【特別企画】

「スターオーシャン3」が本日で20周年! 衝撃の問題作でありつつ、スペースオペラとファンタジーを見事に融合させた至極のタイトル

【スターオーシャン3 Till the End of Time】

2003年2月27日 発売

画像は「ULTIMATE HITS HD スターオーシャン3 ディレクターズカット」版公式サイトより。本作の主人公のフェイト・ラインゴットと、ヒロインのソフィア・エスティード

 エニックス(現スクウェア・エニックス)より2003年2月27日に発売されたプレイステーション 2用ゲームソフト「スターオーシャン3 Till the End of Time」(以下、「SO3」)が、本日発売20周年を迎えた。開発は、「ヴァルキリープロファイル」シリーズなどでも有名なトライエース。

 「スターオーシャン」シリーズといえば、一番の魅力はSFとファンタジーの融合。「星の海」を駆け巡るSFと、中世らしさを彷彿させる従来のファンタジーらしさが合わさったストーリーは非常に壮大だ。2022年には最新作「SO6」も発売され、こちらも非常に高評価を得ている。

 先日は「SO4」の14周年記事を書かせてもらい、筆者の最推しは「SO4」という話をしたばかりだが、次いで推しなのが「SO3」である。どちらか選べと言われれば泣く泣く「SO4」を選ぶが、本来はどちらも並ぶくらいに好きな作品だ。

 本稿では「SO3」についてゆっくり振り返っていきたい。

【『ULTIMATE HITS HD スターオーシャン3 ディレクターズカット』トレーラー】

改めて「スターオーシャン」シリーズの歴史を振り返ろう

 「SO4」の記事でも触れたのだが、「スターオーシャン」シリーズの時系列は割と重要な要素のひとつなので、本稿でも改めて掲載しておきたい。

・西暦
 2064年:第三次世界大戦勃発。地球は壊滅状態に陥り、人類は宇宙へと目を向ける。
 2074年:国際科学技術局(USTA)が、他惑星文明の接触に成功。
 2087年(宇宙歴元年):人類が史上初の「ワープドライブ実験」に成功。

・宇宙暦
  10年(西暦2096年):スターオーシャン4 -THE LAST HOPE-
 346年(西暦2432年):スターオーシャン
 366年(西暦2452年):スターオーシャン セカンドストーリー
 368年(西暦2454年):スターオーシャン ブルースフィア
 537年(西暦2623年):スターオーシャン5 -Integrity and Faithlessness-
 539年(西暦2625年):スターオーシャン アナムネシス
 583年(西暦2669年):スターオーシャン6 THE DIVINE FORCE
 772年(西暦2858年):スターオーシャン3 Till the End of Time

 このような歴史となっており、「SO3」は現状歴代で一番最新の時代を描いている。時代設定のせいか、歴代の「SO」シリーズに比べても最も独立性の高い物語となっており、「SO3」からプレイを始めてもほぼ問題ない。

 実際、「SO」シリーズおなじみの過去作を彷彿させるようなキャラクターは、ひとりも登場しない。そのため、ナンバリングタイトルに関わらず、誰でも遊びやすいという長所がある。強いて言うなら後半で若干過去作の出来事について明かされる場面などもあるのだが、本当に知っていても知らなくてもどちらでも全く問題ないレベルだ。

 後に要素を追加した完全版「スターオーシャン3 Till the End of Time ディレクターズカット」を発売しており、追加キャラクターやそれに伴うエピソードなどが追加されている。現在PS4などで遊べる「ULTIMATE HITS HD スターオーシャン3」は、このディレクターズカット版をHD化したものとなる。

アルティメット ヒッツHDは、HDエミュレーター技術によって内容そのままにHD化したタイトル

賛否両論多い作品になってしまったが……

 本作は非常に賛否両論分かれた作品である。その全ては物語の終盤にあるのだが、FD世界と呼ばれる我々の存在する世界よりもさらに高位な世界の存在によって、この世界の謎がほぼ全て明らかになってしまったのだ。

 その明らかになった謎が、夢オチとまでは言わないが少々禁じ手に近い内容だったこともあり、プレイしている人たちからは賛否両論沸き起こってしまった、という有様だった。

 これについては個人の感想であり、肯定派もいれば否定派もいて当然だと思っている。筆者は肯定派(正確には、大して気にしていない派)であるが、だからと言って否定派の方々を糾弾するつもりは全くない。だが、問題となった終盤を除けば、全体的に見て「SO3」はスペースオペラとファンタジーのバランスも非常に良い作品であった。

