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「VALORANT」国内大会を制し世界に挑むのはSCARZ! スーパープレイが飛び交う熱戦を勝利!【VCJ 2023 Split2】

【VALORANT Challengers Japan 2023 Split 2 Playoff Finals】

開催期間:6月3日・4日

オフライン大会会場:エディオンアリーナ大阪(大阪府大阪市)

 ライアットゲームスは、PC用タクティカルFPS「VALORANT」の日本大会「VALORANT Challengers Japan 2023 Split 2 Playoff Finals」を6月3日より4日にかけて開催した。本大会は「VALORANT」の公式eスポーツリーグであるVCTにおける下位リーグの大会にあたり、本大会で優勝したチームはアジア大会「アセンショントーナメント」への出場権を獲得することとなる。

 今年3月から行なわれてきた本大会は、予選トーナメントを勝ち抜いてきたチームと、「Split1 Playoff」で上位6位以上となったチームがプレイオフをかけてしのぎを削った。今回のオフライン大会では、プレイオフを勝ち抜いてきた3チームが優勝をかけて争うもので、決勝戦では前日に行なわれたセミファイナルでFENNELを破ったSCARZと、そのSCARZを破って決勝へと進んできたJadeiteの試合となった。試合はBO5(3本先取)で実施された。

 本稿では、決勝戦の模様をお送りする。筆者は試合をオンラインで視聴したが、オフライン会場であるエディオンアリーナ大阪には多くのファンが集っていた他、出場チームと交流できるブースなどが展開され、盛り上がりを見せていた。

SCARZのメンバーとスタッツ
Jadeiteのメンバーとスタッツ
プレイオフトーナメント表
大会ルール
【VALORANT Challengers Japan Split 2 - Playoff Finals Day 2】

ダブルデュエリスト構成でこじ開けSZが先取

 優勝をかけて争う2チームの内、SCARZ(以下、SZ)はJemkin選手の撃ち合いの強さに加え、試合内で柔軟に動きを変えることのできるチーム。対するJadeite(以下、JDT)はiZu選手のキャリー力が注目のチーム。JDTは初のオフライン会場となるため、緊張感をどうコントロールするかが勝利のカギとなる。プレイオフではJDTが勝利しているが、それだけにSZも対策を練ってきているはずだ。

 第1MAPは「パール」。このマップは前回の対戦ではSZ側が勝利している得意マップではあるが、今回はJDT側がピックしており、なんらかの策があることが予想された。対するSZは普段はサポートエージェントをピックすることの多いKr1stal選手がデュエリストであるフェニックスをピック。Jemkin選手のジェットと合わせてダブルデュエリストの形をとった。

 試合は1ラウンド目からキルの応酬となり、防衛側のSZがクラッチし先取。続くラウンドも流動的な動きでT側の動きに対応していき、エリアを確実に抑え、固い守りでリードを広げていく。流れを取り戻したいJDTは7ラウンド目、Art選手のダブルキルから人数差を作り、muto選手も連続キルでラウンドを獲得。このままの勢いを維持したいJDTだったが、SZ側も9ラウンド目にJemkin選手が空中にいるiZu選手のジェットに咄嗟の対空ショットを命中させるスーパープレイを決めこのラウンドを勝利し、流れをJDTに渡さず前半ラウンドはSCARZがリードを守った。

 攻守が交代した後半13ラウンド目。攻撃側となったSCARZのKr1stal選手が的確なショットと思い切りのいいナイフキルを決めトリプルキルで勝利し幸先のいいスタートを切ると、続くラウンドも立て続けに連取しスコアは10-5に。

 一方のJDTは17ラウンドにArt選手が連射性の高い武器であるオーディンで立て続けにキルを獲得。次のラウンドも相手の視界を奪うスキルに対し、オーディンを活かして対応し人数差を作り、敵を囲い込む形で勝利。この戦略が逆転の糸口になるかと思われたが、次のラウンドにはSZがKr1stal選手とJemkin選手が相手の顔出しのタイミングを読みキルを獲得することで勝利しマッチポイントに。20ラウンド目もJemkin選手が人数差を作り、最後はYoshiii選手が冷静にキルを獲得しSCARZが1MAP目を勝利した。マッチ全体を通して、SCARZは不利な状況であってもダブルデュエリスト構成の突破力を活かしてこじ開けていくアグレッシブな動きと、前評判通りのその場その場での対応力を見せていた。

