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【特別企画】空前絶後の超重戦車「マウス」に会いにロシアのクビンカ戦車博物館に行ってきた
2017年6月5日 07:00
Hellraiser改めTornado Energyの優勝で幕を閉じた今年のGrand Finals(参考記事)。下馬評では直前に導入されたアップデート9.18の影響、すなわちTierX軽戦車や新システム下での自走砲にどう対応するかがポイントとされたが、蓋を開けてみれば、アップデート9.18の影響はそこまで甚大ではなく、そのひとつ前のアップデート9.17.1で大幅に強化され、現在最強戦車の名をほしいままにしているドイツTierX重戦車マウスが大暴れする大会となった。
Grand Finalsでは、各チームはいずれもマウスを数量ずつ投入し、攻撃防衛の軸としながら、マウス以外の部隊編成でお互いにどう敵のマウスを撃破するかに知恵を絞っていた。ここ2年ほど暴れに暴れたバットチャットは、仮に自慢のオートローダーでマウスをワンセット丸々貫通させても倒しきれないため、相対的の影響が小さくなり、マウスの重装甲を撃ち抜ける駆逐戦車や、マウスの裏を取れる機動力を備える重戦車など、かつてないほどの重量級の布陣となり、結果としてより迫力のある戦いが繰り広げられることとなった。それにしてもマウスを設計したポルシェ博士自身も、70年後に数百万人に注目される戦車になるとは想像すらしなかっただろう。
そのマウス、実は現存するのをご存知だろうか。マウスを製造したドイツ国防軍と3年に渡って戦車戦を繰り広げたソ連(現ロシア)が、戦闘中に故障して戦場に遺棄された試作機1号機と2号機を戦利品として鹵獲し、2輌のパーツの状態の良いものを組み合わせて1輌の車輌にしたあと、新型戦車の貫通テスト等に使用し、その後はモスクワ郊外のクビンカに保管、現在はクビンカ戦車博物館の目玉展示のひとつとして一般公開されている。
WargamingはGrand Finalsを取材するメディアに対して、積極的に自らが協力している戦車博物館のツアーを行なっているが、今年は初のモスクワ開催ということでなんとクビンカ戦車博物館への視察ツアーが組まれたのだ。というわけで、今回は戦車ファン垂涎のクビンカ戦車博物館レポートをお届けしたい。
たどり着くまでが大変だが、世界最高水準のコレクションを誇るクビンカ戦車博物館
GAME Watchでは、これまでにもポーランド軍事博物館やポーランド軍事技術博物館、ボービントン戦車博物館などのレポートなどをお届けしてきたが、クビンカ戦車博物館は、いろんな意味でハードルの高い戦車博物館だ。筆者も様々な戦車博物館を訪ね歩いてきたが、ここまで難易度の高い戦車博物館はない。聞きしに勝る高難易度だった。
位置的にはモスクワから西に60kmほどの場所にあり、ロンドンから200km以上離れたボービントンに比べればはるかに近いし、最寄りに駅もあるため、行くこと自体はそれほど難しくない。ただ、現在クビンカ戦車博物館は、そこから数kmほどモスクワ寄りの位置にあるパトリオットパークと呼ばれる国営のテーマパーク施設に、展示車両を移管作業中で、戦車は2カ所に分散展示されている上、レストア作業で展示されていないものもある。ロシア入国には必須となる観光ビザを事前に取得し、ツアーを利用してわざわざモスクワまで訪れてもクビンカで見たい展示物が見られるとは限らないのだ。
今回は最初にパトリオットパーク、その後にクビンカ戦車博物館を訪れたが、パトリオットパークは、戦車のみならず、現役の戦闘車両や戦闘機やヘリなどの軍用機、ロケットをはじめとした宇宙開発など、旧ソ連からロシア軍のあらゆる取り組みを歴史的な遺物と共に展示した超特大のテーマパークとなっており、展示施設の周囲には、エキスポ会場や、戦車戦が行えそうな規模の演習場もあり、完成すれば、まず間違いなく世界最大規模のミリタリーテーマパークとなるのは間違いなさそうだ。
ここのモチーフとなっているのは、ずばり英国のボービントン戦車博物館だ。テーマ別の展示、プロによる解説、ゆったりとした展示エリア、展示品をモチーフにしたグッズ販売、定期的な戦車のデモの実施など、ボービントンが行なっている展示を数倍の規模、様々な分野で行おうとしているのがパトリオットパークだ。
問題なのは、いつ完成するのか、完成形がどういう形になるのかよくわからないところだ。チケット売り場も開いておらず、観光客を迎え入れる体制はまだ整っているように見えない。今回のツアーでは、パートナー関係にあるWargaming主催ということで、最初から最後まで担当者が引率し、特別待遇で入ることができたが、平常時がどのような運営体制なのかはよくわからなかった。いずれにしても数年は、両方の施設に分散展示される状態が続くはずだ。