【特別企画】

「ファイナルファンタジーXIII」14周年。楽園と禁忌の大地を股にかける壮大な逃走劇を描いた“ライトニングサーガ”1作目!

【ファイナルファンタジーXIII】

2009年12月17日 発売

  2009年12月17日にスクウェア・エニックスが発売したプレイステーション 3/Xbox 360用ソフト「ファイナルファンタジーXIII」(以下、「FFXIII」)が、本日で14周年を迎える。

 今作は、「ルシ」と呼ばれる世界の脅威になってしまった主人公・ライトニングとその仲間たちが、与えられた使命に苦しみながら、数多の困難が待ち受ける運命に立ち向かう物語が描かれたRPG作品。リアルタイムにキャラクターの役割と作戦を変更しながら戦うバトルシステムは、従来の「FF」シリーズの中でもスピード感に富む。また、召喚獣との共闘に加えて、変形する召喚との合体攻撃など、異彩を放つ要素が多いタイトルだ。

 「FFXIII」は、昨年13周年を迎えたときにも取り上げたタイトルであり、その際には作品の主な概要から主人公の魅力、バトルシステムの紹介など、作品の全体像を紹介していた。本稿では新たに別の切り口から、今一度ゲームについて発売当時の思い出と筆者の解釈を交えつつご紹介する。

 具体的には、複数の「FFXIII」が存在する予定だった大型プロジェクトの存在、複雑そうに見えて実は明瞭な大筋のシナリオ展開、メカ好きには堪らない新解釈の召喚獣と、主に3つのトピックで分けた。今作は、人気の「FF」タイトルで見られる続編、エピソード補完の小説も展開され、なんだかんだ根強いファンを生み出すポテンシャルがあったと考えている。早速、壮大な“ライトニングサーガ”の幕開けとなった第1作目、「FFXIII」について振り返ってみよう。

【FINAL FANTASY XIII Final Trailer】

スクエニ大型プロジェクト「ファブラ ノヴァ クリスタリス」の1作品として発表

 今作は2006年5月9日に「E3 2006」で発表された、スクウェア・エニックスの大型プロジェクト「FABULA NOVA CRYSTALLIS(ファブラ ノヴァ クリスタリス)」に関連する1作品だ。同プロジェクトはそれぞれ異なる主人公、異なる世界観、そして異なるストーリーが展開され、いくつもの「FFXIII」で構成されていくという触れ込みであった。今作以外の関連作品としては、「ファイナルファンタジー ヴェルサス XIII」(現「FF15」)、「ファイナルファンタジー アギト XIII」(現「FF零式」)の2作品が存在している。いずれも独自の神話を共通のテーマとして掲げており、制作が進められていた。

【FINAL FANTASY Versus XIII Trailer 2011】

 「ファイナルファンタジー ヴェルサス XIII」は、その名称をナンバリング15作品目になる「ファイナルファンタジーXV」と改め、プレイステーション 4/Xbox Oneにて発売。もともとモバイル向けに発表していた「ファイナルファンタジー アギト XIII」は、「ファイナルファンタジー零式」となり、プレイステーション・ポータブル向けにUMD2枚組で発売された。なお、「FF零式」は後にスマートフォン向けのスピンオフタイトルとして、「ファイナルファンタジーアギト」が改めてリリースされることになる。

「ファイナルファンタジーXV」
「ファイナルファンタジー零式」

 両作品共に「ルシ」や「シ骸(シガイ)」といった今作「FFXIII」に共通する単語が登場している。これは、先述したように「FABULA NOVA CRYSTALLIS」プロジェクトによって、かつて共通の神話世界をベースにしていた名残りといえるだろう。しかしながら、ゲームを通してその神話世界を緻密に描き上げたのは、結果的に3部作展開となった今作「FFXIII」のみになる。

