【特別企画】
「VALORANT」国内大会優勝はFENNEL! ダークホースが下馬評を裏切り強豪Crazy Raccoonをストレートで下す【VCJ 2023 Split1】
2023年3月20日 10:38
- 【VALORANT Challengers Japan 2023 Split1 Playoff Finals】
- 開催期間:3月18日・19日 開場12時/開演13時/終演20時
- 会場:インテックス大阪 5号館
ライアットゲームズは、3月18日より19日にかけて、PC用タクティカルFPS「VALORANT」国内大会「VALORANT Challengers Japan 2023 Split 1」の決勝大会を大阪府・インテックス大阪で開催した。会場では現地観戦も行われており、客席には大勢の「VALORANT」ファンが贔屓のチームを応援するために押し寄せた。
「VALORANT」の公式eスポーツリーグであるVCTでは、2023年シーズンからインターナショナルとチャレンジャーの2リーグ制が採用されており、本大会は下位リーグにあたるチャレンジャーリーグの国内大会だ。本大会で優勝したチームは優勝賞金200万円に加え、次の国内大会「Split 2」におけるシード権を獲得できる。そしてこのSplit2で優勝したチームが、上位リーグへの進出をかけたアジア大会「アセンショントーナメント」への出場権を手にする。
本大会は今年1月に開幕し、予選にあたるQualifierには総勢32チームが参戦した。今回のプレイオフは予選から本戦と勝ち上がってきた2チームによる最終決戦で、BO5(3本先取)により勝負が決まる。インターナショナルリーグ入りの狭き門を目指す国内の群雄割拠の中から、Split 1優勝に輝くのは果たしてどのチームとなるか。
なお、本稿で使用している埋め込み動画が環境によりうまく再生できない場合がある。その場合は見たい動画からYouTubeへ移動して視聴してほしい。
FENNELが序盤劣勢から逆転を見せた第1ゲーム
本大会で熾烈な予選・本戦を制しプレイオフのDay2に進出したのはCrazy RaccoonとFENNELの2チームだ。この舞台に立っている時点で両チームともに国内屈指の実力者であることに間違いはないが、Crazy Raccoon(以下CR)は本大会の本戦を1ゲームも落とさず7戦全勝で勝ち上がってきており、その圧倒的な安定感から優勝候補筆頭と見なされていた。プレイヤーの中で注目なのは昨年12月に加入した韓国人プレイヤーのMedusa選手で、その圧倒的な撃ち合い能力からラーカー(単独行動)として凄まじい活躍を見せていた。
対するFENNELは未だ目立った大会での優勝経験はなく、メンバーの多くが加入したばかりの歴史が浅いチームだ。しかし彼らは本戦を4勝3敗の4位という結果で勝ち抜けを決めた後、決勝トーナメントを勢いのままにぐいぐいと勝ち進み、この試合の前日には強豪SCARZを打ち破ってみせた。彼らのプレイは試合を重ねるごとに洗練されていっているようにも見え、大会を通して成長しているかのような、まさに未知数のチームだ。本戦ではCRに対し2対0で負けを喫したが、成長の度合い次第では雪辱を果たすこともできるだろう。
第1MAPに選ばれたのはFENNELピックのアセントとなった。両チームのエージェント構成はどちらもジェット、キルジョイ、KAY/O、ソーヴァまで同じで、FENNELがコントローラーにアストラを起用したのに対し、CRはオーメンを起用した。オーメンピックがよりスタンダードだといえるが、FENNELの起用したアストラはどこにいてもマップ全体にスターを展開し、敵チームの動きを大きく制限することができるエージェントだ。このピックの違いも勝敗に関わってくるだろう。
まずはFENNELの攻撃から試合はスタートするが、序盤は常にCRがゲームのテンポを握っていたと言っていいだろう。FENNELが時間を使ってじっくりと攻めの糸口を探そうとすれば、CR側はPopogachi選手のソーヴァやMedusa選手のキルジョイのアビリティをうまく使いその動きを把握し、リスクを負うことなくこれに対応していた。
