【特別企画】

「十三機兵防衛圏」今日で4周年! 記憶を消してやり直したいゲーム、ナンバーワン!

【PS4版「十三機兵防衛圏」】

2019年11月28日 発売

 アトラスが2019年11月28日に発売した、プレイステーション 4用ドラマチックアドベンチャーゲーム「十三機兵防衛圏」が本日で発売4周年を迎えた。

 「十三機兵防衛圏」は、「オーディンスフィア」や「ドラゴンズクラウン」などで知られるヴァニラウェアが開発を手掛けており、2022年4月にはNintendo Switch版も発売された。

 本作は1985年の日本を主な舞台とし、13人の少年少女たちが大型ロボット「機兵」に乗り込み、突如世界に現れた怪獣と戦うストーリーだ。……というのが、表向きのストーリーであることを、本作をプレイした人は誰もが知っていることだろう。

 本作は昭和レトロな時代を舞台にしたゲームではなく、1945年、1985年、2025年、2065年、2105年という過去から遠い未来までを舞台にした純然たるSF作品。そして本作をプレイした誰もが「記憶を消して、この素晴らしい作品をもう一度気持ち新たにプレイし直したい」と思うのではないだろうか。

 本稿では、4周年のお祝いと共に、「十三機兵防衛圏」がどのようなゲームなのかを改めておさらいしたい。なお、まだまだこれからも新規プレイヤーが増えてほしい作品だけに、本稿は極力ネタバレに触れないようにしている。これからプレイしたい人に参考にしてもらえれば幸いだ。

 ちなみに、本作はPS Storeの「歳末感謝セール」にて50%オフ(7,678円→3,839円)のセール中だ。期間は12月20日23時59分まで。本稿を読んで気になったかは購入を検討してほしい。

【十三機兵防衛圏 PV#01】

13人の主人公たちが織り成す群像劇

 「十三機兵防衛圏」には、全部で13人の主人公たちらが登場する。まずは「追想編」で13人の登場人物の中からひとりを選んでプレイし、途中でロックがかかったらまた次の主人公を選んで、ロックがかかったらまた別の主人公……と進めていくのが特徴だ。

 この13人の主人公は、どういう順番でプレイしてもいいようになっている。見た目が好みのキャラクターから始めるのも良いし、むしろ好みのキャラクターは後回しにしたいというタイプの人もいるのではないだろうか。

 この13人の主人公たちは非常に複雑な関係となっており、時には1945年に登場したキャラクターが1985年に登場したり……と、最初のうちは訳がわからず戸惑うこと間違いない。しかも、登場する年代によって名前が違うキャラクターもいたり、名前だけではなく見た目まで違うキャラクターもいる。名前や見た目が違うのに「これはあのキャラクターだよな……?」とわかるのは、偏に声優のおかげだ。

 本作では13人の主人公やその他の重要人物らも、”声”が非常に重要な役割を果たしている。本作では意味もなく、同じ声優が多数のキャラを演じているわけではなく、同じ声優が演じているということは少なからずそこに何らかの意味があるのだ。

 もちろん、声の演技は重要ではあるものの、聞き分けができなければ本作が楽しめないというわけでは全くない。聞き分けができないならばできないで、「え、このキャラクターって、ここでつながっていたの!?」と、さらに新鮮な驚きを味わうことができるだろう。

 例えば、本作の13人の主人公のひとり、鞍部十郎は1985年の世界に生きる高校一年生。数名からは、「鞍部十郎」ではなく「和泉十郎」と呼ばれる。だが、鞍部十郎は和泉という名に心当たりはない。そして13人の主人公のひとり、薬師寺恵の物語では、2024年に鞍部十郎と変わらない姿で和泉十郎が登場する。果たして、鞍部十郎と和泉十郎の関係性とは?

鞍部十郎。ロボットや怪獣ものの映画が大好きで、極々平凡な高校一年生

 ……というように、13人の物語を追っていくことで、13人の関係性と、緻密に張られた伏線、物語の真髄に迫っていくのが「十三機兵防衛圏」なのだ。

 前述の通り、13名の主人公はいずれも機兵に乗り込んで戦うことになるのだが、そもそも機兵とは何なのか?13人の主人公たちは年齢や生きている時代も違うのに、何故1985年の世界で機兵に乗って共に戦うことになるのか?

13名の主人公たちは、いずれも機兵に乗って戦う

 全ての謎は、13人の主人公の物語を辿っていくことで、やがて解き明かされる。そのあまりに壮大な物語は、プレイした全ての人を感嘆の渦に巻き込むことだろう。そして、いずれクリアを迎えた時に、思うのだ。「記憶を消して、もう一度この素晴らしい感動を味わいたい」と。

 最初は「見た目が好み」くらいの感覚で始めたストーリーが、クリアする頃にはどのキャラクターも好きになっていたりする。どの主人公をプレイしても、驚きがある。気づきがある。純粋に好きになったからこそ、プレイしていて楽しい。もともと気になっていたキャラクターは、クリアする頃には「好き」という想いが超重い愛へと変わるくらい、大きな感情を抱えてしまう。13名全員に愛着が湧くようなストーリー構成になっており、これが実に見事なのだ。

さりげなく筆者の推し・郷登先輩をアピール。13名も主人公がいるので、推しパラダイスになるのも嬉しい。一方で公式から発売されたアクリルスタンドなどのグッズは、13名(+α)全員揃えるのが大変だった。これも愛である

