【特別企画】

「ライトニング リターンズ ファイナルファンタジーXIII」が本日で10周年。シリーズ初の3部作構成で独自の世界を描き切った挑戦作!

【ライトニング リターンズ ファイナルファンタジーXIII】

2013年11月21日 発売

 スクウェア・エニックスが2013年11月21日に発売したプレイステーション 3/Xbox 360用PRG「ライトニング リターンズ ファイナルファンタジーXIII」(以下、「ライトニング リターンズ」)が、本日で10周年を迎えた。

 本作は、映像美やバトルシステム、楽曲「閃光」をはじめとする浜渦正志氏のサウンドトラックなどが、多くのゲーマーたちに評価されつつも、ストーリードリブン過ぎるゲームデザインによって賛否が分かれた「ファイナルファンタジーXIII」(以下、「FF13」)のスピンオフ作品だ。前作「ファイナルファンタジーXIII-2」(以下、「FF13-2」)の続編であり、本作含む3作品で物語が完結する。「ファイナルファンタジー」シリーズ初となる3部作構成の長編ストーリーになった。

 「ライトニング リターンズ」は、主人公ライトニングが活躍するオープンワールド形式のRPGで、スクウェア・エニックスにとっても当時は1つの大きな挑戦だったろう。本稿では学生時代に「FF13」シリーズに魅了されていた筆者が、当時を振り返りながら本作についてお届けしていきたい。

【ライトニング リターンズ FFXIII [Gamescom Trailer (日本語版)]】

前作「FF13-2」衝撃のラストから続くストーリー

 「ライトニングリターンズ」の前作タイトル「FF13-2」は、ライトニングの妹ことセラと、未来からやって来た少年ノエルの2人が時間軸を飛び越えて各地を冒険するストーリーだ。冒険の目的は「FF13」のエンディング直後、とある事情によって不可視の世界で終わりのない戦いを強いられたライトニングと再び出会うこと、そして、ノエルの時代に待ち受ける“絶望の未来”を回避することにある。

 そもそも「FF13」のエンディングはプレーヤーの捉え方次第だが、いわゆるハッピーエンドを迎えている。ゲームをプレイした筆者はこのころ中学生ながらに「ああ、人類が人間らしい生活を手に入れるんだな」と、勝手に納得したほどだ。

 解説しておくと、「FF13」の世界は文明が発達した天空の世界「コクーン」、野生のモンスターが原生する自然豊かな地上の世界「パルス」と、2つの世界が存在する。人間は基本的に「コクーン」の中で文明的な生活をしているが、そんな社会の中枢には「ファルシ」と呼ばれる上位存在たちが常に君臨していた。「ファルシ」は食糧生産からエネルギー供給など、表向きに人々の生活を支えているのだが、これは人間たちを大量に育てた後、目的達成の過程で大虐殺を決行するためだった。「FF13」のラストというのは、その目的を破綻させ、さらに「ファルシ」の管理下からも脱却する。そして、人類が星の大地を踏みしめて、人らしく生きていく希望に満ちたエンディングなのだ。

【【LRFFXIII】ストーリーダイジェスト~FINAL FANTASY XIII~】

 そのため、いちプレーヤーとしては「FF13」で満足した後、「FF13-2」という続編の登場に驚きを隠せなかった。ゲームやシナリオについての賛否はあれど、一体どのような物語が描かれるのか、期待と不安を抱えながらも、なんだかんだ発売を楽しみにし、発売後はプラチナトロフィー獲得までキッチリと遊び切った次第である。

 しかし、実際に劇中で描かれたヒロインと少年の旅路の結末とは、あまりにも悲惨過ぎるもので、誰がどう見ても明瞭過ぎるほどのバッドエンディングであった。「FF13-2」はマルチエンディング方式を採用しているため、きっと遊んだ誰もが「どこかに真エンディングとかあるんだろ? 実は隠されているんだろ?」と、考えたに違いない。それは筆者もそうだった。だが、皆が期待していたような感動的なラストシーンは存在しなかったのである。

 衝撃的なラストシーンからおよそ2年後、ついに「FF13-2」を遊んだプレーヤーたちが救われる最後の1作が登場する。それこそが、今作「ライトニング リターンズ」であった。今になって思えば、文字通り絶望の未来を迎えたプレーヤーたちの魂を救済すべく、ストレート過ぎるゲームタイトルと共に、ライトニングが帰還してきたように思えてならない。実際、今作のライトニングは、世界を巡って人々の魂を救済していくからだ。「FF13-2」のあの終わり方は、今作への伏線だっただろう。