Jemkin選手の対空ショット。ノンスコープにも関わらず性格に当てている

確実に人数差を作り有利な展開を作るSCARZ

 第2MAPのフラクチャーは両チームとも得意なマップだ。各チームともに構成も変更し、今度はJDT側がダブルデュエリストの形をとった。またSZはキルジョイをサイファーに変更し、敵の位置を確実に把握しつつ、進行を妨害しやすい構成とした。

 第1ラウンドでは防御側であるJDTのiZu選手が単独で前に出ていきトリプルキルを獲得。次ラウンドでも味方の囮となる動きを見せチームの勝利に貢献した。その後のラウンドも、JDTがアビリティを使用するかどうかの駆け引きで有利を作っていき、マップを常に掌握する動きを通し続けて4本連取する展開となった。

 対するSZはタイムアウトをとり立て直しを図る。これで冷静になったのか相手のプッシュや勝負に付き合わない戦略に切り替えたSZがラウンドを取り返していく。8ラウンド目にはアビリティの打ち合いでJDTが有利を作ったかに思えたが、Allen選手が敵の位置を読みきった顔出しからの1ショットで1vs1を制しスコアは4-4に。続く9ラウンド目もSZが勝利し一気に逆転をした。

 その後も両チーム激しい攻防を繰り返し、SZが7-5でリードしている状態で攻守が交代。JDTはダブルデュエリストを活かした攻めでの逆転を狙う。しかし、前半で勢いづいたのはSZ側。後半開始直後のラウンドではJDTにスパイクを設置されるものの、敵の位置を正確に把握することで、敵が残っている状況でのスパイク解除を成功させてオーディエンスを沸かせた。その後のラウンドもスピーディー且つ的確な連携で有利な状況を作り続けたSZが連取していくが、対するJDTも相手の動きに対応して読み辛い動きを展開。Brofeld選手が連続キルを獲得してラウンドを取るなどの粘りを見せる。

 それでもSZの選手たちは先手先手でキルを獲得し、人数差を活かす形を作り出して確実にリードを広げていく。SZのマッチポイントで迎えたラウンド21では、JDTがなんとか1ラウンド取返したものの、続く22ラウンドでは早期にスパイクを設置したJDTに対し、Kr1stal選手が少しのスペースを活かして待機し、味方を囮にするような立ち回りから挟み撃ちの状態を作ることでキルを獲得。そのままの流れでSZが勝利し、第2マップもものにした。

高所に敵がいない前提で動くJDTに対し、Kr1stal選手の動きが刺さる

後がないJDT、逆襲なるか

 第3MAPはSZがピックしたヘイブン。後のないJDTは逆転優勝のためにも追い詰められた中でどこまで冷静に立ち回れるかが重要になってくる。対するSZも、勝利を焦らずにプレイすることが肝心だ。

 試合は1ラウンドめから激しい打ち合いになるも、これを防衛側のSZ、Jemkin選手の活躍で勝ち切りSZが幸先のいいスタートをきる。一方のJDGもAkame選手が射線を切りながら味方の合流を待つ耐えのムーブでラウンドを制し取り返す。

 追い込まれて吹っ切れたのか、ここからJDGの怒涛の攻めが始まり、次々とラウンドを勝利。1つのサイドへの攻めを印象付けた後、そこから読みあいを展開しながら的確に射線を管理したJDTが10-3という大差で前半を折り返す。

ラウンド8、不利状況ながらもArt選手がヴァイパーのウルトを使用し反撃。そこから取りきる動きでこのラウンドを逆転勝利した。これでリードを広げたJDTは勢いを増していく

 後半もJDTの勢いは止まらず、一気にマッチポイントへ。12-3という厳しいスコアの中、SZも粘りを見せ3ラウンドを連取するも、JDTは焦らず確実にラウンドを取る動きを徹底し、最後はiZu選手の強気な動きを起点に確実にキルをとり切り優勝への望みを繋いだ。