バトルはシミュレーション。機兵に乗り込んで戦う

 本作には、部隊を編成して“怪獣”と呼ばれる敵から拠点を守るリアルタイムシミュレーションバトルがある。実際にはリアルタイムシミュレーションというよりもタワーディフェンスに近いバトルシステムになっており、タワーディフェンスと大きく違うのは、ユニットが自動で攻撃をしないため、逐一攻撃の指示を出してやる必要がある点だ。

 リアルタイムシミュレーションと聞くと、純粋なアドベンチャーゲームをやりたい人にとっては少々身構えてしまうかもしれないが、ストーリーだけを中心にやりたい人向けのCASUAL、バトルもストーリーも楽しみたい人向けのNORMAL、やり応えのあるバトルを楽しみたい人向けのSTRONGと難易度は三段階あり、しかもゲーム中いつでも変更可能、難易度によるストーリーの変化はないため、誰でも楽しめるようなバトルになっている。

 基本的には近接型(第一世代)、万能型(第二世代)、遠距離型(第三世代)、飛行支援型(第四世代)の4つの機兵を、怪獣との相性にあわせて出陣させて、ステージごとに設定されたミッションをクリアすることが目的だ。

 例えば敵が飛行型の場合、近接型となる第一世代の機兵はそのままだと攻撃が当たらず相性が悪い。一方で大型の敵機相手には、第一世代の高火力を叩き込んで殲滅するのが良い。ただし、第一世代は耐久力がそこまで高くないので、高火力だけを頼りに一機で敵陣に突っ込むと、あっさりやられてしまったりもする。そこを飛行支援型の第四世代の機兵などで上手く支援してやる必要がある……、といった風だ。

 そしてひとくくりに第◯世代の機兵、と言っても、キャラクターによって兵装が違うので、自分の戦い方にあわせてどの世代のどのキャラクターを出陣させるかを変えていくことになる。

 しかし、当然ながらいきなり全機兵を使えるわけではなく、まずはひとりの出陣から始まり、ゆっくりとシステムを覚えながら、二人、三人と扱えるキャラクターが増えていくので、バトルは難しいことはない。

 歯応えのあるシミュレーションがやりたい、という人は難易度STRONGにすれば、機兵の世代とキャラクター、敵機との相性をより深く考えながらプレイできる。それでもいわゆるシミュレーションバトルとしては難易度は低めに設定されているが、そこは物語重視のゲームということもあって、納得してほしいところだ。

 バトル画面は少々寂しい感じもあるが、アドベンチャーパートの物語を補完するバトルパートといった風な立ち位置でもある。アドベンチャーパートで紡がれた物語の良さをバトルパートでもきちんと引き継いでいるので、バトル画面が簡素でも気にならない。

 また、大範囲攻撃などで敵の大群を一気になぎ倒したりもできるので、一見変わり映えのしない画面が並ぶバトルに見えると思うが、爽快感を味わえるバトルバランスは絶妙だ。

 アドベンチャーパートばかりがフィーチャーされがちな本作だが、筆者としてはバトルパートもぜひ推したい。

 アドベンチャーパートの話をしていると、「バトルパートは不要なんじゃないか」と思われしまいそうだが、本作ではバトルパートがあるからこその演出もあり、バトルパートがあってこその感動を得られる。

 特にバトルBGMはいずれも秀逸。本作のBGMは「タクティクスオウガ」や「ファイナルファンタジーXII」などの楽曲を担当した崎元仁氏率いるベイシスケイプが担当しており、そのクオリティは非常に高いものとなっている。

 バトルの進行度(フェーズ)に応じてインタラクティブに音楽が変わる手法はRPGなどでは良く見かけられるが、シミュレーションバトルでは珍しく、本作のバトルをよりドラマチックに盛り上げるのにひと役買っている。

 ちなみに本作の「音」が果たしている役割については、2019年2月に発売されたオリジナルサウンドトラックにあわせてインタビューを行っている。ネタバレが多いため、これからプレイする人に向けた内容ではないが、もし本作を既にプレイしたプレーヤーはぜひこちらの記事にも目を通してほしい。

まだまだたくさんの人にプレイしてほしい名作中の名作

 アドベンチャーゲームとシミュレーションバトルを融合させた本作は、非常に完成度が高い。一枚のスクリーンショットからはその良さがなかなか伝わりにくい作品だが、アニメーションとキャラクターの台詞のテンポが良く、そして何といっても13名の主人公たちの物語をここまで構築したところは素晴らしい。

 もしも本作が小説だったなら13名もの主人公がいることで頭がこんがらがりそうなのだが、これがアドベンチャーゲームという作品になったことにより、視覚で様々な情報を補うことが可能となっている。

 また、一度に表示されるテキストは本当にシンプルなため、「文章を読むのが苦手」という人にも非常に取っつきやすいゲームデザインになっているのだ。

 全ての記録を網羅した後、その達成感と共に「記憶を消して、もう一度この13人が描くパズルのような物語に触れたい」と思わされる、そんなタイトルが「十三機兵防衛圏」だ。

アドベンチャーパート、バトルパート、アーカイブ、全てを100%にした達成感。やり切った想いと共に、この素晴らしいゲームをもうゼロの気持ちでは遊べないのだという残念感も過った

 4周年を迎えた今でも、まだまだたくさんの人にプレイしてほしい。そんな想いを込めて、お祝いの記事を寄せさせてもらう。