4つの地域を巡り、世界の終わりに挑む終末の旅路

 今作で舞台になるのは「FF13-2」のラストで、地上世界のパルスに混沌が流れ込んだ結果、人々の成長が止まってしまった終末世界。老いることもできず、13日後には世界そのものが真に終わりを迎えようとしている。

 ライトニングの目的は、4つの地域で構成されたその世界を巡り、各地で巻き起こるさまざまな事件を解決し、人々の抱える不安、心残りの解消によって、魂を清めていくことにある。それはすなわち、今作における「魂の解放」であり、救済した人々の魂を次の新しい世界に迎え入れる準備といった役割だ。ゆえにライトニングは「解放者」という存在で、時にかつての仲間たちと思想の違いから刃を向けあったり、協力しあったりしていく。

ワールド内には、朝・昼・夜と時間の概念が備わっている
「FF13-2」で主人公の1人だったノエルと対峙する場面も

 「FF13」はフィールド内を探索できるポイントが限られており、ストーリーを中心にゲームが進む。続編「FF13-2」ではより自由度が増して、各時代を行き来するといった遊び方も生まれている。そして今作では、刻一刻と時間が進んでいくフィールド内でメインクエストを中心に、多様なサイドクエストやモンスター討伐といった、広大な世界を旅するのが魅力となっている。

 夜しか出現しないモンスター、特定の時間帯でしか発生しないサイドクエストなど、プレーヤーがその手でフィールド内を自由に探索し、発見する遊びが盛り込まれていった。日数の期限付きではあるものの、従来多くのプレーヤーたちに求められていた「FF」シリーズの自由度は本作で独自に担保され、純粋に楽しい「FF」に仕上がったと言えるだろう。発売当時、筆者自身ものめり込むようにして最後まで没頭できたし、4つの地域で異なる文化、特色が広がっているのはテーマパークのようで新鮮だった。3部作の中でもっとも「フィールド探索」に舵を切っている作風である。

 「FF」シリーズは毎作新しい試みに挑戦し、プレーヤーにいつも異なる体験を提供してくれる。それらがすべての人に受け入れてもらうことは難しいかもしれないが、たとえナンバリングのスピンオフでも、挑戦する気概を学生ながらコントローラー越しに感じ取っていた。

今作登場の神ブーニベルゼを信奉する宗教団体の力が根強い地域「光都ルクセリオ」
砂漠と遺跡が広がる地域「デッド・デューン」

ATBの新境地、一人三役のハイスピード着せ替えバトル

 「FF」シリーズ特有のバトルで基本的に一貫しているのが、「ATB(アクティブタイムバトル)」システムだろう。これは、戦闘中ATBゲージが溜まったキャラクターから行動できるという、リアルタイム進行のコマンドバトルを指しており、スーパーファミコンの「ファイナルファンタジーIV」から採用されてきた。

 「FF13」および「FF13-2」のバトルシステムはATBの進化系と言えるもので、パーティメンバーのロール(役割)を戦況に応じて切り替えながら戦う「オプティマチェンジ(パラダイムシフト)」と呼ばれる要素や、敵のチェーンゲージを溜めてブレイク状態を誘発し、一気に攻め込む爽快感を得られる。しかし、今作「ライトニング リターンズ」はパーティメンバーすらおらず、攻撃役・盾役・回復役と、それぞれの役割をライトニングが全てこなしていく必要がある。

「ウェア」集めも今作の主な醍醐味。中には「FF7」や「FF10」、「FF6」など、過去のナンバリングタイトルをモチーフにした衣装も登場している

 作中には多種多様なウェア(衣装)が登場しており、衣装ごとに性能やスキル、得意な役割も全て異なる。バトル中は、プレーヤーが設定した3つの衣装を切り替えながら戦闘を進めていくシステムだ。ATBを用いた基本的な流れは「FF13」「FF13-2」と同じだが、より発展したものになり、アクションRPGライクなバトルに変化を遂げている。