またFENNELが速攻を仕掛けようとしても落ち着いてこれに対応し、人数有利の状況を確保してからリテイクに向かうなど、まさに教科書通りといったプレイングを見せた。前半戦を終えてのスコアは8−4のダブルスコア、FENNELにとってはきつい状況だ。
しかし攻守が入れ替わるとともに形成も傾きはじめる。第13ラウンドではCRがBサイトに5人を投入した2WAYの速攻を仕掛けるが、3人で待ち構えていたFENNELがこれをうまく捌き、さらにはAサイトから駆け付けたHiroronn選手が撤退しようとしていた敵の殿を華麗にダブルキルし、CRの攻撃を完封して見せた。
この1勝が契機となったか、ここからFENNELは徐々に調子づいていき、第16ラウンドを終えるころには5連勝して8−8までスコアを巻き戻した。FENNELはこの辺りから、CRのMedusa選手が単騎で背後に周り込もうとする動きに対し、壁抜きで早期に討ち取るなどして上手く対応できるようになっており、こうして相手のラークを逆手にとって人数有利を確保できるようになったのが形成逆転の要因だろう。
特に印象的だったのは第19ラウンド、CRがMedusa選手をラークに残してAサイトへ攻撃を仕掛けると、まずFENNELのSyouTa選手が待ち構えていたかのようにMedusa選手をキルし人数有利を取る。そしてFENNELはキルジョイのウルト・ロックダウンとKAY/Oのウルト・ヌル/コマンドを発動しリテイクに向かい、相手が中々ロックダウンを破壊できないでいるところをSyouTa選手が果敢に切り込んでいき、なんとそのままACEを達成した。FENNELの連携力と撃ち合い力が存分に発揮されたラウンドと言っていいだろう。
SyouTa選手の他にもFENNELはHiroronn選手の活躍も目覚ましかった。第23ラウンドでHiroronn選手はマーケットからBサイトに攻め込もうとするCRの背後に忍び寄ると、閉まりゆくシャッターの狭い射線を通して華麗にダブルキルを決め、その後Meiy選手、Medusa選手とも正面から撃ち合いを挑みこれを制し、たちまち合計4キルを決めてみせた。18歳とは思えないほど相手の動きを的確に読み切った腰の据わった立ち回り。まるでベテランプレイヤーのようだ。
中盤から徐々に勢いづいてきたFENNELに対しCRは戦術を変えて対応することができず、第1ゲームは13−11でFENNELの勝利となった。序盤はCR有利の展開にも見えただけに、オンライン配信のチャット欄にも驚きの声が多く上がっていたように思う。
スーパープレイ続出、FENNELが強さを見せる
第2MAPはCRがピックしたフラクチャーでの戦いとなり、CRが有利な展開で試合が進んでいくと思われたが、蓋を開けてみると序盤は実力伯仲の展開が続く。そしてまたもや中盤から勢いをつけたFENNELが連勝を重ね、13−6というスコアでFENNELが勝利した。優勝候補と目されていたCRもここまでくると後がない。序盤は笑顔の多かったCRの面々もここへきて緊張感のある面持ちを浮かべるようになっていた。第3MAP、FENNELの選択したスプリットが両チームにとっての正念場となった。
エージェント構成はレイズ、アストラは共通で、CRがスカイ、ヴァイパー、ジェットを選択したのに対しFENNELはブリーチ、キルジョイ、セージというピックになっていた。前日のSCARZとの1戦でも同じくスプリットをピックしたFENNELは、JoxJo選手のブリーチを軸にした立ち回りが非常に有効に働いており、CRがこれにどう対応するかがカギになってくる。
試合が始まると、攻撃側のFENNELは壁越しに相手の動きを封じるブリーチのスキル・フォールトラインでクリアリングしながらレイズでエントリーする戦術で確実にエリアを押さえ、序盤から順調にオーブを獲得していく動きを取った。対するCRはアストラとヴァイパーのスモークで相手の視界を長時間遮り、相手に思うようなセットプレイをさせない持久戦の構えでこれを迎え撃った。ここへきてもやはりMedusa選手がFENNELの動きを抑制しようとラークに出るが、FENNELはこれに対して上手く対応できていた印象だ。