 そうして実際に「FFXIII」が発売されてみると、世界観を構成する固有名詞の多さや、ストーリー体験を主に据えたフィールド構造から“一本道”、“難解なストーリー”と評価されてしまうなど、従来の「FF」ファンからも賛否の分かれるナンバリングタイトルになった。後に続編「FFXIII-2」、「ライトニングリターンズ」といった2つのスピンオフ作品が登場したことにより、ゲームの特徴が領域ごとに分けられて、改めて今作を再評価するユーザーもいたのではないかと、今では思いたい。

「FFXIII」の直後から物語が繋がる「FFXIII-2」。さまざま時空を飛び越え、過去と未来を行き来しながら各地を冒険できる。マルチエンディングを採用し、プレイヤーの自由度も広がった
3部作最後の「ライトニングリターンズ」では、制限時間がありながらも、オープンワールド形式になった広大なフィールドを舞台に、4つの地域を自由自在に歩き回れる。特定の時間帯でしか出現しない敵や、モンスターの絶滅といった世界の変化が楽しめる

物語の大筋は“逃走劇”。「FFXIII」のストーリー

 PS3で発売される「FF」のナンバリングということもあり、コアな「FF」ファンのみならず、カジュアル層も「FFXIII」を購入していた。筆者は発売前の段階からゲーム誌で積極的に情報を収集し、今作の体験版が付属する「ファイナルファンタジーVII アドベント チルドレン コンプリート」の限定版も購入するなど、発売されるのを今か今かと心待ちにしていた記憶がある。しかし、世界観の複雑さや固有名詞の多さなどが、今作の賛否を分ける主要因の1つだったのはいうまでもない。今一度本作のストーリーをおさらいしよう。

 今作は、“ファルシ”と呼ばれる神の眷属によって秩序が保たれ続けている空の楽園「コクーン」と、そこに住まう人々から禁忌の大地として恐れられている下界の大地(地上世界)「パルス」を舞台に、主人公たちが、人類の敵として逃走劇を繰り広げるというもの。

 今作のストーリーで多くのプレイヤーたちが混乱してしまったポイントは、「固有名詞が連続する状況説明」を生み出している点に尽きる。物語冒頭の状況は、“パルスのファルシがコクーンの街で見つかり、そのファルシにルシされた少女と、街に住んでいた市民たちをコクーンからまとめてパージしようとしている”というものだ。

 この状況を噛み砕いて説明すると、今まで人類に禁忌の地として言い伝えられてきた場所の危険生物が、自分たちの世界のとある街中で発見される。政府はその危険生物に無理やり手先にされてしまった罪なき少女と危険生物を世界から追放するだけにとどまらず、その街に住んでいた人々全員を一斉に追放しようとしている、となる。

人類の脅威「ルシ」にされてしまった少女・セラ。楽園「コクーン」のルシと、禁忌の地「パルス」のルシとでは、“英雄”と“悪魔”ほどの違いがある。セラはパルスのルシだ

 世界観・用語がまだ頭に染み付いていないプレイヤーたちは、この説明を固有名詞だけで見聞きしたら混乱するし、頭の中で整理するのも大変だっただろう。ルシとファルシがそれぞれどういったものを指しているのか理解しにくいし、何より「パージ」などと、カタカナ表記の英語が自然に混ざっているのも微妙にややこしい。「とりあえず軍隊に追われている」といった状況から、物語を察するしかなかったユーザーはたくさんいたのではないだろうか。

 とはいえ、言葉の意味合いや劇中で何が起きているのかについては、それぞれ1つずつ読み取っていけば十分理解できるし、ゲームをプレイしている中で自然と掴めていける。筆者が今でこそ個人的に感じる部分は、“序盤における情報密度の濃さ”にある。前述した固有名詞の羅列に加えて、群像劇による人間ドラマがメインキャラクター1人ひとりを代わる代わる描いているのだ。だから情報量がとにかく多く感じられ、「FFXIII」の世界に中々没入できなかったのでは、と分析している。

