【特別企画】

「ゼノギアス」本日で発売25周年! ストーリーの完成度はスクウェア作品でも歴代史上一番!?

【ゼノギアス】

1998年2月11日 発売

 スクウェア(現スクウェア・エニックス)より1998年2月11日に発売されたプレイステーション用RPG「ゼノギアス」が、本日発売25周年を迎えた。

 当時は「ファイナルファンタジー」シリーズと並ぶ大作RPGとしてリリースされ、キャッチコピーも「聖剣伝説が出ない理由、ファイナルファンタジーとは異なる可能性、そして ゼノギアス」というものだった(なおこの後に「聖剣伝説4」が発売されているのだが、あくまで当時の「意気込み」を表していたキャッチコピーである)。

 スクウェアを代表するRPG作品群に肩を並べるシリーズにしようという意気込みで作られた本作は、結果的に「ゼノギアス」の中心クリエイターだった高橋哲也氏がスクウェアを退社し、モノリスソフトを立ち上げたことで、「ゼノサーガ」シリーズ、「ゼノブレイド」シリーズへと現在も派生していっている(「ゼノ」とはついているものの、ギアス、サーガ、ブレイドは世界観的なつながりはない。ただし作品を通して共通する単語などは登場する)。

 本稿では「スクウェア史上最大の完成度の物語」との呼び声も高い「ゼノギアス」について振り返りたい。ただし、本稿は“あまりネタバレに触れない程度”の内容にとどめたい。というのも、「ゼノギアス」は発売以来リマスターすらされていない作品となっており、現在未プレイ者が多いのではないかという予想、だからこそスクウェア史上最大とも言われているストーリーの壮大さをこれから自身で知る機会があるのならば知ってほしい、というところからである。あらかじめご了承願いたい。

1周ではとても理解できない、複雑に絡み合ったストーリー

 では、「ゼノギアス」のストーリーは何がそんなに素晴らしかったのだろう。これについては個人の感想が強いが、まずは聖書(宗教)や神話、SF、そこから心理学、生物学、哲学など、様々な要素を含みつつ、非常に難解ながらも本作独自の世界観を見事に作り上げたところにあるのではないだろうか。

「我はアルパなり、オメガなり、
最先(いやさき)なり、最後(いやはて)なり、
始めなり、終わりなり」

 これは黙示録22章13節からの引用だが、「ゼノギアス」といえばこのOPがまず浮かぶという人も多いはずだ。「最先」で「いやさき」、「最後」で「いやはて」と読ませるのは恐らく本作独自で(※「弥終」(いやはて)、「首先末後」(いやさきいやはて)と書くものもある)、「ゼノギアス」のオリジナルサウンドトラックにも「最先と最後」と書いて「いやさきといやはて」と読ませる楽曲が存在する。

 このように見慣れた単語ひとつ取っても「ゼノギアス」の世界にはプレーヤーの心をくすぐる(刺激する)言葉選びがされており、冒頭からいきなり世界観にグイと引き込まれてしまうのだ。

 ただ、そのストーリーの複雑性から1周で内容をしっかりと理解できるかというと難しく、1周目はなんとなく「え、どういうこと?」という程度で終わってしまいがちなのだが、全てがわかった後になって2周目をプレイすると「これはすごい」と唸るような場面が多々あるのだ。むしろ どこもかしこも伏線 と言っても過言ではない。

 最初はアヴェという国とキスレブという国が戦争しているだけのように見えていたのに、どんどん広大になっていく構図。初見では何を言っているのかわからないような用語も多く、1周目は「ついていくだけで精一杯」どころか、ぼんやりしているとほぼついていけないくらいにまで広がってしまう。ただ、「ゼノギアス」はそれでいいのだ。何も1周目で全てを理解する必要はない。2周目をプレイして、その時になって「こういうことだったのか」と何気ないシーンに手を打ったり、涙するくらいでいい。

 最終的に本作の物語は「これだけ広げた風呂敷を全部たたむの?」となるレベルなのだが、本作のすごいところはそれを全てたたみ切っている点。だがその分、普通のRPGだったDisc1に対して、Disc2はほぼ説明口調のサウンドノベルと揶揄されがちなのだが、それでも「このゲームをやってよかった、本当におもしろかった」と思わせるだけの力があるのだから、恐ろしい。

魅力的なキャラクターたち、アハツェンとの戦い——

 本作はイラストレーターの田中久仁彦氏がキャラクターデザインを務めていることでも知られている。氏の描くキャラクターはいずれも魅力的だった。

 主人公のフェイは、辺境の村ラハンで暮らす青年。3年前に重傷を負って倒れていたところを救われており、過去の記憶を失っているが、村で平穏な生活を送っている。村が謎の襲撃者に襲われ、その時に突如現れたギア「ヴェルトール」に搭乗するが、暴走させてしまい、ラハンを壊滅状態にしてしまった。そんな出来事から少々神経質な様子を見せることが多いが、仲間と旅をしていく中で強くなっていく。「ゼノギアス」の物語はフェイを中心に隠された謎と、その成長を見守る物語だ。

主人公のフェイ(画像はオンラインゲーム「フィギュアヘッズ」とのコラボより)。冒頭でラハンを焼き尽くしてしまい、仲の良かった子供にまで人殺しと呼ばれてしまう。辛い

 そしてヒロインのエリィはゲブラーに所属するソラリスのエリート軍人で、「ヴェルトール」奪取の任務中にラハンに不時着。序盤のうちはフェイの前に敵として現れる。最初は自虐的な性格だったが、フェイと出会うことや彼女の存在の在り方から母性が現れ始め、やがては「聖母の再来」と言われるようになり、フェイと愛し合う。エリィは愛称で、エレハイムが本当の名前。この名前にも様々な伏線が込められている。

