアに1枠ずつ与えられており、毎回熾烈な予選争いが繰り広げられている。

 今回日本からは、GALLERIA GAMEMASTER CUPで一躍有名となった名実共に国内最強のSCARZ Absoluteがアジア予選に出場し、惜しくもベスト8で敗れている。ちなみにアジア枠は、そのSCARZ Absoluteを退けたモンゴルのThe MongolZが出場を果たし、本戦のグループステージを0勝5敗で敗退している。優勝すれば12万5,000ドル(約1,400万円)という夢のある大会だが、正直な所、招待チームと在野チームとの実力差は想像以上に大きい。

 そして3つ目の理由として、今後徐々にクローズアップされていくと思われるのが、Intel Grand Slamシステムだ。これはIntelとESLが6月に発表した、両社が主導する20万ドル以上の「CS:GO」大会に導入される新たな取り組みで、対象となる直近10大会で、4大会優勝したチームに100万ドル(約1億1,000万円)を提供するという、ジャックポット的なシステムだ。3大会優勝しているチームに対して、4勝目を阻止したチームにも10万ドル(1,100万円)を提供するというオマケ付き。現在、対象大会は3つ(ESL ONE COLOGNE、DREAMHACK MASTERS MALMO、ESL ONE NEW YORK)消化され、オークランド大会が4大会目となる。各大会ではそれぞれSK Gaming、G2、FaZeが優勝しており、本大会にも出場しているSKとFaZeが2勝目を記録するのか、新たなチームがGrand Slamに参戦してくるのか注目が集まるところだ。

 さて、IEM Oakland会期初日となった11月18日は、「CS:GO」の準決勝2試合と、「PUBG」とSQUAD MATCH4試合が行なわれた。

 「CS:GO」の準決勝2試合はどちらも大いに盛り上がった。1試合目は、世界ランク1位で、IEMのシドニー大会でも優勝している名門中の名門SK Gaming(ブラジル)と、そのSKの発祥の地スウェーデン最強チームとして“大政奉還”を狙うNinjas in Pyjamas(NiP)。奇しくも昨年のIEM Oaklandの決勝と同一カードで、まさに宿命の対決といえる。

 1ゲーム目は、序盤こそ王者の戦いでSKが5ゲームを連取したものの、その後は互いに譲らない拮抗した展開となった。個人技、チームプレイ共に、まさに世界最高峰で、見事なリコイルコントロールで立て続けにキルを決めるアサルター、スコープを覗いた先にあたかもターゲットを吸い寄せていくような精度でヘッドショットキルを決めるスナイパーなど、スーパープレイの連発で、もうたまらない。

 どちらが勝ってもおかしくない試合だったが、ひとつ印象的だったのは、NiPは2人が肩車して通常はありえない位置から狙ったり、同時に投擲武器を投げて一斉に踏み込むといったチームプレイを重視した大胆なタクティクスが目立っていたことで、タクティクスそのものは別に目新しくないが、こういう大舞台でキチッと決めるところに練度の高さ、勝負に賭ける意気込みを感じさせた。その差かどうかは定かではないが、1:1で迎えた3ゲーム目をNiPが16:11で取り、決勝進出を決めた。SKは本試合に限らず、今期かなり調子を落としてきているが、いよいよ王者陥落なのか、一時的なスランプに過ぎないのか、少々気になるところだ。

【Ninjas in Pyjamas対SK Gaming】
優勝候補に対して2年連続で勝利したNinjas in Pyjamas。「CS」と言えばスウェーデンという「CS 1.6」の風景が戻りつつある

 2試合目は、世界ランク2位、SKと並んで優勝候補のFaZe(ヨーロッパ)と、ホームでの開催ということでとびきり有利なポジションにいるCloud9(米国)の対戦となった。2週間前のBlizzCon(参考記事)と同様に、試合前から凄まじい「USA! USA!」コールで、スタンディングオベーションも沸き起こる。Cloud9メンバーが星条旗を携えて入場したところで、盛り上がりは本日最高潮に達した。この盛り上がりは、日本や中国はもちろんのこと、オーストラリアも凌ぐレベルで、「やはり米国人はスポーツ観戦が三度の飯より好きなレベルで好きなんだなあ」と断定せざるを得ない。

 肝心の試合の方はというと、Cloud9を応援する気満々の大観衆に対して、FaZeは冷や水を浴びせるような冷静な動きでCloud9を終始圧倒。解説者は、9月のESL One New YorkでもCloud9が0:2で完敗したことを繰り返し語って対立を煽ったが、米国トップチームらしいキレのある動きはほとんど見られず、逆にFaZeが1人だけスナイパーで、ほかはピストルという状況にも関わらず攻めきれずに落とすなど、取るべきラウンドも落としたりしてまったく良いところなく、ニューヨーク大会同様、0:2で完敗した。

 こういう場合の米国人は冷酷で、最初はFaZe向けだったブーイングの矛先をCloud9に向け、あきらかに劣勢でも一切の温存策を許さず、“1人で全キル”的なヒロイックな活躍を求める。Cloud9はこうした観客からのプレッシャーに押しつぶされてしまった印象があるが、ヨーロッパ混成チームであるFaZeの冷静でキレのある動きが印象的だった。まさにFaZeの完勝だった。

 明日、栄冠を手にするのはどちらのチームかを予測するのは難しい。Grand Slamを盛り上げるという意味ではFaZeの2勝目に期待したいところだが、チーム名に“Ninja”を入れ、アイコンには“手裏剣”を用い、“ライトニング”というカタカナをライフルに刻印しているガチの日本好きのNiPにも勝って欲しいところ。明日の決勝も楽しみだ。

【FaZe対Cloud9】
ホームの大歓声を力に変えたかったCloud9だったが、結果は真逆に。わずかな心理的な影響もエイミングに影響を与えてしまう「CS:GO」というゲームの難しさを実感させてくれる

【「PUBG」部門】
「PUBG」部門は、4人1チームによる20チームでのSQUAD MATCHが4回行なわれた。明日も残り4回が行なわれ、獲得点数の合計で優勝チームが決まる。賞金総額は20万ドルと最高額で、うまくいけば今後のリファレンスになるかもしれない

【各種アトラクション】
IEM OaklandでもVRをプッシュしていたが、驚いたのは会場の中にあったこと。歓声の煩さでまともゲームができないと思うのだが……
会場の外では、VRコンペティションが開催されていた。今回は「UNSPOKEN」に加えて、「ONWARD」も実施されていた
恒例の選手サイン会。トップチームばかりのサイン会ということもあって非常に長い列ができる