【特別企画】

「ファイナルファンタジーXIII」が本日13周年! 「FF」コマンドバトルの歴史の最高峰

ドラマティックな演出も魅力

【ファイナルファンタジーXIII】

2009年12月17日 発売

画像はSteamより

 スクウェア・エニックスの「ファイナルファンタジーXIII」(以下、「FFXIII」)が、本日で発売13周年を迎えた。本作はプレイステーション 3用RPGとして2009年12月17日に発売。本日は「FFXIII」の“13”周年ということで、本稿では「FFXIII」について振り返りたい。

【FINAL FANTASY XIII Final Trailer】

 本作を含むプロジェクト「FABULA NOVA CRYSTALLIS」では、「FFXIII」三部作、「ファイナルファンタジー零式」、「ファイナルファンタジーXV」等の関連作品が1つの神話世界を共有しつつ、それぞれ別の物語として展開された。そのためこれらの作品では「ルシ」など、いくつか共通の言語が登場する。その「FABULA NOVA CRYSTALLIS」の原典とも言えるのが、「FFXIII」だ。

 本作の物語の用語は少々複雑なので、改めておさらいしよう。

 世界は広大な地上世界「グラン=パルス」と、その上空に浮かぶ球状の世界「コクーン」の2つに分かれており、2つの世界は数百年前に黙示戦争を起こしていた。黙示戦争以来、コクーンは鎖国状態となり平和だったのだが、ある日コクーンの内部からパルスの遺跡が発掘され、その中に眠っていたパルスの神的な存在(※正確には神ではない)である「ファルシ」によって、主人公ライトニングの妹・セラが「ルシ」に変えられてしまう。

 なおルシとは、ファルシによって使命を与えられた者のことで、使命を果たせなければ「シ骸」という魔物になり、使命を果たしたとしてもクリスタルになってしまう。しかも使命といっても基本的には漠然としたビジョンが見えるだけで、何かをしろという具体的な指令を受けるわけではない。

 「コクーン」、「パルス」、「ファルシ」、「ルシ」など、本作の重要な用語を思い出したところで、本稿を進めていこう。

とんでもなく美しいグラフィックスとそれを活かした世界作り

 ハードをPS2からPS3に移したことによって進化したのが、とにかくとんでもなく美しいグラフィックスだった。ムービーが綺麗なのは「FFXIII」に始まったことではないが、リアルタイムレンダで描かれるグラフィックスも素晴らしかった。あの映像美に感動した人は多いはずだ。

 そしてその映像美を盛り上げたのが、浜渦正志氏によるドラマティックな音楽である。特にゲーム冒頭の「運命への反逆」〜「ブレイズエッジ」の流れには、思わず鳥肌が立ったものだ。

 また、通常戦闘曲である「閃光」も、ノーマルバトルの曲とは思えないほど壮大な1曲に仕上がっている。それでいて戦闘のスピード感と緊張感を煽るバトル曲は「FFXIII」のメインテーマとも言える曲で、聞く人を虜にした。また「閃光」のピアノアレンジとも言える「ライトニングのテーマ」は一転してしっとりとした雰囲気となり、ピアノの音が美しいメロディアスな1曲となっており、主旋律が同じながらもこんなに雰囲気が変えられるものなのかと驚いたものだ。メロディの強さと、主人公・ライトニングの大人な女性としての雰囲気が大変マッチしており、使われているシーンも絶妙だった。

 これは人にもよると思うが、筆者の中で思うゲーム音楽とは、ゲームという体験を盛り上げてこそのところがあると思う。そんな中、「FFXIII」の音楽はまさに筆者のその理想の、体現であった。美麗なグラフィックスと、主人公ライトニングらの状況、カットシーン、それにマッチする耳馴染みの良い音楽。「FFXIII」という作品は、音楽との相乗効果によって、より一層完成されたものになったのだと思う。

画像はSteamより

多大な人気を博した主人公・ライトニングさん

 本作は、「FF」シリーズの中でも数少ない、女性が主人公の「FF」シリーズだ。主人公はかっこいい女剣士のライトニングさん(ここはあえて敬称込みで呼ばせてほしい)。「前だけ見ていろ」という言葉をかけるシーンがあるが、実際ライトニングは凛とした女性で、常に自身の中に一本強い芯を持っており、前を見て突き進む強い女性だった。

 それは偏に物語の冒頭でパルスのファルシのルシとなり、そしてやがてはクリスタルになってしまった妹のセラを救うためだったのだが、妹を救うためとは言え、ブレずに自分を持ち続けるというのは並大抵の精神力ではない。そんな”強い女性の象徴”だったライトニングさんは、なんとゲームキャラクターとしては恐らく初であろう、有名な世界的ブランドのルイ・ヴィトンとのコラボまで果たしてしまう。