スーパープレイの応酬! 個人技が勝利を呼び寄せる

 4マップ目のアセントは両チーム共に得意なマップ。ここで決め切りたいSZと、逆転優勝のために負けられないJDTの意地がぶつかり合う、本日最も熱い試合となった。この試合では、JDTがサイファーをピック。先ほどのSZと同じく、カメラとワイヤーのスキルでマップのコントロールを狙う。

 試合はKr1stal選手が4キルを獲得するなどし、攻撃側のSZが4本を連取。対するJDTはiZu選手が相手のアルティメットスキルに対し前に出る瞬時の判断で有利を作り、SZの連勝をとめることに成功。しかしSZは焦ることなく試合を進めていく。途中8ラウンド目にはJDTがArt選手が使用するオーメンのアルティメットと、オーディンを使用した動きで有利を作ったかに思えたが、SZが落ち着いた警戒とカバーを行ないこれに対応。4ラウンド差をつけ、このままの勢いでSZが勝利するかに思われた。

iZu選手の使用するジェットが、ソーヴァのアルティメットに対し、瞬時に前にでる判断で状況を打開した

 しかし、折り返し間近にJDTが反撃にでる。ラウンド11で激しいトレードの末のギリギリの攻防をArt選手が制すると、次のラウンドではiZu選手がJemkin選手のジェット同キャラ対決を制し、味方が合流する時間を稼ぐと、そこから再びArt選手がオーディンで敵を次々にキルしこのラウンドを獲得。2ラウンド差までJDTが追いつき後半戦に突入することとなった。

 後半戦に入ると、SZがリードを広げれば、JDTがすぐに追いつく一歩も譲らない展開となるも、ラウンド17終了時点でSZが10-7でリードしており、JDTはどこかでラウンドを連取しなければならなかった。

 風向きが変わったのは18ラウンド目。JDTのスパイク設置に対し、5人全員で解除に向かうSZは打ち合いで人数差を作ることに成功。しかし、一人生き残っていたiZu選手が1vs4にも関わらず、次々とSZ側のエージェントをキルし勝利するスーパープレイを見せてラウンドを制する。

 続く19ラウンド目でもJDTはスパイクを設置し敵を迎え撃つ形をとったが、SZの適格な対応で再び人数不利を背負ってしまう。しかし、ここでAkame選手がスパイクの解除のために固まって動くSZの選手達に対し、視界を奪うスキルを使用。そこから3ショットで3キルを獲得しこのラウンドを勝利する。

 20ラウンド目こそSZがしっかりと守り切ったものの、21ラウンド目にはJDTがまたもスパイク設置からの迎撃の形を作り、今度はArt選手が強気なポジション取りからオーディンで3キルを獲得、その後muto選手がギリギリの1vs1を勝ち切った。不利な状況を個人技で覆したJDFはラウンド22も連取。前半から続いていた差を縮め、11-11のイーブンに持ち込んだ。

iZu選手が4キルを取るスーパープレイ。ここからJDTの逆襲が始まった
Akameが相手の視界を奪いそこから3キルを獲得。不利な状況を1プレイで打開した
Art選手はオーディンの連射力と貫通力を活かすべく、ここ一番での強気な立ち位置をとった

 両チームにとって大事な23ラウンドは、SZが最初の交戦で一方的にキルを取り、その人数差を活かして冷静に立ち回りパーフェクトで勝利。優勝まであと1ラウンドという状況に。続く24ラウンドは立ち上がりはお互い慎重な立ち上がりとなるが、iZu選手が攻めのオペレーターで1キルを獲得すると、それを契機に守りの手薄なサイドに切り返す冷静な判断を行ないJDTがラウンドを獲得。試合は2本先取のオーバータイムに突入した。

 オーバータイムに突入した25ラウンド目。開幕から両チームが2キルを獲得し合い3vs3の形になると、一転してお互い慎重な立ち回りを展開する。ここでまたもやArt選手が待ちのオーディンでキルを獲得。ここから射線の管理を完璧にこなしたJDTがこのラウンドを勝利し、SZを逆に追い込むこととなる。