 物語の序盤は宇宙から始まり、まずいきなり宇宙へと出られる点が評価が高い。そこから色々とあって未開惑星に不時着するのはある種お決まりとも言える流れだが、リゾート惑星であるハイダ4号星から宇宙を経てヴァンガード3号星へ、再び宇宙を経てエリクール2号星へ……と続いていくので、SF感がしっかりと出ている。また、物語で始終敵として登場する宇宙人「バンデーン人」の存在も大きかった。

 未開惑星であるエリクール2号星が、主な冒険の舞台。確かにエリクール2号星での旅は相当に長いものとなるのだが、文明レベルは地球の17世紀程度の時代とあって、良いファンタジー感を出している。エリクール2号星脱出後も結局は何回かエリクール2号星へと戻ってくることになるがそれはさておき、第5宇宙基地となるムーンベースや、物語の鍵を握る「タイムゲート」がある惑星ストリームなども登場。惑星から惑星へと渡るストーリーは、「星の海を巡る物語」に非常に相応しいものだったと思っている。

画像は「ULTIMATE HITS HD スターオーシャン3 ディレクターズカット」版より

 物語はもちろんのこと、それを彩るキャラクターたちはいずれも魅力的だった。主人公のフェイトはやたらに未開惑星保護条約を気にする、典型的な真面目で正義感溢れる少年だが、ファイトシミュレータが大好きで暇さえあればファイトシミュレータにこもっているという、ゲーム(?)オタクな部分も。それもあって、未開惑星に放り出された一般人ながら、普通の人以上に剣を扱うことができる。そんな自分に自信があるのか、バトル終了時のセリフには「楽しかったよ」と言うこともある。そんな彼には重大な秘密が隠されており、その秘密が明かされた時は、画面の美しさと相まって、感動と驚愕に包まれたプレーヤーも多かったのではないだろうか。

 フェイトを取り巻くキャラクターも、フェイトの保護者のような顔で突然現れる謎の異星人クリフや、フェイトの幼馴染でくりくりとした目から通称「黒豆」と呼ばれていたソフィア、クリフの上司にあたるマリア、エリクールで出会う隠密ネル、傲慢で口が悪いアルベル、可愛い狸を始祖とする「メノディクス」の少年ロジャー、宇宙を巡るサーカス団の踊り娘スフレ、クリフの良き相棒ミラージュ、ネルの同僚クレアの父であるアドレーなどなど、様々なキャラクターが登場。

 だが、キャラクターと武器が固定であるため、ひたすら敵を浮かし続けるのに優秀なマリアがなかなかパーティに入らない、といったような面で、周回プレーヤーほどやきもきする部分もあった(このバトルでのやきもきは、「SO」シリーズではお馴染みとも言えるが……)。

筆者の一推しはクリフ。脳筋のように見えて、実は頭も良い! でも戦う時はやっぱり筋肉頼り。ミラージュとの、恋人のようでいてもっと深いところで繋がっているような相棒感も好きです
画像は公式サイトより。マリアはバトルには欠かせない存在だったという人も多いだろう

ここから先は重要なネタバレを含みます!

 ここから先は物語上、 非常に重要なネタバレを含む ので、注意してほしい。特に「今後機会があればプレイをしたい」と考えている人は、ここから先は今すぐ回れ右だ。

 ちなみに物語上の重要なネタバレといえば、前述のFD世界のことに他ならない。ここでは改めてFD世界について振り返ろう。

 FD世界とは、フェイトたち(に限らず、歴代の登場人物)が暮らす宇宙——すなわちこの世界そのもののことである。FDとは、Four Dimension……つまりは4次元のことであり、我々3次元空間に住む人間たちよりも、より高次元な世界だ。そしてフェイトたちの住む世界はFD人によって作られた仮想空間「エターナルスフィア」というゲームのようなプログラム空間であることが判明する。

全てはプログラム世界の出来事——それが「スターオーシャン」の世界の真実である

 この出来事が、本作が賛否分かれた大きな理由である。これによって、後のシリーズにも大きな影響を与えてしまい、「でもどうせデータ空間の出来事だしな……」と白けてしまったユーザも少なからずいる。

 もちろん、それはそれで仕方のないことだ。

 だが、エターナルスフィア内のプログラム生命体の作成や調整は出来るが、FD人が一方的にエターナルスフィアに干渉してエターナルスフィアの生命体を操る事は出来ないようになっている。つまり、この世界が0と1の集合体であろうとも、その中で生きる生命自体にはなんら変わりがない、と筆者は考えている。

 確かにこのオチは少々禁じ手だったように感じる。もしも「SO」というシリーズが3作で完結して今後二度と出ないというのであれば、このオチもありだったかもしれない。しかし続けていくシリーズのオチとしては、もったいなかったという気持ちはある。

