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IEM Oakland、「CS:GO」部門はスウェーデンのNiPが2連覇を達成!

生粋の名門チームがドリームチームのFaZeをフルセットの末に撃破

11月18、19日開催

会場:Oracle Arena

 eスポーツの国際大会Intel Extreme Masters Oakland(IEM Oakland)は米国時間の11月19日、「Counter-Strike: Global Offensive(CS:GO)」部門の決勝戦を行ない、スウェーデンのNinjas in Pyjamas(NiP)がヨーロッパのFaZe Clan(FaZe)をフルゲームの末に3:2で破り、オークランド大会2連覇を達成した。優勝賞金は12万5,000ドル(約1,400万円)。

決勝はNinjas in Pyjamas(NiP)とFaZe Clan(FaZe)の一戦に
昨日を上回る満員のスタンド

 IEMの「CS:GO」の大会は、5月のIEM Sydneyに続いて今年2度目の観戦となったが、シドニー大会と同じ世界ランク1位のSK Gaming(SK)と、2位のFaZe Clanの決勝になるかと思いきや、既報のようにダークホースのNiPがSKを撃破し、NiP対FaZeという珍しい顔合わせとなった。

 会期2日目は決勝戦1試合のみのカードとなったが、決勝のみBO5で行なわれる。最低でも3試合、1ゲーム1時間とみても、休憩を挟んで4時間以上の戦いだ。昨夜、残念ながら米国代表のCloud9が敗れてしまったため、スタンドは空きが目立つかと思いきや昨日を上回る超満員で、ビールにハンバーガー、ポテトに唐揚げといったジャンクフードを両手に抱え、全力で応援する気満々だ。

 試合開始を待っていると、もはや待ちきれない観客たちがNiPコールを始める。普通はお返しとばかりに逆サイドからFaZeコールが沸き起こるものだが、NiPコールばかり。そう、観客の多くはNiPファンなのだ。昨夜敗れたCloud9の弔い合戦で一時的にNiPファンになったのかというとそうでもなさそうで、試合前の来場者インタビューで、若いNiPファンが「金満クランには負けない」と敵意をむき出しにしていたのを聞いてピンときた。

 シドニー大会の時にもおかしいと思ったが、FaZeはとにかく「CS:GO」ファンから好かれていない。理由は、Fnatec(スウェーデン)やAstralis(デンマーク)、mousesports(ドイツ)、NAVI(ロシア)といった各国のトップチームからエースを引き抜いてチームを構成しているためだ。

 スポーツでは読売ジャイアンツやニューヨークヤンキース、レアルマドリッドなど、金満クラブが金にものを言わせて強いチームを作ることはごくごく当たり前に行なわれているし、現在Blizzardが準備している「オーバーウォッチ」のプロリーグ「Overwatch League」は、まさにそうしたプロ選手のドラフト、トレードを前提とした近代的なプロリーグシステムを構築しようとしているぐらいだ。FaZeは拠点はロサンゼルスで、その意味ではホームであるにもかかわらず、そのやり方に問題があるのか、筆者が把握していない何か別の要因が存在するのか、完全にアウェイだ。

 一方、NiPは「CS」界では指折りの強豪国であるスウェーデンのチームで、SK GamingやFnaticと同様、初代「Counter-Strike」時代から存在する名門チーム。「CS:GO」のリリースに合わせて2012年に復活し、世界1位奪還を目指してグローバルで活躍している。「CS:GO」ファンとしては、この筋目の良さも応援したくなる要因のひとつなのだろう。

【選手入場】
一階エリアは特別シートになっており、選手の近くで観戦できるだけでなく、こうして入場の写真が撮れる

【盛り上がる観客達】
NiPが活躍する度に体全体で喜びを表現する観客達

いよいよ試合開始
試合に臨む選手達

 開始前から大盛り上がりの中、試合は予定通り13時過ぎよりスタートした。1ゲーム目はCobblestone。NiPがピストルラウンドを含め、速攻による鮮やかな戦い振りで3ラウンドを連取。こうなると勢いが止まらなくなるのが「CS」というゲームだが、それを止めてしまうのがトップチームだ。FaZeは冷静に多対1の状況をうまく作り出し、側面に回り込むなどして装備の劣勢を跳ね返し、簡単に3:3にしてしまう。やはり全員がエースのFaZeは強い。

 3:6まで追い込まれた10ラウンド目、フル装備同士の決戦で、NiPは再び序盤のようなキレのある動きを見せ、1ラウンドを取り返す。顔を覆う髭がトレードマークのエースf0rest選手が見事な反応で敵を撃破したり、REZ選手やdraken選手がスナイプを決める度に立ち上がって大歓声を挙げる。やはり決勝戦は盛り上がる。あまりの盛り上がり振りに最後まで持つのか心配になるほどだ。

 ところで「CS」を象徴する武器は、何と言ってもスナイパーライフルだ。腹にズシリと来る“ズドーーン”という射撃音と共に遙か遠方の敵が倒れ、空薬莢の排出と共に素早くナイフに持ち替え、次の得物を探す。「CS」と言えばこれである。場合によってはそのままリロードして2キルする場合もあり、会場の盛り上がりはたちまち最高潮になる。当たればほぼ一撃のため、近距離でも使用するケースもあり、まさに戦場の花形といっていい。冷静に考えるとスナイパーライフルを歩きながら撃つ世界って何なんだという気もするが、リアルを超えた打撃感こそが「CS」の醍醐味だ。

