【特別企画】

「VALORANT」国際大会への切符をかけた「2022 VCT Challengers Japan Stage2」に1万3千人が熱狂

さいたまスーパーアリーナ会場レポート

【2022 VALORANT Champions Tour Challengers Japan Stage2 Playoff Finals】

6月25日 開催

 前回の国際大会で日本チームZETA DIVISION(以下ZETA)が世界3位の偉業を達成し話題となったタクティカルFPS「VALORANT」。そのeスポーツ大会「2022 VALORANT Champions Tour(以下VCT)」が5月下旬より行なわれ、勝ちあがった3チームがオフライン会場「さいたまスーパーアリーナ」にて激闘を繰り広げた。「さいたまスーパーアリーナ」では6月25日、26日の2日間に渡って開催され、優勝チームは賞金100万円とともに、7月にデンマーク・コペンハーゲンで開催される国際大会「2022 VCT Masters Stage2」への出場権が与えられる。

【勝ち上がった3チーム】
ZETA DIVISION(ZETA)
NORTHEPTION(NTH)
Crazy Raccoon(CR)

 本稿では、6月25日(土)に開催されたDAY1の現地の様子を写真とともにお届けしたい。この日は6月にして記録的な猛暑日となった。ジリジリと肌に刺激を与えるほどの強烈な日差しが照りつけるなか、朝早くから物販には長蛇の列が。RAGEの公式発表によると1,000人以上が物販の列に並んだとのこと。列の最後尾を見に行こうとしたが、1分半以上歩いてもたどり着けなかったので断念した。

 入場口ではチケットを読み込み、リストバンドを配布。これさえあれば自由に再入場ができる。さらに応援用のスティックバルーンを配布。観客には歓声を控えるよう呼びかけており、スティックバルーンがその代役となれることはゴールデンウィークに開催されたオフラインイベント「RAGE VALORANT」で実証済みだ。ゲート奥の検温サーモグラフィを通り抜けて、ようやく中に入ることができる。コロナ対策も万全だ。

 ロビーでは、VCTのロゴ入りパネルや各エージェントのパネルが飾られていた。入場口側からぐるりと回った反対側にもエージェントのパネルがあり、最新のエージェントであるフェイドを含む19のエージェントすべてのパネルが確認できた。ジェットは韓国語、レイズはポルトガル語と、出身地の言語が右上に小さく書かれているが、日本出身のエージェントであるヨルは背景文字がカタカナなのも感慨深い。パネルの前では、記念撮影をする観客の姿も多く見受けられた。

 試合会場に入ると、まずその広さに圧倒される。コンサート会場だと思えばそこまで驚くことでもないのかもしれないが、国内のeスポーツ大会としては異例の広さだ。RAGEの公式発表によると、初日の来場者数は1万3千人を突破したとのこと。四方に設置された大画面の迫力も、白熱した試合を盛り上げるのに一役買っていた。

 この日のMCおよび実況解説は、「VCT」でおなじみのOooDa氏、岸大河氏、Yukishiro氏の3名。観客のなかには彼らのファンも多い。彼らの人柄とわかりやすい実況解説も、「VCT」人気の要素のひとつであると言えるだろう。

 また、応援グッズを掲げる熱心なファンの姿も多く見受けられた。チームが販売している公式応援グッズはもちろん、手作りの応援グッズを持参している人やタブレッドを使っている人も。試合の合間に会場を映すカメラにも何度もキャッチされており、応援はきっと選手たちに届いていることだろう。

 その他、残念ながら今回の大会で敗退してしまったチームの選手や「VALORANT」をプレイしているストリーマー、タレントなども会場を訪れていた。意外と普通に歩いていたりしたので、見かけたというラッキーな人も結構いたのではないだろうか。筆者はFAV gaming所属のFisker選手と遭遇し、許可をもらって写真を撮らせていただいた。

 ちなみに冒頭で触れた物販について、夕方に再び訪れた際にはマフラータオルとステッカーセットがすでに完売。Tシャツもサイズによっては売り切れているものもあり、改めて「VCT」人気を実感させられた。

 試合のほうも簡単にレポートしておくが、詳細な内容はアーカイブが残っているので是非そちらを見ていただきたい。

【2022 VCT Stage2 - Challengers JAPAN Playoff Finals Day1】

 まずはUPPER FINALに勝ちあがってきたZETAとNTHの対戦。1マップ目はZETAがピックしたフラクチャー。ファーストラウンドこそNTHがとったものの、アタック側のZETAが強さを発揮して9-3で折り返し。そのまま最終的に13-7でZETAが勝利を収めた。終始Laz選手のエイムが冴えわたり、終わってみれば28キルKDA3.2を叩き出した。(KDA=キル・デス・アシストの比率)