 一方で、「宇宙とはいつどのように始まったのか」という謎への「スターオーシャン」シリーズとしての解、そしてその創造主との戦いという面においては上手く盛り上げてくれたと感じている。

 ……ちなみに「創造主」なんてかっこよく言っているが、つまりはゲーム会社の社長であるということも忘れてはならない。今更振り返らずとも、「なんでゲーム会社の社長があんなに強いんだよ」というツッコミも無きにしも非ずなのだが、そこはきっと高次元の存在が為せる技なのだろう(なお、FD世界に突入後、途中で何体ものボスが出現するが、そのボスは言ってしまえばゲーム会社の社員である)。

 と考えると「なんでやねん」というツッコミはあるにはあるのだが、“冷静に考えなければ普通に面白くない?”という、その一点なのである。アザゼル、ベルゼブル、ベリアルとかのスフィア社の役員たち、みんなキャラが濃かった。ルシファー社長に至っては「0と1の集合体にすぎない分際で!」というボイスがあったりと、露骨にフェイトたちを下等な存在と見下しているが、彼の上級天使のような身なりからしてみても然り、彼らにしてみたらやはりフェイトたちは”下等な生物”であったことには変わりがなく、それに基づいての行動だったと思えば、何らおかしなところはない。

 なお、実際のところどうだろうか。もしも同じことがあったら? 我々が二次元の存在によって倒されようとしていたら? 「0と1の集合体」とまでは言わないかもしれないうえに、人によっては「ご褒美です」と言いかねないが、高位の次元に存在するものにとっては「有り得ない出来事」には変わりがないはずだ。

エターナルスフィアとは、FD人が精神をプログラム生命体に精神転送することで仮想世界の生活を疑似体験できるシミュレーターだった。操作は基本的には一切行えないためVRとはだいぶ違うが、こちらの入力を一切受け付けず全てがオートで動くVRのようなものだと思えば、わかりやすいかもしれない

 とまで考えると、筆者はどうしても「SO3」が面白くなかったとは思えない。むしろ今でも愛を持って見ている。そして「SO3」以降のシリーズも、特段深く「所詮データの中の出来事だしな……」とか考えず、楽しく遊んでいる。つまりは能天気とも言えるかもしれないが、能天気で何が悪い(キリッ)。繰り返しになるが、否定派をどうこう言うつもりはない。個人の感想はあって然るべきだ。それと同じように、能天気に本作を楽しんだ筆者の心も否定されるものではなければ、筆者同様、「『SO3』、やっぱりおもしろかったよね!?」という人たちの心も否定されるものではないと思っている。

 「SO4」の周年記事から間もないことから、あえて趣向を変えての「SO3」周年記事を書いてみたが、いかがだっただろうか。問題作であったことは否定しないが、20年経った今でも「SO3」を愛する人たちに届けば嬉しい。

 ちなみに言うまでもないが、戦闘の面白さと、トライエースの多くのゲームの楽曲を手掛けている作曲家・桜庭統氏による音楽の秀逸さは本作でもずば抜けている。バトルが面白いゲームをやりたい人、カッコいい音楽が好きな人ならば(シナリオ云々はともかく)間違いなく大満足の一本だったと言えるだろう。

 最後に余談になるが、筆者の「SO3」最大の思い出を語りたい。クリフが非常に好きだった筆者は、クリフがフラッシュ・チャリオットで発する「無限にいくぜ!」というセリフを携帯(当時はガラケー)の着ボイス(音声になっている着信音)に設定していた。そしてある日エレベータに乗った時、シンと静まり返ったエレベータ内で唐突に携帯が鳴り、「無限にいくぜ! 無限にいくぜ! 無限にいくぜ! 無限にいくぜ!」と盛大に鳴り響かせてしまったことがあった。非常に恥ずかしい思い出でありつつ、この出来事のおかげでクリフさんの「無限にいくぜ!」のセリフが二度と忘れられなくなったことは言うまでもない。

おまえのせいで私はかかなくても良い恥をかいたのだ、と言いたいが、普通に自分のせいである。少々真面目に語ったので、最後の最後で少しでも笑ってもらえれば幸いだ

 なお、この20周年を機に本作をプレイしてみたい、または久々にプレイしたいと思った方は、PS4用「ULTIMATE HITS HD スターオーシャン3」がおすすめだ。前述した通り、本作のディレクターズカット版がHD化したタイトルとなっており、ダウンロード限定で配信されている。

□「スターオーシャン3 Till the End of Time ディレクターズカット」のPS Storeページ