冒頭ではライトニング&サッズ、スノウ&友人たち、ホープ&ヴァニラと、主に3つの視点から軍の強行した「パージ政策」の状況を描いている
ライトニングは妹のセラを探し、スノウはファルシに取り込まれた婚約者のセラを救うためと、キャラクターたちは皆目的が異なっている。「FF」シリーズにしては珍しく、冒頭からファングを除いて、全メンバーが早々に集結する

 「FFXIII」のストーリーは、コクーンとパルスを股にかける大スケールの逃走劇だ。その中でライトニングたちは、自分たちがとあるファルシの計画を実現するための駒として、都合良く動かされていた真相に辿り着く。その野望を打ち砕くため、軍と戦いながらも自分たちの運命に葛藤し向き合い、数々の困難を乗り越えていくことになる。序盤の情報量はともかく、全体の大筋そのものだけを切り取ってみると、内容は良い意味での王道ストーリーである。

 歴代「FF」シリーズの中でも世界観の知識を前提にした側面が強いのは納得だ。国産ゲームの大作ならとりあえず購入するような友人たちも、当時は口を揃えて「物語が難しい」とボヤいていた。独自の神話から壮大な世界を紡いだ結果、重厚ではあったが万人に理解される「FF」にはなれなかったように思う。口コミやインターネットの評判で広まってしまった否定的なユーザーレビューも理解できるものがほとんどで、長く語り継がれる話題ではあった。それでも筆者個人は楽しかったし、後に登場する続編においても、最終的には「FFXIII」のファンたちをしっかり楽しませてくれる、最高のフィナーレまで用意してくれたことには感謝しかないのだ。

作中のプリレンダリングムービーは圧巻の迫力。世界観・物語をシネマティックな表現で魅せる
バトルパートにおける戦略性の高さ、敵を「ブレイク」して畳みかけていく爽快感など、戦闘の奥深さは「ATB(アクティブタイムバトル)」の進化系といえるものになった

変形する召喚獣はロマンたっぷり!ユニークな「ドライビングモード」もイチオシ

 どの「FF」シリーズでも、バトルを有利に進めていく要素として「召喚獣」の存在が挙げられることだろう。神話に登場する神々や怪物、精霊たちの名前を冠した彼らは、プレイヤーにとっても1種の切り札のようなもので、さまざまな効果をもたらしてくれる。「FFXIII」にも召喚獣が登場するのだが、今作の召喚獣は1キャラクターにつき1体となっている。

 人類の敵としてルシにされてしまった主人公たちは、魔法などの強力な力を得る代わりに、それぞれ与えられた“使命”を果たさなければならない。ルシにされてから時間が進むほど、身体に刻まれた烙印の状態が悪化していき、タイムリミットを過ぎればシ骸と呼ばれるモンスターに変貌してしまう。逆に使命を果たすことができれば、いつ覚醒するかもわからないクリスタルと化すなど、ほぼ詰みのような状態である。召喚獣はそんなルシに与えられる試練のようなものであり、精神状態が深刻に悪化した際、具現化してルシの力を試すように襲いかかってくるのだ。この試練を乗り越えることで、ルシは召喚獣と実質的に主従関係の状態となり、バトル中に呼び出して共闘できるようになる。

薔薇の花弁を散らしながら召喚されるライトニングの召喚獣「オーディン」。過去シリーズでは一撃必殺の「斬鉄剣」で知られる。今作は白騎士をイメージにしたような風貌で、代名詞の必殺技もライトニングが扱う
「FF」シリーズのお祭り系タイトル「ディシディア」にライトニングが参戦した際は、オーディンの武器をライトニングが使用するのが恒例に

 今作では召喚獣がかなり特殊な存在と立ち位置で、キャラクターが抱える不安や悩みを吐露する瞬間、感情が爆発して冷静さを欠いている場面に出現し、キャラクターの不安定な心理状態を描写する、劇中の大きな見どころでもある。試練を乗り越えてルシと主従関係になるということは、キャラクターが精神的な成長を遂げた証なのだ。