 2マップ目はNTHがピックしたアセント。序盤はNTHがリードし7-5で折り返し。しかしアタック側に回ったZETAが反撃を開始する。18ラウンドではDep選手が驚異の1v4クラッチを果たし、観客を大いに沸かせた。最終的に13-9でZETAが勝利し、2マップを先取して決勝進出を果たした。(クラッチ=1人しか生き残っていない状況でラウンドに勝利すること)

 試合終了後には別室で勝利チームZETAの記者会見を実施。前回大会で注目度が高くなったせいか、eスポーツやゲームメディアのほかにテレビ局や新聞社なども取材に訪れておりフォーマルな雰囲気の記者会見であった。選手たちも緊張した面持ちで勝利インタビューとは思えないほど固い表情だったため、顔見知りの筆者は率先してアイスブレイクに努め、JUNiORコーチが場を和ませて応えてくれたエピソードも添えておきたい。

 Dep選手がトレンド入りした旨を伝えると「色んな人に見られているんだなと感じて嬉しい」とコメント。1v4クラッチについては「いつもだと上がってしまうが、今日は波がなく落ち着いていた。もともと今日は『やってやるよ』という感じだった」と大舞台にも関わらずスーパープレイが出せた理由を語った。

 この様子を控室で見ていたというJUNiORコーチは「クラッチ能力に長けているなと思った」とDep選手のプレイを絶賛。「上にいた敵を2人倒した時点でカバーの人間がいなかったので、Aメイン1人とAショート1人だとわかった瞬間にAショートの1人を倒したのが大きかった。その後味方から最後の敵のHPが低いという非常にいい報告が入り、胴体に一発当てれば倒せる状況になってラウンドがとれた」と当時の状況を説明した。

 試合会場では、続けてLOWER FINALが行なわれた。先ほどの試合で惜しくも敗北したNTHと、オンラインで下から勝ちあがってきたCRとの対戦である。今大会ですでに2度の対戦をしており、いずれもNTHが勝利している。「2度あることは3度ある」となるのか、それとも「3度目の正直」をCRが見せるのか、注目が集まった。

 まず1マップ目はCRがピックしたブリーズでの対戦。NTHが立て続けに2ラウンドを先取したかと思えば、その次のラウンドにはMeteor選手のACEまで飛び出す展開に。試合開始前にあった「ACEが出たら立ち上がろう」というOooDa氏の話通り、観客はスタンディングオベーションでスーパープレイを称えた。その後も終始NTHがリードし13-6で勝利を収めた。(ACE=1人で対戦相手5人を倒してラウンドに勝利すること)

 2マップ目はNTHがピックしたヘイヴン。CRは意地を見せて食らいついていくものの、NTHの勢いが止まらない。C側の小部屋に潜んだBlackwiz選手の3キル、Aショートから回り込んだJoxJo選手の4キルなど立て続けに素晴らしいプレイを披露。最終的に2-0でNTHが決勝進出に成功した。

 先ほど同様、こちらも別室にて勝利チームNTHの記者会見を実施。思いのほかフォーマルな雰囲気に選手たちも一瞬戸惑った様子を見せたものの、勝利の喜びがそれを上回ったのか、終始和やかな雰囲気で受け答えをしていたのが非常に印象的であった。

 ブリーズでACEを達成したMetero選手は「最初のキルでフィーリングが良く、その後は何も考えずに撃ち続けたらACEになった。観客のスティックバルーンの音とチームメイトたちのナイス! という声が聞こえてきた」とそのときの様子を語った。また、ヘイヴンで4キルを獲得したJoxJo選手は「ラウンドが始まる前に相手のアルティメットの有無を確認し、反対サイトへ行ってプレッシャーを与えてから、相手がブリーチのアルティメットで来るだろうと判断してA側へ行った」と読み合いに勝てた背景を述べた。(アルティメット=各エージョントが持つ最も強力なアビリティーのこと)

 以上、記者会見の一部内容を紹介するとともに会場の様子をお伝えしたわけだが、改めて日本のeスポーツ大会がこの規模で開催されるようになったのかと思うと感無量である。プロゲーマーの大会を観戦する文化が、そろそろ日本でも定着してきているのかもしれない。このレポートを通じて、会場の雰囲気が少しでも伝わっていれば幸いである。

 なお、この翌日に行なわれたGRAND FINALでは、NTHがZETAを3-1で下して見事優勝を果たしている。ディフェンディングチャンピオンであるZETAの優勝を有力視する声が多かったが、NTHが1日できっちり修正してリベンジを果たすとともに日本代表の座を勝ち取ることに成功した。7月に開催される「2022 VCT Masters Stage2」での活躍に期待したい。

【2022 VCT Stage2 - Challengers JAPAN Playoff Finals Day2】