【特別企画】

「ファイナルファンタジーVIII」発売24周年!「だったら壁にでも話してろよ」身も凍るスコールの名セリフが光る

【ファイナルファンタジーVIII】

1999年2月11日 発売

画像は全てリマスター版より

 スクウェア(現スクウェア・エニックス)より1999年2月11日に発売されたプレイステーション用RPG「ファイナルファンタジーVIII」(以下「FFVIII」)が、本日発売24周年を迎えた。

 主人公は、兵士養成学校バラムガーデンに所属する青年スコール・レオンハート。スコールはガーデン所属特殊部隊であるSeeDを目指しており、物語はスコールがSeeDになる直前の試験から始まる。スコールがやがてSeeDになり、学園での様々な仲間との出会い、そして運命の少女・リノアと出会うことで、その人生が大きく動き出す。

 本稿では「FFVIII」こそが「FF」史上最高の「FF」と信じてやまない筆者が(異論は認める)、改めて「FFVIII」の思い出や魅力について振り返っていきたい。なお、ネタバレとなる要素も含まれているので注意してほしい。

【『FINAL FANTASY VIII Remastered』プロモーションムービー】

「FFVIII」史上最高の名セリフ「だったら壁にでも話してろよ」

 先日筆者は、「FFVII」が自分史上最高の周回数を数えた「FF」と書いたのだが、実は筆者にはそんな「FFVII」(特別名誉枠)よりもさらに好きな「FF」がある。それが「FFVIII」である。

 一体何がそんなに筆者を虜にするのかというと、寡黙で人との距離を置きたがる青年・スコールの存在が非常に大きい。端的に言うとスコールが好きなのだが、ここではそれよりもスコールがしばしば呟く(心の声の場合もあるが)苛烈なセリフについて語っていきたい。

 トラビア・ガーデンで幼馴染だったことが明かされるイベントの中で仲間のアーヴァインに対して、

 「アーヴァイン? 悪いな、おぼえてない」

 という酷いセリフを吐くのはまだまだ序の口だ(心の声なので本人には伝わっていないが)。

 「FF」界でもこれほどツッコミの上手いキャラクターを見たことがないと話題になるスコールの鋭いツッコミといえば、まず上がるのはこのセリフだろう。

 フィッシャーマンズ・ホライズンでの「そもそも、この『F.H.』という名の由来のイメージは『漁師』……『地平線』……すなわち『フィッシャーマンズ・ホライズン』だ」(中略)というおじいさんのセリフに、

 「なぜ『地平線』に『漁師』なんだ?」

 とすかさずツッコミ返すスコール。さすがである。本当に他人と関わるのが嫌いなのか疑問レベルのツッコミ力だ。

スコールのツッコミ力はこれだけに留まらない。「サイファー派」という雷神風神にはこのツッコミである

 そんなスコールの最大の名言といえば、キスティスの愚痴を聞いていたスコールの時のセリフ。「話を聞いてくれるだけでいい」のだというキスティスに対して、

 「だったら壁にでも話してろよ」

 と言い放つスコール。血も涙もない。

「だったら 壁にでも 話してろよ」スコール心の俳句 ※ただし声に出ている

 しかし、ふと振り返ってみれば、これは今のSNS社会を24年も前から先取りしていたセリフではないだろうか。実際、今SNS上でも、とにかく心の裡を吐露したい時に「壁打ち」をして気分をデトックスしている人たちも多くいるはずだ。それとまさに同じである。

 奥が深すぎる「FFVIII」。24年も前から、壁に向かって話す現代を予想しきっている。ただどちらにしても言われたほうは身も血も凍るようなセリフである。

 一応弁明しておくと、この時スコールはサイファーとの訓練でスコールの象徴とも言える顔への傷を負い、そのあとSeeD試験の受験資格を得るためのイフリート戦をこなし、そのままSeeD試験へ。無事合格したはいいもののSeeD就任記念パーティへと駆り出され、その上そこではリノアに引きずり回されるという状態で、相当疲れていた状況なのは間違い。そんな中で教師から呼び出しを受けて、何かと思えば愚痴を聞かされたとあってはこんなセリフのひとつやふたつ出るかもしれないものの、恐らく実際に口にした時点で人間関係は間違いなく破綻する。

 ひたすら他人を拒絶しているくせに、何故か人望のあるスコールだからこそ(所詮イケメンが正義感もあるが)許されるセリフであるのは間違いない。筆者はそんなセリフを容赦なく吐くスコールが好きである。

 実はスコールよりサイファーのほうが推しだが、サイファーはただひたすら問題児で、場をハチャメチャにしているだけのキャラクターと言ってしまえばそれまでなので、彼には「いつか聞かせてやるさ!俺のロ〜〜〜マンティックな夢をな!」というセリフを永遠に胸に抱いたままでいてほしい(ちなみにサイファーの夢とは魔女の騎士になることである)。