ヒロインのエリィ(画像はオンラインゲーム「フィギュアヘッズ」とのコラボより)

 他にも、最強の呼び声が高いシタン先生(事実最強なのだが)、フェイの親友となるバルト、半人半獣の種族である亜人の大男リコ、贖罪審問官のビリー、惑星原住の知的生命、ギアがなく自身が巨大化でかでかするウーキィ族のチュチュ、謎の少女エメラダ、そしてシェバトの護衛を務めるゼプツェンの搭乗者マリアなどが登場するが、どのキャラクターもきちんと見せ場があって、その背景などを知ることができる。

シタン先生(画像はオンラインゲーム「フィギュアヘッズ」とのコラボより)
バルト(画像はオンラインゲーム「フィギュアヘッズ」とのコラボより)

 ここから先少しだけネタバレになるが、ゼプツェンとアハツェンにまつわる話だけ、させてほしい(物語全体として見た場合、大きなネタバレではない)。

 アハツェンはゼプツェンの後継機であり人機融合ギアで、マリアの父であるニコラの脳神経が制御回路として機体に組み込まれている。

 アハツェンとの戦いといえば、チュチュとマリアの見せ場でもあり、そして本作屈指の名曲「飛翔」がかかって最高潮に盛り上がるシーンのひとつ。本作のプレーヤーなら、マリアの「行きましょう! ソラリスの……ソラリスの……敵が、待ってる!!」というセリフに滾ったのではないだろうか。

 「もう老いもない、死もない。私は、新たな種として生まれ変わったのだ」というアハツェンに、「わたしは人として生きていた頃の父さんが好きだった……」と零す、ゼプツェンに搭乗したマリア。「やさしそうに微笑んで……いつも……いつまでも……そばにいて欲しかった!!」という悲痛な叫び。「来なさい、マリア」と手を伸ばすアハツェン、マリアを守ろうとするゼプツェン。ゼプツェンとアハツェンの戦いのバックに流れる「飛翔」。最後にはアハツェンの組み込まれたニコラの良心回路が発動し、封印が解かれたゼプツェンのグラビトン砲で破壊されるまでのイベントの流れには、涙をこぼした人たちも多いはずだ。

 この時、マリアらはまだ「登場したばかり」のキャラクターで、プレーヤーにとってそこまで思い入れのあるキャラクターではなかった。なのに、ストーリーの流れ、キャラクターのセリフに込められた心情、それらを盛り上げる最高のBGMによって、アハツェン戦のイベントはプレーヤーなら誰もが忘れられない名場面となったのだ。ちなみに筆者は、「飛翔」を聞いただけで自動的に涙腺が壊れるようにできている。

物語や音楽ばかりが語られがちだがバトルもいい

 「ゼノギアス」というとストーリーと音楽の評価がとにかく高いゲームではあるのだが、バトルもおもしろかった。システム的には、通常攻撃を弱・中・強の組み合わせて出していく、「クロノクロス」に似たバトルとなっている(これは「ゼノギアス」チームが、後に「クロノ・クロス」の制作チームとなっているからである)。

 特定の組み合わせで攻撃を出すと必殺技となって、高い威力になる。

 モーションも非常にこだわって作られており、RPGながら格闘ゲームのように流れる動きがとても素晴らしい。

弱・中・強攻撃が、流れるようにつながっていく

 基本的にはシンプルなコマンドバトルではあるのだが、別途ギアに乗って戦うギア戦もあり、ギア戦では燃料の残りを意識して戦わなければならないという、ちょっとした頭脳戦も求められる。例えばブーストをONにすると、燃料をどんどん消費してしまう代わりに、回避率と素早さがあがる。さらにギアには装備品も色々あり、装備品をどう組み合わせるかに頭を悩ませることになる。装備品には重さの概念があり、装備すると素早さが下がるという、最近のアクションゲームでもよく見られる概念が取り入れられていた。

 このように装備や燃料の使い方など、それなりに考えないと勝てない戦闘も多々あり、奥深いバトルを楽しむことができた。

 また、結局音楽の話に戻ってきて申し訳ないのだが、通常バトル曲の「死の舞踏」も本作BGMの神曲のひとつ。この曲を聞くとシタン先生の「しょぉー」という声が空耳で聞こえる人も多いのではないだろうか。打楽器の音色に闘争心を煽られる一曲なので、聴いたことがない人にはぜひ「飛翔」と共に聴いてみてもらいたい。

リマスターでもいい、出てほしい

 前述の通り、本作は発売以来、リマスターすらされていない作品となっている。一方で根強いファンは多く、2018年4月には「ゼノギアス」20周年オーケストラコンサートも開催。チケットは完売御礼で、惜しくも抽選に漏れたファンも多かった伝説のコンサートだ。こちらのコンサートはBlu-ray化されているので、興味のある人は買ってほしい。

 「ゼノギアス」は現状でプレイできるのがPS3/PSP/PSVitaのゲームアーカイブスとなっており、現行機では基本的にほぼプレイができない状態である。

 非常に愛された作品で、今後も愛してほしい作品だけに、ぜひともリメイクとまでは言わない、リマスターで構わないので現行機でプレイできるようにしてほしいものだ。そして今後もまだまだ多くの人に衝撃を与える、そんな作品で在ってほしいと願ってやまない。