さすがライトニングさん、カッコいい! (画像はルイ・ヴィトン公式サイトより)

 だが、本作の面白いところはライトニングだけを操作するわけではないところだ。シーンによっては、ライトニングとは別行動をしているキャラクターを操作したり、またライトニングと共に進むシーンであっても別のキャラクターを操作することもある。

 これは本作がそれだけ”キャラクターの魅力と成長”に焦点を当てていたからであり、色んなキャラクターに愛着を持ってもらいたかったが故だろうと筆者は考えている。

 特に本作の中でも成長が著しいのは、最初こそずっとライトニングの背に隠れていた少年・ホープだ。ホープはゲーム中で登場するとき、まだ14歳という年齢で、年相応の少年らしい姿を見せる。まともに戦ったことすらない普通の少年だったホープが、スノウへの憎しみで絶望の淵から這い上がり、ライトニングに背中を押され、前述の「前だけ見ていろ、背中は守る」のセリフと共に、パルスのルシとしてコクーンの兵士に追われながらも一生懸命前に進んで、やがてはスノウへの憎しみを自身の中で昇華していく姿には、胸を打たれるものがあった。

 こうしたキャラクターの成長はホープに限ったことではない。ライトニングの妹・セラの婚約者であるスノウ、パルスのルシであるヴァニラとファング、コクーンのルシを子供に持ったサッズ、それぞれが旅路の途中で様々な成長を遂げてゆくのが本作の物語の面白さを生んでいた。そんなキャラクターたちの心の葛藤と共に現われるのが、ルシの試練となる召喚獣である。召喚獣の試練に打ち勝つことで、彼らは大きな山を越えて成長する。その成長を見守るのも「FFXIII」の良さのひとつだった。

バトルシステムはコマンドバトルの完成形

 「FFXIII」のバトルはATB(アクティブタイムバトル)とジョブシステムを合わせたようなものとなっており、アクションを伴わないコマンドバトルの完成形は「FFXIII」だと言っても過言ではないだろう。

 「FFXIII」ではジョブでこそないものの、各キャラクターにロールが割り当てられており、アタッカー(A)、ブラスター(B)、ディフェンダー(D)、ジャマー(J)、エンハンサー(E)、ヒーラー(H)の6種類の中から自分で自由に編成(オプティマ)を組み、バトル中に都度”オプティマチェンジ”でロールを切り替えながら戦う。

 序盤でこそ各キャラクターに得意なロールがあり、そのロールにしかチェンジができないという制約があるが、ゲームが進むと全キャラクター全てのロールが開放され、例えば「ディフェンダー・ディフェンダー・ディフェンダー」、「ヒーラー・ヒーラー・ヒーラー」といった組み合わせのオプティマも組むことができるようになる。一番よく使うオプティマは「アタッカー・ブラスター・ブラスター」、「アタッカー・ブラスター・ヒーラー」、「アタッカー・ディフェンダー・ヒーラー」あたりだったというプレーヤーが、大半のはずだ。

 ただ、「FFXIII」では、特にボス戦の難易度が高く設定されており、この無難な構成だけでは乗り切れない場面が多かった。例えば「ジャマー・ジャマー・エンハンサー」といったオプティマで敵にデバフをかけつつ、味方を強化してから「アタッカー・ブラスター・ブラスター」に切り替えないと攻撃が全く通らない、というような場面もあり、いかにどの場面でどのオプティマにするかの判断を求められるというやり応えを見せてくれる、非常に面白いバトルだった。

 もちろん、一見無意味なように見えるディフェンダー3人構成のようなオプティマも実は非常に重要で、守りに徹するというような場面では「ディフェンダー・ディフェンダー・ディフェンダー」構成が火を噴く。

 ただそれも、敵の攻撃がくる、という瞬間に即座にオプティマチェンジができなければ意味がない。ずっと3人ディフェンダーのままでは敵にダメージが与えられないままだからだ。例えば「アタッカー・ブラスター・ブラスター」から敵の反応を見て即座に「ディフェンダー・ディフェンダー・ディフェンダー」、敵の攻撃を耐えきったら「ヒーラー・ヒーラー・ヒーラー」で一気に回復してまた「アタッカー・ブラスター・ブラスター」でブレイクを狙いにいく、というような、アクションを伴わないのにアクションバトルのような臨機応変さを求められるコマンドバトルで、これぞコマンドバトルの完成形と呼ぶに相応しい作品である。