ウルトが溜まらない序盤こそ両チームが交互にラウンドを取るような展開が続いたが、中盤戦になってくると徐々にFENNELがセットプレイを仕掛けるようになってきた。印象的だったのは第12ラウンド。Hiroronn選手のキルジョイがBガレージにロックダウンを設置すると、上手く相手のプレイヤー2人を拘束し、チーム全員でなだれ込むようにBサイトにエントリーを果たす。そしてAサイトからリテイクに来るCRに向かってJoxJo選手がブリーチのウルト・ローリングサンダーをヒットさせ、相手の陣形が崩れたところを間髪入れずにXdll選手とSyouTa選手が切り込み、次々とキルを奪っていく。まさに理想的なセットプレイだ。
そして攻守交代後の第17ラウンドではまたしてもHiroronn選手が卓越した撃ち合い能力でチームをけん引する場面があった。
このラウンドはHiroronn選手とCLZ選手が守るAサイトにCRが4名でメインからの突破を試み、まずはMeiy選手がCLZ選手をキル、人数有利のままスパイク設置までこじつけるかと思われた。しかしHiroronn先取は味方の援軍を待たずともなだれ込む相手チームとの地上戦を次々と制していき、4人を立て続けに倒してCRの攻撃をほとんど1人で食い止めてみせた。乱戦の中で的確に敵を射抜くエイム力と反射神経には脱帽するばかりだ。
試合の流れは完全にFENNELにあるように思われたが、ただでは負けないのがCRだ。
続く第18ラウンド、CRはエコラウンドで勝負をしかけた。Bサイトが手薄になっているのを見るとCRはBにスパイクを設置し、タワーからリテイクにくるFENNELを迎え撃つ。
Makiba選手がまずシェリフで渾身のヘッドショットを2発連続で決めると、それに続いて今度はMeiy選手がジェットのウルト・ブレイドストームでダブルキルを決める。勝負所のエコラウンドを勝ち切ったことでクレジット差が埋まり、CRがここから再び試合の流れをつかむかのようにさえ思われた。
しかしFENNELの勢いはこの程度では止まらなかった。終盤戦はリテイク重視でマップ後方にどっしりと構えた陣形をとってCRを翻弄し、徐々に勝ち星をあげていく。
そして勝敗が決したのは第22ラウンド。FENNELが3人で守るAサイトにCRは4人で攻め入ろうとするが、中央でラークしているMedusa選手の動きを捉えたことを機に防衛陣は一気にAサイトに寄り相手の攻撃を迎え撃つ態勢を整えた。まずスロープで待ち構えていたJoxJo選手がスカイのスキル・トレイルブレイザーを喰らいながらも2キルを決め、続いてHiroronn選手がスクリーンから遠距離戦を制してさらに2キルを追加。そして最後はタワーに上がろうとするNeth選手をXdll選手が討ち取り、これをもって「VALORANT Challengers Japan 2023 Split 1」優勝はFENNELとなった。
優勝した感想を聞かれるとHiroronn選手は「嬉しくて体の震えが止まらない、全員がベストなパフォーマンスを発揮できたからこその勝利だと思う」とコメント、またXdll選手は「大会を通してチーム全体が強くなっていったと思う」と語った。そんな中でもリーダーのCLZ選手は「Split 1の優勝は通過点でしかなく、ここで燃え尽きずに絶対にインターナショナルリーグ入りを果たせるよう頑張りたい」と今後の展望を語ってくれた。
強豪揃いの今大会をFENNELが優勝することを予想できていたファンは少なかったであろうと予測するが、なんにせよ彼らは今大会の快進撃を通じて国内の「VALORANT」シーン全体にその名を轟かせることになった。
まだ若いプレイヤーも多く今後のポテンシャルも高いであろう彼らだからこそ、是非ともこのままチャレンジャーリーグを勝ち上がり、ZETA DIVISIONとDetonatioN FocusMeに続いてインターナショナルリーグ入りを果たしてほしいところだ。そんな彼らも戦うことになる次なる国内大会「Split 2」はQualifiersが3月21日から開催される予定だ。今後ますますレベルが上がっていくかもしれない国内「VALORANT」シーンには要注目だ。
© 2023 Riot Games.All Rights Reserved.