【特別企画】

高校生「VALORANT」eスポーツ大会「NASEF MAJOR VALORANT Tournament Autumn 2022」決勝大会レポート

若いプレーヤーらしいフィジカルとチームプレイが光る

【「NASEF MAJOR VALORANT Tournament Autumn 2022」決勝大会】

11月13日 開催

 北米教育eスポーツ連盟 日本本部(NASEF JAPAN)は11月13日、高校生を対象としたeスポーツ大会「NASEF MAJOR VALORANT Tournament Autumn 2022(NASEF MAJOR VALORANT 2022)」の決勝大会を開催した。

  本大会は、同一の学校、または同一都道府県内にある学校に通う高校生5人がチームを組み競い合うeスポーツ大会。ゲームタイトルはPC用タクティカルシューティングゲーム「VALORANT」が選ばれ、全国71校、66チームが参加し、決勝大会にはブロック予選を勝ち抜いてきた8チームが出場した。

 優勝の栄光を目指し決勝トーナメントを争ったのは、「痛いの確定ッ!(近畿ブロック)」、「AXINO(関東Bブロック)」、「俺のわんこ2才(東海ブロック)」、「あさりさま(北海道・東北ブロック)」、「金魚(関東Aブロック)」、「なんだコイツ?ンジョーン有沢(北信越・山梨ブロック)」、「岡山共生eスポーツ部A(中国・四国ブロック)」、「そるじーふぁみりー(九州・沖縄ブロック)」の8チーム。出場選手は全員高校生だが、プロゲーマーや、eスポーツ関連の仕事を目指す選手も少なくなく、どのチームもハイレベルな個人技と連携を見せてくれた。

 なお、本大会は完全オンラインで行なわれ、Twitchにて配信が行なわれた。本稿では配信が行なわれた3試合のレポートをお届けする。

実況のyue氏(左)、解説のyukishiro氏(右)、ゲストとしてプロゲーマーのFlax選手(中央)が登壇した
【トーナメント表】
【出場チーム】

□NASEF JAPANのTwitchチャンネル

「AXINO」、オペレーターの堅い守りで勝利を掴む

 本大会は準々決勝・準決勝をシングルエリミネーションで行なわれた。配信された準々決勝は、関東Bブロック「AXINO」と近畿ブロック「痛いの確定ッ!」 の試合だ。マップは、アタッカー側がディフェンダー側を挟むような形で攻めることができる「フラクチャー」。両チームとも狭い道が多い「フラクチャー」と相性がいいとされるエージェント「ブリーチ」をピックした。

 試合は1ラウンド目から激しい撃ち合いでスタートし、「AXINO」のシェリフ松本選手が連続キルを魅せ先取。その後はディフェンダー側の「AXINO」のastariorz選手が持つオペレーター(胴体に当てても相手を一発で倒せるスナイパーライフル)の的確なエイムに対して、「痛いの確定ッ!」は攻めあぐねる展開に。

 試合終盤、追い詰められた「痛いの確定ッ!」も、BAN選手が連続で1vs1に持ち込んで撃ち勝つなど、苦しいながらもリテイクを成功させていき、徐々にチームとしてのプレイもみせていく。しかし最後は「AXINO」GooDk1d選手が相手の守備を崩したことをきっかけに勝利。「AXINO」が準決勝へと駒を進めた。その後、「AXINO」は準決勝で「あさりさま」にも勝利し、決勝へと駒を進めることとなった。

「AXINO」は序盤からシェリル松本選手がネオンのスライディングをしながら敵をキルするなど魅せるプレイで有利を広げていった

撃ち合いで試合を制す! そるじーふぁみりーが決勝へ

 続く準決勝、九州・沖縄ブロック「そるじーふぁみりー」と関東Aブロック「金魚」の試合。マップはディフェンダー側がどこを守るのかの駆け引きや、アタッカー側はディフェンダー側の行動にどう対応し崩すかが重要となるマップ「アセント」だ。このマップでは、攻守のバランスに優れたエージェント「KAY/O(ケイ・オー)」が強力で、プロシーンではお馴染みのピックということもあり、両チームともKAY/Oをパーティーに組み込む構成となった。

 試合は前半ラウンドこそ互角の内容だったが、後半ラウンドではディフェンダー側に回った「そるじーふぁみりー」のtearZ選手が見事なエイムで連続キルを獲得しラウンドを勝利。このプレイから流れは「そるじーふぁみりー」に傾いていく。立ち回りこそ互角に見える両チームではあったが、敵が見えた際の対応や撃ち合いの強さが光った「そるじーふぁみりー」が一気に試合を決め勝利し、決勝へと進んだ。

tearZ選手の連続キルから勢いづき、「そるじーふぁみりー」が試合を一気に決めた

手に汗握る接戦。両チームのデュエリストが鍵を握る

 関東Bブロック「AXINO」と九州・沖縄ブロック「そるじーふぁみりー」の決勝戦は、BO3(2本先取)で行なわれ、最終戦までもつれこむ接戦となった。一戦目のマップは「アセント」で、両チームのデュエリストがゲームをどう作るかが注目された。