うんうん、そうだねサイファー(母の顔)

 なお、ものすごい小ネタだが、MMORPG「FFXIV」の「希望の園エデン」に主に出てくるキャラクター・ガイアが「話し相手が欲しいなら、壁にでも話してなさいよ!」というセリフを言う。「希望の園エデン」はそもそもが「FFVIII」オマージュの多いコンテンツだけに、恐らくこのセリフも「だったら壁にでも話してろよ」へのオマージュだと思われる。

「FFXIV」のガイアのセリフ。なおこの後目を覚まさないリノアに対して話しかけ「これじゃ壁に話してるのと同じだ」と呟くスコールへのブーメラン同様、ガイアも同じブーメランを喰らっているところまでがオマージュ。そしてガイアの背後に見えるのがエデン。「FFVIII」好きならば見覚えのある姿のはずだ

実は奥深い、「FFVIII」の育成システム

 「FFVIII」といえば、ひたすらドロー、ドロー、ドロー、魔法が100個になるまでひたすら敵からドローし続けた、という印象が残っているプレーヤーも多いのではないだろうか。だが、実は「FFVIII」にドローはほぼ必要がない。

 「FFVIII」の育成システムは非常に複雑だが、奥が深い。筆者も1周目は勘違いをしたまま、ジャンクションも大してまともにせず、ひたすらドローをして貯めた魔法だけをちゃちゃっと装備させて考えなくレベルを上げ、後半になって超大苦戦をした身である。

 「FFVIII」が賛否分かれた原因の多くは、この育成システムにあると言ってもいいだろう。特に一番大きかったのは、「自分のレベルが上がれば敵のレベルも上がる」点にあると言っても過言ではない。大概のゲーム……特にRPGであれば、勝てない敵がいたらレベルを上げればいい。

 しかし「FFVIII」は自分のレベルを上げれば敵のレベルも上がってしまう。だがこれは言い換えればレベルが低ければ敵もレベルも低いということであり、 「FFVIII」はいかにレベルを上げずに自軍を強化するか にかかっていると言っても過言ではないのだ。

 そのための強化システムがジャンクションである。

ガーディアンフォースのアビリティでまず真っ先に覚えたいのが、各種ステータスへのジャンクション

 ジャンクションについては、魔法を各種ステータスに装備する、というわかりにくいシステムだったことは事実である。攻撃にアルテマ100個を装備すれば、ズバーンと攻撃力が上がる。HPにケアルガ100個を装備すれば、最大HPがどーんと上がる。よくわからない時は「さいきょう」コマンドで自動的にジャンクションしてもらえばOK!

 という、たったこれだけのことなのだが、レベル制に慣れてしまっていると「レベルが上がれば自軍もそれに見合った強さになる」という感覚からどうしても抜け出せなかった。筆者もジャンクションの真髄に気がつくまでは本当に苦労したものだ。

 けれど、アルテマ100個も用意できないよ……というプレーヤーのためにあったのが、「天国・地獄に一番近い島」で、ここではアレイズ、アルテマ、フレア、クエイクなど、「FFVIII」での最強魔法が延々とドローポイントからドローできた。

 また、ドローを使わずに魔法を得るために必須だったのが、「FF」シリーズでも屈指のミニゲーム「カードゲーム」(トリプルトライアド)だ。実際に重要なのはカードゲームそのものよりも、そのためにカードが重要だった。

 まずGFケツァクウァトルにアビリティ「カード」を覚えさせる。そして敵を弱らせて、カードに変化させる。ここのポイントは、カードに変化させた場合経験値が入らないというところで、これはデメリットに思えそうだが、「FFVIII」の場合 いかにレベルを上げずに自軍を強化するか が重要なので、レベルが上がらないのはメリットでしかない。

 今度は「カード変化」のアビリティを使って、手に入れたカードをアイテムに変えてしまう。そして最後に各GFが覚える「魔法精製」系のアビリティで、アイテムを魔法に変えていけばいいのだ。

 そうなると今度はひたすらカード変化に頼らなければならないのか? となりそうだが、実はそんなこともない。「天国・地獄に一番近い島」にいけるようになるまでは手持ちの魔法をそこそこジャンクションしていれば、大体超えられるような難易度にはなっているのだ。

 ただ、苦戦はするかもしれない。苦戦しないためには、ドローで魔法をためるか、カード変化からの魔法精製をするかの二択である。「天国・地獄に一番近い島」にいけるようになりさえすれば、あとはアルテマやホーリーなど強い魔法をジャンクションし放題である。

 確かに面倒くさい仕様ではある。ドローし続けるのか、カードにし続けるのか、何も考えずに戦っていくのか、どこまで考えて戦っていくのか、非常に悩ましいところではあるが、この“自分なりに頭を使って自分にとって最良の方法で「天国・地獄に一番近い島」に行けるようになるまでの期間を攻略していく”のが「FFVIII」だと思っている。