 具体的には、ATBゲージがある限り絶え間なく行動し続けられるというものだ。しかし、衣装を変更しないとゲージ回復には時間がかかるため、既にATBゲージが溜まっているほかの衣装に切り替えていく必要があるワケだ。ゲージを使い切ったら衣装を変えてまた攻撃と、スピーディな戦闘が楽しめる一方で、前2作品に比べれば、バトルの難易度も比較的優しい印象を受けるものになった。

 衣装を素早く切り替えて一人三役で戦うのは、アクションゲームにおいて多く見られる「戦況に応じて形態を変化させる」、「武器を切り替える」などの要素に近いだろう。思えば「ファイナルファンタジーXV」以降、バトルのアクション性が大きく増してきている。「FF13」もスピード感溢れるATBだが、この時はまだ“RPG”としての様相を保ったままであった。

 今作「ライトニング リターンズ」は、大まかに表現しても「RPG」と「アクションRPG」の丁度中間に位置する、ジャンルの曖昧なゲーム性だ。「FF」シリーズのバトルシステムがアクション方向へと変化している“途中の作品”と言ってもいいかもしれない。実際には「アクションRPG」こそが、RPGとアクションの間に位置するようなもので、今作のようなゲーム性に関して言えば、もうアクションRPG側のゲームと言われそうである。しかしながら、今作をアクションRPGに定義付けるのは、また違うのではとも考えてしまう。

 今作をプレイしていた頃、「ここまでアクション寄りなら、アクションRPGでも良い気がする」と考えたのはもちろんだ。筆者と同様に感じたプレーヤーが、当時どれほど居たのかは定かではないし、今はそれを確かめるのも難しい。ただ、ATBの進化系と言えるバトルを採用した「FF13」の延長にあるタイトルだからこそ、“アクション性の強いRPG”という独特のバトルが楽しめたのではないだろうか。少なくとも筆者は、そのように解釈しておこうと思う。

ライトニングというやや特異な立ち位置の「FF」主人公

 ナンバリングタイトルの中でもライトニングというキャラクターは、特異な位置付けの人物だろう。声を担当するのは「ファイナルファンタジーVII」のヒロイン「エアリス・ゲインズブール」でお馴染みの坂本真綾氏だ。筆者は学生時代からのファンであったが、声優以上にアーティストやエッセイストとして強く認識していたのを覚えている。今でこそ人気アニメ作品などでラスボス級のキャラクターを演じたりもしているが、学生時代の短く、淡い青春をゲームと共に過ごしたあの時代は、もっぱらライトニングのイメージが強く筆者の中で焼き付けられていた。

 そんな坂本真綾氏の演じるライトニングはキャラクター人気も当然あるのだが、ゲームというメディアを超えて、「LOUIS VUITTON(ルイ・ヴィトン)」や「PRADA(プラダ)」といった世界的ファッションブランドのバーチャルモデルとして、コラボレーションしていたことがある。かと思えば、今度は大手コンビニエンスストアチェーン「ローソン」の店員として、ローソン公式キャラクター「あきこちゃん」と共に働いていたりもしていた。こんな「FF」の主人公はほかにはいなかったはずだ。

「LOUIS VUITTON(ルイ・ヴィトン)」のキャンペーン(画像はルイ・ヴィトン公式ページより)

 このように、「FF」シリーズの中でも扱いがやや特殊な主人公キャラクターであり、それが奇妙な人気の理由にも繋がっていたのだろう。ライトニングのこういった話題性強めなポジションは、後に「FF15」の主人公・ノクティスへと受け継がれていったような気がする。

 ちなみに作中においては、軍人から人類の脅威→女神の騎士→魂の解放者と、その立場も大きく変えていくのを忘れてはいけない。「FF13」では大切な妹をクリスタルにされた挙句、人類の敵として指名手配され、「FF13-2」では人知れず不可視の世界で戦い続けている。「ライトニング リターンズ」にて、ようやく救世主のような扱いを受けるが、一部の仲間たちから敵視されたり、神の計画に利用されかけたりと、相変わらず散々な目に遭う始末である。これら一連の流れは作中で数百年単位の時間が経過していたりするため、「FF」シリーズ随一の苦労人と言っても過言ではない。

 「ライトニング リターンズ」でライトニングの物語は決定的に完結を迎えたが、これから先、新たな活躍がどこか別のメディア、あるいはタイトルで、再び目にできることを楽しみにしている。

□Steam版「ライトニング リターンズ ファイナルファンタジーXIII」のページ