 また、最終的に全キャラクター同じロールになれると言っても、使えるアビリティには差があるのも良かった。

 例えば、雑魚といえどもボス並みの強敵「アダマンタイマイ」戦で最も使われたであろう「デス」はジャマーで覚えるアビリティだが、デスを覚えるジャマーはヴァニラひとりである。そのためタイマイ戦にはヴァニラが必須であった。ちなみにタイマイ(トータス)戦の流れは「閃光のスカーフ」、「ダッシューズ」を装備したヴァニラが開幕ヘカトンケイルを召喚、ダウンしたタイマイにヴァニラがひたすらデスを連発し、デスが効かなかった場合はリスタート。ただこれだけだったが、この”デスゲーム”に熱くなった人も多くいたのではないだろうか。

 アルカキルティ大平原で受けられるミッションではまさに本作のオプティマチェンジを駆使しなければならない難敵が多い。本来であればなかなか使わないようなオプティマを上手く駆使したり、上記のように「一部のキャラクターしか覚えないアビリティが必須」というようなものが多く、全キャラクターを万遍なく使える工夫がされていた。

 筆者は「FFXIII」のバトルは歴代「FF」のバトルシステムの中でもかなり上位に食い込むほどいい出来だと思っている。言ってしまえば、歴代「FF」の中で1位かもしれない。

 ただし、前述の通り漠然と「アタッカー・ブラスター・ブラスター」、「アタッカー・ブラスター・ヒーラー」あたりだけを中心に戦っていてはボスには到底勝てない難易度であり、特に後半になると雑魚敵でもブレイク必須になってくるのになかなかブレイクできないというバランスになる。

 そんな中、ジャマーやエンハンサーが必須なバランスになっていることにどれほど早く気付けるかによって、バトルの難易度が全然変わってしまうという点については賛否両論あるのだが、気づきさえすればこれほど面白いバトルはなかなかない。

 苦戦したボスも、ちょっとオプティマを変えてみれば「あれ?」というくらい楽になる、ということもままある。むしろ苦戦する敵は、根本的にオプティマを間違えているといっても過言ではない。それもあって、バトルにはリスタート機能があり、全滅した場合エンカウントの直前からやり直しができるという、「FF」にしては珍しいバトルシステムになっていた。ボス戦でもリスタート時にメニュー画面を呼び出すことが可能で、オプティマを変更したりすることができるようになっており、逆に言えば”やり直し前提のバランス”とも言える難易度だった。

画像はSteamより

「FFXIII」の13周年という年に、そろそろHD-BOXとか出しませんか?

 知っている人も多いと思うが、「FFXIII」は後に「FFXIII-2」、「LIGHTNING RETURNS FFXIII」と続き、全三部作(実際にはその後、さらに小説がある)からなる作品だ。とは言え、「FFXIII」だけで完結していないのかというと、「FFXIII」は「FFXIII」で物語が終わっているのだが、個人的にはこのライトニング三部作まであわせて大好きだ。なので、そろそろ期待したいのがライトニング三部作のHDリマスターBOXである。

 PS5が発売になってから、もう約2年。「PS3はもうしまっちゃったなぁ……」というファンも多いのではないだろうか。筆者もそう何台もゲーム機を置ける環境ではないため、PS3には現役を退いてもらって久しい。

 そのため、「FFXIII」を現在遊ぼうとするとPC版かXbox Series X|Sでダウンロード版を購入するなどの手段になってくるのだが、筆者のPCは残念ながらゲームができるほどスペックが高くない。なので、筆者もそろそろ「FFXIII」三部作などのいくつかのソフトのためにXbox Series Sを買おうかな、と真剣に考えているところだ(本当は360版のディスクが無駄にならないXが欲しい……)。

 同じことを考えるプレーヤーが多いのか、今でもXboxシリーズのダウンロード版ソフトでは高い売り上げを誇る「FFXIII」だ。なお現在「FFXIII」を4K HDRで遊べるのは、Xboxシリーズのみ。新規プレーヤーも多いのだと思うが、いずれにしても「FFXIII」好きのひとりとしては、喜ばしい話である。

画像はSteamより

 「FF」は「XIII」を最後に、コマンドバトルからは遠のいている。「FFXIV」はMMOということもありコマンドバトルとは違うシステムを取り入れているし、「FFXV」は限りなくアクション寄りでコマンドもある、くらいの作品だった。そして次回作の「FFXVI」は完全なアクションバトルになると明言されているので、もしかしたら「FF」の純然たるコマンドバトルは、この「FFXIII」が最後かもしれない。

 果たしていつか時代を逆行してまたコマンドバトルへと回帰するのか、はたまた「FF」は「XVI」以降もアクションへと突き進んでいくことになるのかは筆者にもわからないが、ひとつの時代の終焉かもしれない「FFXIII」を、ぜひまだ遊んでいない人にはプレイしてほしいし、この記事を読んで懐かしんだ人には再プレイをしてみてほしいと思う。

 「FFXIII」13周年、心からおめでとう!