 筆者はこの面倒くさいシステムが大好きである。筆者はドローしつつカードにするプレイスタイルで毎回乗り切って、低レベルクリアを目指す側のプレーヤーだ。そうするとめちゃくちゃ楽になるからそうしているだけであり、めちゃくちゃ楽じゃなくてもそこそこに手応えのあるバトルをやりたいならば、ちまちまとカードにする必要はない。

 だが、もしも「FFVIII」の真の面白さがまだ伝わっていない人がいるのならば、改めてこの「レベルをあまり上げない」、「カードにしてみる」というところにこだわってのプレイを試してみてほしいとは思う。

カードにするか? ドローするか? ちなみに筆者は持っていない魔法はドローしつつ、経験値は一切もらわずカードにする、併用型である

楽曲は「FF」史上でも屈指の名曲ぞろい

 「FFVIII」はBGMに生オケを採用したシリーズ初の作品で、楽曲も非常に素晴らしい。「Liberi Fatali」でのOP映像も素晴らしかったが、そこから「Balamb GARDEN」への遷移も素晴らしく、2曲あわさって完成する楽曲のひとつといってもいいだろう。

 バトル曲では通常バトル曲の「Don't be Afraid」、ボス曲の「Force Your Way」、そしてラグナ編でのバトル曲「The Man with the Machine Gun」、SeeD試験でかかる「The Landing」、魔女戦での「Premonition」、アルティミシア4連戦でかかる「The Legendary Beast」、「Maybe I'm a Lion」、「The Extreme」……フィールド曲ならば「Blue Fields」に「Fisherman's Horizon」、イベント曲ならば「Eyes On Me」……まだまだ挙げきれないほどの名曲がある。

魔女のテーマ曲とも言える「SUCCESSION OF WITCHES」からの派生、「FITHOS LUSEC WECOS VINOSEC」は、豪華なアレンジながら魔女パレードの一回きりしかかからないのがもったいない。だが実に贅沢な使い方とも言える楽曲だ

 そして「FFVIII」最推しの筆者がどうしても挙げたい名曲は「Ami」である。

 「Ami」は「Balamb GARDEN」のアレンジで、トラビアガーデンでアーヴァインが昔話を打ち明けるシーンでかかる曲だ(そして前述のスコールの鋭いツッコミが入る場面でもある)。ピアノのソロからの始まりはアーヴァインのひとり語りを表しているようで、そこに徐々に様々な音が重なっていくことで仲間たちの記憶が思い出されていく様子を表現しているような楽曲である。「Balamb GARDEN」の旋律がいいからこその良アレンジ曲ではあるが、ピアノの音の盛り上がりと共に気持ちも高まる、まさに物語のひとつの転機に相応しい曲だと思っている。

 非常に名曲が多い「FFVIII」。特に「FITHOS LUSEC WECOS VINOSEC FINAL FANTASY VIII オーケストラ・バージョン」というオーケストラアレンジアルバムには上記に挙げた楽曲の多くが収録されており、オススメの1枚となっているので、聴いたことがない人はぜひとも聴いてみてほしい。「Balamb GARDEN」、「Fisherman's Horizon」、「The Man With The Machine Gun」の3曲は筆者お気に入りのアレンジだ。

【FINAL FANTASY VIII オリジナル・サウンドトラック】
こちらはオリジナルサントラのPV。「FFVIII」のBGMを視聴できる

シリアスなラブストーリーでもいい緩急があった

 「FFVIII」は、当時の「FF」の中では最も恋愛に特化した内容となっていた。ここで「スクウェア三大悪女」のひとりと呼ばれているリノア(※諸説あり)について、「リノアは本当に三大悪女のひとりなのか?」というテーマでも語りたいところであるが、あまりにも長くなりそうなのでやめておこう。

ちなみに筆者は「実はリノアは言われるほど悪女ではないのではないか」派である

 恋愛に特化したからこそ、シリアスな内容がメインとなった本作だが、ラグナ編ではギャグ要素も多く、また前述の通りスコールのエッジの効いたツッコミも非常に面白く、シリアスながらも息の抜ける場所が多々ある、「FF」史上最高の名作の一本だと思っている。もちろんこれに関しては異論は認める。認めた上で筆者にとっての最高の一本が「FFVIII」であることには変わりがない。

ラグナ編を辿っている時のスコール。ラグナの思考もひどいが、相変わらずスコールのツッコミがするどい

 スコールを中心とした各キャラクターたち。愛が生んだ悲しい、けれど幸せな物語。少々複雑だったジャンクション、少々面倒くさかったドロー。そして素晴らしい楽曲たちに、美麗なグラフィックスと、「FFVIII」の全てが愛おしい。

 そんな「FFVIII」の思い出を振り返ってみてもらえれば幸いだ。