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インテル、初のVR eスポーツ大会「Intel Unspoken Tournament」を開催

インテルの次のターゲットは「VR」。VR eスポーツは果たして成立するのか?

5月6、7日開催

会場:Qudos Bank Arena

 オーストラリアシドニーにて開催された世界最大規模のeスポーツイベント「Intel Extreme Masters(以下、IEM)」では、世にも珍しいゲーム大会が開かれた。Insomniacが開発したVRアクションゲーム「Unspoken」のユーザートーナメントが開かれたのだ。

【Test Your Abilities as a Spellcaster in “The Unspoken” – a VR eSports Title】

大人気だった「Unspoken」コーナー
抽選を行なっているシーン。参加者をハイエンドゲーミングPCが貰えるだけあって16名に当たるだけで大喜びだ
こちらがPCCGのハイエンドゲーミングPC「PCCG Master 1080 SLI Gaming System」(4,299AUD)
メディアブリーフィングの様子。中央にいるのがIntelでVRとゲームを統括するGeneral ManagerのFrank Soqui氏

 6日と7日で各日1回ずつ実施され、それぞれ16名がエントリーし、トーナメントで優勝を決めるというもの。優勝者にはなんと、オーストラリアのPCメーカー PCCGのハイエンドゲーミングPC「PCCG Master 1080 SLI Gaming System」(4,299AUD)が贈られる。2日で2回実施しているため、2台も贈られる。そのほか2位にはIntel Core i7 Extreme Edition(2,339AUD)、3位にはIntel 540S SSD(249AUD)と、メイン大会の前座トーナメントとしては、考えられないほど豪華だ。

 もちろん、これは単なる賑やかしのために行なったわけではなく、ちゃんとした狙いがある。先週、日本がゴールデンウィークを楽しんでいる時期に、Insomniac、Intel、Microsoftが3社共同で「Unspoken」のVRトーナメントを全米のMicrosoft Storeを会場に実施することを発表したのだ。5月13日に80カ所のMicrosoft Storeで予選が実施され、決勝は6月にニューヨークの旗艦店で行なわれる。そのためのトライアルというのが1つ。

 そしてもう1つは、IEMを10年以上に渡ってホストし、eスポーツ界最大のスポンサーであるIntelが、次のeスポーツのターゲットに「VR」を真剣に検討していることだ。そのことはIEMの開催に先立ち実施されたメディアブリーフィングでも「VR eスポーツ」構想が明らかにされ、従来のeスポーツとはまた異なる新たなカテゴリにチャレンジしていく方針が語られた。

 もちろん、現在のVRに様々な課題、たとえばヘッドセット自体の価格の高さ、eスポーツコンテンツの少なさ、有線環境による制限などは認識しており、今すぐ全面的にという話ではないが、近い将来に実現されることが確実視されるVRヘッドセットの無線化、コンパクト化、低価格化が実現した暁には、VR eスポーツ大会をIEMの競技種目の中に加える方針だ。それが何年先になるのかは残念ながら語られなかったが、Intel自身はCPUやSSDといった分野においてVRの進化のキャスティングボートを握っており、内部的にすでに一定の目処が付いているのかもしれない。

 ちなみにメディアからは、VRのほか、女性トーナメントの設立、パラリンピック枠など、Intelにあたかもeスポーツ界におけるIOCのような立ち位置を求めるような質問が相次いだが、Intelとしてはそこまで踏み込む意思はないようで、「eスポーツパラリンピックの構想自体は大変興味深く、アイトラッキングなどの技術革新がそれを可能にするかも知れない」と発言するに留めた。それに比べると、VRに対する発言はかなり具体的で、真剣に検討している様子が窺えた。

 実際、メインエントランスをほぼ独占していたIntelブースでも、8割がVR関連の出展だった。VR以外のコンテンツは、「バトルフィールド1」(Electronic Arts)と「Halo Wars 2」(Microsoft)ぐらいで、そのほかは、「Unspoken」(Insomniac Games)をはじめ、「Robo Recall」、「Rock Band VR」(Harmonix)、「Project Cars」(Slightly Mad Studios)など、VR界の大物達が勢揃いしており、Intel Core i7のアピールに活用されていた。

【VRほぼ一色だったIntelブース】
Intelの最新プロダクトのショウケースとして使われるIEMのIntelブースは、VRほぼ一色という状態だった

 さて、本題の「Intel Unspoken Tournament」について、会期2日目に観戦することができた。余談だが、ちなみに筆者は「VR eスポーツは成立しない」派だ。対戦者だけが没入した世界にいて、観戦者は没入感ゼロのモニターで試合を見て、手に汗握れるとは思えないからだ。それこそ、Facebookが発表会で実施したように、観戦者も全員がVRヘッドセットを被れば話は別だが、それでも、今回の「Counter-Strike Global Offensive」のように3時間も4時間も観戦が楽しめるとは思えない。どっちに転んでも実現は難しいのではないかと思っていたのだ。

 しかし、「Intel Unspoken Tournament」を通しで見ていて、ずいぶんイメージが変わった。やはりIEM自体がそうだが、百聞は一見にしかずで、実際に目の当たりにしなければ、おもしろさや良し悪しはわからないものだ。

 もっとも誤解していたのは、“観る対象”だ。eスポーツと同じ感覚で当然ゲーム画面を観るものだと思っていたが、そうではないのだ。VR eスポーツの魅力は、目の前でVR空間に没入し、一定のロールを演じながら、敵を倒そうとしている選手自体にある。

 「Unspoken」はこの点が非常に良くできており、Intelがタッグを組んだ理由がよく分かる。上級者プレーヤーの操作はとにかくカッコイイのだ。VRメーカーがプロモーション用に撮影した“構えている格好”が自然にできる。しかも、eスポーツなので、高速でフォームチェンジし、ゲーム画面はろくに見えないのにも関わらず、観ているだけで楽しめる。

 今回の大会では、対戦相手はノートPCを挟んで対峙する格好で行なわれたため、1人が素早く手を前に出して魔法を撃つと、もう1人は間髪を入れずにそれに反応する。盾を突き出す格好で、シールドで防いだり、背中にコントローラーを向けて避けたり、ゲーム画面なしでも、この2人が真剣勝負をしていることがわかるのだ。

 今回の大会は、観せるための大会ではなく、VRトーナメントのノウハウの蓄積に重きが置かれていたため、対戦中の様子は、実際にVRを駆動させているPCのモニターで見るしかなかったが、本格的なeスポーツ大会が開かれる際には、大型のモニターに試合の映像が流れるだろうし、実況中継も行なわれるだろう。それらの魅力に加えて、さらに“対戦者の動き”も楽しめるとなれば、eスポーツイベントとしてかなりおもしろくなりそうで、「VR eスポーツは成立する」派に鞍替えすることをここに表明したいと思う。VRも巻き込んで進化を続けていくeスポーツの世界。今後の展開がますます楽しみだ。

【Intel Unspoken Tournament】
ベスト16では、かろうじて遊べるというレベルの参加者が多かったが、ベスト8、ベスト4と上位に行くにつれてかなりハイレベルな戦いが繰り広げられた。上級者のプレイは観ていてカッコイイ