 試合は中盤、tearZ選手の連続キルで「そるじーふぁみりー」が勢いづくかと思いきや、「AXINO」もやまうち選手が3vs1で勝利するなど一進一退の攻防が続き10-10で並ぶ接戦に。

 その後、「AXINO」が冷静なプレイで有利に立ち、クレジット差がある状態でマッチポイントを迎えた。一戦目は「AXINO」の勝利かと思われたが、「そるじーふぁみりー」tearZ選手がジェットのアルティメット「ブレイドストーム」で連続キルを獲得。Hals選手が1vs1に勝利し抗い、最後までどちらが勝つかわからない熱戦に。最後はやまうち選手が1vs1の撃ち合いで勝利し、1本目を「AXINO」が先取。優勝へと王手をかけた。

ジェットのアルティメットで連続キル。tearZ選手のこのプレイが試合をわからなくした

 続く2試合目。マップは、一瞬で大きく移動できるテレポーターが設置された「バインド」で、「AXINO」はニッチなエージェントである「ヨル」入りの構成を選択。大会で滅多に使われないエージェントだが、バインドでのヨルはプロシーンでも見られたピックで注目された。

 ヨルは、「ブリムストーン」のアルティメット「オービタルストライク」を「ゲートクラッシュ」によるテレポートでかわすなど、独自の動きを見せたものの、試合は「そるじーふぁみりー」が相手の動きを読む的確な動きと、撃ち合いでの強気な動きを見せラウンドを連取。13-5でこの試合を決め、優勝を争う熱戦は最終試合までもつれ込んだ。

的確なエイムと細かい立ち回りで「そるじーふぁみりー」が優勝

 勝ったほうが優勝を手にする最終戦。マップは高低差が激しく複雑な「アイスボックス」。両チームともに「セージ」、「ヴァイパー」、「チェンバー」は固定で、「AXINO」側はデュエリストに「レイズ」、イニシエーターに「フェイド」をピック。一方の「そるじーふぁみりー」はデュエリストに「ジェット」、イニシエーターに「ソーヴァ」をピックした。

 試合は序盤から、Solluzy選手とtearZ選手の的確なエイムからの連続キルや、アタッカー側でのオペレーターによる的確なショットで「そるじーふぁみりー」が有利を築く。対する「AXINO」も、Ko8su選手が敵の虚を突くポジショニングからキルを獲得するなど、いいプレイが見られたが、撃ち合いで強い「そるじーふぁみりー」がラウンドを制していき、折り返し時点で4-10と差をつけた。

 試合はそれまでの有利を活かし、「そるじーふぁみりー」が「AXINO」を追い込んでいきマッチポイントに。しかし、ここから「AXINO」も怒涛の反撃を開始する。

 5-12というスコアの中で「AXINO」は敵の裏取りにしっかりと対応。「セージ」のアルティメット「リザレクション」で味方を生き返らせ人数差をなくすと、やまうち選手が敵をキルしラウンドを死守。続くラウンドも勝利し、「そるじーふぁみりー」は、エコラウンド(クレジットを節約するラウンド)を強いられ、武器性能の差を生かした「AXINO」が連取していく。

 その後も astariorz選手がダウンする間際に妨害用のスキルを使用することで時間を稼ぎ、敵のスパイク解除に必要な時間を消費させるなど粘りのプレイをみせ、スコアは9-12に。勝負ありと思われた5−12から、どちらが勝ってもおかしくない展開にもつれ込んだ。

 試合を決めたのはSolluzy選手とtearZ選手のプレーヤースキル。開幕からSolluzy選手がキルを取り人数差をつくると、「そるじーふぁみりー」はそこからじわじわとラインを上げていき、最後はtearZ選手が連続キルで試合を決めた。両チームとも、高い個人技とチームでの連携を見せてくれたが、紙一重で「そるじーふぁみりー」が優勝を手にした。

Solluzy選手とtearZ選手はこの大会の中で一貫して高いプレーヤースキルを魅せており、チームの勝利に貢献した
astariorz選手の粘り強いプレー。最後まであきらめないプレイが輝いていた

 本大会では、高校生らしく若さを活かした素早いエイムといった個人技に加え、高い水準の連携や。最後まで諦めないプレイなども見ることができた。完全オンラインではあったものの、高校生eスポーツプレーヤーの熱さを感じられた。

 また、本大会では「VALORANT」の競技だけでなく、大会設営に参加できるプログラムや、観戦できる取り組みも行なわれており、eスポーツ大会の制作・運営や、大会の実況解説をどう行なうかを、生で学べる場所にもなっていた。こうした取り組みは、「eスポーツを通じた人材育成」を掲げるNASEFならではだろう。

 こうした取り組みも含め、今後もNASEF JAPANの展開には期待したい。筆者個人としては、(情勢もあり難しいことはわかったうえで)高校生のeスポーツへの取り組みを生で感じられるオフライン大会の開催を待ち望んでいる。

優勝した「そるじーふぁみりー」にはオリジナルトロフィとステンレスボトルが送られた