 続く26ラウンドは立ち上がりこそ静かだったものの、Bサイトでの激しい打ち合いが展開された。ここで勝利したのはJDT、最後は陣形をしっかりと組み、残ったJemkin選手にスキを見せずにしっかりと勝ち切り、JDTが逆転勝利を果たした。

最終戦、慎重なプレイに徹して勝利を掴む

 ぎりぎりの試合を制したJDTが勢いのままに逆転優勝を果たすのか、SZがメンタル面を切り替えて勝ち切るのか。最終戦のMAPはJDTが得意とするスピリット。過去の対戦では1勝1負だが、直近の試合ではJDTが勝利している。この試合では両チームとも味方を回復・復活できるセージをピックし、打ち合いをサポートできる形に。また、両チームとも前回の対戦とまったく同じエージェント構成での対戦となった。

 序盤は攻撃側のJDTが2ラウンド先取するも、すぐにSZも2本返す展開に。ここまで激戦を繰り広げてきた両チームだが、互いに集中力を切らすことなく丁寧な試合運びと、ここ一番での的確な射撃を続け、取って取られてのラウンドが続いた。前半はイーブンスコアで終了し攻守が交代。先に明確なリードを築いたチームが優勝にぐっと近づくだけあって、緊迫した空気で後半戦に突入した。

慎重な立ち回りを続ける両者だが、一度戦闘が始まれば激しい打ち合いが展開される。どちらが有利な状況・ポジションをとれるかがより重要だった

 後半になり攻撃側がSZに変わっても両チームとも慎重な立ち回りを続けていく。特にSZは先ほどの試合の反省からか、序盤のキルで作った人数差を慎重な立ち回りで活かすことを徹底し、ラウンド13・14を立て続けに獲得した。

 対するJDTは今日何度も不利な状況を打開してきたオーディンが火を噴きラウンド15を勝利する。続く16ラウンド、またもオーディンでキルを獲得したJDTだったが、SZはエリアを広げる形で対応し勝利。続く17ラウンドではJemkin選手とKr1stal選手が少数戦を勝ち切りSZが有利を広げた。

Kr1stalとJemkinの2人は全試合通して少数戦で常に活躍をしていた強力なコンビだった

 ラウンド18、後半に入りリードを取られてしまったJDTは、iZu選手の個人技で状況の打開を狙うも、Kr1stal選手がiZu選手の使うジェットのダッシュを止めるスーパーショットを決めて守り切ることに成功。これにより、SGが11-7とリードを確実にしたものの、JDTもiZu選手のオペレーターでのワンピックからラウンド19を勝利し、続くラウンド20も連取。先ほどの試合のような逆転を目指す。

 だが、JDTの反撃もここまで。ラウンド21ではじりじりとした展開から残り時間が僅かになる中でSZがスパイクを設置。そこから位置が分かれながらの戦闘にも関わらずSZが2vs2でトレードを成立させると、キャプテンであるTORANECO選手がiZu選手との打ち合いを勝ち切りマッチポイントに。続く22ラウンドではお互いがキルを取り合う5vs5の銃撃戦になるも、Jemkin選手が最後に決め切り勝利。ぎりぎりのBO5を制したSCARZが「VALORANT Challengers Japan 2023 Split 2 Playoff Finals」のチャンピオンとなった。

優勝の喜びを分かち合うSCARZのメンバー

 本大会を優勝したSCARZは、6月28日に開催される「アセンショントーナメント」への切符を獲得した。試合後のインタビューにおいて、キャプテンであるTORANECO選手はVCTアセンションへの意気込みを聞かれ「アセンションまではまだ1カ月くらいあるので、そこに向けて何ができるかを見直したい」、「個人的には引き続きこのチームでプレイしてよかったなと彼らに思ってもらえるようなサポートを心がけていきたいと思います。アセンションに向けても全力で努力して向かっていきたいとおもいますので、引き続き応援よろしくお願いします」と語った。日本代表として戦うSCARZの活躍に期待したい。

アセンショントーナメントは6月28日に開催される