 というわけで、筆者はスナイパーを主に追いかけていたが、FaZeのスナイパーGuardiaN選手の目覚ましい活躍とは裏腹に、NiPのスナイパーdrakenは最初からずっと冴えない。決定的な場面で何度か外し、最後の1on1でも撃ち負けるシーンがあったが、印象的だったのが12ゲーム目だ。やはり最後の1on1の局面で、彼はスナイパーライフルからピストルに持ち替え、なんとか勝ちをもぎ取った。彼は明らかに不調だったが、死に物狂いで勝ちにこだわる執念のようなものを感じさせてくれた。

 ただ、筆者の期待とは裏腹に、ゲーム展開としては完全にアサルターの独壇場で、NiPのアサルターf0rest選手は、いとも簡単に2人抜き、3人抜きを何度も決め、もう1人のアサルターGeT_RiGhT選手も、左右の敵を西部劇のような鮮やかさでほぼ同時に仕留めるという神業で会場を沸かせた。一方、FaZeもrain選手を中心に、装備的な劣勢をものともせずにガンガン攻めていたが、1ゲーム目は16:10でNiPが先取した。

【試合シーン】
今大会でMVPを獲得したNiPのエースREZ選手
第3ゲーム、トレインのテロリスト側を8:7で折り返し、直後のエコラウンドに勝利。この勝利が大きかった
アニメキャラのアサルトライフルが特徴的なFaZeのスナイパーGuardiaN選手。彼のスナイピングは超一流だった
投げものにカメラが追従していく珍しい視点も採用されていた
NiPの得意なポイントを見切って火炎瓶で潰して行くFaZe

 2ゲーム目から4ゲーム目にかけてはお互いにゲームを取り合う展開となった。FaZeがとにかく凄いのは、ピストルラウンドの強さだ。初回のピストルラウンドだけでなく、エコでピストルを使う場合でももの凄い攻めで勝ちに行く。また両チームに共通している点としては、スモークが焚かれた状況でのためらいのない射撃。もちろん、当てが外れる場合もあるが、まるで見えているかのように当ててキルまで持っていくケースもあり、無限の練習とセンスがなせる技だ。

 もうひとつは投げものの使い方の多様さだろうか。火炎瓶やスモークグレネードは劣勢時の守りに使うケースが多いが、彼らはそれを見切ってスモークグレネードで即時消火して突っ込んで行く。とにかく陽動が通用せず、それを突破口に使う感じだ。あるいは有利なポジションにスタンバイするタイミングを見計らって上空から火炎瓶を投げるなど、「CS:GO」の日本大会GALLERIA GAMEMASTER CUPや、APAC大会「EXTREMESLAND」ではあまり見られなかった戦術をたっぷり見ることができた。

 また、IEMは「CS:GO」の実況中継ではもっとも実績のあるESLが運営しているだけあって、実況中継も非常に凝っていて、スローモーションを使った即時リプレイや、選手が投げた投擲武器に追従していく視点、あるいは第三者の視点など、あまり使われないスタイルを多用し、より深く楽しく観戦することができた。やはり即時リプレイはeスポーツ観戦には必要不可欠で、中継でのキルシーンを、リプレイでは逆の視点から見せるなど、ひと工夫もふた工夫もされており、サードウェーブデジノスをはじめ、日本国内で「CS:GO」の大会を行なう団体も参考になる部分が多いのではないだろうか。

 2:2で迎えた最終ゲームは、必死のNiPコールの中、FaZeが冷静にピストルラウンドを取り、NiPにとっては最悪の幕開けとなる。しかし、2ラウンド目、マップはCache、テロリスト側のNiPは、正面対決を避けつつ、奇襲のような形で爆弾を先に仕掛け、このラウンドをものにする。少なくとも0:3、悪ければ0:5ぐらいは覚悟していた観客は、この反撃に大歓声だ。

 その後は一進一退の攻防の攻防が続き、フル装備で迎えた12ラウンド目、NiPは中距離での撃ち合いに勝ちきり、ジャンプによる偵察を呼んでジャンプした敵を当てるなどのスーパープレイも飛び出して6:6の同点に追いつき、前半をそのまま9:6で折り返した。

 攻守交代後もやっぱりピストルラウンドが勝てないNiP。そのまま9:9まで巻き返されたが、フル装備同士の19ラウンド目をしっかり勝ちきり10:9とした。後半戦に初勝利し、優勝を確信した観客は大騒ぎだ。

 終盤は、装備に勝るNiPが、FaZeの猛攻をギリギリのところで凌ぐ展開に。FaZeは、どちらが勝っているのか忘れさせるような攻めっぷりをみせたが、GeT_RiGhT選手やf0rest選手が見せ場を作り、最終的に16:10で凌ぎきり、見事オークランド大会2連覇を達成した。

これは途中スコアだが、FaZeのほうが上回っていることがわかる

 しかし、それにしてもFaZeは強かった。「CS:GO」はチームベースのFPSだが、チームでの作戦で動いていても、1対多の局面、最後の1on1の局面に必ず遭遇するわけで、やはり個の力は大きいと言わざるを得ない。試合後のスタッツを見ても、FaZeが全面的にNiPを上回っており、今大会でMVPを獲得したNiPのREZ選手は、FaZeのrain選手、NiKo選手のスコアを下回っている。それでも最終的にNiPが勝利したのは、チームの力は個の力に勝るという単純な事実だと思う。IEM Sydney大会に続いて、またしても極上の試合を見ることができ、大満足の2日間だった。また機会があれば観戦レポートをお届けしたい。

【素晴らしいリプレイワークにも注目】
ラウンド終盤、NiKo選手のカメラ視点でやられた直後に、そのNiKo選手を倒したGET_RIGHT選手側の視点ですかさずリプレイを再生。同時に喜ぶNiP側のスタンドと、ショックを隠しきれないNiKo選手を映し出す。非常に素晴らしいリプレイワークだ