 そして、召喚獣が機械的なビジュアルでそれぞれ“変形”するという点も、過去作には見られない「FFXIII」ならではの要素だろう。オーディンは馬、シヴァはバイク、ブリュンヒルデは車、ヘカトンケイルは恐らく魔導アーマーと、多彩な乗り物に文字通りトランスフォームする。バトルでは召喚獣を呼び出している戦闘中、「ドライビングモード」に移行することで、変形した召喚獣に搭乗して大暴れできるのがユニークで楽しいシステムだ。

「ドライビングモード」では画面左下に表示されたコストを消費し、コマンド入力による一方的な攻撃が可能となっている
すべてのコストを使い切り、召喚獣たちが持つお馴染みの必殺技を発動することもできる。ボス敵や強敵相手にどの攻撃がもっともダメージを出せるか、スキル回しを工夫していくのが好きだった
ヴァニラの召喚獣「ヘカトンケイル」は、「FFVI」に登場する“魔導アーマー”のような姿に変形する。余談だが「FFVI」のタイトルロゴにはメインキャラクターの1人であるティナが魔導アーマーに乗っているのだが、ティナを演じる福井裕佳梨さんはヴァニラを演じている

 召喚獣が変形するのは、ゲームをプレイしていた当時中学生の筆者にとって、琴線に触れるものだった。今まで「FF」シリーズの召喚獣とは、炎を司る獣のようなイフリートや、大地を揺るがす巨体な男のタイタン、雷で敵を裁く仙人のようなラムウといった、神話世界から飛び込んできた超常的かつ神秘のクリーチャーをイメージしていたからだ。

 それが神秘的な雰囲気は残しつつも、メカニカルなロボットデザインにリファインされ、身体のパーツをしっかり収納していく形で完全変形を遂げる。小学生に上がる以前から「機動戦士ガンダム」を筆頭に、特撮戦隊シリーズの合体ロボなどにも触れていたため、メカやロボットにはとにかく親しみが持てる。要するに昔から“ロボット”が好きだった。それゆえ「FFXIII」のメカ召喚獣たちには自然と心が惹かれていったし、何より「FF」シリーズの中でもっとも好きな召喚獣のデザインとして、現在でも思い出深く語り尽くせる。これからも「FFXIII」を象徴する1つの要素として、変形する召喚獣を必ず挙げることだろう。

続編タイトルの登場からドラマCD、ノベライズなどで物語・世界観を補完。多角的なメディア展開で深みが増す

 「FFXIII」は後に「FFXIII-2」、「ライトニングリターンズ」と、続編タイトル2作品の登場で、さらに作中の風呂敷きが広がる。そして、「FFXIII」本編に繋がる前日談のドラマCDやノベライズなども存在しており、それらに触れておくと作品の深みが一層増して、より楽しめたものだ。ノベライズは「FFXIII-2」でもあったが、「ライトニングリターンズ」に関しては、ベニー松山氏による著書が発売中止になってしまっているのが残念にならない。

 現在「ライトニングサーガ」に触れるとするならば、現実的な手段はPC版か、互換によるXbox Series X|S/Xbox OneのXbox版、モバイルアプリを介したストリーミングでのプレイになるので、そろそろ3作品をセットにしたHDリマスターの類が欲しい頃合いだ。

 しかし、Xbox/PC版はいずれも2,000円前後で販売されており、比較的手が出しやすい価格設定になっている。まだプレイしたことがない、久々にプレイし直したいという方は購入を考えてみてはいかがだろうか。

【追記と訂正】
Xbox版について追記いたしました。ここに訂正いたします。

■Steam版「ファイナルファンタジーXIII」のページ
■Steam版「ファイナルファンタジーXIII-2」のページ
■Steam版「ライトニング リターンズ ファイナルファンタジーXIII」のページ
■Xbox版「ファイナルファンタジーXIII」のページ
■Xbox版「ファイナルファンタジーXIII-2」のページ
■Xbox版「ライトニング リターンズ ファイナルファンタジーXIII」のページ